型式指定制度における完成検査の改善・合理化の方向性中間とりまとめ
令和2年4月21日完成検査の改善・合理化に向けた検討会
【参考資料1】「適切な完成検査を確保するためのタスクフォース」中間とりまとめ(平成30年3月20日)(抄)
【参考資料2】「完成検査の改善・合理化に向けた検討会」委員名簿
はじめに
自動車製作者が製作した自動車について、道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号。以下「保安基準」という。)への適合性を確認する完成検査の歴史は、道路運送車両法(昭和26年法律第185号)が制定された昭和26年にまで遡るものである。
この完成検査を含め、自動車製作者が行う一連の品質管理は、自動車の安全・環境性能、さらには商品性を製作時点のみならず、ユーザーが使用する過程においても継続的かつ確実に担保する上で非常に重要なものである。
しかしながら、平成29年秋以降、複数の自動車製作者において、無資格者による完成検査や燃費及び排出ガス測定のデータの書換え等の完成検査における不適切な取扱いが相次いで発覚した。
これを受けて、国土交通省では、「適切な完成検査を確保するためのタスクフォース」を設置し、平成30年3月に中間とりまとめを行い、本とりまとめの内容等に基づき、同年10月の省令改正等により、完成検査員の選任をはじめとする完成検査に関するルールの法令化等の措置を講じた。さらに、令和元年5月には道路運送車両法の一部を改正し、不適切な完成検査に対する是正措置命令の創設等の措置を講じたところである。
また、本とりまとめにおいて、「今後における一層の自動車技術の高度化、生産技術の変化、検査技術の進展等を踏まえ、完成検査の改善・合理化を含め、生産される自動車の保安基準適合性の確保のあり方について継続的に見直しを行う」とされた。今後、人口減少の進展に伴い、完成検査員の確保がより一層困難となることが予想される中、生産性を向上させるとともに、市場における不具合発生状況を改善していくことが求められている。そのためには、新たな生産・検査技術を積極的に活用することにより、完成検査を含めた自動車の品質管理の改善・合理化を促進し、完成検査員の負担の軽減及び品質管理の一層の向上を目指すことが必要である。
これらを踏まえ、国土交通省自動車局では、有識者及び関係団体の代表者から構成される「完成検査の改善・合理化に向けた検討会」を平成31年4月に設置し、これまで4回にわたり議論を行った。
本中間とりまとめは、本検討会における全4回の議論を踏まえ、最近の自動車の生産・検査技術を含めた自動車関連技術の進展等を踏まえた完成検査の改善・合理化を中心に今後の自動車の品質管理の方向性について提示するものである。
第一章自動車型式指定制度における完成検査の位置づけとあり方
第一節完成検査の位置づけと必要性
自動車型式指定制度は、同一の規格で大量に生産される自動車における国の新規検査の合理化を図り、かつ、新たに運行の用に供される自動車1台ごとの保安基準適合性を確実に確保するためのものとして、道路運送車両法(以下「法」という。)第75条に規定される制度である。自動車製作者等は、型式を受けた自動車(以下「型式指定車」という。)を製作等した場合において、当該車が保安基準に適合しているかどうかを1台ごとに検査し、適合すると認める場合には完成検査終了証を発行することとされている(同条第4項)。このため、当該車の新規検査時においてこの完成検査終了証の提出をもって現車の提示を省略することができることとされている(法第59条第4項において準用する法第7条第3項第2号)。
このように、型式指定車について自動車製作者等が行う完成検査は、国が行う新規検査(法第59条)に代わり、当該車の保安基準適合性を1台ごとに確認するものである。また、完成検査における保安基準に適合しない車両の検出をきっかけとして、リコールに至る事例も確認されていることも踏まえれば、完成検査は、型式指定車の保安基準適合性を確保するために必要不可欠である。
型式指定制度・完成検査制度の概要
