いろんな意味で物議をかもしているLUMIX DC-S9の紹介です。仕様でわかることを解説し、例のことについても少し語りました。
00:00 オープニング
00:32 1.大きさ・重さ
02:55 2.お値段(メーカーサイト価格)
03:14 3.シャッター
04:56 4.LUT
06:29 5.ボディ内メカ手ブレ補正
06:53 6.デザイン
07:34 7.その他機能について
08:14 8.買って幸せになれる人
08:47 9.炎上した問題について
LUMIX手振れ補正比較動画【パナソニック公式】
LUMIX S9が炎上している話。
LUMIX S9 発表!そして炎上・・〜Panasonic が Shutterstockの写真利用を謝罪した件と製品・機能紹介ページのさらなる問題点〜
僕がLUMIX S9を買わない理由を忖度なしで話します。
パナソニックさん?何してるんですか? 新しい Lumix S9 フルサイズミラーレスカメラのマーケティングの失敗
【カメラ】LUMIX S9 は癖があるけど面白いカメラ!
【新製品】LUMIX S9が発表でなぜかZfが良いカメラだと再認識した話
「LUMIX S9」炎上を、宣伝広告の裏側から考える 見えてきた世間との認識の“ズレ”
コンパクトなフルサイズミラーレスカメラとして、6月20日発売予定のパナソニック「LUMIX DC-S9」(以下LUMIX S9)がネットで炎上状態となった。
事の発端は、X上で商品の機能説明ページで使用されている写真が、ストックフォトのものではないかと指摘されたことだ。5月28日にはパナソニックから謝罪文が出され、ストックフォトの使用や、S9以外のカメラで撮影した画像が使われていたことが確定的となった。
カメラ機能や効果を説明する公式サイトに掲載された写真なら、そのカメラで撮ったんだろうと思ってしまうのは、まあ、分からないでもない。ただ実際には、製品紹介のサイトで実機撮影の画像を使うのは、スケジュールの面で非常に困難という事情もある。
筆者はライター業の一環として、またライター業になる前から、製品の宣伝広告の仕事を行ってきた。これは裏方の事情であり、一般消費者からすれば「知った事か」という話ではあるのだが、カメラ好きであれば知っておいて損はない、そういうお話しをする。
製品情報ページが出来上がるタイミング
まず分かりやすいように、製品が発売される直前の様子を、時間軸をさかのぼりながらお話しするのがいいだろう。
筆者はカメラレビューもかなり頻繁に行っているが、「一般発売後」にお借りする際には、製品版が手元に届く事になる。一方で「発売前」に実機をお借りする場合は、タイミングによっては最終品同様の梱包で来る場合もあれば、仮の白箱で届くこともある。
白箱の場合はエンジニアリングサンプルなので、マニュアルもなく、レビュー内に「試作機のため、量産品とは仕様が異なる場合がある」等の注釈を入れる事になる。また製品箱に入っていても、メーカー側からここが最終とは異なります的な注意点が同梱されている事もある。到着後にファームアップが必要なケースも多くある。
このようなタイミングでも、すでにメーカーサイト上には製品紹介ページができ上がっていて、そこで製品の特徴や仕様を確認できるようになっている。公式サイトにも情報がないような製品はそもそも未発表なので、メディア側が先にレビューを出す事はない。
こうしたことからもお分かりのように、実は製品情報ページが出来上がるのは、かなり早いタイミングだ。発売日から1カ月前にすでに公式ページがあるということは、ページの制作はそこからさらに2カ月~3カ月前からスタートしており、海外版の翻訳ページを用意したり印刷物も作るとなるとチェックに時間が取られるので、サイト公開の1カ月ぐらい前にはほぼほぼ日本語のページが完成していないと間に合わない。
そうなると、製品情報ページ制作中にはまだ実機がないどころか、エンジニアリングサンプルもまだない、ということになる。当然作例が実機で作れるはずもなく、仕様を元に別カメラで撮影するか、ストックフォトの中から説明に最適なものを探すというのは、まあまあ当たり前に行われる。
気合いが入った製品であればあるほど、こうした宣伝広告はどんどん前倒しで行われるため、どうしても画像は「イメージ」で作らざるを得ないわけだ。また当然最終チェックもかなり厳しく行われるため、一度OKが出たら簡単には変更できない。
