どうすりゃいい? Switchのサラウンド問題。ゼルダをPCM 5.1chで遊ぶ方法

どうすりゃいい? Switchのサラウンド問題。ゼルダを5.1chで遊ぶ方法~前編

あまり活用されていない? Switchのサラウンド出力

2017年に発売された任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」(以下Switch)は、今発売されている最新ゲーム機・ゲーミングPCの性能水準と比較すればだいぶ低い。Switchのグラフィックス(GPU)性能は0.5TFLOPSくらいなので、PlayStation 4の3分の1以下、PS5の20分の1程度しかない。

しかし、その「限られた性能の範囲」を負い目として感じさせずに「奥深い遊び」を提供する名作ゲーム群を定期的に送り出せている企画力・開発力には「凄い」と言わざるを得ないのも事実だ。

今年は特に注目の人気作が目白押しで、5月には「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(以下ティアキン)、そして7月21日には「ピクミン4」が発売された。

Nintendo Switchソフト「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」

7,920円(パッケージ版)/7,900円(ダウンロード版)

Nintendo Switchソフト「ピクミン4」

6,578円(パッケージ版)/6,500円(ダウンロード版)

筆者は、Switch本体と同時に発売された「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(以下ブレワイ)で、全900匹のコログ(隠しアイテム要素)を集めきるくらいに夢中になった同シリーズのファンなので、当然、その続編でシリーズ最新作となるティアキンの発売を楽しみにしていた一人なのであった。

ただ正直、ブレワイを完全クリアして以降、PSやXbox、そしてPCなどの卓越した3Dグラフィックス表現を駆使したゲームの方に傾倒してしまったので、筆者のSwitchの稼働率は激減してしまっていた。その意味では、ティアキンは「筆者が久々に手を出したSwitchタイトル」となった。

かつて、ブレワイの壮大なスケールの描写に強い感銘を受けた筆者は、没入感を高めようと、所有しているプロジェクターを駆使して110インチの大型スクリーンにブレワイのゲーム画面を出力して楽しんでいたことを思い出す。今作のティアキンにおいても、同じようにプレイしようと、最近買い替えたばかりの有機ELモデルのSwitchをプロジェクタに繋いだところで、ふと手が止まる。

「あれ? ブレワイをプレイしてた時、サウンドってどう出力してたっけ? 確かサラウンド出力に対応してたはずだけど……?」

そう。Switch本体は、サラウンド出力に対応しているが、発売年度が古いこともあって、最新のサラウンドフォーマットには対応しておらず、意外とサラウンドを鳴らすためのノウハウが分かりにくいのだ。

ちなみに、発売されたSwitch用タイトルがサラウンド出力に対応しているかについては、目的のタイトルのダウンロード版購入サイトの「本ソフトは以下の機能に対応しています」の記述欄に「サラウンド(リニアPCM)と書かれていればそのタイトルは「対応している」ことを表している。7月21日に発売された「ピクミン4」は残念ながら非対応のようである。

サラウンド対応化を確認したいタイトルのダウンロード版のページの仕様表を見てサラウンド対応かどうかを確認しよう

対応ゲームでは、このような記述がある

過去を振り返れば「スーパーマリオ オデッセイ」(2017年)、「Splatoon(スプラトゥーン) 2」(2017年)、「マリオカート8 デラックス」(2017年)、「Splatoon 3」(2022年)など、多くの任天堂自社開発の主要タイトルが5.1chサラウンドに対応している。もちろん、カプコンの「モンスターハンターライズ」(2021年)など、サードパーティ作品にもサラウンド対応作品は少なくない。

主要タイトルは、5.1chサラウンドに対応している

2年ほど前、本連載で、PS5やXbox Series X|S向けのサラウンド事情を整理した記事を掲載した際、比較的好評だった。恐らく自分のように、ティアキンなどをきっかけに、Switchでサラウンドを楽しみたいと考えるゲームファンはそれなりに出てくるかもしれない。

というわけで今回は、本来は6年前にやっておくべきだった「Switchでのサラウンド音声出力講座」を行なうことにしたので、お付き合い願いたい。

Switchの5.1chサラウンドは「リニアPCM」のみ

まずSwitchだが、工場出荷状態では、サウンド出力が「サラウンド」設定になっていない。サラウンドを楽しみたい場合は、Switch起動後に歯車アイコンの「設定」メニュー内にある「テレビ出力」-「テレビのサウンド」の設定項目を「サラウンド」にしよう。

ここの設定が「自動」になっていた場合も、初めてサラウンド機器に接続する際には、改めて「サラウンド」を選択して「テストする」の実行を推奨する。

Switchが出力できるサラウンドフォーマットは「リニアPCM」の「5.1ch」だ。Switchは、これ以外の形式には対応していない。詳細は後述するが、5.1chサラウンドの代名詞であるDolby Digitalには対応していない。

リニアPCMは「非圧縮オーディオ」とも呼ばれる。では逆に「“非”の付かない圧縮オーディオは何ですか?」となるが、それはAACやMP3、Dolby Digitalなどが該当する。

細かい事を話すと、圧縮オーディオにはDolby TrueHD、DTS-HD MasterAudioなどに代表される“可逆圧縮”(=ロスレス:Lossless)と、前出のAAC、MP3、Dolby Digitalに代表される“不可逆圧縮”(=ロッシー:Lossy)の2種類に分けられるが、この部分はSwitchと関係ないため、今回は深掘りはしない。

とにかく、Switchは“非圧縮オーディオ”の出力にしか対応していない。そして5.1chサラウンドとは、前方左右(FL+FR)と中央(C)の3ch、後方左右(SL+SR)の2ch、そして重低音(0.1ch)で構成されるものだ。

