言語の壁をぶっ壊すAI AppleのCM動画批判は「日本から英語で」始まった
ITmedia NEWS Weekly AccessTop10(5月11~17日)
1 複数のLINEスタンプを組み合わせて送れる「スタンプアレンジ機能」
2 暖房器具メーカーが作った「焙煎機能付きコーヒーメーカー」が20年も売れ続けている理由
3 太陽フレア、3日間で5回の“Xクラス” NICT「早ければ10日午後6時ごろから影響」
4 オカンも困惑「LINE Keep終了」 もうちょっと親切に告知できないものか……
5 太陽フレアを頻発してオーロラの原因となった黒点は「地球が横に30個並ぶ大きさ」──「ひので」観測に成功
6 PayPayで障害発生、「決済できない」報告相次ぐ ランチの時間帯を直撃【復旧済み】
7 「東京駅開業100周年記念Suica」は26年3月末で失効 JR東が告知 「427万枚中、250万枚が未利用」
8 「LINE Keep」終了へ 自分専用トーク「Keepメモ」は継続
9 世界的に炎上したAppleのCM「Crush!」は、なぜ日本から“クラッシュ”したのか
10 「iPad Pro」は高すぎ…… という人のために「iPad Air」は選択肢になりうるか 新モデルを先行レビュー
ITmedia NEWSにおける1週間の記事アクセス数を集計し、上位10記事を紹介する「ITmedia NEWS Weekly Top10」。今回は5月11~17日までの7日間について集計し、まとめた。
先週のアクセス1位は、複数のLINEスタンプを組み合わせて送れる「スタンプアレンジ機能」というLINEの新機能の紹介記事だった。
記事を書いたのは筆者なのだが、使い道が分からなすぎた。記事がアクセス1位になるとは心からびっくりだ。筆者がもっと若ければ、ワクワクしながらいろいろな組み合わせを試したのだろうか。自分自身から遊び心が失われている……とショックを受けたランキング結果だった。
AppleのCM動画騒動は「日本から英語で」始まった
9位は、先々週に公表された、iPad ProのCM動画が炎上した件についての解説コラムだった。iPad Proの広い用途をアピールするため、楽器やカメラなどのクリエイティブツールをプレス機で破壊する様子を見せた動画「Crush!」に批判が集中し、Appleが反省を述べた件だ。
記事では、この動画への批判がなぜ日本から巻き起こったのかを解説しているのだが、筆者は当初、炎上が「日本から」起きていることに気付かなかった。動画を紹介したティム・クックCEOの投稿に批判的なリプライが多数ついている様子はリアルタイムで見ていたのだが、そのほとんどが流ちょうな英語だったので、英語圏発だと思い込んでいたのだ。
動画を掲載した当初、海外速報担当の記者から「米国ではそれほど話題になっていないんですよね」といわれて初めて、日本が主な発信地だと気づいた。
AIが言語の壁をぶっ壊している
少し前までなら、日本発の炎上なら日本語の投稿が集中していたように思うが、今回は違った。発火点であるクックCEOの投稿に対して、日本のユーザーがクックCEOに分かる言語で伝えようとしたため、英語による批判が相次いで投稿された。
それが可能だったのは、自動翻訳・AI翻訳の進化で誰もが“流ちょうな英語”をテキスト投稿できるようになったためだろう。日本からの批判だからといって、日本語で投稿されるとは限らない時代になった。
「リプライゾンビ」問題にも、同じような背景がありそうだ。
リプライゾンビは、日本で話題になっているコンテンツに付く無意味なリプライ。日本語を母語としない海外のユーザーが、AIで自動生成・自動翻訳して投稿しているとみられる。最近は、バズったあらゆるコンテンツに“ゾンビ”が付いてしまっている。これについても“AI翻訳機能のおかげ”といえるだろう。
自動翻訳の進化で、言語が異なる人々の境目が薄くなった。一方で、言語の壁により守られていたラインが浸食され、リプライゾンビなど新たな問題も出てきている。
ネットの普及とAIの進化で、世界中の人がフラットにつながっている。これは過去の歴史にない変化だろう。その変化が吉と出るか凶と出るかは、使う人間次第でもある。
Crush! | iPad Pro | Apple
Introducing the all-new iPad Pro. Outrageous performance by the first-ever M4 chip. With the breakthrough Ultra Retina XDR display. All in the thinnest Apple product ever. iPad has never been this powerful. Or this thin.