•大量に生産される自動車については、一台毎に行う新規検査の代わりに、サンプル車両及び書面での審査を通じ、「型式指定」を行う。
•この「型式指定」を受けた車両について、自動車メーカーが完成検査を実施することにより、国の一台毎の新規検査が省略される。(完成検査終了証の提出により登録手続きが完了し、使用可能となる。)
•この完成検査は、自動車メーカーが型式指定を受けた車両と均一な車両を製作することを担保するために出荷前に自動車メーカー自らが安全・環境基準に適合していることを確認するもの。
型式指定制度の内容
車の使用までの流れ
量産準備生産・出荷販売使用
型式指定車(大量生産車)
自動車の型式指定
生産
完成検査(出荷前検査)
出荷
販売
運行可能
運行可能
A国土交通大臣による型式指定
■基準適合性審査
•サンプル車両及び書面による審査
■品質管理体制の審査
•均一な自動車製作の体制の審査
B自動車メーカーによる完成検査
•自動車メーカーの完成検査員による基準適合性の確認
•合格の場合「完成検査終了証」の発行
なお、欧州においても、車両の新規登録に当たっては、EU規則Regulation(EU)2018/858に基づく「欧州車両型式認証制度(EU-WVTA)」の下で、自動車製作者等が当局の確認を受けた品質管理規程に従って型式認可を受けた自動車の基準適合性を1台ごとに確認し、適合証(CertificateofConformity)を発行することとされており、我が国と同様の規制体系となっているところである。
第二節完成検査の基本的なあり方
国は、自動車製作者等から申請のあった車両型式について、提示されたサンプル車の保安基準適合性に加え、完成検査の実施要領を含む当該車両型式に係る品質管理の適切性をあらかじめ確認したうえで、その型式を指定している。また、自動車製作者等は、型式指定車の保安基準適合性等を確保するため、申請時に届け出た完成検査の実施要領等に従った完成検査及び検査結果の記録・保存等を確実に実施しなければならないこととされている(自動車型式指定規則(昭和26年運輸省令第85号)第7条)。
しかしながら、その際、具体的に当該車に対しどのような検査方法を適用するのか(抜取検査の導入、検査機器の選定等)といった完成検査等の詳細な実施方法については、「自動車型式認証実施要領について(依命通達)(平成10年自審第1252号)」において、従来より国がその基本的な考え方が示されている。その一方、本実施要領では同時に、この考え方にとらわれることなく、自動車製作者等の独自の検査方法により完成検査を行うことについても、その方法が適切なものである限りにおいて認めている。また、昨今の一連の不適切な完成検査事案を受けた完成検査に関するルールの規範性向上を含む完成検査制度の見直し後においても、完成検査の具体的な実施方法を国が法令等において画一的に規定していないところである。
この考え方は、生産車両の生産体制や生産・検査等の技術や知見のレベル、さらには生産する型式指定車の仕様等に応じて品質管理の手法が自動車製作者等ごとに異なる実情を踏まえたものである。今後とも、適切に品質管理が行われることを前提として、自動車製作者等が各社の状況に応じて最適な完成検査の実施方法や完成検査員の教育システム等を柔軟に導入することを可能とするためには、引き続き、この考え方を踏襲すべきである。
第二章完成検査の高度化
第一節自動化検査の導入促進
自動車検査用機械器具により自動で行う完成検査(以下「自動化検査」という。)については、平成30年10月における自動車型式指定規則の一部改正等により、申請可能であることが明確化されたところである。
また、図2に示すように、近年、生産年齢人口の減少、労働者の働き方の多様化が
進み、人材の確保が困難となりつつある中、図3に示すような自動運転技術をはじめとする先進安全技術の急速な搭載拡大等に起因する品質管理作業の増加が進みつつある状況である。そのような中、自動化検査は、完成検査員不足への対応や完成検査の合理化のみならず、より精緻な作業管理による品質管理の一層の高度化や完成検査等における不適切な取扱いの防止にも資することが期待されている。