サラウンドとしては、BDなどに採用例の多い7.1chや7.1.4chなどのフォーマットも存在するが、こちらも本稿では深掘りはしない。

さて、前述した「テストする」を実行した際には、5.1ch出力分の6回のテスト音が「前方左右(FL+FR)」→「後方左右(SL+SR)」→「中央(C)」→「重低音(0.1ch)」の順番で音が鳴るので、これを全て聴くことができれば、その再生環境は5.1chサラウンドの出力が行なえている可能性が高い。

しかし、手持ちのオーディオ機器が、5.1ch分のサウンドを2ch(ステレオ)にミックスダウンして音を鳴らしている場合は、“サラウンドに対応していなくても、6回分のテスト音が聞こえる”こともある。

そのため、サラウンド出力が正常か否かを確認する場合は、テスト音の3番目と4番目の「後方左右(SL+SR)」の音が、自分(聴者)の後方付近から聴こえてくるかどうかを確認するのがよい。

もし、音が鳴ったとしても、テスト音の1番目と2番目の「前方左右(FL+FR)」の音が鳴った場所と違いが感じられない場合は、サラウンド出力が正常に行なわれていないと疑ってみるべきだろう。

手持ちのテレビ製品がSwitchのサラウンドに対応しているか

Switchの5.1chサラウンド音声は、HDMI端子から映像信号と共に出力されている。そのため、これを聴くための最もシンプルな機器の構成は、5.1chサラウンドに対応した「テレビ製品」を使うことだ。

しかし、テレビ製品が「サラウンド対応」だとしても、Switchが出力する「リニアPCMの5.1ch」方式に対応していなければ、正常に鳴らすことはできない。

つまり、5.1chサラウンド対応のテレビやオーディオ機器だとしても、Dolby DigitalやDTSといった圧縮オーディオ方式しか対応していない場合、Switchの非圧縮オーディオ方式のサラウンドを鳴らすことはできない、というわけだ。

繰り返しにはなるが、Switchは「5.1chサラウンド出力は可能」だが、5.1chサラウンドのメジャーどころである「Dolby DigitalやDTS方式には対応していない」ことは心に留めておこう。

家電量販店の店員に「Switchで5.1chサラウンドを楽しみたい」という相談をしたら、「Dolby Digital関連機器を勧められた」というケースも聞いたことがあるので、この点は注意したい。

ところで最近は、バーチャルサラウンド技術を音響システムに組み込んだテレビ製品が増えている。その最たる例が「Dolby Atmos対応」を謳うテレビ群だ。

ただ、Dolby Atmos信号はオブジェクトベースオーディオ方式であるため、Switchの非圧縮オーディオ方式とは別モノだ。

今回の記事を執筆するにあたり、筆者がソニー、パナソニック、レグザなどのDolby Atmos対応テレビをざっと調べてみた感じでは、Dolby Atmosのバーチャルサラウンド再生に対応しているものの、非圧縮オーディオの5.1chサラウンドに対応しているという記述にはたどり着けなかった。

繰り返しになるが、手持ちのテレビやオーディオ機器が「サラウンド対応」していたとしても、Switchの「非圧縮オーディオ方式の5.1ch」に対応しているか否かを確かめるのは、前述した「テストする」モードの実行で判断するしかないのだ。

Switchのサラウンドをマルチスピーカーで構築する?

テレビ単体で、Switchの「非圧縮オーディオ(リニアPCM)×5.1ch」を鳴らすのが難しいということならば、どのような機器ならば確実に対応しているのか? というと、それはホームシアター向けのAVアンプだ。

AVアンプであれば、4万円台のエントリークラスでも、直近10年以内の製品であれば「非圧縮オーディオ(リニアPCM)×5.1ch」には、ほぼ間違いなく対応している。

対応かどうかを確実に知るには、スペック表などの「対応音声フォーマット」のところに「リニアPCM 5.1ch/7.1ch」とか「PCM 2ch-8ch」のような記載があれば間違いない。

ただ、AVアンプを使った5.1chサラウンドでは、5基のスピーカーと1基のサブウーファーを設置しなければならず、金銭的なコストはもちろん、設置の手法や配線の取り回し、スペースなど様々な問題が発生し、導入の敷居が途端に高くなる。

筆者も、製品評価用に7.2.2ch(11スピーカー)のサラウンドシステムを自宅に構築しているが、サラウンドの品質を追求するならば、このアプローチが最良なのは間違いないだろう。

AVアンプを使ったサラウンドの構築手法については他の記事に譲るが、機能を最小限に絞ったプロセッサモジュールと、5.1ch分のスピーカーをパッケージングした「5.1chサラウンド入門者向け商品」は、現状あまり新モデルが出ていない。

比較的低コストで5.1chサラウンドシステムを構築したい方には、そうした入門セットを選択するのも良いかと思ったが、今はこの製品ジャンルは廃れつつあるようだ。

お手軽サウンドバーの罠。Switchのサラウンドが鳴らせない

それでは、最近流行りの「サウンドバー」は、Switchのサラウンドが鳴らせるのだろうか?

AV Watch読者であれば百も承知だろうが、ゲーマーなど「オーディオとかよく分かりません」という方に向けて念のため説明しておくと、サウンドバーとはテレビのスピーカー機能に満足できない「高音質志向のユーザー」が導入することが多い、バー(棒)状のオーディオ機器(アクティブスピーカー)だ。

テレビ内蔵スピーカーよりも、だいぶ迫力のある音響が楽しめることもあって、サウンドバーはゲームファンからも関心が高まりつつある。

室内にスピーカーを複数本設置する方法と比べれば、サウンドバーは、テレビの前方・直下に置くだけでよいため導入が楽ちんだ。大きな部屋でなくとも、気軽に自室のサウンド環境をグレードアップできるので若年世代でも導入しやすい。

製品のグレードもピンキリで、入門者向け製品は「安価で音質はそれなり」だが、上位製品は「価格も高いが性能も高い」。ただ、一度導入すれば、テレビを買い替えても、サウンドバーは流用できるので、長く付き合うことを想定し、頑張って1ランク上の製品を導入するのもありだろう。

