飲酒で顔真っ赤になる人は「コロナにかかりにくい」 佐賀大が研究
お酒を飲むと顔が赤くなる人は、ならない人に比べて約5倍新型コロナウイルス感染症にかかりにくい――。佐賀大の研究グループがそんな研究成果を発表した。
研究は、佐賀大医学部の松本明子准教授(49)と、同大の客員研究員で農水省消費・安全局農産安全管理課審査官の高島賢さん(56)らのグループが手がけた。
高島さんはコップ1杯のビールで顔が真っ赤になる「アジアンフラッシュ」と呼ばれる東アジアに多い体質だ。身近で新型コロナや、それ以前のインフルエンザ、ノロウイルスの集団感染が起きた時に無症状だったのは、自身の体質に理由があるのではと考えた。業務で植物の遺伝子と形質の関係を見てきたからだ。
「他の人と比べて私が強い形質というのは、赤ら顔くらい」と思い、身の回りの57人に聞いたところ、アジアンフラッシュ体質で新型コロナに感染した人は、アジアンフラッシュ体質でない人の3分の1ほどしかいなかった。
科学的な知見から調べたいと考え、20年以上前からアジアンフラッシュ体質と病気の関連を研究してきた松本准教授に昨年5月、連絡をとった。7月に同大の客員研究員となり、共同研究がスタートした。
さっそく8月に、インターネット上で807人について調査した。飲酒で顔が赤くなると答えた人は445人、ならないと答えた人は362人だった。
このうち、2回目のワクチン接種が進んでいた2021年8月末までに新型コロナに感染した人は、アジアンフラッシュ体質でない人を1とすると、アジアンフラッシュ体質の人は0.21で、感染の確率は約5分の1だった。
全期間でみても、アジアンフラッシュ体質の人はそうでない人に比べ、罹患(りかん)率も入院率も低く、発症の時期も遅くなる傾向があった。
■他のウイルスや感染症にも影響か
研究をまとめた論文は、今年3月9日付の日本衛生学会の国際医学雑誌に掲載された。
アジアンフラッシュ体質は、日本人の約半数が該当するとされる。松本准教授によると、アジアンフラッシュ体質の原因遺伝子を持つ人は、酒に含まれるエタノールの代謝物のアセトアルデヒドを解毒する酵素の働きが弱い。そのため、お酒を飲むと血管が拡張して皮膚が赤くなる。顔が赤くなる人が、この遺伝子を持つ確率は9割とされる。
同じアルデヒド類で、殺菌作用があるホルムアルデヒドは人間の体の中でもつくられる。松本准教授は、アジアンフラッシュ体質の人はアルデヒド類を解毒しにくいため、普段から体内のホルムアルデヒドの濃度が高めで、そのことがウイルスからの防御になっているのではないかという仮説を立てている。
他のウイルスや細菌、原虫による感染症などにも影響する可能性があるという。松本准教授によると、皮膚が赤くなるマウスとそうでないマウスに結核菌を投与した研究では、赤くなるタイプのマウスの方が結核菌の増え方が少なかったという研究結果が発表されている。また、高島さんによると、植物が細菌やウイルスの病気をアルデヒド類を使って防御している例もあるという。
高島さんは、今後起こる可能性が懸念されている新型インフルエンザのパンデミックを見据え、「季節性インフルエンザとの関連の研究も進めたい」と語る。松本准教授は「体の中で何が起こって、どうしてアジアンフラッシュ体質が感染症に強いのかというメカニズムが解明できれば、創薬にもつながるのではないか」と述べた。
酒飲んで赤くなる人はコロナ感染に防御的か 佐賀大研究成果
佐賀大学は、酒を飲むと顔などの皮膚が赤くなる体質の人は、新型コロナウイルスの感染に対して防御的である可能性があることがわかったとする研究成果をまとめました。
佐賀大学医学部の松本明子准教授らの研究グループは、飲酒後に顔などの皮膚が赤くなるかや、新型コロナにいつ感染したかなどについてインターネット上でアンケート調査を行い、およそ800人から得た回答を分析してきました。
その結果、新型コロナの感染拡大が始まった2019年12月から2023年5月までの間、飲酒後に顔が赤くなる人は発症が遅い傾向にあり、感染に対して防御的である可能性があることがわかったということです。
特に、ワクチンを2回接種した人が国内で人口の半数ほどにとどまっていた2021年8月までの期間に絞り込むと、飲酒後に顔が赤くなる人が新型コロナに感染した割合はそうでない人に比べて、およそ5分の1にとどまったということです。
飲酒後に顔が赤くなるのは一般的に酒に弱いとされる体質の人が多く、東アジア地域で特有なことから「アジアンフラッシュ」と呼ばれ、日本人ではおよそ半数が該当するとされています。
この研究成果は、日本衛生学会が発刊する学術雑誌に掲載されました。
研究を行った公衆衛生学が専門の佐賀大学の松本明子准教授は「受け止めとしては『やっぱりか』という気持ちでした。当初から酒に弱い体質と新型コロナの感染には関連があるのではないかと疑っていました」と話していました。
そのうえで、今後の研究については「体の中では何が起こっていて、どうして『アジアンフラッシュ』の体質の人が感染症に強いのか、メカニズムを探っていきたいです。ほかの感染症に対してはどうなのかも考えていきたいというふうに思っています」と話していました。
お酒を飲むと顔が赤くなるアジアンフラッシュ体質が新型コロナウイルス感染症に対し防御的であることを報告
【研究成果の概要】
♦アジアンフラッシュ体質※がCOVID-19に対し保護的である可能性が示唆された
※アジアンフラッシュ体質は飲酒後に皮膚紅潮や頭痛、動悸などの不快症状を経験する体質を指しており、一般的にお酒に弱い/飲めない人が多い。アルデヒド脱水素酵素2型酵素(ALDH2)の遺伝子多型のひとつ、rs671変異保有者の特徴。東アジア人に特有の体質であるためアジアンフラッシュと呼ばれる。日本人の約半数が該当する。
♦アジアンフラッシュ体質とCOVID-19罹患・入院リスク低下が関連
♦アジアンフラッシュ体質はrs671遺伝子変異の代替マーカーであることから、rs671変異がCOVID-19に対し保護的であると考えられ
る。rs671変異が感染防御特性により広がった(適応進化)という仮説を支持