「10万円台」「ハイコスパ」AVアンプ/HDMIプリメインをガチ比較!デノン「AVR-X1800H」「AVR-X2800H」、マランツ「CINEMA 70s」「STEREO 70s」の4モデルを比較レビュー

「10万円台」「ハイコスパ」AVアンプ/HDMIプリメインをガチ比較!デノン/マランツの厳選モデルを一斉レビュー

Prime VideoやNetflix、Apple TV、Disney+など、多数のVODサービスが、Google TVやAndroid TVなどのOSを搭載した4Kテレビ/プロジェクターで手軽に楽しめる時代である昨今。画質面だけでなく、音質面も高いクオリティで楽しんでもらいたい。

音質面の強化において、サウンドバーという設置しやすいアイテムを使用するのも、もちろん良いのだが、やはり高音質を求める上で、実音源を多数個配置したときの音場効果には敵わないものだ。そこで今回紹介したいのが、ビギナー向けとしてもお薦めしやすい、10万円台で購入できるエントリークラスのAVアンプ/HDMI搭載プリメインアンプだ。

■ネットワークや再生機能は共通で高音質パーツの違いが顕著に表れる

デノンからはAVアンプ「AVR-X1800H」「AVR-X2800H」の2機種、マランツからはAVアンプ「CINEMA 70s」とHDMI搭載プリメインアンプ「STEREO 70s」をピックアップ。どのモデルもベストセラーなので、ご存じの方も多いと思う。4モデルともネットワークオーディオ機能「HEOS」への対応をはじめ、AirPlay 2、Wi-Fi(2.4GHz/5GHz)、Bluetoothなど、主要なワイヤレス機能をカバーしていることに加え、HDMI端子はeARCに対応。8K/60p、4K/120p、HDR10+、Dolby Visionなどの映像フォーマットも共通してカバーする。

オーディオフォーマットについては、AVアンプの3機種はDolby AtmosやDTS:Xといった最新世代の立体音響フォーマットを再生可能であり、ハイレゾ再生においてはPCM 192kHz/24bit、DSD 5.6MHz/1bitを4モデルがフォローしている。またAVアンプの自動音場補正機能「Audyssey MultEQ XT」を搭載するのも共通点だ。

つまり今回紹介する4モデルの違いは、筐体サイズや端子数の部分もあるが、搭載されている高音質パーツや構造によるものが如実に表れると言えるのだ。そこで今回、4モデルを一堂に集めて比較試聴を実施した。音の違いがどのようなポイントに表れていたかお届けしたい。

スピーカーは、DALIのラインナップのなかでも人気の高い“OBERONシリーズ”から、フロア型「OBERON 5」、ブックシェルフ型「OBERON 1」、センター「OBERON VOKAL」を用意。さらに、イネーブルドスピーカー「ALTECO C1」、サブウーファー「SUBE-12N」を組み合わせた5.1.2chで試聴した。

■AVR-X1800H、最大出力175W/カスタム大型EIコアトランス搭載

「AVR-X1800H」 110,000円(税込)

今回取り上げるモデルの中で最も安価なのがAVR-X1800Hであり、国内で一番売れているDolby Atmos対応AVアンプ。最大出力175Wの7chディスクリート・パワーアンプを搭載する。大電流の供給能力と低リーケージフラックス、低振動を追求したカスタム仕様の大型EIコアトランスをはじめ、新開発の大容量10,000μF・カスタムブロックコンデンサーを2個使用、さらにデジタル基板にエルナー製コンデンサーや音質対策パーツを採用している。

加えて入力セレクター、ボリューム、出力セレクター、それぞれに半導体メーカーを共同開発したカスタムデバイスを用いており、併せてアナログ入出力からプリアンプ回路まで1枚基板にすることでシグナルパスの最適化、不要振動を抑制する「ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション」を導入するなど、細部まで高音質技術を盛り込んでいる。

「移動表現が明快で効果音の瞬発力と量感が豊か」

万人向けのエントリー機として高解像度・広帯域より、聴きやすいバランスを狙った印象だ。映画『ツイスターズ』によるDolby Atmosサウンドは移動表現が明快であり、アクションシーンの効果音は瞬発力と量感が豊かであり、サウンドバーと次元を異にする。

映画『PERFECT DAYS』の日本語のセリフの口跡が自然で、肝心の聴き取りやすさは大変良好だ。DTS Neural:Xでアップミックス再生してみると、現代東京のノイズがきれいに周囲に立ちこめ、歪みの少ない自然な音空間が現れる。