一方、現行の法令では、完成検査は完成検査員が実施することとされている(自動車型式指定規則第7条)ことに加え、「自動化検査」の定義や自動化検査の導入が可能な具体的な要件が必ずしも明確ではないことが、自動化検査の導入促進に当たっての課題となっている。このため、自動化検査の導入に当たり、当該検査が完成検査員による保安基準適合性の判定を含めた従来の完成検査と比較して同等以上であることをどのように確保するかといった観点から、必要な要件を整理する必要がある。
完成検査は、一般的にi)認知(検査内容の把握)、ii)準備(事前準備・試験条件の設定等)、iii)検査の実施(検査作業・データの測定)、iv)判定(検査の実施方法・検査基準に対する合否判断)、v)記録(検査結果の記録)のプロセスに大別されることから、本報告書では、自動化検査を「少なくとも上記iv及びvのプロセスが自動化された完成検査」と定義した上で、当該検査の導入に向けた基本的な方向性を整理した。
図2生産年齢人口の変化率(2015年~2030年)(出典)日本は、総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口
(平成24年1月推計)」、他国は、JIL「データブック国際労働比較2016」により作成。
図3運転支援技術の普及状況(国土交通省調べ)
そのうえで、自動化検査が完成検査員による保安基準適合性の判定を含めた従来の完成検査と比較して同等以上であることを担保する観点から、自動車製作者等が導入する自動化検査については、少なくとも以下に掲げる要件を満足することが必要と考えられる。
1判定精度の確保保安基準適合性の判定に当たり、検査結果が基準を満たしていない場合はもと
より、検査対象のラベルにエア噛みやしわがあった場合等基準を満たしているかどうかを確実に判断することが困難な場合において、基準適合と判定しないことを確保する措置を確実に講じること。
2設備異常の検出及び自動停止保安基準適合性の判定システムをはじめ、自動化検査設備に異常が生じた場合
において、当該設備が自動的かつ確実に停止するとともに、人(当該設備の管理責任者等)に判断を委ねること。
この場合において、何をもって設備に異常が発生しているものとするかどうかについては、自動車製作者等が当該設備の機能や仕様等に応じて適切な指標を設定すべきである。その際、少なくとも、以下のいずれかに該当する場合には自動で停止することにより、自動化検査設備における異常の発生が直ちに保安基準に適合していない車両の市場流出に繋がることのないよう、自動停止に係る指標が設定されるべきである。
・検査精度に影響する設備の条件(油圧、空気圧、温度等)が管理値を外れることにより、当該設備が確実に検査を実施できない場合
・設備の接続先におけるシステムエラー等の外的な要因により、当該設備が正常に作動できない場合
3検査結果の記録・分析自動化検査設備による保安基準適合性の判定結果を、事後検証可能な形で確
実かつ自動で電子的に記録し分析すること。
4自動化検査の管理責任者の選任、管理要領の策定自動化検査の管理責任者を選任するとともに、当該責任者の下で、あらかじめ定
められた設備の保守管理要領に従って、当該設備の設定、点検、整備等を定期的に行うとともに、その実施状況を事後検証が可能な形で確実に記録すること。
この場合において、自動車製作者等は、当該設備の設定、点検、整備等の管理に係るマネジメントを適切に実施するために必要な知識及び能力を有する者として、管理責任者を選任する必要がある。
なお、将来的な自動化の実現が見込まれる完成検査項目の例としては、
・短期的なものとして、完成検査員が視覚により実施している検査(例:車台番号の打
刻、タイヤサイズ、インジケータの点灯確認その他の仕様確認)等
・中長期的なものとして、完成検査員が聴覚・嗅覚・触覚により実施している検査(例:
エンジン異常音の確認等)や統計的手法を用いた検査(諸元・排出ガスの測定等)等1
がそれぞれ想定される。ちなみに視覚による完成検査については、画像処理技術を活用した早期の実用化が期待されているところ、仮にこれが実用化された場合、完成検査項目全体に占める自動化の割合は6割程度となる。
