電動スケーター違反、半年で6倍…「16歳以上」「原則車道」周知不足

電動スケーター違反、半年で6倍…「16歳以上」「原則車道」周知不足

 立ち乗りの二輪車「電動キックスケーター」利用者による悪質な運転が問題化している。昨年7月に一定条件を満たした機種は運転免許なしで乗れるようになり、利用が拡大。交通違反は半年余りで6倍に急増しており、警察は春の全国交通安全運動(15日まで)に合わせ、取り締まりを強化している。(坂戸奎太、森安徹)

車と衝突、全治1か月のけが

 電動スケーターは国内では5年ほど前から利用が増え、当初は原付きバイクに分類されていた。昨年7月に施行された改正道路交通法で、最高時速20キロ以下などの条件を満たす機種は「特定小型原動機付自転車(特定原付)」と位置づけられた。

 免許なしでも16歳以上なら運転でき、2人乗りや飲酒運転の禁止など、ルールの多くは自転車と同様だ。信号無視などの違反を繰り返した場合、安全講習の受講が義務づけられ、反則金を科す「青切符」の対象にもなる。

 改正法施行後、事故が相次いでいる。大阪市では昨年9月、電動スケーターと乗用車が衝突。スケーターの男性は交差点で停止せずに進入して出合い頭にぶつかり、全治約1か月のけがを負った。

 同市内では同10月、スケーター利用者が後方から歩行者にぶつかり、けがを負わせるなど、大阪府内では昨年7月~今年2月、22件の人身事故が発生。府警幹部は「手軽という反面、危険もあり、運転次第で加害者にもなり得る」と話す。

アプリダウンロード100万超え

 警察庁によると、昨年7月~今年2月に全国で起きた特定原付が絡む人身事故は124件。2月の交通違反は2466件で、405件だった昨年7月の6倍になった。8か月間で1万件を超え、逆走や違法な歩道での走行など「通行区分違反」が51%、「信号無視」が35%だった。

 一方、最高時速が20キロを超える機種は、引き続き原付きバイクなどと同じ扱いとなる。このタイプでは昨年12月、長野県内で利用者が死亡する事故が発生。今年2月には、名古屋市で歩行者をひき逃げし、重傷を負わせたとして電動スケーターに乗っていた男が逮捕された。

 利用増の要因にはレンタルが進んでいることがある。

 シェアリング業者「ループ」(東京都)は大阪、京都など全国約7300か所に拠点を設置。利用に必要な専用アプリのダウンロード数は100万を超えた。

 メーカーなどでつくる「日本電動モビリティ推進協会」(東京都)によると、販売台数も増加傾向で、2022~23年に計約1万台に上ったという。

取り締まり強化

 課題としてルールの周知不足が浮かぶ。損保ジャパンが1月に公表した電動スケーターに関する調査では回答者1076人のうち、53%が「16歳未満が運転できないことを知らなかった」と回答した。

 大阪市内でループを利用していた大阪府枚方市の自営業男性(39)は「ルールが原付きや、自転車とどう違うのか、わかりにくい。乗り始めた頃は原則車道という規則も知らなかった」と話す。

 ループは1月、走行前に必ずアプリの画面に禁止事項が表示されるようにした。また、一部拠点では不定期で警備員を配置して飲酒の有無を確認している。

 警察も事故防止に力を入れており、京都府警は電動スケーターや自転車の交通違反を取り締まる小隊を設置し、4月から京都市を中心に自転車に乗った警察官が巡回している。春の全国交通安全運動が始まった6日以降、府警は12日までに少なくとも4件の交通違反を確認した。

「安全対策不十分なまま緩和」

 鈴木美緒・東海大准教授(交通工学)は「海外で利用の規制が進む中、日本では安全対策が不十分なまま緩和された。便利である一方、誤った使い方が定着してしまう前に業者や警察などが啓発を強化すべきで、ルールの見直しも検討する必要がある」と話している。

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