そして、最近のサウンドバー製品で、特に人気が高まっているのが、1本でサラウンドが楽しめるサウンドバーだ。

“1本でサラウンドが楽しめる”とはいっても、あくまでサウンドバーなので、実際にスピーカーがあるのはテレビ画面のある前方だけで、後方には何も設置しない。後方から再生される音像は、正面に設置したサウンドバー内の実体スピーカーから発せられる。つまり、いわゆる「仮想音源技術を使ったバーチャル再生」となる。

ただ、安価なサウンドバーは、5.1chサラウンド再生に対応していたとしても、対応するフォーマットはDolby Digitalなどの圧縮オーディオ形式で、Switchが出力する非圧縮オーディオ(リニアPCM)の5.1chサラウンドには対応していない製品が多い。

では、Switchが出力する非圧縮オーディオ(リニアPCM)の5.1chサラウンドに対応できるサウンドバーは、どうやって探せばよいか。理由や解説は後回しにして、大前提の要件だけをまず記そう。それは――

HDMI入力に対応している ことだ。

「何を当たり前のことを!」と言われそうだが、実際のところ、安価なサウンドバーは、HDMI入力端子を持っていない機種が多い。

例えば、ヤマハの現行モデル「SR-C20A」は、“ARC対応のHDMI出力端子”を搭載してはいるものの、“HDMI入力端子は非搭載”。入力端子として実装されているのは、光デジタル音声入力端子のみである。

というか、現在のサウンドバーは――

HDMI入力端子は非搭載

入力端子は光デジタル音声端子

ARC対応のHDMI出力端子を搭載

――という製品の方が多いのだ。

「光デジタル音声入力端子」にまつわる複雑な事情についての詳細は、後編で扱うとして、ここでは、Switchが出力する非圧縮オーディオ(リニアPCM)の5.1chサラウンドに対応できるサウンドバー製品の選び方にポイントを絞ろう。

HDMI端子は、機器に実装するごとにHDMIの特許料等を管理する団体、HDMI Licensing Administratorにライセンス料を支払わなければならない。しかも、実装するHDMI端子を増やすごとに従量制で課金される仕組みであるため、昨今のサウンドバー(特に入門クラスの安価な製品)は、実装するHDMI端子をなるべく減らしたいという事情がある。

最近のグラフィックス(GPU)カードに搭載されるHDMI端子が少ない理由についても、そんな事情が見え隠れするわけだが、サウンドバーの場合は、搭載するHDMI端子を少なくするテクニックとして、ARC対応のHDMI出力端子を“1つ”だけ搭載する手法が採られている。

ARCは「オーディオ・リターン・チャンネル」(Audio Return Channel)の略で、簡単に説明すると、接続されたARC対応のHDMI機器間でサウンドデータをやりとりする仕組みのことだ。

具体的には、サウンドバー側の「ARC対応のHDMI出力端子」と、テレビ側の「ARC対応のHDMI入力端子」を接続することで、この機能を使うことができる。

HDMIの伝送的には“サウンドバーからテレビに向かっての接続”と思えるが、実際にはテレビで鳴らすべき音声を、サウンドバーに向かって“逆”伝送している。つまり、HDMIの音声信号だけを逆流させる仕組みだから“ARC”という名前が付いているのだ。

例えば、ゲーム機(ブルーレイ機器でもいいが)のサウンドを、ARCで鳴らす場合には、テレビとサウンドバーをARC対応HDMI端子同士で接続した上で、ゲーム機をそのテレビの別のHDMI入力端子に接続すればいい。その上で、テレビ側の入力切換で、そのゲーム機が接続されたHDMI系統に切り換えて、ゲーム映像を画面に出すと、そのゲームサウンドは、ARCの機能が働いて、テレビ内蔵のスピーカーからではなく、サウンドバーから鳴ることになる。

HDMIの「オーディオ・リターン・チャンネル」(Audio Return Channel)利用時の映像信号と音声信号の流れ。テレビ側のHDMI端子はHDMI"入力"端子にもかかわらず、サウンドバーに音声信号を出力(逆流)させるところに「リターン」の意が込められている

この仕組みを利用すれば、Switchが出力する非圧縮オーディオ(リニアPCM)の5.1chサラウンドも再生出来るのではないか!? と思えるのだが「そうは問屋が卸さない」のだ。

上で引き合いに出した、ヤマハ「SR-C20A」もARC対応のHDMI出力端子を備えているが、Switchが出力する非圧縮オーディオ(リニアPCM)の5.1chサラウンドの再生は行なえない。

その理由は、ARCの仕組みでは、非圧縮オーディオ(リニアPCM)を2ch(ステレオ)分までしか伝送できないためだ。

そう。ARCは1Mbps程度の帯域しかなく、サラウンドサウンドを伝送するためにはDolby Digital/DTS/AACといった圧縮オーディオ形式を利用することが前提となっているのである。事実、ヤマハ「SR-C20A」のスペック表を確認すると、非圧縮オーディオ(リニアPCM)を2ch(ステレオ)分までしか対応していないことが明記されている。

打つ手はないのか……というと、そんなことはない。

実は、HDMI2.1規格化の時点で、ARCの帯域上限が37Mbpsにまで大幅に拡大されており、この仕組みを活用することで、非圧縮オーディオ(リニアPCM)の5.1chサラウンドの伝送が行なえるようになる。HDMI2.1規格で拡張された新しいARCは「eARC」(拡張版ARC:Enhanced ARC)と命名されている。