1一部構想段階のものを含む。
国は、これらの方向性を踏まえ、自動車製作者等の協力の下、必要に応じ、工場ライン等を活用した実証実験を行い、「判定精度の確保」、「設備異常の検出及び自動停止」、「検査結果の記録・分析」、「管理責任者の選任・管理要領の策定」等の観点から自動化検査の導入に当たっての基本的な要件を整理するとともに、その効果評価を行う必要がある。
なお、AIを活用した自動化検査の導入にあたっては、上記の基本的な要件に加え、図4に示す「AI利活用ガイドライン2(令和元年8月AIネットワーク社会推進会議)」における原則を踏まえ必要な要件を整理する必要がある。
第二節工程内検査の運用
車両の組立工程において行う完成検査(以下「工程内検査」という。)についても、自動化検査と同様、平成30年10月における自動車型式指定規則の一部改正等により、申請可能であることが明確化されたところであり、そのイメージを図5に例示する。
図4 AI利活用ガイドラインの概要
これまで車両完成時において実施していた完成検査を、組立工程における工程内検査で代替するに当たっては、組立工程時と車両完成時で組付状態等の変化が生じないように、品質保証が体系的に確立されていることが必要である。なお、この場合において、品質保証を体系的に確立することにより工程内検査を導入することが可能な検査項目としては、例えば、タイヤの取付け、配線・配管の嵌合等における各部品の組付状態の確認等が考えられる。
また、この場合の工程内検査は、完成検査として位置付けられるものであることから、引き続き、自動車製作者等において必要な知識及び能力を有する者のうちからあらかじめ選任された完成検査員が実施すること、又は前節の要件に適合する自動化検査によって実施することが必要である。
国は、自動車製作者等とも連携しつつ、当面、工程内検査の導入事例に関し、情報共有を進め工程内検査を周知するとともに、上記の考え方に基づく型式指定制度の適正な運用に努めるべきである。
第三節 先進安全自動車の完成検査のあり方
自動運転技術等の先進安全技術については、乗用車等に備える衝突被害軽減ブレーキなど、既に基準が策定されたものがある一方、自動車製作者における開発・実用化や国による基準の策定が今後進んでいくことが想定されるものもある。
今後、開発や基準化の策定が進む先進安全技術を搭載した自動車(以下「先進安全自動車」という。)の完成検査については、既に実用化や基準化の策定がなされたものに関する検査に比べて、その実施方法等について統一的な考え方をあらかじめ整理しやすいと考えられる。ただし、最新の先進安全技術については、開発に当たっての設計思想や当該技術を搭載したシステムの複雑さが各社で異なることにより、その品質管理に対する考え方も同様に各社で異なる3ことも想定される。
このため、先進安全自動車の完成検査のあり方については、今後の各社における技術開発や基準の策定に関する動向等を踏まえ、継続的に検討することが望ましい。
第三章品質管理制度・手法の改善
第一節国際調和の観点からの型式指定制度等のあり方
(1)国連の車両等の相互承認協定(1958年協定)
自動車製作者等が完成検査の実施方法を定める際の前提となる保安基準について、国土交通省では、国連の「車両並びに車両への取付け又は車両における使用が可能な装置及び部品に係る調和された技術上の国際連合の諸規則の採択並びにこれらの国際連合の諸規則に基づいて行われる認定の相互承認のための条件に関する協定」(以下「1958年協定」という。)に1998年に加入した。この協定に基づく規則(以下「協定規則」という。)を積極的に国内採用するなど国際調和を進め、令和元年
2既に乗用車において実用化されている衝突被害軽減ブレーキ等の品質管理については、サプライヤーを通じたカメラ・レーダー等のセンサー単品での品質管理に加え、ターゲット等を用いたエーミングを実施している点は各社で共通しているが、これらに加えて、工場ラインやテストコースにおける動作確認まで行っている自動車製作者もあるなど、全体として各社でバラツキがある。
1958年協定(2017年改正概要)
