アメリカでEV販売失速、トヨタのHVがテスラのEVを逆転…値段手頃で燃費いいHVが見直される

アメリカでEV販売失速、トヨタのHVがテスラのEVを逆転…値段手頃で燃費いいHVが見直される

米市場で電気自動車(EV)の販売が失速している。インフレ(物価上昇)や金利上昇で高額なEVを購入する負担が増す中、値段が手頃で燃費のいいハイブリッド車(HV)が見直されており、メーカーの戦略にも影響を及ぼしている。

「安心して遠出」

 2月下旬、ニューヨーク・マンハッタンの自動車販売店を訪れたエベニザー・オーラさん(38)は「HVなら安心して遠出できるし、燃料代も節約できる。次に買うならHVだ」と展示車両に目をこらしていた。

 販売店のジョン・アイアコーノ社長によると、HVの販売は、この1年で約3割増えた。「近いうちに、販売台数のほとんどがHVになるだろう」と話す。

 英調査会社JATOによると、米国では2023年4~6月期以降、3四半期連続でHVの販売台数がEVを上回った。23年10~12月には、トヨタ自動車の米国でのHVの販売台数が前年同期比49%増の約18万台と過去最多となり、20%増の約17万台だった米テスラのEVを逆転している。ホンダのHVも約4倍の約8万台と急伸した。

インフラ不安

 米メディアによると、米国でのEVの平均価格(23年)は約5万9000ドルなのに対し、HVは約4万2000ドルと3割ほど安い。米政府は23年、EV購入者に最大7500ドルの税額控除を導入したが、それでもEVの方が割高だ。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げで自動車ローンの金利も上昇している。

 内陸部などでは充電設備が少ないことも失速の要因とみられる。蓄電池は寒さに弱く、冬場に性能が低下しやすいことも消費者の不安につながっている。

 米調査会社アイシーカーズによると、米国でEV購入に関心を持つ層は7~8%とされる。急速にEVの普及が進み、米国の新車販売に占める割合は23年に7%を超えた。同社は「充電設備や価格の問題を解消しない限り、米国でEV販売を伸ばすのは難しいだろう」と指摘する。

 テスラも、24年のEV販売の伸び率は23年(38%増)を大幅に下回るとの見通しを示している。

計画修正

 市場の変化を受け、米ゼネラル・モーターズはEVの生産目標を撤回した。今後はプラグインハイブリッド車(PHV)の生産に注力する方針だ。米アップルも2月、10年がかりで進めてきたEVの開発を中止したと報じられた。

 独メルセデス・ベンツも、30年までに販売する新車をすべてEVにする計画を撤回した。韓国・現代自動車はHVの生産を強化し、高級車ブランドにHVを投入する方針と報じられている。

EV失速、ハイブリッド絶好調! グローバル投資家の「トヨタ」を見る目が変わった根本理由

最高益で最高値、トヨタ株上昇

 トヨタ株の史上最高値更新が続いている。2月26日には一時3600円台をつけた(トヨタ株はかつて1万円を超えていたが、個人投資家でも買いやすくするために2021年9月に1対5の株式分割を実施。株価はその後も上昇し、分割調整後で史上最高値を更新した)。

 トヨタは2月6日に今期(2024年3月期)の連結純利益の見通しを前期比83%増の4兆5000億円に引き上げた。2022年3月期の最高益(2兆8501億円)を1兆6000億円以上、上回る見通しだ。それを好感して株価は最高値をつけた。

 ただ、勢いよく上がる株価に違和感を覚えるアナリストもいる。というのは、今期のトヨタ業績は、円安の追い風を受けて

「やや出来すぎ」

と思われるからだ。半導体不足が解消して生産が増加、これまで在庫不足で売り逃していた分を取り戻した恩恵もある。

 このまま1ドル150円前後の為替が続くならばよいが、2024年、連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに転じると、それをきっかけに円高に転じる懸念もある。また、連結子会社ダイハツによる車両試験不正や、持分法適用会社豊田自動織機によるディーゼルエンジンにおける不正が明らかになるなど、グループの品質管理問題も気になる。

 新たに持ち上がった不安として、米国が2022年6月に施行した「ウイグル製品輸入禁止法」の影響もある。ドイツのフォルクスワーゲンの新車数千台が、中国の新櫃ウイグル地区で作られた部品を使っている可能性があることから、米国の港で押収された。自動車産業のサプライ・チェーンは世界中で複雑に絡まり合っており、フォルクスワーゲンだけでなく、世界の自動車大手すべてが、この問題で影響を受ける可能性がある。

