グリコ「17種類で出荷停止」巨大プロジェクトで大誤算、40年ぶり社長交代で“データ志向”を目指したのになぜ?

グリコ「17種類で出荷停止」巨大プロジェクトで大誤算、40年ぶり社長交代で“データ志向”を目指したのになぜ?

 菓子メーカー大手・江崎グリコで発生した基幹システムの切り替えによる障害の影響が、想定を超えて広がりつつある。

 4月24日、キリンビバレッジは果汁飲料「トロピカーナ」や「無添加野菜」など37品目について、受発注、出荷業務ができず、出荷停止状態になっていると公表した。スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどの販売先に影響が出ている。

 同社はグリコにチルド飲料(紙容器などの商品)の販売を委託しており、システム障害の影響が波及した格好だ。グリコのシステムが復旧次第、出荷を再開するとしている。グリコはシステム障害発生から5回ものお詫びリリースを出しており、現場の混乱が見て取れる。

■一度は出荷を再開したが…

 ことの発端は4月3日だ。グリコが基幹システムを切り替えた際に障害が発生し、一部の受発注、出荷業務に影響が出た。4月5日に発表されたリリース文は5行と短く、簡潔な説明と、取引先への謝罪の言葉が並んでいた。

 ところが、その後の4月14日には乳製品、プリンなどの洋生菓子、果汁飲料、清涼飲料などの冷蔵品について、全国の物流センターでの業務が一時的に停止となる。18日には一部業務を再開し、順次復旧が進むとみられたが、ここでも不具合が生じた。

 具体的には、システム上の在庫数と実際の在庫の数が異なるなど、データの不整合があったという。また、全国から寄せられた受注量は想定の範囲内だったものの、システムエラーが続いたために処理が間に合わず、結局、再度停止になってしまった。

 現在出荷停止となっているのは17種類の冷蔵商品だ。「朝食りんごヨーグルト」「アーモンド効果」「カフェオーレ」「プッチンプリン」など、同社を代表するブランドも含まれている。ほかの菓子や食品などで影響は出ていない。

 現在は5月中旬の再開を目指して復旧に当たっているが、これより早期に復旧する可能性も、さらに遅れる可能性もある。基幹システムの障害の原因、データの不整合との関連性など、原因をすべて特定できているわけではない。「復旧に向けて、出荷業務の手順の見直しや、システムのさらなる改修の可能性も含めて検討している」(グリコ広報)。

 障害が発生した新基幹システムは、総投資額340億円のグリコにとって巨大プロジェクトだった。グリコは2014年に完全子会社だったグリコ乳業を吸収合併したが、システムはバラバラだった。会計など統合している分野もあったが、生産関係で異なるシステムを利用していたという。

 新システムでは、こうした社内のレガシーを統一し、プロセスをシステム上でつなげ、人による調整を減らすこと。顧客から研究開発、調達までデータと業務を紐付けること、全社レベルでデータを可視化し、課題の発見や経営判断のスピードを上げるといった狙いがあった。開発には複数社のITベンダーが関わっている。

■デジタル戦略を打ち出したが

 グリコは2022年、40年ぶりの社長交代で創業家の江崎悦朗社長が就任。江崎社長はデータ志向の企業に変革すべく、デジタル戦略を前面に打ち出した。全社員を対象に研修を実施し、デジタル人材育成にも取り組んできた。そんな戦略の中で、新基幹システムは欠かせない要素の一つだった。

 今後、懸念されるのは業績への影響だろう。出荷停止中のBifiXヨーグルトやプッチンプリンなどの商品は、最大セグメントである「乳業事業」(前期売上高696億円)に含まれている。1カ月半近く出荷が止まることによる売り上げの減少は大きい。また、物流や人件費など、危機対応の費用を計上する可能性もありそうだ。

 昨今、業界を問わずシステム障害事例は多い。みずほ銀行などは大規模なシステム障害を繰り返し、多方面で信用を失う結果になっている。メーカーの場合、出荷停止状態が長引けば、スーパーやコンビニで、ライバルに商品棚のスペースを奪われる可能性は一段と高まる。まさにグリコは正念場。迅速かつ慎重な対応が求められる。

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