(目的)製造の適合性に関する手続は、製造された全ての車両、装置又は部品の認可された型式への適合を確保することを目的とする。
手続きには、品質管理システムの評価、製品管理の検証が不可分で含まれる。
1.品質管理システムの評価
2.製品管理の検証
○認可当局は、国連型式認可を行う前、車両、装置又は部品が認可された型式に適合して製造されるよう効果的な管理を確保するために満足すべき措置及び手続きが存在することを確認。
○上記の要件は、認可当局が確認。認可当局は、1.品質管理システムの評価及び右記2.製品管理の検証で示される要件を満たす場合には上記要件を満たすものとする。ISO9001で代替可なのは1.のみ。
○1.の評価指針:ISO19011:2011○認証の有効性又は範囲に係る変更の場
合、製造者は当局に通報することを約束
(1)認可当局○管理計画書の確認
・継続的な適合性確認に必要とされる検査(協定規則で定められる検査を含む。)
・検査頻度(2)認可を受けた者
○管理計画書の策定・維持○検査結果の記録○検査結果の分析○不適合時の措置等
下線部:改正部分(追加)
○認可当局は、各製造施設での適合性の管理方法を確認可・左記1.及び2.の効果・確認頻度は、ISO31000(リスクマネジメ
ント)に基づく間隔、最低でも3年○認可当局の監査官は、検査結果の記
録を利用可能○監査官は、抜き取り監査を実施可等
図71958年協定における品質管理に関する規定の概要
3.継続的な検証
12月時点において、全体で153項目ある協定規則のうち86項目を採用するまでに至っている。これにより、自動車製作者等による車両の品質管理手法についても、統一化が進みつつあるところである。
品質管理の認可について、1958年協定においては、「認可当局は、国連型式認可を行う前に、車両、装置又は部品が認可された型式に適合して製造されるよう効果的な管理を確保するために十分な措置及び手続が存在することを確認する」旨規定されているものの、具体的な認可要件については、認可当局に任されている。1958年協定の2017年改正においては、認証の国際的な信頼性を向上すべく、当該協定における品質管理の要件について、引き続き一義的には認可当局に任されているものの、認可要件の考え方の明確化が図られたところである。具体的には、従来の協定においては、ISO9001で認可要件を代替する義務がある旨規定されていたが、当該改正において、「1.品質管理システムの評価」と「2.製品管理の検証」の2つが不可分であることが明確化され、1.及び2.の内容が含まれていれば認可要件を満たすものとするとともに、1.についてはISO9001で代替可能としても良い旨改正されたところである。また、2.については、認可当局は、管理計画書(必要と考えられる検査、各協定規則で定められる検査を含む。)の存在を確認し、当該計画書について製造者と当局間で合意をする必要がある旨規定されており、認可保有者については、検査結果の分析や、検査における不適合品検出時の措置等を講じる必要がある旨規定されている。
さらに、認可後、認証の有効性又は範囲に係るような変更があった場合に認可保有者は認可当局に通知するとともに、認可当局はISO31000(リスクマネジメント)に基づく間隔(最低3年)で確認する旨規定されている。
(2)欧州
欧州では、車両の新規登録に当たり、EU規則Regulation(EU)2018/858に基づく欧州車両型式認証制度の下で、自動車製作者等が、認可当局の認めた品質管理手法に従って型式認可を受けた自動車の基準適合性を1台ごとに確認し、適合証(CertificateofConformity)を発行することとされている。
また、型式認可を受けた車両1台ごとに対する上記の基準適合性確認については、自動車製作者等において必要な知識及び技能を有する者のうちから予め指名された者が実施することとされている。そのほか、事後的な監査においては、認可当局が、書面、ヒアリング、生産ラインからの定期的な抜取り等の方法により、必要に応じて随時実施することが可能とされているなど、欧州の型式認証制度は、基本的に我が国と同様の規制体系となっている。