今回のストックフォトの写真も、かなり何度も差し替えが行われた結果、公開された現状のものに落ち着いていったのだろう。メーカーの看板商品サイトで、サイト制作会社に丸投げノーチェック、みたいなことは、誤解だ。
製品発売前に登場する製品ページは、メーカーとしては「こうなる予定」を分かりやすく見栄えよく伝えようとしたものだ。昔からカメラ系のサイトをチェックしていた人には、まあイメージだよね、というのは伝わっていたような気がする。実際の作例は、製品発売後に特設サイトという格好で別途公開されるケースが多い。それは最初のサイト公開時には、実動製品が間に合わないからそういう形にならざるを得ないのである。
だが今回大きな騒動になったのは、そうした構造になっているのに気付かず、説明ページの写真だけを見て実機サンプルだと思う人が、実際には相当多くなってしまったということだろう。
メーカー側としては今回の炎上を受けて、こうした認識のズレにあらためて気付かされたところもあるのではないだろうか。各メーカーも自分たちのサイトのチェックを始めているところかもしれない。
これからどうなるのか
実際パナソニックに限らず、他のカメラやレンズメーカーでも、商品説明の画像にストックフォトや別カメラ・別レンズで撮影したものを使っている例は、これまでも相当あると思う。UI画面なんかはあきらかにはめ込み合成だし、なんならUI自体もキャプチャーではなく、Illustratorなどで「描いた」だろうと思われるものもたくさんある。
パナソニックに非があるとするならば、まあストックフォトはないかな、というところである。他社の例では、サンプル写真は自社でオリジナルのものをあらかじめ作って持っている、というケースが多いようだ。クリエイター相手にクリエイティブ商品を売るなら、そこはオリジナルで頑張らないといけなかったところである。まあ実機の絵でないということが罪だというのであれば、罪の重さは変わらないのだが。
ただそういうものを全部洗い出して、メーカーの責任を問うと詰め寄るのもどうなのかなと思う。機能説明も全て実機画像でなければ許されないという風潮になれば、発売前の公式サイトは、プレスリリースみたいなテキストと製品外観写真だけの1枚ペラみたいなものになりかねない。あるいは製品発売が量産2カ月後になるとか。メーカーにとっても消費者にとっても、それはWin-WinではなくLose-Loseだろう。
現在LUMIX S9のサイトには、すべての写真に対して出展を明記したり、「この写真はLUMIX S9で撮影されたものではありません。画像・イラストは効果を説明するためのイメージです」といった注釈が付けられている。
炎上への対応としては今はこうするしかないとは思うが、炎上を知らない人や、数年後に事情が知らない人がこのサイトを見たら、なぜ執拗に別のカメラで撮影していることをアピールしているのか、混乱するのではないだろうか。注釈が多すぎて、少なくともサイト本来の目的である、「情報がスッと入ってくる」状態ではないように思う。
実機で撮影していない写真で機能を説明するのは、景品表示法における「優良誤認」に当たるのではないかという意見もあるようだ。優良誤認とは、消費者庁の説明によれば、「商品・サービスの品質を、実際よりも優れていると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝する行為」とある。
ただ、この実証は難しいだろう。説明写真の状況がS9では絶対に撮れないかというと、おそらくそこまでのレベル差があるとは思えない。一般的に広告宣伝においては、制作時に優良誤認に当たらないかの確認は常に厳しく行われており、メーカー側でも公開前にかなり厳しくチェックしたはずだ。
もともとのサイトでは、サイトの一番下に「画像・イラストは効果を説明するためのイメージです」との注記があり、消費者をだます意図はなかったことは分かるが、目立たないところに小さく書かれていただけで分かりにくかったのも問題があった。
今後同様のページに関しては、サイトの上の方にこの注記をやや大きめのフォントで掲示しておけばいいのではないだろうか。またサイトを見る消費者の側も、ああそういう事情なのね、ということがなんとなく広まって、世の中スムーズに行って欲しいなぁ、というのが筆者の思いである。
一方でS9炎上の遠因は、そこではないという意見もある。パナソニックでは5月半ばに、世界中のカメラ系YouTuberを集めて発表会を行っているが、その際にS9を無償で参加者に提供したようである。「製品提供:Panasonic」の表記があることで、景品表示法的にも問題はないのだが、これに呼ばれなかったYouTuberは不満だろう。それが原因で反S9、反パナソニックという態度になった者は出てくる。そうした風潮に押されてか、S9に対して好意的ではないYouTube動画も多く登場したようだ。
