「コロナ明け」でアタマジラミ増加? 子どものプール学習も要注意

「コロナ明け」でアタマジラミ増加? 子どものプール学習も要注意

 頭をかゆがる子どもの髪をかき分けてみたら、根元に小さな白い卵がいくつも付いていた――。新型コロナウイルスの流行時は小康状態だったアタマジラミが、保育園や幼稚園で再び増えているようだ。頭に寄生するアタマジラミは、プールが始まる初夏から多くなる傾向がある。何に気を付ければいいのか。

 ◇「ずっといるかもしれない」不安

 「クラスでアタマジラミが数名でています」。東京都板橋区にある保育園に3月上旬、こんな張り紙がされた。人数は次第に増え、クラスの女児12人中10人が集団感染した。

 ある女児の母親(41)は「娘の髪を結ぼうとしたら、小さな白い粒のようなものがたくさんあった。かゆがっているので皮膚科を受診したら医師に『この辺りで今、はやっている』と言われた」と振り返る。薦められた駆除薬(商品名スミスリン)が入ったシャンプーを近くの薬局に買いに行くと「最後の1本」だったという。

 3日に1回、駆除薬入りシャンプーを頭につけて5分おいてから洗い流すことを繰り返すと、かゆみは収まった。ただ、卵には効かないため、目の細かい専用のすきぐしをインターネット通販で購入し、朝と夜の1日2回、10~15分かけてすきとった。約2週間後に皮膚科を再び受診し、医師に目視でいなくなったことを確認してもらった。しかし、その後も保育園から帰宅すると1~2匹みつかることがあり、母親は「ずっと『いるかもしれない』という不安がある」。

 国立感染症研究所によると、アタマジラミの成虫は大きさ約2~3ミリ。跳んだりはねたりせず頭皮から吸血し、約0・5ミリの卵を1日あたり3~4個産む。卵は約1週間でふ化する。寄生し始めた頃はかゆみを感じないことが多いが、数が増える3~4週間後に激しいかゆみに襲われる。かきすぎると頭皮が炎症を起こすことがあるが、伝染病を媒介する心配はない。

 ◇清潔にしていても感染

 「コロナ禍の時に比べると、増えている印象だ」。テル皮膚科(練馬区)の東芝輝臣院長もそう語る。互いに距離を取っていたコロナ下では、アタマジラミで受診する子どもはほとんど見かけなかったが、ここ1年で目立つようになったという。

 現在、アタマジラミの患者数の全国統計はない。ただ、駆除薬入りのシャンプーやパウダーを販売するダンヘルスケア(大阪市)によると、2023年の関連商品の売り上げは前年比20%増。24年に入っても伸びているといい、田島佳之企画部長は「コロナ禍が明け、行動が活発化したのに伴ってアタマジラミが増えている。保育園や学校でプールが始まる6~7月にかけて多くなる傾向があり、今後も増えると予想される」と話す。東京都が集計している13~22年度のアタマジラミの相談件数を月別に見ると、6~7月と運動会シーズンの9~11月が多い。被害の9割は11歳以下が占める。

 豊島区池袋保健所生活衛生課の矢口昇さん(衛生害虫専門担当)によると、プールの水を介した感染の心配はないが、髪の接触のほか、帽子やタオル、ふとん、くしなどの共用で感染するという。着替えの際に帽子やタオルを重ねたり、かごを共用したりすることでうつる可能性があるため、ロッカーやかごは個別に用意するなどの対策が必要だ。清潔にしていても感染するため、「差別やいじめにつながらないよう正しい知識をもって子どもに対応してほしい」と呼びかける。

 ◇殺虫成分に耐性ある個体も

 アタマジラミは戦後、殺虫剤DDTで駆除されたが、DDTが環境汚染や生態系への悪影響をもたらすとして1971年に使用禁止されると急増。新たな駆除薬としてスミスリンのパウダーが80年代に発売されて一時減ったが、その後もまん延が続いてきた。

 近年はスミスリンのようなピレスロイド系殺虫剤が効きにくいアタマジラミも出てきた。国立感染症研究所が06~11年に全国調査したところ、耐性を持ったアタマジラミは全国で5%おり、沖縄県では約96%にも達した。このため、「ジメチコン」と呼ばれるシリコーンの一種でシラミの呼吸孔をふさいで窒息死させるローションタイプの新たな駆除薬も21年から市販されている。

 駆除が完了したかはどう判断すればいいのか。一律の基準はないが、矢口さんによれば、アタマジラミは吸血しないと3日以内に死ぬことから「家庭内で頭髪に新たなアタマジラミや卵が3日以上見つからなければ、駆除できたと判断していい」。対策は一斉にやることも重要だ。登園・登校は原則控える必要はないが、昼寝をするスペースでは間隔をあけたり、感染した子どもの帽子やシーツ類などを毎日持ち帰って60度の湯に5分以上つけるか熱風乾燥させたりすることを勧めている。

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