BOB JAMES TRIO『Feel Like Making Live!』は、ベースやバスドラなどの低音楽器の音が少々軽めだが、セパレーションや定位が鮮明で本機のデジタル回路の優秀性が伝わる。CD『SF交響ファンタジー』は、S/Nが高く弦楽合奏等スムーズな質感だ。キャロル・キッド『All My Tomorrows』は、この録音に現れがちなヴォーカルの金属質の生硬さがなくなめらかな質感で聴きやすい。幅広い音源に応えてくれる、コストパフォーマンスの高さが魅力的だ。

■AVR-X2800H、最大出力185W/デジタル電源基板にエルナー製コンデンサー使用

「AVR-X2800H」 121,000円(税込)

内蔵パワーアンプ数は下位モデルのAVR-X1800Hと同じく7chディスクリート・パワーアンプだが、最大出力185Wに増加しており、アンプの基礎体力を向上させている。パワーアンプ初段の差動増幅段にデュアルトランジスタを採用し、カスタム仕様の大型EIコアトランスや、本モデル専用にチューニングされた大容量12,000μFのカスタムブロックコンデンサーが2個導入されている。

DACやDSP等へ電源供給を行うデジタル電源基板を一新しており、エルナー製コンデンサー等の音質対策パーツを使用している。プリアンプ部では入出力セレクター、ボリューム等にハイエンド機の時に半導体メーカーと開発した高性能デバイスを投入、音質に特化したワンランク上のエントリー機といえよう。

「空間が広く、帯域と解像力が向上してリアリティも増す」

AVR-X1800Hと価格差は1万円強だが、音質の伸びしろは大きく、デノンらしい素直で鮮度豊かな音質が味わえる。ことに解像力、帯域の広さで躍進する。映画『ツイスターズ』は、サラウンド音場がきれいにほぐれ、音塊だったものからさまざまな事象や人間の感情の表現が聴こえてくる。空間が広く竜巻が高々と渦巻き、クライマックスシーンで聴き手の周囲をゆったりと時計回りに旋回、咆哮する野獣の生命感を狙った音響演出であることがわかる。

映画『PERFECT DAYS』の酒場のシーンで俳優たちの肉声の質感の違いが生々しい。劇伴のポップスがシーンの進行につれて登場人物の感情と一体になって響きの変化が生まれていく整音の工夫が伝わる。BOB JAMES TRIO『Feel Like Making Live!』は、帯域と解像力の向上で楽器の音色のリアリティが増し、演奏に一体感と密度が生まれ熱量が増す。

CD『SF交響ファンタジー』は、ヴェールを一枚剥ぎ取ったように楽器固有の音色と80人編成のオーケストラの偉容が鮮明に現れる。キャロル・キッド『All My Tomorrows』は、音場空間が澄明さを増しヴォーカルが音場中央に凜と立ち、オケとのバランスも美しい。再生機能の豊富さと音質がバランスしたモデルであり、ホーム内の音楽再生すべてをしっかりサポートしてくれる。

■CINEMA 70s、最大出力100W/独立専用基板のアナログオーディオ回路を導入

「CINEMA 70s」 143,000円(税込)

音の波動をモチーフにマランツの新世代デザインをまとった薄型ボディが特徴的で、シルバーゴールドとブラックの2色か選べるモデルであり、質実剛健の多いAVアンプの中で異彩を放っている。薄型で美しいデザインがリビングに導入しやすく、同価格帯では他を圧倒するベストセラーだ。7chフルディスクリート・パワーアンプ搭載で、最大出力100W。パワーアンプ回路に容量6,800μFのブロックコンデンサーを2基搭載し、25Aの大電流容量に対応する整流ダイオードを採用している。

アナログオーディオ回路は独立した専用基板にレイアウトしており、入力セレクター/ボリューム/出力セレクターの各々に特化した高性能カスタムデバイスを用いている。デジタル回路への電源供給には専用トランスを採用し、アナログ回路との干渉を排除。背面端子には7.2chプリアンプが投入されていることも特徴である。

「音色のニュアンスが豊かで、華やかさと軽快さも備える」

デノンのAVR-X1800H、AVR-X2800Hと聴いてきたが、音質的なキャラクターは好対照であり、本機は明るく鮮鋭感主体の音作りだ。落ち着いて端正なデノンに対して、良い意味で華やかで外向的であり、軽快さがある。映画『ツイスターズ』は、解像感が高くサラウンドが高潮しても飽和せず音場がほぐれ、オブジェクトの移動表現がなまらず明快だ。

