KDDI、ローソンにTOB実施を発表 三菱商事と共同経営へ
通信大手KDDIはコンビニ大手ローソンにTOB=株式公開買い付けを実施することを発表しました。ローソンには現在、三菱商事が50%を出資していますが、今後、両者で50%ずつの株式を持ち合い、共同で経営にあたります。午後4時から3社が共同で会見し、説明します。
KDDIは現在、ローソンの株式のおよそ2%を所有していますが、これをTOBにより50%にまで高めます。
TOBは4月ごろから実施予定です。
KDDIは今回のローソン株50%取得の決断に至った理由について、
・コンビニが社会インフラとして欠かせない存在で、近年重要性が高まっていること、
・他方で、新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、生活スタイル、消費行動が変化し始め、今後はリアル店舗にとどまらない新たな価値提供が必要となると考えること、
・KDDIは通信などの活用により、ローソンをデジタル面から支援することでローソンの利便性向上や新たな価値提供が可能になること、
・こうしたことから、リアルの客と身近な接点を持つローソンとデジタルの客と接点を持つKDDIが提携をさらに深め、地域社会や客のニーズに答えていきたいと考えた
三菱商事がKDDIと「ローソンを共同経営」する理由、ファミマを完全子会社化した伊藤忠とは真逆の選択
「未来のコンビニ」目指すも
KDDIとシナジーを生めるかは不透明
KDDIがローソンに対する株式公開買い付け(TOB)を電撃的に発表した2月6日、100人以上の記者が三菱商事ビル3階の会見場に集まった。そこで、KDDIの高橋誠社長は高らかに宣言した。
「通信、DXの力をフル活用して、未来のコンビニエンスストアを実現していきたい」
KDDIは、約4971億円を投じるTOBでローソン株式の半分を取得する。これによりローソンは、三菱商事とKDDIによる共同経営体制(両社の持ち分比率は50%ずつ)に移行する。
高橋社長は会見で「三菱商事と主導権争いをするということではない」と明言。ローソンの社長は引き続き三菱商事の出身者が務め、KDDIは伴走するパートナー役を果たすという。KDDIは新たな親会社として、技術を生かしてローソンをアップデートすることを目指す。
他方、従来の親会社である三菱商事には手詰まり感があった。2017年にローソンを子会社化し、売り場改革を行ってきたが、日販(店舗当たりの1日の売上高)などで王者セブン-イレブンの背中は遠いままだった。
結果的に、三菱商事は、ファミリーマートを完全子会社化した伊藤忠商事とは全く異なる道を選ぶことになった。
次ページでは、三菱商事と伊藤忠のコンビニ事業を比較するとともに、三菱商事が、ローソンを共同経営するパートナーとしてKDDIを招き入れたことの真の狙いを解明する。
「日本版アマゾン」が誕生?KDDI×ローソン×三菱商事TOBの“真の狙い”を考える
コンビニ3位のローソンを、三菱商事とKDDIが共同経営する。KDDIは約5000億円を投じてローソン株式の50%を取得するわけだが、大金をはたいて今回の決断に至った理由は何か。3社連合が目指すのはほかでもない、“日本版アマゾンドットコム”だろう。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
目指すは日本版アマゾンドットコム
2月6日、KDDIはローソンに対するTOB(株式公開買い付け)を発表した。TOBが成立すると、ローソンは非公開化される予定だ。三菱商事とKDDIは議決権を50%ずつ保有し、共同経営パートナーとしてローソンの経営に本格的に参画することになる。
今回のTOBの狙いは、ローソンを小売り×IT×物流を統合した米アマゾンドットコムのような企業に育てることだろう。親会社である三菱商事はマーチャンダイジングと物流を担当し、そこにKDDIの情報通信を結合することで、これまでわが国には見られなかった複合型の業態が出現することになりそうだ。
その上でローソンは、海外展開も強化するだろう。人口減少などで国内需要は縮小均衡する。より多くの需要を取り込むためには、経済成長の著しいアジアを中心とした海外進出を強化することが欠かせない。長期的には途上国に進出し、ネット空間でモノやサービスの取引が完結する業態を目指す可能性もある。
三菱商事、KDDI、ローソンの資本関係のつながりは、業界を超えたアライアンス強化としても注目される。これまでわが国では、グループの中核企業とその関連企業といった“タテ”の関係に基づく事業運営は多かった。一方、今回の提携をきっかけに“ヨコ”の関係を生かした企業戦略の立案と実行が増えていくことに期待したい。業界の垣根を飛び越え、常識や価値観にとらわれない提携こそ日本経済の成長に必要だ。
ローソンが3番手になった理由、買収戦略で格差
現在、国内のコンビニ業界トップはセブンイレブン、第2位はファミリーマート、第3位はローソンの地位がほぼ定着している。コンビニ店舗数の飽和を考えると、ローソンがさらに成長するためには新しい試みが必要不可欠だ。