一方、EU規則Regulation(EU)2018/858に基づく型式認可における品質管理については、欧州指令2007/46/ECをもとに制定され、1958年協定の2017年改正を踏まえ、認可要件として、「1.品質管理システムの評価」と「2.製品管理の検証」が一層明確化された。また、従来の欧州指令においては、ISO9001を取得している場合、1.の代替方法として自動的に認められていたが、今回の改正では代替方法として認めるか否かは認可当局の判断に委ねられる旨に改正されたところである。なお、2.については、上記(1)の1958年協定と同様に、認可当局は、管理計画書(必要と考えられる検査、各協定規則で定められる検査を含む。)の存在を確認し、当該計画書について製造者と当局間で合意をする必要がある旨規定されており、認可保有者については、検査結果の分析や、検査における不適合品検出時の措置等を講じる必要がある旨規定されている。
実際、欧州諸国での認可における申請書面の詳細に関しては、各欧州諸国の認可機関で異なるものの、「1.品質管理システムの評価」に必要な品質マニュアル、「2.製品管理の検証」の一部である管理計画書は必要な確認事項となっている。さらに英国の認可当局においては、提出書面に対する変更が計画的な方法で行われることを確保するための「変更管理手順」の適切性をあらかじめ認可当局が確認することにより、型式認可後における品質管理手法に関する届出書面の変更手続きを要さないこととされている。
(3)米国
米国では、型式認証制度の対象が排出ガスに係る規制のみとなっているなど、規制・認証制度が我が国と大きく異なる部分がある。具体的には、型式の認証後においては、排出ガス規制への適合性に関する出荷時の検査を自動車製作者等ではなく米国環境保護庁(EPA)が自ら実施することとしている等、規制の強度が一定程度異なる部分はあるものの、監査の実施形態に関しては、我が国や欧州の型式認証制度との間に大きな相違はない。また、安全に関する規制についてはいわゆる「自己認証」であり、自動車製作者自
らが米国法規への基準適合性を保証し、その旨のラベルを車両に添付することとされている。しかしながら、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、市販されている車両に対する抜取検査を実施しており、基準適合性が確保されていない場合、自動車製作者はリコールを含む市場措置を求められることとなるため、我が国の自動車製作者においては、米国で販売する車両についても、日本国内で販売する車両と同等の水準の品質管理を適用することにより、米国法規への基準適合性を確保している。
(4)中国
中国においては、国家市場監督管理総局(SAMR)及びその傘下の国家認証認可監督管理委員会(CNCA)から発布される規則等に基づく型式認証制度が存在する。自動車の型式認可にあたっては、あらかじめ、シートベルトや安全ガラス等の一部の装置に係る認証を取得することが義務づけられているなど、日本の認証制度と一部異なる点が存在する。しかしながら、当局に対し製品の品質を保証する計画の承認を受けなければならず、更に出荷時においては、1台ごとに検査を実施し品質を保証する証明書を交付しなければならないなど、日本と概ね同様の制度となっている。
(5)今後の型式指定制度等のあり方
我が国の型式指定制度においては、型式指定時において、1958年協定に規定する「1.品質管理システムの評価」及び「2.製品管理の検証」それぞれに該当する書面の提出を求めている一方、自動車型式指定制度においては、欧州において広く認められているISO9001による1.の代替は認められていない等ISO9001の活用範囲が欧州と異なっている。また、協定規則に規定されている検査方法を含む書面の提出は求めていないことや、検査結果の分析及び不適合品検出時の措置についての要件が存在しないことが欧州との相違点として挙げられる。
以上に述べた1958年協定及び欧州指令の改正や欧州諸国の状況を踏まえ、日本の認証制度を引き続き信頼性高く合理的なものとしつつ、国際的な調和にも配慮して、自動車型式指定及び装置型式指定制度等の見直しを検討する必要がある。