映画『PERFECT DAYS』の酒場のシーンのセリフが、明るく鮮明で声質差の表出に優れる。感心したのは、DTS Neural:Xのアップミックス再生で音質傾向の変化が少ない部分だ。イマーシブサウンドで現代東京のノイズを繊細かつ自然に出す。BOB JAMES TRIO『Feel Like Making Live!』は、ベースラインが克明なだけでなく、音色のニュアンスが豊かで胴鳴りにアコースティックな膨らみが備わっている。ピアノに倍音がのり、突き刺さるようなアタックも歪まず透明感を失わない。ドラムスの量感と音場一杯にスケール感も豊か。

CD『SF交響ファンタジー』は、楽器の音色が出揃って現代管弦楽曲らしく色彩感がある。帯域が広く聴き手を圧する大オーケストラの音圧だ。キャロル・キッド『All My Tomorrows』は、一聴してダイナミックレンジが豊か、弱音が美しい。ハイレゾらしい音場の奥行きがあり、ヴォーカルにしなやかな抑揚。オケの包み込むような広がりが官能的で、堅実一辺倒でなく良い意味で色気と華がある。

■STEREO 70s、高速アンプモジュール「HDAM-SA2」を搭載

「STEREO 70s」 143,000円(税込)

CINEMA 70sと類似した薄型ボディに定格出力75W/chのアナログフルディスクリートアンプを搭載しており、HDMI入力6基を装備するユニークなプリメインアンプ。注目すべきは、プリアンプ部に独自の高速アンプモジュール「HDAM-SA2」を使った電流帰還型回路としている点だ。独立した回路基板にレイアウトし、入力セレクター/ボリューム/出力セレクターに特化した高性能カスタムデバイスを用いている。“リビングでは2chで十分”といった、ホームシアター愛好者に音の良さで絶大な支持を得ている、最新の薄型で美しいデザインをまとったアンプだ。

パワーアンプ回路初段には、デュアルトランジスタを投入し、同社の上位機でも用いている高品質パーツを細部に投入している点も特徴的だ。パワーアンプ回路には、6,800μF容量のカスタムコンデンサーを2個搭載。また、デジタル部からアナログ部への干渉を防ぐため、独立トランスの採用やデジタル電源回路の動作周波数の高速化でスウィッチングノイズの影響を排している。

「解像力と鮮度が高く、迫力とインパクトも生々しい」

映画『ツイスターズ』は2.1chで再生。クロスオーバー周波数のデフォルトは80Hzだが、低音の鮮度感や軽快さを高めるために40Hzで試聴した。密室で大音量の再生なので反響効果が大きくステレオでも移動感、包囲感が豊か。音場をかけめぐるとまではいかないが、竜巻の時計回りの動きもわかる。ステレオ構成の本機は、内蔵パワーアンプにかけられる物量とコストの有利性を感じられる。

映画『PERFECT DAYS』での挿入音楽が素晴しく、先程の有利性がてきめんに現れる。音に厚みと勢い、豊かな表情がある。主人公がニコを軽自動車に乗せて仕事場に向かうシーンに流れるヴァン・モリソンは感動的。ファントムセンターになるが、セリフの定位や音質、音圧もDSPの処理能力とパワーアンプのクオリティの高さでサラウンドに遜色ない。東京のノイズは豊かで克明だが、高さ方向を求めるなら、やはりAVアンプが優位である。

CD『SF交響ファンタジー』は今回のベストであり、本機の鮮度の高さ、解像力、色付きのなさが発揮され、ティンパニの打撃の生々しいインパクト、金管楽器の迫力等々、楽曲の雄大さが現れる。加えてキャロル・キッド『All My Tomorrows』も良く、音場が澄み渡り、歌声に漂うような美がある。

■端正でナチュラルなデノン、明るく鮮鋭感が豊かなマランツ

やはりできるだけ手軽にAVアンプを手に入れたいというのであれば、機能面も対応する立体音響フォーマットも上位機種と遜色ない万能モデルのAVT-X1800Hが適切であろうが、デノンらしい鮮度が高く、自然で力強い再生音を手に入れたければ、AVR-X2800Hがお薦めだ。下位機との音質の違いは、1万円強の範囲を優に超えていると断言できる。

音のキャラクターといった部分でいうと、端正でナチュラルなデノンに対し、明るく鮮鋭感が豊かであり、華があるキャラクターなのがマランツならではの魅力であり、CINEMA 70sの身上と言ってもいいだろう。

プリメインアンプのSTEREO 70sは、ステレオ映画再生の手本であり、良いアンプとスピーカーがあれば、映画作品によってはサラウンドに負けない、いやそれ以上の音をステレオで響かせるのだということを改めて知らしめる存在である。劇伴の美しさは目から鱗であり、部屋に置けるスピーカー台数に制限があるなら、本機もまたホームシアター作りの大きな味方になってくれる。

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