つまりまとめると、Switchが出力する非圧縮オーディオ(リニアPCM)の5.1chサラウンドの再生に対応できるサウンドバーは――

(1)eARC対応であること

(2)非圧縮オーディオ(リニアPCM)の5.1chサラウンドに対応していること

――を要件として探すといい、というわけだ。

価格.comの「絞り込み条件の一括設定」で「サウンドバー製品」を「eARC」対応で検索すると、デノン「DHT-S217」が最もコスパがよさそう。入力信号として非圧縮オーディオ(リニアPCM)の7.1chサラウンドまで対応しており、仮想音源技術を使ってバーチャルサラウンド再生ができる。7.1ch対応は、5.1ch対応を内包しているので問題ないだろう。

デノンのサウンドバー「DHT-S217」。仕様表を確認したところ、「リニアPCM(最大7.1ch)」となっていたのでSwitchが出力する非圧縮オーディオ(リニアPCM)の5.1chサラウンドに対応できそうだ

ただ、両方を満たしていても、機能や性能的な問題で、5.1chを3.1ch以下にダウンミックスして再生するなど、5.1chの情報をバーチャルサラウンド再生に活かしていない製品があるかもしれない。

そこで念のため、上の条件(1)(2)に当てはまる製品が多そうなデノンとソニーに問い合わせたところ、「5.1chの入力信号を(情報を間引くことなく)バーチャルサラウンドに活かしている」と確認が取れたのが、以下のモデルだった。

・ソニー「HT-A7000」「HT-A5000」「HT-X8500」「HT-A3000」「HT-S2000」「HT-G700」

・デノン「DHT-S217」

ソニーによれば、サウンドバーのエントリークラス「HT-X8500」「HT-A3000」「HT-S2000」「HT-G700」は全て、非圧縮オーディオ(リニアPCM)の5.1chや7.1chのサラウンド入力をデコードし、垂直方向をソニーの独自技術「Vertical Surround Engine」で、水平方向を「S-Force PRO Front Surround」技術でバーチャル再生してくれるとのこと。

リア方向からの音像表現にこだわりたいユーザーは、2.1ch再生や3.1ch再生に対応したモデルよりは5.1ch以上の再生用の専任スピーカーがあるクラスのモデルを選ぶのがいいだろう。

ちなみに、ソニーのサウンドバーでは「HT-A5000」以上のモデルでは、5.1ch以上の再生用の専任スピーカーが搭載されている。HT-A5000については、今回メーカーから実機を借りることができたので、実際に試してみたインプレッションを後述する。

ともあれ、Switchが圧縮オーディオ形式の5.1chサラウンド出力に対応していてくれれば、もう少し製品も挙がってくるだろう。

eARC対応HDMI入力端子搭載のテレビと、eARC対応HDMI出力端子搭載のサウンドバーの接続様式。基本的には前出のARCの図解と同じ接続様式となる

Switch対応のサウンドバー「HT-A5000」の実力は?

実際に、Switchに適合できるサウンドバー製品としてソニーの「HT-A5000」を試してみることにした。

バーチャルサラウンド対応のサウンドバー製品は、リアスピーカーの音像生成のために、本体から発音した音を、その部屋の壁や床に反射させる仕組みを利用するため、このタイプの製品であるHT-A5000も、「音場最適化」の実行を初回セットアップ時に要求される。

最初、この「音場最適化」処理を、PCモニターの適当なHDMI入力(eARC/ARC非対応)に接続しただけで実践したところ、進捗度37%あたりで「音場最適化が失敗しました」の旨を告げるエラーが出て先に進めなくなってしまった。これは筆者の想像になるが、この初期化フェーズに、eARC/ARCなどの機能対応チェックなども行なっているのかもしれない。

ということで、ARC/eARC対応テレビを用意し、ARC/eARC対応HDMI端子同士でHT-A5000を接続したところ、ちゃんと音場最適化処理を最後まで実行できた。なので、皆さんも、横着しないように(笑)。

HT-A5000自体の音質は良好だ。テレビの内蔵スピーカーよりは圧倒的に良好で、音量を上げた時の音圧も高まり、迫力が増す。音楽の再生にも不満がないレベルだ。

では、ゲームをプレイしたときの定位感や聴感はどうか。実際にティアキンをプレイしたり、あるいはサラウンドサウンドのテスト音声などを試してみたが、フロント左右チャンネルは、HT-A5000本体の左右両端から数十センチ離れたあたりから再生されるような印象で、強いワイド感が得られた。

センターチャンネルは、HT-A5000本体の中央から聴こえてくる感じで、左右にワイドに広がっていくフロント左右チャンネルの音像とは対照的だ。あえて音像の広がりを抑えている印象で、セリフ音声は明瞭で聴きやすい。

リア左右チャンネルは、真後ろから聴こえるというよりは、正面を向いている筆者の真横よりもやや前あたりに聴こえる印象だ。ただ、明確に、フロント左右チャンネルの音像よりは、聴者たる筆者に近い位置で鳴っている印象はある。つまり、フロント左右チャンネルとリア左右チャンネルは分離して鳴っている聴感はある。

今回の筆者宅の環境で、リア左右チャンネルが、「後ろから聴こえてくる」という聴感が得られなかったのは、恐らく、筆者宅の「左右の壁のあり方」に起因したものだと推察する。

前述したように、こうした前置き型サウンドバーでバーチャルなリアチャンネルの音像の理想的に再生するためには、前に置かれた本体から発せられた音像を、壁を使って理想通りに反射できることが要求される。

今回の筆者宅の設置環境では、正面向かって左側の壁一面に柔らかい布製のカーテンが敷かれており、右側はキッチンが広がっているため開放状態の空間となっていた。つまり、反射すべき音波の多くが、左側では吸収され、右側では発散してしまったのだろう。それ故、理想通りのリアチャンネルのバーチャル再生が奮わなかったのではないか。

バーチャルサラウンド対応のサウンドバーにて、理想通りのサラウンド感を獲得したいと考えるユーザーは、視聴位置から見た、左右の壁(場合によっては、奥の壁や天井)が、音波を反射しやすいかどうか、事前に見極めておくことが必要かもしれない。

