中国AIアプリ「ディープシーク」にサイバー攻撃、新規登録を制限
中国の人工知能(AI)開発の新興企業ディープシークは27日、サイバー攻撃を受けたため、 同社の生成AIアプリへの新規登録を一時的に制限すると発表した。
ディープシークのAIアプリは27日、アップルのアプリ市場「アップストア」の米国版でチャットGPTを抜き、無料アプリランキングで首位に立った。
これを受け、ディープシークのウェブサイトで障害が発生。同社はログインを巡る問題は解決したとしているが、この日の障害は過去約90日で最も長く、同社のAIアプリが突如の人気を集めていた際に発生した。
アプリデータ調査会社のセンサータワーによると、ディープシークのAIアプリは今月10日のリリース以降、米国ユーザーの間で急速に人気を集めている。
低コストのAIモデルの登場を受け、AIの収益性と先端半導体への旺盛な需要に対する投資家の信頼が揺らいだことで、アジア市場のほか、米株式市場でもハイテク株に売りが出ている。
NY市場でエヌビディア株が急落、時価総額90兆円失う…ダウ終値は289ドル高
27日のニューヨーク株式市場で、中国の新興AI(人工知能)開発企業「ディープシーク」によって米国製AIの優位性が揺らぐとの懸念が強まり、AI関連銘柄が下落した。中でも、時価総額世界首位の半導体大手エヌビディアが前週末比17%安と急落した。28日の東京市場にも影響する可能性がある。
エヌビディア以外では、グーグル親会社のアルファベットが4%安、マイクロソフトが2%安となった。ソフトウェア大手オラクルは14%安、半導体大手ブロードコムは17%安だった。
データセンターや半導体など、AIインフラに多額の投資を行っている企業を中心に値下がりした。IT企業の銘柄が多いナスダック市場の総合指数の終値は612・47ポイント安の1万9341・83だった。
24日の終値ベースで、エヌビディアの時価総額は約3兆4900億ドル(約540兆円)で世界首位だった。27日の終値は2兆9000億ドル(約450兆円)となり、世界首位から陥落した。わずか1営業日で、トヨタ自動車の時価総額(約46兆円)を上回る約90兆円が失われたことになる。
日経平均株価には半導体銘柄が多く採用されており、エヌビディアの株価や業績に大きく左右されることが知られている。日本の株価にも影響が出る恐れがある。
中国の新興AI開発企業「ディープシーク」は今月20日、新型AIモデル「R1」を発表した。R1はグーグルやオープンAIの最新モデルに匹敵する性能を持つ一方、旧型の半導体を使って開発しており、開発費用ははるかに安価だったと主張している。
ディープシークの新モデルの性能について米メディアが前週末にかけて相次いで報じたことで、米国製AIの優位性への懸念が広がった。
グーグルなどの巨大IT企業はエヌビディア製の高価な半導体をデータセンターに導入し、巨額の費用をかけてAI開発を進めてきた。ディープシークの主張通り、安価で高性能なAIの開発が可能だとすれば、巨大IT企業のAIサービスはディープシークにシェア(占有率)を奪われ、エヌビディア製半導体の需要も減少する可能性がある。
一方、ダウ平均株価(30種)の終値は前週末比289・33ドル高の4万4713・58ドルだった。AI向けソフトウェアのアップデートを発表したスマートフォン大手アップルやIT大手セールスフォースなどが上昇した。
シリコンバレーでも注目を集める中国製AI「DeepSeek」、そのすごさと創業者
中国のヘッジファンド界の大物、梁文峰(リャン・ウェンフォン)が創業したDeepSeek。ChatGPTのライバルとなる同社のAIは、米国でダウンロード数ランキングで首位を獲得している。米国による関連技術の輸出規制下にもかかわらず、比較的無名の企業がいかにして高度なAI製品を生み出せたのかという議論を巻き起こしている。
サンフランシスコに拠点を置く市場分析プラットフォームSensor Towerによれば、独自AIモデルを搭載した「DeepSeek-AI Assistant」は現在、中国とアップルの米国App Storeにおいて、無料アプリ部門で最も人気があるという。ChatGPT同様、このチャットボットは質問への回答、文章の作成、情報収集の支援といった幅広いタスクを実行できる。
このアプリが急速に注目を集めている背景には、開発元である杭州拠点のDeepSeekが、シリコンバレーを驚かせる技術的ブレークスルーを成し遂げたことがある。サンフランシスコを拠点とするOpenAIがかけたコストよりはるかに少なく、かつ米国当局が中国への半導体販売を制限しているなか性能的に劣るチップを用いて高度なAIを開発したとみられているからである。
カリフォルニア大学バークレー校などの研究者が運営する評価プラットフォームChatbot Arenaによると、今月初めにリリースされた「DeepSeek R1」モデルは、ユーザー投票で世界第4位の人気AIモデルとなっている。同プラットフォームによれば、この製品は昨年12月にリリースされたOpenAIの「o1」モデルを上回る評価を獲得している。