2001年、三菱商事はローソンの筆頭株主になった。それ以降、ヒト・モノ・カネの面からローソンの成長を強力に支援してきた。一時は、積極的な出店、買収、三菱商事との関係を生かした商品計画とマーケティング戦略などが功を奏し、国内コンビニ第2位に躍り出た。
ローソンは海外戦略も強化し、中国、インドネシア、ハワイ、タイ、フィリピンに出店した。最大手セブンイレブンへの追走姿勢が鮮明になった時期もあった。その背景には、少子高齢化などで国内コンビニ市場の拡大が難しいことが挙げられる。国内で獲得した資金を、成長期待の高い海外事業に再配分することは合理的な事業戦略だ。
しかしその後、ローソンの成長の勢いは鈍化した。18年頃、ローソン全店の平均販売額(1日当たり)はファミリーマートに逆転され、その後は第3位がローソンの定位置と化した。
その要因として、買収戦略の差は見逃せない。ファミリーマートはエーエム・ピーエム・ジャパンを買収し、サークルK・サンクスも統合した。その時点で、コンビニ業界の再編はほぼ完了したといえる。
20年、伊藤忠商事は、ファミリーマートを買収し非公開化に踏み切った。不特定多数の株主の目にさらされなくなったことで、ファミリーマートの事業運営のスピードは一段と加速した。また、コンビニ業界全体でドラッグストアや総合スーパーとの競争が激化した。
ローソンの収益性には、三菱商事もずいぶんと頭を悩ませてきたことだろう。現状を打破するために白羽の矢が立ったのがKDDIだった。一方、携帯電話事業などでNTTの後塵を拝するKDDIとしても、新しい収益源を開拓する必要があったことは明白だ。
三菱商事がKDDIに目を付けたワケ
今後、KDDIによるTOB成立を経て、ローソンは非公開化される。ローソンは、多種多様な株主の意向に配慮する必要がなくなる。ローソンの改革は加速するだろう。
注目すべきは、コンビニ事業と三菱商事の持つ総合商社の機能、KDDIの情報通信の機能が付加されることで、ローソンが日本版アマゾンドットコムのような複合企業を目指す展開だ。成功すれば、わが国において初の企業体になるだろう。
アマゾンドットコムは、グローバルな物流体制、情報通信技術、商品計画などの面で競争力を高め、世界有数のITプラットフォーマーに成長した。近年は新しい収益源を拡充するべく、衛星を用いた情報通信事業の強化に積極的だ。
23年10月、同社は試験衛星の打ち上げに成功した。29年までに3200以上の衛星を打ち上げ、世界規模の高速通信サービスを提供する計画「プロジェクト・カイパー」を進めている。狙いは、世界の消費者が必要とする、あらゆるモノとサービス(動画視聴やクラウド、生成AIなどを含む)の供給体制を構築することだ。
翻って三菱商事は、消費者の欲するモノやサービスの需要と供給をマッチさせる力は高い。物流機能の強化も、総合商社の得意とするところだ。問題は、どのように次世代情報通信面での競争力をグローバルに高めるかである。この点は、他の企業の専門性を取り込まなければならない。
この足りないピースを埋めるため、協働を呼びかけたのがKDDIだった。KDDIは21年、衛星通信サービスのスターリンクを提供する米スペースX(テスラのイーロン・マスク氏が経営トップの企業)と提携している。24年に入ってからは、国内で個人向けにスターリンクを販売するとも発表した。山間部や海上などでも高速ネット通信が可能になる。
三菱商事とKDDIは最先端の情報通信技術を駆使してコンビニ利用者との接点を増やし、より効率的な付加価値創出を目指すという。まさにローソンは、日本版アマゾンとしての成長を目指し始めた。
アジア・新興国への国際展開強化も期待
さらに三菱商事とKDDIは、ローソンの国際展開も強化するはずだ。世界市場におけるローソンの出店数は頭打ちとなっているが、非公開化をきっかけに再度、アジア諸国など成長期待の高い市場で業務拡大に取り組むことになりそうだ。
海外戦略の強化によりローソンの業態変化の可能性も高まる。コンビニだけでなく、ネット通販、教育やエンターテインメント、銀行などの金融サービス、医療(オンライン診療)など包括的なサービスをネット上で完結させる業態変化だ。コンビニはリアルとネットの接点のような存在と化すだろう。
この点でも米アマゾンはモデルケースとなる。アマゾンは一時期、ロボット掃除機「ルンバ」を開発した米アイロボットの買収を目指していた(EU規制当局の承認が得られず断念)。生成AIの普及で世界全体のIoTが加速する展開を見据え、ルンバを家庭向けの生成AIデバイスとして活用する狙いがあった。
三菱商事とKDDIも、そのような大局観をもってローソンの国際展開を目指すべきだ。ローソンには今後、これまでわが国ではあまり見られなかった戦略を実現してほしい。例えば、ローソンの経営に家電メーカーが参画する、海外のIT関連企業と業務面で提携する、世界的な情報通信プロバイダーがローソン経由で高速移動通信サービスを販売する、などだ。
今回の共同経営は、従来の企業グループや業界の垣根を超えたアライアンスが拡大するきっかけになるはずだ。少なくとも、流通業界の常識は大きく変わろうとしている。小売りと情報通信、メーカーと商社などの提携加速、それによる新しい分野のビジネスへの取り組みにつながることを期待したい。