ちなみに、HT-A5000には、無線接続できるオプションのリアスピーカー製品「SA-RS5」「SA-RS3S」が用意されているので、HT-A5000本体のみの設置で、理想的なサラウンド考えられなかった場合は、こうしたオプション製品を活用するという手もあるだろう。

音場プログラムはソニー独自の「Sony Vertical Surround Engine」「ドルビー・スピーカー・バーチャライザー」「DTS Neural:X」の3つが用意されているが、今回、筆者がティアキンのプレイでテストした範囲では、「Sony Vertical Surround Engine」「DTS Neural:X」がしっくり来ていた。理由は、これら2つの音場プログラムは、再生音が空間全体に浸透しているような空間の広がりを感じさせてくれる聴感だったため。ティアキンの広大なオープンワールドなフィールド表現にとてもマッチしていたのだ。

「ドルビー・スピーカー・バーチャライザー」は「Dolbyフォーマット以外の音像に対して効果がない」と説明書に記載されているので、Switchと組み合わせる範囲では選択する意味はないということになる。ちなみに、Switch接続時、無理矢理選択すると、2chステレオ再生に近い聴感となっていた。

ゲームファンからの関心が強いと思われるHT-A5000のHDMI入出力端子のパススルー性能についても調査してみた。

まず、入力遅延について。

遅延計測機器を評価対象のディスプレイ機器に直結した際と、HT-A5000のパススルー接続した場合との遅延速度を比較してみたところ、全く変わらなかった。つまり「パススルーによる追加遅延はなし」と断言できるということだ。

評価に用いたディスプレイは、HDMI2.1規格対応でHDMI接続で4K/120Hzの入力が可能な、LGの「27GP950-B」。写真下側が遅延計測器直結状態での計測。写真上側が「HT-A5000」からパススルー接続した状態での計測。計測値に変わりなし

続いて、HDMI2.1規格の帯域の上限に近い4K/HDR10/120Hzの映像がパススルー出来るかをチェックしてみたところ、以下のような結果になった。

GeForce RTX 4090でチェック。ディスプレイはLGの「27GP950-B」だ。ちゃんと4K/HDR10/120Hzのパススルーが行なえた

問題なくパススルーが行なえた。さすがはPS5を有するソニーグループの製品といったところか。Switchと接続する場合には無関係なテストだが、PS5、Xbox Series X、ゲーミングPCにおいても、HT-A5000を活用したいと考えているゲームファンには朗報だろう。

というわけで、後編では、冒頭で述べたように、Switchの5.1chサラウンドが再生できるヘッドフォン、光デジタル音声信号の話題などを取り上げる。

続・Switchのサラウンド問題。ヘッドフォンで5.1ch再生する方法とは

Nintendo Switchの5.1chサラウンド出力機能を極めろ!

2017年に発売された任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」(以下Switch)には、ゲーム内サウンドを5.1chサラウンド出力機能があり、大作系タイトルを中心に、意外と対応タイトルが多い。

しかし、Switch自体のサラウンド出力機能に汎用性がないこと、そして任天堂自身があまり同機能の活用を訴求していないことなどが重なり、「日頃からSwitchのゲームを5.1chサラウンドで楽しんでいる人が少ない」という現実がある。

そこで大画面☆マニアでは、改めてSwitchのサラウンド機能の本質を整理し、2023年においてはどのような機材を使えば「まともに再生できるのか」についての情報を取りまとめて提供することした。

前編では、Switchの5.1chサラウンド機能がどんな形式のオーディオ・フォーマットなのかを解説し、これを再生することができる機材の機能要件を紹介した。また、その実例機器として、ソニーのサウンドバー「HT-A5000」の使用インプレッションもお届けした。

後編となる今回は、「Switchの5.1chサラウンド出力を正しく再生できるヘッドフォンは存在するのか?」というテーマをメインに話していくが、その話に移る前に「Switchの5.1chサラウンド出力は光デジタル音声信号に変換できるのか」についても言及しておきたい。

というのも、市販されているサラウンド対応製品には、依然として光デジタル音声信号入力にのみ対応した製品が存在するからだ。ちなみにこの傾向は、サウンドバーだけでなく、今回メインに取り扱うサラウンド対応ヘッドフォンにも当てはまる。

なお本稿では、前編で解説したテーマを理解してもらった前提で話を進めている。「Switchは非圧縮オーディオのマルチチャンネルしか出力できない」や、「ARCやeARCで伝送可能な帯域の違い」の話題は触れない。前編を読了していない場合は、なるべく前編から読み進めていただきたい。

もういい加減「光デジタル」から卒業しませんか

前回は、Switchの5.1chサラウンド出力を正しく再生できるサウンドバーの選び方を細かく解説したわけだが、安価なサウンドバーには、光デジタル音声入力端子しか搭載していないものが多い。

残念ながら、そうした製品は、Switchのサラウンド音声を再生できない。

その理由はシンプルで、「SwitchにはHDMI出力端子はあるが、光デジタル音声出力端子がない」からだ。つまり、物理的に直接接続できない、というのが、分かりやすい“表向きの理由”だ。

しかし、「ちょっと待て! テレビとSwitchをHDMI接続すれば、SwitchからのHDMI音声を、テレビの光デジタル音声出力端子から出力することはできるよね? だったら、その光デジタル音声信号を、光デジタル音声入力端子しかないサウンドバーに接続すれば、サラウンド音声を再生できるのではないか?」。

なんて反論される方もいるかもしれない。

しかし、こうした工夫をしても、いくつかの理由で、サラウンドの再生はできないのだ。

実は、別名「S/PDIF」規格とも呼ばれる光デジタル音声信号は、先進的なイメージのある“光”というワードが付いているものの、その規格設計年度は1985年頃と古い。それこそ、Sビデオ端子などと同世代の技術なのだ。