 こうした不安があるなかで、トヨタ株が勢いよく上昇したのはなぜか。買っているのは、主に外国人投資家だ。特に

「米国の機関投資家」

がトヨタを見直している。減益で売られる電気自動車(EV)大手テスラに代わり、ハイブリッド車(HV)好調のトヨタを買い増ししている。EVばかり礼賛してきたグローバル投資家の一部に、HV世界トップ、業績好調のトヨタを見直す動きがある。

テスラの評価は22年以降ピークアウト

 業績好調のトヨタ株が上昇するのは当たり前のように思うかもしれないが、実はそうではない。

 近年は世界にESG(環境・社会・企業統治)投資が拡大するなか、ガソリン車メインでビジネスを拡大するトヨタは、業績好調でも株価の上値は重かった。一方、テスラなどEV関連株は利益が小さくても、株価が急騰していた。

 トヨタ株がグローバル投資家に見直されるようになったのは、2023年後半以降、ごく最近のことだ。2021年まで、世界の株式市場ではEVメーカーばかりが評価され、ガソリン車メーカーは好業績でも顧みられることがなかった。

 ガソリン車やディーゼル車の販売を2035年までで終了する方針を表明する国や地域が増えるなか、2021年には次世代自動車の本命とみなされてきたEVメーカーに期待が集まった。特に、テスラに過大な期待が集中したことが、同社株の異常な上昇に表れていた。

 ところが、2022年以降、EVへの過大評価は徐々に修正される。2022年は、ESG投資受難の年となった。2月にロシアによるウクライナ侵攻が起こると、ESG投資で除外してきた化石燃料関連株が軒並み急騰した。一方、テスラなどEV関連株は急落した。2021年に好調だったESG投資のパフォーマンスは、2022年には大幅に悪化した。

EVに対する消費者の信頼もやや低下

 EVの過大評価へ修正が入ったのは、株式市場だけではなかった。消費者からの評価にも、少し修正が入った。テスラ車を例に考える。テスラ車の魅力として、次の3点がある。その魅力は変わらない。

●強大なトルクを瞬時に出す、スタートダッシュが痛快

 テスラ車に乗った人が最初に感じるのは、スポーツカー並みの加速のよさだ。テスラにかかわらずEV全般のメリットとして、走りだしからギアチェンジ不要で最大トルクが出せることがある。

●大きなパネルに操作機能を集約

 コックピットがすっきり。オートパイロット(半自動運転)を使うことで、自動運転への道筋を感じることができる。

●走行安定性に優れる

 スムーズな走りで乗り心地よい

 一方、テスラ車の問題も、再認識されるようになってきた。

●高額、急な値下がり

 2023年以降、頻繁に値下げをしてきたものの、まだガソリン車、HVに比べて、高額であることは否めない。値下げはテスラ車の一段の普及に必須とはいえ、値下げが続いていること自体が、買い控えを生じている面もある。頻繁な値下げで中古車価格も下がるため、買いは待った方がよいという感覚につながる。

●充電時間が長い 充電インフラがまだ十分ではない

 テスラにかかわらずEV全体の問題として、充電時間が長いことがある。急速充電でも20~30分くらい必要だと、忙しい日中には苦労が多い。充電インフラがまだ十分に整っていない上に、1台当たりの充電時間が長いと、充電ステーションの順番待ちにも時間を取られることがある。こうした欠点を補うものとして、プラグインハイブリッド車(PHV)を見直す向きもある。

●極寒に弱い ヒーターを使うと電費が著しく低下する

 2024年厳寒の北米で、テスラ車が充電できないまま急速充電ステーション近くで大量に乗り捨てられる問題が起こった。寒冷地では、電池をヒーターで温めないと充電性能が落ちる。テスラ車は、充電前にヒーターを適温まで温めるプレコンディショニング機能があるが、それが十分に生かしきれなかった。充電の待ち時間が長く、ヒーターに電気を取られて動けなくなったテスラ車が出た。

 ヒーターを適切に使用すれば寒冷地でもEVは問題なく使用できるが、まだ極寒での利用に慣れていないオーナーが多かったことが、問題につながった。EVの問題として、寒冷地ではヒーターを使う必要があるために、電費(電気1kWhあたりの走行距離)が著しく低下することが挙げられる。EVの強みが、寒冷地では逆に弱みとなっている。

 電気モーターとエンジン(内燃機関)を比較すると、モーターはエネルギー変換効率の高さで内燃機関を上回る。無駄な熱や音を出さない分、動力エネルギーへの変換効率が高い。一方、内燃機関では、熱や音で失われるエネルギーが大きい。ところが、寒冷地では、熱が出ることが逆に有利に働く。内燃機関から出る熱の一部は、車内暖房などに使われる。またボンネットが熱を持つので、ボンネットに雪が付着しにくく、運転者の視界が守られる。

 一方、EVは、走行用の電気を使ってヒーターを働かせる必要が出る。エンジンのような排熱がないのでボンネットに雪が付着しやすい。また、センサーに雪が付着するとオートパイロットが機能しなくなる問題もある。

EVは発展途上 HVの役割拡大

 EVはこれからさらに進化する。EVが抱える問題は、将来的に解決される可能性もある。

 EVが高額という問題は、かつて、

「HVが抱えていた問題」

と同じである。量産化が進むにつれてHVの価格が低下して大衆車として普及した。EVも時間をかけて、低価格化が進むと考えられる。

 充電時間が長い問題は致命的であるが、もし将来、全固体電池EVが実用化されれば、その問題は解消する。

 充電ステーションが少ない問題は、将来、EVが大衆向けに普及すれば解決すると考えられる。大衆車がガソリン車からEVにシフトすれば、今あるガソリンステーションがそのまま、充電ステーションに転換されていくだろう。

 とはいえ、EVが抱える問題の解決には、まだかなり長い年月がかかると考えられる。EVの欠陥を補うために、当面PHV・HVが果たす役割は大きくなると考えられる。

 なお、米自動車大手フォードは、EVへの大型投資を見直し、HVに注力することを検討している。

結局、豊田章男会長の未来予測が正しかった…アメリカで「日本製ハイブリッド車」が爆発的に売れている理由

アメリカで電気自動車(EV)の販売不振が顕著になっている。ジャーナリストの岩田太郎さんは「バイデン政権はEV販売に高い目標を掲げているが、実際にはまるで売れていない。その代わりに売れているのは、日本製のハイブリッド車だ」という――。

■EV販売の減速が止まらない

 米国では昨年後半から電気自動車(EV)の不振が顕著に見られるようになったが、2024年に入り、さらに鮮明化・定着化している。

 EV各社は赤字や収益率低覚悟の値引き、毎年2月の国民的スポーツイベントであるNFLのスーパーボウル中継への広告出稿、さらに廉価モデルの市場投入などテコ入れを図っているが、販売の減速が止まらない。

 昨年の今ごろは、EV販売が右肩上がりという論調ばかりであったが、そのころには想像すらできなかった「2024年のEV販売台数が前年割れ」の可能性すらメディアで指摘されている始末だ。

 一方、トヨタをはじめとする日本勢のハイブリッド車は飛ぶような売れ行きである。

 なぜ米国でハイブリッドが爆売れするのか。理由を探ると、EVとの比較における経済的・環境的な合理性が認識され、消費者ファーストの使いやすさが圧倒的な支持を受けていることがわかる。

■「EVブーム」は減速している

 米自動車調査企業コックス・オートモーティブの発表によれば2023年には118万9051台のEVが新車登録された。これは前年比46%という大きな伸びであり、新車登録全体の7.6%に相当する。

 しかし、前年比の伸び率で見ると、2021年には前年の32万台から66万台と倍増。2022年にはさらに98万台へと1.5倍に伸びた。そのため、2023年の数字はあまり元気がないように見える。

 一方で、調査企業各社の2024年EV販売成長予測では、前年比20~30%の増加と、より減速が見込まれている

 新車登録台数の予想はおよそ150万台となっており、全体におけるシェアは10~11%に達する。EVブームは減速しているものの、成長そのものは続くとの見立てだ。

■「EV販売は前年割れ」の衝撃予測

 ニューヨーク市のタウン誌『ニューヨーク・マガジン』は2月14日、「以前なら考えられなかった、『EV販売は2024年に前年割れするのか』という疑問が出ている」とショッキングな見出しを付けた記事を配信した。

 同記事をざっくりと要約すると、以下のようになる。「米国では2020年以来、年を追うごとにEV新車販売の記録が更新されてきた。2024年も伸長が予測されているが、それは過去の増加傾向が今後も続くとの大ざっぱな前提の上に組み立てられた推論に過ぎない」というのだ。

 事実、全米ディーラーにおけるEVの平均在庫日数は2023年12月末に113日分と、内燃機関車の69日分と比較して1.6倍のレベルに達している(顧客に直接EVを届ける米テスラを除く)。

 この理由は、2022年10~12月期より、ガソリン車やハイブリッド車の売れ行きがEVよりも良くなったためだ。つまり、適正水準を超えるEV在庫は一過性の現象ではなく、長期的トレンドである。

■大寒波でEVが動けなくなった

 大幅な値引き、高金利環境にもかかわらず0%に近いEV購入ローンの低金利、一部の北米産モデルに適用される連邦政府・州政府からの最大7500ドル(約115万円)の購入補助金など、さまざまなインセンティブがあるにもかかわらず、EVの多くのモデルは在庫が積み上がっているのである。

 こうした中、米国における2024年1月のEV販売台数は7万9517台と、前年の8万7708台を下回った。

 米国の一部を襲った大寒波で消費自体が押し下げられたこともあるが、その寒波でテスラをはじめ多くのEVが動けなくなったというニュースが大きく報じられた。その心理的影響もあった可能性がある。

 それに加えて、米メディアが連日のように「EV販売減速」を報じている。高価格・充電施設の不足・修理や保険代金の高さ・長い充電時間・リセール価格の暴落など、EV所有の欠点が大きくクローズアップされたことで、購入をためらう消費者が増えている可能性も考えられる。

■フォードのEV販売は11%低下

 こうした中、フォードのEV販売は2024年1月、前年同月比で11%低下。一方、韓国のヒョンデのEVは42%増加、その傘下の起亜も57%の伸びなど明暗が分かれた。

 だが2月中旬現在、「負け組」のフォードはEVピックアップトラックの「F-150 Lightning」2023年モデルを1万2500ドル(約188万円)もの超大幅値下げ、「勝ち組」のヒョンデも「IONIQ 5」の2024年モデルを7800ドル(約120万円)も値引きしている。

 このように、EVのインセンティブは過去1年間で平均取引価格(ATP)の6%から18%と3倍に引き上げられている。にもかかわらず、一般消費者の反応は弱い。

 バイデン政権は2032年に新車販売の67%をEVにするという目標を打ち出している。年間約1500万台の米新車市場において、67%は1005万台に相当する。

 2023年のEV販売実績は119万台なので、10年以内にEV販売台数を8倍以上に引き上げることになる。そのためには、毎年30%近い高成長をコンスタントに維持する必要がある。

■バイデン政権にも目標緩和の動き

 コックス・オートモーティブの予測では、米新車販売におけるEVの割合は、2023年の8%から2024年に10%へ伸び、2025年には15%に達するという。

 一方、米調査企業J.D.パワーの予測はさらに楽観的で、EVの割合は2024年に12%、2025年に18%だという。

 2社とも、年率30%の拡大をクリアするという予想で、バイデン政権の「2032年の新車販売の67%がEV」という目標が実現できると見ている。

 だが、当のバイデン政権はそう見ていないようだ。

 バイデン政権は2027年~2032年に乗用車排ガス規制を強化する計画を打ち出していたが、2027年~2030年分に限り、年間の排ガス削減基準を従来案より緩和する見通しだ。

■事実上「EV以外のクルマは売るな」

 バイデン政権の厳しい基準を満たさないクルマは、1台の販売につき、最大4万5268ドル(約679万円)という極めて懲罰的な罰金が課される。事実上「EV以外のクルマは売るな」ということだ。EV補助金という「アメ」に対する「ムチ」である。

 だが、政府が国民の買うモノを決めるのは、市場経済において消費者の選択の自由を奪うことになる。

 その「消費者」から見ても、あるいは売れないEVを赤字覚悟で作らなくてはいけない「メーカー」から見ても、EV在庫が積み上がる「ディーラー」から見ても、このバイデン政権の計画は非現実的なものだ。

 どれだけ多くのEVを作っても、消費者が買ってくれなければ「取らぬたぬきの皮算用」だ。

 事実、バイデン政権はその急進的な政策が消費者・メーカー・ディーラーすべてから反発を受けている。前述の排ガス規制計画の緩和は、そうした反発の結果、譲歩を迫られた形だ。