Appleの“プロモーション動画炎上”で感じた、万人に受け入れられる表現の難しさ
Appleは5月7日に新型iPad Proを発表しましたが、その発表イベントで流れた動画が悪い意味で注目され、2日後にはAppleの対応としては珍しく、謝罪を行うという事態になりました。
事の発端は、iPad Pro発表時に流した動画「Crush!」。この動画はティム・クックCEOがXにポストした他、YouTubeにもアップされています。内容としては、楽器やゲーム機、カメラやペンキなどを巨大なプレス機で押しつぶしていき、最後にプレス機からiPad Proが登場するというもの。
私はイベントをリアルタイムで視聴していなかったので、この動画が炎上気味だという情報を知った上で見たのですが、それでも内容にはあまりピンとこず、さまざまなものが押しつぶされてもiPad Proは無事だと、その薄さをアピールしたかったのかなと思った程度(iPad ProがApple史上最薄というのは知っていたため)。今思えば、さまざまな機能をiPad Proに圧縮したという表現だったのでしょう。他にも、Crushというタイトルには、固定観念や常識を壊すという意味も含めていそうです。
また、YouTubeやTikTokなどで何かを壊すというのは、一定の人気があるコンテンツです。「Crush!」も、そのように面白がってもらえると考えた上での表現だったのかもしれません。
何を訴えかけるのかは別にして、こうした押しつぶすという演出は目新しいものではありません。例えば、LGが2008年11月(15年半前)に携帯電話「LG KC910 Renoir」の宣伝のために作成した動画は、楽器やカメラ、ペンキなどを押しつぶして圧縮していくというというもので、今回の「Crush!」とほぼ同じ内容です。
15年前にLGの動画が炎上したという記憶はないのですが、当時はまだSNSの黎明(れいめい)期。Twitterは2006年にサービスが開始されていた他、FacebookやMySpaceなど、SNS自体は存在しており、不快に感じた人もいるのでしょうが、それが広く発信されることはなかったのかもしれません。
しかし、現在は誰もが簡単に気持ちを発信できる時代です。過去には問題なかったプロモーションが炎上してしまうということもあるでしょう。「Crush!」の公開後、SNS上では主に楽器やカメラなどの器材がつぶされるという演出について、「リスペクトが足りない」「(それらの器材を使用している)クリエイターをばかにしている」など、批判が多く寄せられていました。
当初、これは日本人だけの感覚で、欧米では特に問題視されていないとの意見もありましたが、ティム・クックCEOのポストへの返信を見る限りでは、日本以外でも不快に感じている人は多くいたようです。
こうした騒ぎを受け、Appleのマーケティングコミュニケーション担当副社長トール・ミレン氏は、米広告メディアのAd Ageに声明を送り、「私たちの目標は、ユーザーが自分自身を表現し、iPad を通じてアイデアを実現する無数の方法を常に称賛することです。このビデオでは的を外してしまいました。申し訳ありません」と謝罪しました。「Crush!」は、テレビCMにも使われる予定だったようですが、Ad Ageによると、今後CMで使われることはないとのことです。
今のところ、公式サイトやティム・クックCEOのXなどでは特にこの件について触れられてはいませんが、Ad Ageに送られた声明が一応は公式の謝罪という扱いなのでしょう。
こうしたプロモーションで炎上したのは、Appleだけではありません。2020年には、Xiaomiが「Redmi Note 9」の動画で日本の原爆を連想させるシーンがあったとして炎上。動画を非公開にし、謝罪を行っています。
→Xiaomi、プロモーション動画で「思慮に欠けた表現があった」と謝罪
なお、Appleの謝罪を受けて、SNS上では「謝罪をするべきではなかった」「謝罪するなら、作るな」といった意見も見られました。万人に受け入れられる表現の難しさということを改めて感じます。
炎上しないためにどうするべきだったのか、という問いに対しては残念ながら答えは持ち合わせていません。公開前に十分に検討するべきだったという意見もありますが、当然ながら素人が後出しで指摘するような内容に関しては考慮されていたはずです。
ただ、今後は何かを破壊するような直接的な表現は使われなくなっていくのでしょう。とはいえ、万人の顔色をうかがって表現の幅を狭めるのではなく、それが必要・妥当と判断するのであれば、周りに何を言われてもそれを貫いてほしいとも思います。
Appleは「Think Different」キャンペーンのCMで、「クレージーな人たちがいる。反逆者、厄介者と呼ばれる人たち」「彼らはクレージーと言われるが、私たちは天才だと思う」と言っているのですし。
TV advert 30sec - LG KC910 Renoir
日本で大炎上「iPad Pro」のCM。海外の反応を調査してみた
先日、「Apple」が新型「iPad Pro」を発表。しかし、その宣伝動画は物議を醸す結果となった。日本では批判的、否定的な意見が目立ったが、海外ではどのような反応があったのだろう?