そしてなんと、光デジタル音声信号のサポート帯域はわずか1.5Mbps程度までしかない。

一方でSwitchが出力するリニアPCM 5.1chサラウンドは帯域にして約4.5Mbpsはあるので、光デジタル音声信号では帯域不足で伝送できない。ちなみに、圧縮オーディオ形式のDolby Digitalは最大640kbps程度(5.1ch)、DTSは最大1.5Mbps程度(5.1ch)となっており、光デジタル音声信号で伝送できる範囲の帯域で設計されている。

というわけで、整理すると、光デジタル音声信号は――

a:規格レベルで「リニアPCMの5.1chサラウンドは伝送できない」

b:規格レベルで「リニアPCM音声の伝送は2ch(ステレオ)まで」

――として規定されているため、どうしても光デジタル音声信号でサラウンド音声を伝送するなら、圧縮オーディオ形式を使わないとダメ(理由a)。ただSwitchは、非圧縮オーディオ(リニアPCM)の5.1chサラウンドしか出力できないため、“光”に変換したところで、2ch(ステレオ)までしか鳴らせられない(理由b)というわけだ。

多くの読者が気が付いているとは思うが、前編で言及した「帯域不足のARCでは非圧縮オーディオ(リニアPCM)の5.1chサラウンドを取り扱えない」と同じ理屈だ。

ところで、筆者がYouTubeにてゲーム実況している最中に、視聴者からよく受ける質問に、「SwitchからHDMI出力される5.1chサラウンド音声を、HDMIオーディオスプリッターを用いて光デジタル音声に変換すれば、光デジタル音声ケーブル経由で各種サラウンド機器に接続して鳴らせますか?」というものがある。

この質問も「テレビ」の部分が「HDMIオーディオスプリッター」になっただけで、話としては同じこと。上で示したa・bの理由により、答えは「できない」となる。

HDMIの音声信号を分離するスプリッターを使っても、SwitchのリニアPCM 5.1chサラウンドは光デジタル音声から出力できない。またスプリッターは“分離”はできても、“変換”には対応していない。そのため、リニアPCM 5.1chサラウンド音声をリアルタイムにDolby Digital 5.1chなどに変換することはできない

もし、リニアPCMの5.1chサラウンドを、リアルタイムにDolby Digitalの5.1ch信号に変換できるスプリッター機器等が存在すれば、光デジタル音声入力端子しか持たないサウンドバーでもサラウンド出力ができそう。

しかし残念ながら、そのような機器は民生向けには存在しないようだ。「Dolby Digital Encoder」でネット検索するとそれっぽい業務用機器が出てくるが、そもそもそれらはHDMI入力に対応していない。HDMI入力に対応した“そういう製品”の開発/製造は技術的には可能だろうが「今さら光デジタル関連機器を作っても売れない」と、民生機器メーカーは判断しているのだろう。

ただ、テレビ製品には「HDMI入力されたリニアPCM音声信号をDolby Digital変換して、テレビ側の光デジタル音声出力端子から出力できるモデル」がそこそこ存在する。

これを使えば「もしや!?」と思い、私物のレグザ「55Z720X」にSwitchをHDMI接続して試してみたのだが、残念。変換されて光デジタル出力されたDolby Digital信号は2ch(ステレオ)になってしまっていた。

このテストは手持ちの一台でしか行なえなかったので、他のテレビ製品の全てがそうであるという確証はない。ただ、ニーズと実装コストのバランスを考えると、他のテレビ製品も同じではないかと思う。もし「リニアPCM 5.1chサラウンドをDolby Digital 5.1ch信号に変換して光デジタル音声出力できるテレビ製品があるよ!」という情報をお持ちの方は教えて頂きたい。

写真はレグザ「55Z720X」のもの。テレビ製品によってはHDMI入力されたリニアPCM音声を光デジタルに出力する際にDolby Digitalに変換することができるモデルがある。ただ、ほとんどのテレビ製品は、そもそもリニアPCM音声入力についてステレオ(2ch)までの対応となっている。なお、レグザは最新モデルでもこの仕様らしい

ということで、「Switchが出力するリニアPCM 5.1chを再生するために光デジタル音声信号を利用する」というアプローチは、基本的には“無理”と考えた方がいい。

Switchの5.1chに対応したヘッドフォンの選び方

複数台のスピーカーを設置して構築したサラウンドシステムはもちろん、お手軽にサラウンドを楽しめるサウンドバーにしても、室内に音を出すため、住宅事情などで自由に使えないという場合もあるだろう。

そんなわけで“外に音が出ない”ヘッドフォンで、Switchのサラウンドを楽しみたいという方も少なくないと思う。

ただ現在、発売中のサラウンドヘッドフォンで、SwitchのリニアPCM 5.1chサラウンドをまともに再生できる製品は少ない。

まず、製品数の多い「USB接続タイプのSwitch対応ヘッドフォン/ヘッドセット」。

色々と発売されているが、これは全て2ch(ステレオ)までの再生となる。SwitchではゲームからUSBオーディオとして出力できるのは2chまでとなっているためだ。残念ながら、サラウンド対応を謳った製品は、受け取った2ch信号に対して、残響などを与えて疑似サラウンドっぽくするだけの「なんちゃってサラウンド」となる。

Bluetooth接続の場合も同様。Switchは、Bluetooth出力できるのは2chまでとなっている。たとえ「Switch対応」とパッケージに記されていても、2chサウンドを信号処理でそれっぽくしているだけに過ぎないので気を付けたい。

バーチャルサラウンドとなんちゃってサラウンドの違い。「なんちゃってサラウンド」は、大元の出力段階で2ch(ステレオ)になってしまっているので、根本的にサラウンド情報が欠如しているのだ