具体的には、型式指定時における品質管理に係る要件に関し、1ISO9001などの国際規格の活用範囲の見直し、2協定規則に基づく検査の実施の明確化、3検査結果の分析及び基準不適合車両検出時の措置等の製品管理の検証に関する要件の導入について検討し、必要な措置を講ずる必要がある。
第二節届出の簡素化
我が国の型式指定制度では、型式指定後において、品質管理手法に係る申請書
図8自動車型式指定規則第6条に基づく変更届出の割合及びその内訳(平成30年度)
面の内容を変更したときは、自動車製作者等は、自動車型式指定規則に基づき、当該変更事項を国に遅滞なく届けなければならないこととされている。この変更届出の対象となる届出事項は多岐にわたっており、我が国において型式指定を受けている自動車製作者等が1年間に行う総届出回数は平成30年度実績で約600回に上るなど、類似の型式認証制度を運用する欧州と比較して行政手続に係る自動車製作者等の負担が大きいとの指摘がある。
このため、自動車製作者等における品質管理手法の適確な変更が担保されることや、型式指定監査の効率的な実施への影響が限定的であること等が担保されることに十分留意しつつ、自動車製作者等における負担の軽減を図るため、我が国の届出制度の見直しを行うこととすることが適当である。
具体的には、欧州の認可機関で取り入れられている「変更管理手順」を新たに我が国の型式指定制度における届出事項に位置づけることにより、当該管理手順に従って届出事項の変更管理を確実に実施する義務を自動車製作者等に課すこととする。そのうえで、自動車製作者等による品質管理や国による型式指定監査の適確な実施に直接的な影響を及ぼすおそれのないものとして、1完成検査の実施順序を記した図面(ライン工程図)、2完成検査結果の記録様式(チェックシート)及び3自動車検査用機械器具一覧表に係る届出事項については、変更時における国への届出を要さないこととする。
なお、これらの見直しにより、自動車製作者等による品質管理手法に係る届出書面の件数が4割程度削減されることが見込まれる。
また、これらの見直しにあたっては、自動車製作者等における品質管理水準の維持等に万全を期す観点から、国においては、当面の間、変更管理手順に基づく適切な品質管理が行われているかどうかを型式指定監査時に重点的に確認し改めて評価するなど、必要な対応を行うことが適当である。
第三節市場情報を活用した品質管理の精緻化
近年の自動車技術の急速な電子化・高度化に伴い、自動車の構造が複雑化する中で、自動車製作者等において、不具合の原因究明及びその後の改善措置の迅速な実施や、同種不具合の再発防止の徹底を図ることが重要である。
一方、自動車のコネクテッド技術をはじめとする情報通信技術(ICT)の進展に伴い、自動車製作者等が、使用過程車における走行データや不具合情報等を無線回線の活用等により容易に収集することが可能となっており、これらの情報の幅広い活用が見込まれているところである。
こうした状況に鑑み、使用過程車から収集した走行データ等を活用し、完成検査を含む出荷前における自動車の品質管理の更なる精緻化や型式指定監査の合理化の可能性について、これら技術の進展や普及状況等を踏まえつつ、国及び自動車製作者等の関係者によって継続的に検討することが望ましい。
第四節監査の合理化
型式指定を取得した自動車製作者等に対しては、完成検査の的確な実施をはじめ品質管理が適切に実施されているかについて、認可当局である国土交通省が従来から定期的に自動車製作者の生産工場等に立ち入り、監査を実施している。
今般、平成28年に起きた自動車メーカーによる型式指定審査における燃費試験の不正行為を踏まえ、従来の監査に加え、生産ラインからの実車抜き取り確認を追加するとともに、不適切な完成検査事案を踏まえ、無通告監査を実施するなど、随時監査の強化を図ってきたところである。
一方、前節において述べたとおり、技術の進展に伴い、自動車製作者等が、使用過程車における走行データや不具合情報を容易に収集できるようになっているとともに、完成検査結果に関する記録の電子化が普及しつつある状況である。このような進展状況を踏まえ、監査について、これらのデータや電子的な記録を活用してより効率的かつ効果的に品質管理の適切性を確認する手法を検討することが望ましい。
