愛情表現の1つ「犬吸い」「猫吸い」は危険? ペットの犬や猫の体に鼻先をうずめて大きく息を吸う行為に潜む“健康リスク”を専門家が指摘

愛情表現の1つ「犬吸い」「猫吸い」は危険? ペットの犬や猫の体に鼻先をうずめて大きく息を吸う行為に潜む“健康リスク”を専門家が指摘

■ペットから病気をうつされるリスク

 現在、国内でペットとして飼われている犬猫の飼育頭数は犬684万頭、猫907万頭の計1591万頭(一般社団法人ペットフード協会調べ)で、15歳未満の子どもの数1401万人(総務省調べ)より多い。

 家族でもあるペットに対する飼い主の愛情表現の1つとして、最近は犬や猫の体に鼻先をうずめて大きく息を吸う「犬吸い」「猫吸い」といった言葉も見聞きする。

 飼い主にとってはリラックスしたり、幸福感を感じたりする効果があるそうだが、場合によっては、ペットから病気をうつされるリスクがあることをご存じだろうか。「動物由来感染症(ズーノーシス)」という病気だ。

 環境省の「人と動物の共通感染症に関するガイドライン」によると、動物由来感染症は世界で800種あり、このうち日本で問題になっているのは数十種類という。

 動物由来感染症に詳しい北海道大学の苅和宏明教授(大学院獣医学研究院衛生学分野公衆衛生学教室)は、「犬や猫の体に鼻先をうずめて息を吸う行為は、すなわちペットの分泌物を飼い主の鼻の粘膜に入れるということ。病原体が飼い主の粘膜に入る危険性があるので、おすすめできません」と警告する。

 苅和さんが特に気をつけたほうがいいと挙げるのは、「皮膚糸状菌症」「パスツレラ症」「猫ひっかき病」「回虫症」「トキソプラズマ症」の5つの病気だ。

■5つの感染症の原因ときっかけ

 ■皮膚糸状菌症

 皮膚糸状菌症は、皮膚糸状菌という真菌(カビ)が原因の感染症だ。感染した犬や猫、ウサギ、ハムスターなどに触れるだけでうつる可能性があり、特に梅雨や夏の季節に多いという。

 感染すると患部にかゆみをともなった、丸い輪のような発疹が出るほか、頭に感染するとフケが出たり、髪が円形に抜けたりする。人が発症したときは皮膚科で抗真菌薬の塗り薬や飲み薬による治療を行う。

 ■パスツレラ症

 パスツレラ症は、犬や猫などの口の中に主に生息するパスツレラ菌が原因。犬や猫にかまれたり、引っかかれたりすることで感染する。

 「犬吸いや猫吸いで感染する病気ではありませんが、これらの行為は犬や猫にしてみると、ストレスになっていることもありうる。スキンシップを嫌がった犬や猫にかまれたり、引っかかれたりすることで感染することが心配される」と苅和さんは言う。エサを口移しで食べさせたり、顔をなめさせたりすることで、感染することも考えられるという。

 パスツレラ症は、傷ができてから急速に腫れや痛みなどの症状が出るのが特徴。重症化して敗血症(菌が全身をめぐり、さまざまな症状を起こす状態)を発症することもあるため、傷口が腫れてきたらすぐに医療機関を受診することが大切だ。

 ■猫ひっかき病

 猫ひっかき病はバルトネラ菌という菌で生じる感染症。

 人が犬や猫にかまれたり、引っかかれたりすることで、犬や猫の口の中にいるバルトネラ菌に感染して発症する。気づかないまま自然に治るケースが多いが、まれに発熱や頭痛、倦怠感、リンパ節の腫れなどが数カ月間続くこともある。

 パスツレラ症も猫ひっかき病も、心当たりがあったらとにかく早めに医療機関を受診するようにしたい。ちなみに、犬や猫は菌を保有していても症状はない。

 ■回虫症・トキソプラズマ症

 寄生虫が原因となる回虫症やトキソプラズマ症は、人が犬や猫のフンを口や鼻から吸い込むことでうつる(トキソプラズマ症は猫のフンのみ)。

 「飼い主がペットをいくら清潔にしているつもりでも、犬や猫は毛づくろいをするので、その際に寄生虫がおしりの汚れと一緒に毛につくこともある。そこに飼い主が顔をうずめれば、当然ながら感染してしまうことが考えられる」と苅和さん。

 特にトキソプラズマ症の場合、妊娠中に初めて感染した際には胎児にも感染し、流産や小頭症などの危険を及ぼす可能性があるため、用心したい。

■アレルギー発症のきっかけにも

 動物由来感染症に限らず、犬吸い、猫吸いはくしゃみや鼻水などのアレルギー症状をもたらしたり、ぜんそくの原因にもなったりする。

 「せっかく可愛がっているのに、これらの行為のせいで飼い主が動物アレルギーを引き起こしたら元も子もありません。やはり犬吸い、猫吸いは控えたほうがいいでしょう」と苅和さんは話す。

 動物由来感染症は、人だけに症状が出るものもあれば、人にも動物にも症状が出るものもある。こうした病気について正しく知って対応するのはもちろんのこと、人もペットも健康的に生活するために、守るべきルールもある。

 それらについて、苅和さんは以下の8つを挙げる(※外部配信先では表を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。

 苅和さんによると、これらの対策を適切に行えば、過度に動物由来感染症を怖がる必要はないという。

 ただし、子どもや高齢者、がんを患っている人、抗がん薬など免役を下げる薬を使っている人、基礎疾患(高血圧や糖尿病など)がある人などは、重症化リスクがあると考えて、注意してほしいそうだ。

 「何か症状が表れた場合は、発症から1~2週間ぐらい前までさかのぼってみて、ペットにかまれたり、なめられたりしていないかどうかを思い出し、その旨を受診の際に医師に伝えてください」(苅和さん)

■野山にペットを連れて行くときは? 

 最後にこの夏、野山にペットを連れて行く場合の注意点を挙げたい。

 動物由来感染症のなかで近年、とくに増えているのが「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」だ。SFTSはマダニが媒介するウイルス性の感染症で、人が感染すると、発熱、倦怠感、消化器症状のほか、頭痛、意識障害などが見られ、重症化して死亡することもある。

 致死率は約27%と高く、2017年にはSFTSに感染した野良猫にかまれた50代の女性が死亡している。

 人だけでなく動物にも症状が出ることが知られており、なかでも猫が感染すると、重症化しやすいといわれている。

 多くは、人が野山や草むらなどでマダニにかまれ感染するケースだが、上述のようにマダニにかまれて感染した犬や猫に人がかまれて感染することもある。これまでは西日本を中心に増加していたが、東日本にも広がりを見せているという。

 感染対策として苅和さんは、次の点を挙げる。

 これまではSFTSの治療薬はなかったが、幸いにも2024年6月、厚生労働省は抗インフルエンザ薬の「アビガン」をSFTSの治療薬として使用することを承認した。世界初のSFTS治療薬という。

 動物由来感染症はいずれも適切な対策を取れば、発生する頻度は高くない。この病気の性質を理解したうえで、ペットと暮らすことが求められている。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