余談ながら、「USBオーディオは2ch(ステレオ)まで」という仕様は、PS4やPS5も同様である。

ただしPS4の場合、SIE純正ヘッドフォン(CUHJ-15001/CUHJ15005/CUHJ15007)においてだけ、商品に付属する専用USBドングルを使えば、例外的に5.1ch/7.1chなどのサラウンド出力が行なえるようになっている。

これは、前述の純正ヘッドフォンに対してのみ特別な対応を施しているため。PS4ライセンス商品のヘッドフォン/ヘッドセットであっても、前述の純正ヘッドフォン以外は、2chのなんちゃってサラウンド再生となるので注意。

PS5においても、USBオーディオ出力については2chまでの対応となる。ただしPS5では、純正ヘッドフォン以外のヘッドフォンでもサラウンド音声が楽しめるようになった。

どうゆうことかというと、PS5本体側で5.1chや7.1chのサラウンド音源、オブジェクトベースオーディオのサラウンド音源を、PS5独自のハードウェアベースのバイノーラル再生技術ともいうべき「Tempest 3Dオーディオ」機能によって、2ch出力のバーチャルサラウンド音声に変換してくれるように改善されたためだ。

話を戻すと、Switchでは、前出のサウンドバー製品のケースと同様に――

1:eARC対応であること

2:非圧縮オーディオ(リニアPCM)の“5.1ch”サラウンドに対応していること

――という条件でサラウンド対応ヘッドフォンを探すしかない。

この条件を満たす現行製品は、ビクターの「XP-EXT1」(以下EXT1)だけとなる。EXT1は、発売年が2020年とまあまあ新しいこともあり、Dolby Atmos信号にも対応するほか、プロセッサボックス部のHDMIパススルー端子は4K/HDR信号にも対応する。よってSwitchだけでなく、4Kブルーレイプレーヤーはもちろん、PS4 ProやPS5との組み合わせにも最適だ。

Switchでサラウンドが聞ける/聞けないヘッドフォン

EXT1以外だと、筆者が調べた範囲では、ソニーの「MDR-HW700DS」(以下HW700DS。ソニーストアでは取り扱い終了済み)がある。

発売年が2013年と古いため、eARCには対応していないが、付属する別体のプロセッサボックスに実装されているHDMI入力端子が非圧縮オーディオのリニアPCM 5.1chサラウンドに対応しているため、Switchのサラウンド音声を入力して再生することができる。

しかもそのプロセッサボックスには、遅延なしでテレビと接続ができるパススルーHDMI端子が搭載されているため、ゲーム映像の遅延はなし。ただし、このパススルーHDMI端子は、4K/HDR信号には対応しない。よって、PS4 ProやPS5との組み合わせには不向き。とはいえ、4KもHDRも関係ないSwitchとの組み合わせるのに支障はない。

実際に筆者私物のHW700DSをSwitchと組み合わせてみると、5.1chサラウンドの聴感は(古い製品でありながら)意外にも良好である。

スピーカーによるリアル5.1ch再生には及ばないものの、フロント部はワイドで聞こえるし、リア音声は左右の肩あたりにまでは回り込んでくれる印象。3D VPT(Virtualphones Technology)機能を有効化すると、5.1chサラウンドが疑似9.1chサラウンドに拡張され、聴感のワイド感はさらに高まる。

ソニーの「MDR-HW700DS」は直販ストアでの販売は終了済みで、現在は流通在庫のみ。筆者はSwitchやPCゲームを5.1chサラウンドで楽しむために、2020年にビックカメラで約42,000円で購入したが、現在ネット販売では7万円近くまで高騰している。中古品が2万円前後で出回っているので、そちらを狙うのもありだろう

ソニーの製品としては、HW700DS以外にも、2018年発売のサラウンドヘッドフォン「WH-L600」がある。「こちらはどうなのか?」と、気になる方もいることだろう。

ソニー「WH-L600」は、「MDR-HW700DS」の下位モデルに相当する製品だ。「WH-L600」も販売終了製品ではないものの、入手性が芳しくないのは「MDR-HW700DS」と同じ

結論から言ってしまうと、SwitchのリニアPCM 5.1chサラウンドの再生には対応できない。

理由はサウンドバーのところで触れた内容と同じだ。L600のHDMI端子はeARCには未対応で、ARC対応までとなっており、リニアPCMは2chまでの対応となっているため。L600には光デジタル音声入力端子もあるが、ここまで読み進めてきた読者であれば、ここについてこれ以上の言及は不要だろう。

なお、パナソニックからも「RP-WF70」というバーチャルサラウンド対応のヘッドフォンが2017年に発売されている。こちらは現行製品扱いで入手も容易だが、やはりこちらもSwitchのリニアPCM 5.1chサラウンドの再生には対応できない。

理由はシンプル。入力端子が光デジタル音声入力端子しかないためだ。

実勢価格は2万円台前半で入手性もコストパフォーマンスもいいのだが、光デジタル音声入力端子しか持たないため、サラウンド音声はベーシックな圧縮オーディオ形式にのみ対応する。正直言って、最近のHDMI機器とは組み合わせ難い

では、ショルダースピーカーやネックスピーカーの中で、SwitchのリニアPCM 5.1chサラウンドが再生できるモデルはあるのか?