DeepSeekは今月初めの製品発表時、R1モデルについて「複雑な推論や高度な数学的問題を解く能力を備え、OpenAIのo1モデルと同等の性能を持つ」と主張した。梁は先週、AIに関する政府会議の一環として李強(リー・チャン)首相と会談している。
DeepSeek R1は、これまで目にした中でも最も驚くべきブレークスルーの1つ
同社は追加の取材要請には応じていない。2023年に創業され、外部からの出資が確認されていないDeepSeekの初期段階での成功は、シリコンバレーに強い衝撃を与えている。著名投資家のマーク・アンドリーセンは米国時間1月24日にX(旧ツイッター)で「DeepSeek R1は、これまで目にした中でも最も驚くべきブレークスルーの1つです。そしてオープンソースとして、世界への価値ある贈り物でもあります」と述べている。
ワシントンD.C.に拠点を置くアドバイザリー企業DGA-Albright Stonebridge Groupのパートナー、ポール・トリオロは電子メールを通じて「DeepSeekのモデルは、OpenAIと比べても最高レベルの性能と見なされています」とコメントしている。
同社の急成長を牽引しているのは、先端技術に強いこだわりを持つ隠遁型ヘッジファンド経営者である梁文峰だ。1985年に広東省で生まれ、父親は小学校教師だった。地元メディアによれば、梁は投資家としてキャリアをスタートさせ、2008年に杭州の浙江大学でコンピュータビジョン関連の修士号を取得後、株式取引でのAI活用を研究し始めた。
梁は2015年にヘッジファンド「High-Flyer Quant」を共同設立し、その翌年にはアルゴリズムを用いた投資機会の分析を開始した。同社ウェブサイトによれば、2017年までにHigh-Flyer Quantの投資はほぼすべてAIによって行われていたという。
2019年までにHigh-Flyer Quantの運用資産(AUM)は100億元(約2133億9000万円)に達した。地元メディアが引用した中国のHithink Flush Informationのデータによると、2024年時点で200%を超えるリターンを上げているファンドもあるとされる。
しかし梁の真の関心は、フロンティア技術を探求することにあるようだ。2023年に行われた希少なインタビューで、梁は地元メディア36Krに対し「研究とイノベーションを追求したい」と語っている。High-Flyer Quantを運営する一方、梁はワシントンの輸出規制が施行される前からエヌビディアのチップを買いだめしており、ヘッジファンドのリターンをAIモデルのトレーニングに投資していた。
2023年11月には最初のAIモデルをローンチ
こうした動きのなかで2023年にDeepSeekが設立された。企業情報サービスのQichachaによれば、同社は外部からの出資を受けておらず、自己資金で運営されている。2023年11月には最初のAIモデルをローンチしている。
清華大学の情報科学助教授、許華哲(シュイ・ホアヂェ)はWeChatを通じて「DeepSeekのイノベーションの一部は「Mixture of Experts(MoE)」(専門家の組み合わせ)と呼ばれる技術から生まれたようだ」と述べている。これは多数の小規模AIモデルを同時に学習させ、ユーザーへの応答時に選択されたモデルの出力を組み合わせる手法である。
許助教授によれば、この技術により、必要とする高性能チップや大規模データが少なくて済む可能性があり、DeepSeekはコスト削減につなげているようだ。同社は、一部のAIモデルの学習費用が560万ドル(約8億6800万円)にとどまり、OpenAIが投入した額と比較して最大95%削減できたと主張している。
その結果、DeepSeekはユーザーへの料金を低く抑えている。AIアシスタント機能は無料で使用できるが、開発者が基盤モデルにアクセスして自社製品を構築する場合に課金される仕組みだ。DeepSeek R1は100万トークンあたり14セント(約21.7円)を課金している一方、OpenAIは7.50ドル(約1162円)を請求している。
北京に拠点を置くブティック投資銀行Chanson & Co.のマネージングディレクター、沈萌(シェン・モン)はWeChatで「DeepSeekは中国製モデルの大半が模倣に留まるなか、独自の技術路線を切り開いた存在です。これは中国のチップ開発企業にも大きな期待をもたらしています」と述べている。
「DeepSeekのトレーニングは、それほど大規模な計算能力に依存していないため、エヌビディア製GPUを大量に使う必要がないのです」と沈はいう。「つまり、中国産チップが成長する余地がさらに広がったことを意味します」