新型「iPad Pro」のCMが炎上
いったいナゼ?
今回発表された新型「iPad Pro」の広告動画タイトルは、「Crush!」。その内容は、巨大なプレス機がピアノやトランペット、絵の具、カメラなどを次々と押しつぶし、プレス機が引き上がると新型「iPad Pro」が登場するというもの。「Apple」は動画を通して新型「iPad Pro」の薄さと機能の豊富さを伝えたかったようだが、これが物議を醸すことに。
モノを押しつぶすシーンを破壊的だと捉える人が続出し、「Apple」は謝罪を表明することとなった。なお、以下が実際の動画なので、まだ観ていない人はぜひチェックしてみてほしい。
世界の声は——?
今回の動画に対し、日本では多くの批判の声があがった。では、海外の人はどのように捉えたのだろう?
海外でのリアクションを把握するため、「Apple」のCEOであるティム・クック氏の投稿に対するコメントをチェック。すると、以下のような意見が見られた。
このCMを批判している人が多いけど、私は好き。とってもクリエイティブだと思う。
このCMは、小さなデバイスにあらゆるものを詰め込むことに成功した事実をうまく表現できている。
広告を見るのはつらいけど、新型「iPad Pro」はかなり良さそう。
薄さを追い求めるのは間違ってる。それよりもバッテリー持ちを良くしてくれ。
「もっと薄くしてくれ」なんて誰も思ってない。ほかに改善すべき機能があるはず。
CMを肯定的に捉える人や、「iPad Pro」のスペックについてコメントをする人などがいた。日本では批判一色という印象が強い一方、海外では好意的な意見や機能面への批判など、あらゆる角度から声があがったようだ。もちろん、動画を批判する人が多かったのも事実。日本ほど激しくはないかもしれないが、海外でも炎上する結果となった。
ちなみに、なかには「スティーブ・ジョブズだったらこんなCMは認めていない」という声も。世界規模で炎上した今回の件を、いったいジョブズはどう思っているのだろう——?
アップル 新型iPad Proのプロモーション動画は「的外れ」だったと謝罪 「人類の創造性を破壊するものだ」など批判が集まる|TBS NEWS DIG
新「iPad Pro」発表に水を差した炎上広告、アップルにとれる挽回策は
世の中には、だいたい予想がつくものがある。
Appleの製品発表はその1つだ。新しいApple製品のために、素晴らしい広告が用意される。素晴らしい広告にはもちろん、素晴らしい音楽がつく。
広告を見た消費者はこう考える。「素晴らしい製品だ。絶対に買わなくては」
しかし米国時間5月7日に行われた製品発表は、予想外の展開となった。
Appleは、新型「iPad Pro」「iPad Air」をどちらかと言えば控えめなトーンで発表した。実際、筆者の同僚であるJada Jones記者が指摘したように、今回の発表の最大の見どころは第10世代「iPad」の価格が改定され、349ドル(日本では5万8800円)に下がったことだったのかもしれない。
「破壊」動画がもたらした騒動
TikTokの影響か
「薄い」ことに価値はあるか
「破壊」動画がもたらした騒動
一方、iPad Proの発表の一部は多くの人たちの気持ちを害することになった。
「人類の経験の破壊。提供:シリコンバレー」と表現したのは、有名俳優のHugh Grant氏だ。
Apple史上最薄のデバイスにそんなことができるのか。まさか、と思うかもしれない。しかし、Grant氏が言っているのは新型iPad Proそのものではなく、Appleが新型iPad Proの発表に合わせて公開した動画広告のことだ。
この動画には、多くの人たちに愛されてきた、そして今も愛され続けている「物」が登場する。レコードプレーヤー、トランペット、スピーカー、ピアノ。
ギターやメトロノーム、絵の具の缶もある。
そして、そのすべてが巨大なプレス機で押しつぶされ、(ご想像のとおり)史上最薄のAppleデバイス――新しいiPad Proに姿を変える。
この動画でAppleが何を伝えたかったのか、少なくとも何を狙っていたのかは想像できる。5mmほどの薄さしかないデバイスに、こんなにもたくさんのものが詰め込まれている。