多くのブロガーやYouTuberは、メディア人としてのトレーニングを受けたことがないことから、広告宣伝に利用するのはリスクが大きい。パナソニックも招待する人は慎重に選んだのだろうが、招待されなかった側のコントロールはできない。これはこれで、マーケティングの失敗であろう。
今回の騒動により、LUMIX S9は発売前からだいぶケチが付いてしまったといえる。今後さまざまな実機レビューが出てくると思うが、広告・マーケティングの失敗を、カメラへの評価そのもので責任を取らせるのは違うだろう。カメラとしての中立なレビューに期待したいところである。
パナソニックが炎上した有料画像問題 利便性の裏にリスクも 「20年以上前の感覚」でサイト作成
パナソニックのミラーレス一眼カメラ「LUMIX DC-S9」のサイトに掲載されていた写真。有料画像サイトから使用許諾を得たもので、新製品で撮影した写真ではなかった
パナソニックがミラーレス一眼カメラなどのサイトで、自社製品で撮影していない有料画像を多用していたことが発覚し、問題となっている。カメラの作例と受け取られかねない使用例もあり、「性能を誤認させる」との批判の声が上がる。「ストック画像」と呼ばれる有料画像は、その手軽さから今や企業の広告・宣伝で欠かせない存在となっているが、過去に問題となった事例もある。業界関係者は「使用する際は『正直であること』を意識する必要がある」と指摘する。
5月下旬、パナソニックのミラーレス一眼カメラの新製品「LUMIX DC―S9」のサイトに他社製カメラで撮影された有料画像が使用されていることが交流サイト(SNS)上で指摘され、炎上する事態となった。ほかの製品でも有料画像が多用されており、一部のレンズの性能を訴求する項目では、当該製品では撮影できない、他社製の望遠レンズで撮影した画像が掲載されていた。パナソニックの担当者は「20年以上前の感覚でサイトを制作していた」ことが原因とした。
パナソニックは「ストックフォトの不適切な利用があった」と謝罪し、現時点で削除や差し替えが必要な画像は計68件、注釈などの追記が必要な画像は計51件あったと発表している。
ストック画像は、さまざまなシチュエーションに合わせてあらかじめ撮影・作成された画像で、使用料を支払うことで広告・宣伝などに利用できる。かつてはフィルムを郵送してやりとりをしていたが、インターネットの発達によって24時間いつでも安価に画像を入手できるサービスが2000年代ごろから登場。提供される画像は、一定の水準をクリアしていれば誰でも登録でき、1枚数百円程度から使用できるため、爆発的に拡大した。
調査会社のグローバルインフォメーションによると、ストック画像や動画などを含むビジュアルコンテンツ市場の規模は、2023年に169億1千万ドル(約2兆6600億円)と推定され、30年には584億1千万ドルに達すると予測されるという。
コストも時間も節約できるストック画像を企業はこぞって活用する一方で、問題となる事例も散見される。
19年に世界最大級の国際広告祭「カンヌライオンズ」で受賞した韓国の自動車メーカー、ヒョンデ(現代)の広告が、ストック画像を使用しており物議をかもした。運転中のメールの無意味さを啓発するために特定の速度で走行中に絵文字がどのように見えているかを示したという広告だったが、実際は有料画像を若干加工しただけだったため、独自性に疑問が呈された。
画像を提供する側のモラルが問われるケースもある。23年にソニーネットワークコミュニケーションズの光回線「NURO光」が広告に使用したイラストが、作者に無断で有料画像サイトに登録されていたものだったと判明。同社は作者に謝罪し、広告を削除することになった。
ストック画像サービスの国内最大手「PIXTA(ピクスタ)」で広報を担当する小林順子氏は「単に楽だから使うのではなく、誤解を与えないような使い方をする必要がある」と指摘する。同社ではストック画像を利用する場合には支払い完了までに複数回にわたって使用上の注意を表示する。また、画像を提供する側は、著作権などに関するテストをクリアしなければ登録できない仕組みになっている。
小林氏は「ストック画像は広告や宣伝に欠かせないものになっているからこそ、適正な利用を心がけてほしい」と話す。