これについて調べて見たところ、この製品ジャンルのほとんどがBluetooth接続となるため「対応できない」ようだ。

ただ、本稿執筆最中に発表されたシャープの「AN-SX8」は、この製品ジャンルの数少ない「例外」ということになるかもしれない。

詳細仕様はよく分かっていないのだが、SX8にはトランスミッター兼プロセッサーボックスが付属しており、これがeARCに対応していることが明記されている。

リニアPCM 5.1chサラウンドに対応できるかどうか、シャープに問い合わせたところ、「eARC対応のテレビと組み合わせることで対応可能です」とのことだった。貸出しが間に合わず試すことができなかったが、機会があれば評価してみたい。

ちなみに、シャープのサウンドバー「8A-C22CX1」「8A-C31AX1」は、リニアPCM 5.1chサラウンドに対応していなかったため、筆者自身はSX8には大きな期待を抱いている。

シャープの「AN-SX8」は、Bluetoothだけでなく、HDMIのeARC接続にも対応したネックスピーカー。5.1chサラウンド再生はもちろん、Dolby Atmosにも対応する注目の新製品。リニアPCM 5.1chサラウンドには対応しているとのこと。価格は価格はオープンプライスで、店頭予想価格は39,600円前後

Switch対応サラウンドヘッドフォン「XP-EXT1」を試してみた

SwitchのリニアPCM 5.1chサラウンドに対応するビクターのヘッドフォン「XP-EXT1」をSwitchに接続して試してみた。

前述したとおり、EXT1には別体のプロセッサボックスが付属する。もし使用しているテレビがeARC対応であれば、前編で示した接続図のサウンドバーの部分を、このプロセッサボックスに置き換えたような感じで使用する。

テレビがeARCには未対応(旧規格のARCにのみ対応)している場合や、そういった概念のないゲーミングディスプレイ製品を使っているような場合は、このプロセッサボックスの3つあるHDMI入力のどれかに接続し、HDMI出力端子の方をテレビに接続すればいい。このプロセッサボックスをセレクター的に活用するイメージだ。

接続が完了したら、次にやるべきなのが「使い始める前の初期設定」だ。これは、ユーザーごとのヘッドフォンの伝達特性を検出するためのキャリブレーションプロセスに相当する。

やり方は簡単で、ヘッドフォンを被り、テストモードを実行するだけ。テストモードを開始すると、パルス音のようなテスト音がヘッドフォンから発音され、その音をヘッドフォン内部のマイクが録音して分析するという流れ。

マイクで録音された音は、ユーザーの耳の中で反射・回折・共鳴(共振)した音になるので、テスト音のオリジナル波形からどう変調されているかを分析することで、ユーザーの耳内部の構造を推測しようというわけだ。

なお、このプロセスについては、事前にスマートフォンにインストールした専用アプリを介して行なわれる仕組みだ。

この分析プロセスは、それほど時間が掛からずに終わる。あえて難しく言えば、「そのユーザーに最適化されたバーチャルサラウンドサウンドを再生するための頭部伝達関数」がEXT1に登録された、ということだ。

聴感は、バーチャルサラウンドヘッドフォンとしては良好。フロント左右チャンネルは正面方向をゼロ度とすれば、左右±40度方向から鳴っているようなワイド感を伴って聞こえる。そして、センターチャンネルはど真ん中にしっかり定位できている事を確認した。リア左右チャンネルは、真後ろから聞こえるというよりは、左右の肩の周辺で聞こえるという聴感だ。バーチャルサラウンド対応のヘッドフォンの定位感としては悪くないと思う。

「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」のプレイにおいては、フロント方向の没入感は極めて良好だった。

馬を駆って走っているシーンなどでは、目の前を通り過ぎていく風や川のせせらぎの音は自分を通り過ぎた後、肩やうなじ周りに収束していくような聴感で、リア方向の没入感も良いとは思う。ただし「敵の足音」を「後ろのどのあたりから聞こえる」というほどの緻密な精細感まではない。

しかし、明らかに通常のステレオヘッドフォンで聴く音響とは異なってはいることは実感できた。

せっかくなので、私物のHW700DSとの音質比較もしておこう。

音場のワイド感や没入感に関しては、ほとんど両者同等という印象。EXT1もHW700DSも、通常のヘッドフォンのように頭の中に音が定位するのではなく、耳の外にあるスピーカーから音が鳴っている感じはちゃんとするし、その品質面はほぼ同等だと思う。ただし、定位感に関しては、ベースとなっている仮想音源技術の年度が新しいEXT1の方が上だ。

あと両モデル共に、2.4GHz/5GHzのデュアルバンド対応だが、伝送の安定性はEXT1の方が上だった。筆者宅は2.4GHz/5GHzの電波を使用する機器が複数台設置されている関係で、電波状況はあまりよくない。

HW700DSだと使用中、バンド切換のタイミングか何かでブツブツいうことが1時間に数回あるが、EXT1はこれが全くない。このあたりの安定性も、発売年度の新旧の違いから来るものなのだと思う。

最後に、EXT1のHDMIパススルー機能の性能についての調査報告をしておこう。

遅延計測機器を評価対象のディスプレイ機器に直結した際と、EXT1のパススルー接続した場合との遅延速度を比較してみたが、計測値に違いは見られなかった。つまり「パススルーによる追加遅延はなし」と断言できる。

評価に用いたディスプレイは、HDMI2.1規格対応でHDMI接続で4K/120Hzの入力が可能な、LG「27GP950-B」。写真上側が遅延計測器直結状態での計測。写真下側がEXT1からパススルー接続した状態での計測。計測値に変わりはない

続いて、HDMI2.1規格の帯域の上限に近い4K/HDR、120Hzの映像がパススルーできるかをチェックしてみたところ、以下のような結果になった。

GeForce RTX 4090でチェック。ディスプレイはLG「27GP950-B」だ。色空間はHDRには対応できていたが、パススルーが行なえたのは4K/60Hz、8bitまで

こちらは、残念ながらパススルーが行なえた上限の画面モードは4K/60Hzまで。HDR色空間には対応していたが、10bitモードはパススルーできず、8bitモードでしかパススルーができなかった。

HDR非対応、フルHD解像度のSwitchと組み合わせる場合は何の問題もないが、PS5などの最新ゲーム機、最新ゲーミングPCとEXT1を組み合わせる場合には、HDMIパススルー機能は活用せず、eARC経由で接続した方が無難と思われる。参考にして欲しい。

なお、このSwitchサウンド特集の評判がよければ、SwitchとシャープのSX8を組み合わせた時のインプレッションなどにも挑戦したいと考えている。

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