さあ、新しいiPad Proにわくわくしてください、というメッセージだ。
しかし、この動画広告はGrant氏だけでなく、大勢の人を最悪な気分にさせた。
屋外広告プラットフォーム企業AdQuickのマーケティング担当バイスプレジデントのAdam Singer氏は、ソーシャルメディア「X」に次のようなコメントを投稿した。「この広告は、現代のクリエイティブが陥っている暗黒時代を(意図したわけではないにせよ)完璧に表現している。それは本物の楽器、不完全だが楽しい機械、有形のアート、あらゆる物理的な実体が押しつぶされ、魂のない、ポストモダンの読み出し専用デバイスに取って代わられ、巨額の資金を持つ大企業がそのデバイスの使い方を決める世界だ」
The Wall Street JournalのKatie Deighton記者も、Appleの動画広告にショックを受けた1人だ。「人々が喜びを見出してきたものをテクノロジーが抹殺する――そんなイメージをAppleの広告は見事に描き、しかも、それを良いこととして提示した。1本の広告が、理屈抜きにこれほど多くの反発を引き起こすのを見たのは久しぶりだ」
TikTokの影響か
なぜこのような広告が作られたのかと思うかもしれない。常識にとらわれない、独創的な広告が作りたかったことは分かる。しかしTikTokで流行している日用品をつぶす動画を、クリエイティブチームが意識していた可能性もきわめて高い。
例えば、ロウソクをプレス機で押しつぶす動画はTikTokで310万もの「いいね」を得ている。TikTokには、この手のおもしろいクラッシュ動画が他にもたくさん上がっている。
広告代理店のクリエイターにとって、ミームやソーシャルメディアの流行りは安易だが、つい取り入れたくなるネタだ(筆者は過去に広告代理店で長くエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターを務めた)。
それでもApple、またはAppleの広告代理店の誰かが、この広告が否定的に受け取られるリスクを想像しなかったとしたら、きわめて奇妙だと言わざるを得ない。
さらに奇妙なのは、Appleをテクノロジー界の「ビッグブラザー」、邪魔者をすべてつぶす支配者のように描いた広告を、Apple自身が発表したことだ。1984年、ジョージ・オーウェルの小説を思わせる陰鬱な世界を背景に、1人の女性が支配者「ビッグブラザー」にハンマーを投げつける伝説の広告を作ったのは、ほかならぬAppleではなかったか。
もっとも、クリエイティブチームとクライアントの重役が特定のアイデアを「クール」だと思い込み、一種の集団思考に陥ってしまうことは広告の世界では珍しくない。
「薄い」ことに価値はあるか
ではAppleは今、何をすべきなのか。Appleはすでに謝罪したが、問題の動画はYouTubeを含む、あらゆる場所から取り下げた方がよいだろう。
しかしもっと重要なのは、iPad Proの「薄さ」のメリットを伝える新しい広告を打つことだ。
Steve Jobs氏は初代「MacBook Air」を発表した際、このデバイスを紙封筒から取り出すことで、その薄さをアピールした。これはMacBook Airの薄さを印象づけるドラマチックな演出だった。
今回の新iPad Proについては、薄さだけでなく、薄さがもたらす具体的なメリットを印象的な方法で伝える必要がある。薄いことの価値は何か。初代iPad Proはともかく、筆者はiPadがかさばると感じたことは一度もない。
例えば史上最薄のiPadを使うことで、どんな満足感が得られるか、いかに一歩前進できるかを生き生きと、巧みに、できれば心が浮き立つようなトーンで伝える広告はどうだろう。
Appleにとって、直近の課題は今回の思いがけないミスを修正することだ。どうか、この薄さがもたらすメリットを具体的に教えてほしい。
そして、新しいiPadが気に入ったと思わせてほしい。
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