さらに、監査の合理化の検討にあたっては、1958年協定を踏まえつつ、国際的な信頼性をより一層向上すべく、自動車製作者等に対するリスク評価をさらに精緻化するとともに、当該評価結果に応じた監査となるよう検討することが望ましい。
おわりに
自動車型式指定制度における完成検査は、自動車製作者等が国の行う新規検査に代わるものとして、その生産した車両の保安基準適合性等を1台ごとに確認するものである。このため、自動車製作者等にあっては、完成検査の役割・重要性を肝に銘じ、先般の「適切な完成検査を確保するためのタスクフォース中間とりまとめ」の内容を踏まえるべきである。その上で、経営層・管理者層から現場の各完成検査員が完成検査の意義を正しく理解し、会社全体としてコンプライアンスの徹底を図ることで、適切な完成検査の実施に取り組む必要がある。特に、実際の完成検査実務に携わらない経営層・管理者層においては、完成検査に対し自動車製作者等が担う責任の重大さを十分認識し、組織管理や人材育成等を通じてその責務を全うすべきである。
一方、近年における生産年齢人口の減少に伴う労働者の多様化や、先進安全技術の自動車への急速な搭載拡大等による品質管理作業の増加が進む中で、将来にわたり、自動車の安全確保・環境保全に不可欠な「完成検査」をはじめとする品質管理が適切に行われることを確保する必要がある。
こうした背景を踏まえ、本検討会では、完成検査の重要性、適切な完成検査の実施を前提とした自動車製作者等における自主性の尊重、自動車の生産・検査技術を含む自動車関連技術の進展への柔軟な対応を可能とする制度の構築を目指すこと等の共通認識を得た。また、そのような認識の下、主に自動化検査及び工程内検査の導入促進、届出制度の簡素化等の観点から全4回にわたり議論を重ね、完成検査の改善・合理化を中心に今後の自動車の品質管理の方向性を示した。国及び自動車製作者等の関係者が一丸となって、本中間とりまとめに基づく取組みを推進することにより、技術進展や社会状況の変化に応じた自動車の品質向上及び制度の国際調和が図られ、より一層安全・安心な社会を実現することが期待される。
参考資料1
「適切な完成検査を確保するためのタスクフォース」中間とりまとめ(平成30年3月20日)(抄)
第3章適切な完成検査を確保するための見直し
2.講ずべき措置の内容
I.完成検査の確実な実施のための見直し
(3)技術進展等に対応した完成検査の改善・合理化の促進
自動車メーカーの品質管理では、自動車技術の進展や検査技術の自動化・高度化に応じた手法や、製造・組立工程で作り込み、下流工程に不良品を流さない手法を導入している実態がある。また、今後の一層の技術進展等を見据えれば、実施要領別紙1の「完成検査の実施の方法」で定める方法によらない、新たな完成検査の方法の開発・採用による検査の改善・合理化の促進等、検査方法の更なる改善が想定されるところである。これらに対応するため、以下の措置を講ずる。
[措置]自動車技術の進展や品質管理の実態に対応した完成検査の方法の改善に向けた自動車メーカーの取組を可能な限り促進する観点から:
国は、以下を法令で明確化する。・自動車メーカーは型式指定の申請時に完成検査の方法を示した書面を添付すること(抜取検査や検査の自動化、工程内検査を含めた新たな完成検査の実施方法も申請可能。この場合、これらの方法で確認できる完成検査の項目等を示す必要がある)
・自動車メーカーが当該書面に記載された完成検査の方法を変更した場合には、変更届出の対象となること
国は、型式指定を行う際、完成検査の方法について、自動車メーカーより事前に説明を受け、その妥当性の確認を行うとともに、自動車メーカーが完成検査の方法を変更した場合も同様に確認を行う。
[期待される効果]検査の自動化や工程内検査の活用等自動車技術の進展や品質管理の実態に対応した、検査の改善・合理化に資する新たな完成検査の方法の採用が、国による妥当性の確認を経て、可能となる。
