豊田自動織機エンジン不正に関する稼働再開について
株式会社豊田自動織機(以下、豊田自動織機)のディーