「理想のゆで卵」の作り方を科学者が発表、実際に作ってみたらすごかった 家庭でのコツも

「理想のゆで卵」の作り方を科学者が発表、実際に作ってみたらすごかった 家庭でのコツも

実は固まる温度が違う黄身と白身、数理モデルや流体力学を駆使して矛盾をクリア

 簡単にできる料理と思われがちなゆで卵だが、出来上がったゆで卵をいざ割ってみて眉をひそめる人は少なくない。理想のゆで卵を作るためのコツや秘訣も人の数ほどあるが、それでも中がカチカチだったり、ドロドロだったりしてがっかりした経験をした人は多いだろう。

 完璧なゆで卵を作るのが難しいのには理由があると、イタリアの科学者チームは言う。卵白と卵黄が固まる温度が異なるからだ。卵白が固まるのは約85℃に対し、卵黄が固まるのは約65℃だ。

 2025年2月6日付けの学術誌「Communications Engineering」で、理想のゆで卵の作り方をイタリア、フェデリコ2世ナポリ大学の科学者チームが発表した。その方法で卵を調理すると、従来よりもおいしく、また栄養価も高くなるという。面倒な点といえば、鍋が2つと温度計が必要で、時間も30分強かかることだ。

 作り方はこんな具合だ。用意するのは沸騰したお湯と、約30℃に保ったぬるま湯。卵を沸騰したお湯で2分間ゆでたら、2分間ぬるま湯につけ、再度沸騰したお湯の中に戻す。これを計8回、32分間続ける。

 こんな複雑なゆで卵の作り方をチームはどうやって開発したのか興味をそそられたものの、こうまでしてゆで卵を作る価値はあるのだろうか、という疑問も同時に起こった。そこで論文のやり方を検証してみることにした。

絶妙なおいしさ

 まず論文に書かれているとおりに、沸騰したお湯と、調理用温度計を使い30℃に保たれたぬるま湯を用意した。

 もちろん工学的な精密度という点では大学での実験には及ばない。卵をお湯に入れる時間はストップウォッチを使って測ったけれど、鍋から鍋へ卵を移動させるのに数秒かかってしまったし、ぬるま湯の温度を一定に保つのは至難の業だった。

 沸騰するお湯に入っていた卵をぬるま湯に入れると、それだけで1~2℃温度が上昇してしまう(論文にはこれを避けるにはぬるま湯の温度を28℃にしておくといいと書いてある。またゆで始める前に卵の一方の端に傷をつけておき、ぬるま湯に入れている間はゆっくりとかき回すといいとも書いてあったのだが、この点に関してはすっかり忘れてしまった)。

 それでも、ゆで卵はおいしかった。

 黄金色の黄身は柔らかく、だからといってドロッとはしておらず、しっかりと黄身の味がした。固めのゆで卵が好きという人にとっては少々期待外れかもしれないが、私(筆者のKieran Mulvaney氏)の好みを絶妙にとらえていた(固めが好きな人はぬるま湯の温度を上げるといいと、論文には書いてある)。

構造科学の研究者がなぜ

 今回の論文をまとめたのは、温度などさまざまな条件下での物質の構造を研究する科学者たちだ。

 主な研究対象はプラスチックだが、研究室長で論文の最終著者でもあるエルネスト・ディマイオ氏が、今回のプロジェクトに着手したのは「研究を食べ物などもっと一般的なものに応用してはどうか」という同僚からの意見だったと、ナショナル ジオグラフィックに語った。

 その同僚は「卵1個を80ユーロ(約1万2600円)で売るシェフ」についてもディマイオ氏に教えてくれた。そのシェフは卵白と卵黄を別々に調理してから「2つを再び合体させるという手の込んだ方法」を使っているという。

 これに刺激を受けたディマイオ氏は博士課程の学生であるエミリア・ディロレンツォ氏に、卵を割ったりせずにそのままの形で、卵白と卵黄を理想的な温度で調理するにはどうしたらいいかを研究テーマとして与えた。

 優秀な材料科学者の例に漏れず、ディロレンツォ氏は実験に取り組む前にまず数週間をかけてコンピューターでシミュレーションを行い、水から殻を通して卵の中心部分に熱がどう伝わるのかや、卵白と卵黄が理想的な固さになるまでの温度と時間の組み合わせなどを調べた。

「私たちはまず最適な数理モデルを構築しました」とディロレンツォ氏は説明してくれた。「それを基に数値流体力学のプログラムを開発して、『卵を100℃で調理した時に何が起こるか』といった具合に解析しました」

実は卵が苦手……

 ディロレンツォ氏は、実は卵が好きではなかった。そのことをディマイオ氏が知ったのはそれから数カ月あとだった。「彼女には辛い課題を与えてしまったようです」

 一方、卵への苦手意識はないディマイオ氏は2024年の復活祭の時、家族のために理想的なゆで卵を作ってみた。「卵はおいしくて、皆、驚いていましたよ」

 味がよいことに加え、科学者チームが開発した方法で作ったゆで卵はその他の方法で作った場合とくらべ栄養価が高いことも分かった。

 今回のプロジェクトの目的は、ゆで卵の新しい作り方で特許を取ろうなどということではない。「卵を食べるといった小さなことであっても、科学の知識によって日常生活をよりよくすることができるということを楽しい実験で示したかったのです」と、研究者たちは論文に書いている。

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