■マジョリティ層に売れていない

 裕福さで上位10%ほどに相当するアーリーアダプター(初期導入層)によるEV購入は一巡している。一方、一般的な購入層であるアーリーマジョリティ層や、それらの消費者からさらに遅れるレイトマジョリティ層は、現状たくさんあり過ぎるEVの欠点が大きく改善されない限り、EVの購入を急がないだろう。

 そうした傾向が、EV販売の減速と在庫の積み上がりとなって表れている。

 2025年から2026年には、多くのメーカーからEVの廉価モデルが出揃うと見られている。また、充電スタンドの数も順調に増加し、航続距離など性能も改善されていくだろう。

 だが、アーリーアダプターと違い、一般消費者はトータルな保有コストや利便性を重視する。そうしたマジョリティ層の大半にとって、EVはライフサイクルの環境合理性や経済合理性において、明確にハイブリッド車を凌駕するには至っていない。

■ハイブリッド車は51.4%も増加

 こうした中、米国で販売実績を着実に伸ばしているのが、ガソリンエンジンを持つハイブリッド車である。

 1月のハイブリッド車(充電は車の運転やブレーキエネルギーの回生のみ)の販売台数は9万970台と、前年同月から51.4%も増加しており、販売台数が前年割れしたEVと好対照を成している。

 なお、米国において飛ぶ鳥を落とす勢いで売れているハイブリッド車の販売台数の53.6%を占めているのが、日本のトヨタ自動車である。

 これに加えて、プラグインハイブリッド車(内燃機関を持ち、バッテリー充電は外部の充電器から行う)が2万5741台売れたため、合わせて11万6711台が登録されたことになる。

 EVの7万9517台に対して、ハイブリッド車はおよそ3万7000台もの差をつけている。

 オンラインのクルマ購入アプリCoPilotのパット・ライアン最高経営責任者(CEO)は、「一般消費者はハイブリッドを選好しているため、販売が白熱している」と解説する。2023年通年でも、新車販売台数においてハイブリッド車がEVよりも優勢だ。

 一般消費者も、意識の高いアーリーアダプターと同様にエコなクルマを求めていると思われる。だが、EVの欠点がいまだに大きすぎることから、ガソリン車の経済性と利便性とバッテリーのエコさを兼ね備えたハイブリッドタイプに流れていると見て間違いないだろう。

■EVの代わりにガソリン車を購入する動きも

 「EV不人気」という現実を目の当たりにして、米自動車大手ビッグスリーのゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティスなどもEV生産計画を縮小し、ハイブリッド車開発に大きく舵を切っている。

 米レンタカー大手のハーツに至っては、保有するEVの3分の1に相当する2万台を売却し、代わりにガソリン車を購入するという。

 米マーケティング企業のGBKコレクティブのジェレミー・コースト社長は、「一般消費者は、EVに乗るためにEVを購入するのではない。クルマは彼らの予算とライフスタイルのニーズに合致している必要がある」と指摘する。

 単にEVの価格が下がり、充電ステーションが増えても、トータルなエクスペリエンスの満足度が低いままであれば、EVシフトは起こらないのだろう。

 米ニュースサイトのアクシオスが12月6日付の論評で、次のようにまとめている。「自動車メーカーがピカピカの魅力的なEVを推しているのに、消費者は内燃機関車からハイブリッド車への乗り換えを選択している。EVシフトのペースを決めるのは、政治家や規制当局やメーカーではなく、当の消費者だ」。この見立ては当たっているように見える。

 さらに2月28日には、米ニュースサイトのビジネスインサイダーも、「ハイブリッド車推進に関して、トヨタは常に正しかった。(米国の自動車の都の)デトロイトは、トヨタに謝罪する必要がある」と見出しを打った記事を掲載した。一部の米国人は、自分たちがトヨタを「時代の流れに逆らう反動的な会社」と批判していたことを反省し始めている。

 こうして見てくると、少なくとも「この先10年間で米国ではEVシフトが完了する」とする論調は誇張が多いと思える。

 1月の新車販売でEVが前年割れする一方で、ハイブリッド車が前年同月から大幅に増えている足元の傾向は、今後も続くのではないか。

 トヨタ自動車の豊田章男会長の「EVの市場シェアは最大でも3割、残りはハイブリッド車など」という未来予測のほうが、より現実的であろう。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