「ルーキー」3季連続飛来…悪質カメラマンや銃から守って

「ルーキー」3季連続飛来…悪質カメラマンや銃から守って

<魅惑のオオワシ> 下

 主に北海道で越冬し、西日本では5羽ほどしか見られない国の天然記念物オオワシ。中でも広島県三次(みよし)市に2年前から飛来するようになった若鳥は、愛鳥家らの間で「期待のルーキー」と呼ばれる人気者だ。だが、突如現れた絶滅危惧種に対する地元自治体の保護に向けた動きは遅れており、対応の難しさが浮き彫りとなっている。

まさか広島へ

 「最初は信じられなかった」。三次市の山あいにある人工湿地「灰塚ダム知和(ちわ)ウェットランド」館長で日本鳥類保護連盟広島県支部の新堂雅彦さん(70)は振り返る。この1羽が歴史的に県内初飛来だったからだ。

 オオワシが同ランドで初確認されたのは2022年1月末。当時は生後1~2年の幼鳥とみられた。以後、同じオオワシが3季連続で飛来し、約3か月間を周辺の雑木林で過ごしている。

 約150メートル離れた場所には愛好家がカメラを構え、多い日は60人ほどが集まる。その1人、岡山市の会社員小笹将士さん(26)は「北海道に行かなくてもオオワシに会える環境があるのはラッキー」と喜ぶ。

 オオワシの寿命は約30年。猛禽(もうきん)類に詳しい北海道大の先崎理之(まさゆき)准教授は「三次市に定着しつつある。餌がある限り生涯にわたって飛来してくる可能性が高い」と話す。

無理やり飛ばせるマナー違反

 だが、オオワシが安心して過ごせる環境が整っているとは言い難い。

 新堂さんによると、木に長時間止まるオオワシに車で近づき、無理やり飛ばせてシャッターチャンスを狙う「マナー違反者」が現れたという。新堂さんは「150メートル以上離れる」「1グループ3人程度で観察する」といった自主ルールを決め、立て看板を設置して注意を呼びかけている。

保護区の外に生息、猟規制なく

 昨年1月には、オオワシがいる雑木林に狩猟者2人が入ったケースもあった。雑木林は県の鳥獣保護区の外にある。イノシシ猟が行われる場所で、発砲音でオオワシが逃げてしまう恐れもある。新堂さんらは地元猟友会に協力を求め、越冬中の猟を控えてもらっているが、「希少種がいる場所で銃器が使用できる状態になっていることは問題だ」と危機感を抱く。

 そもそもオオワシは、鳥獣保護管理法に基づく保護対象で、種の保存法では保護に向けた施策は自治体の「責務」と明記されている。

 日本鳥類保護連盟側は三次市に対し、市の希少野生動植物保護条例の保護対象に指定し、越冬地を保護区にするよう求める要望書を昨年3月と同10月に提出した。しかし市は「オオワシだけ特別扱いできない」と新堂さんらに説明し、積極的な対策を取っていない。

 県も「1羽だけで、まだ定着するかわからない」と静観してきたのが現状で、オオワシの生息域で狩猟できる状態が続いている。

 新堂さんは「オオワシの飛来は豊かな環境の証し。定着すればシンボルとなり、地域の活性化にもつながる」と話す。

 希少種の保護に詳しい吉田正人・筑波大教授は「県や市は国や地元関係者と密に連携を取り、情報収集や保全に取り組むべきだ。国際的にも注目度が高い鳥で前向きに保護に当たってほしい」と指摘する。

レッドリスト記載の県も

 西日本の他の飛来地ではオオワシの保護対策が取られており、1~2羽が毎冬渡ってくる滋賀、鳥取、長崎では、各県のレッドリストに「絶滅の恐れがある種」として記載されている。

 このうち同じオオワシが26年連続で飛来している滋賀県では、越冬地一帯が銃器の使用禁止区域で、安全な生息環境が保たれている。釣りの仕掛けをのみ込むなど救護が必要な時の対応手順も事前に決めてある。

 30年以上飛来する鳥取県でも、越冬地である鳥取市の湖山池と周辺の陸地が鳥獣保護区で、狩猟禁止区域にオオワシの行動圏が含まれている。

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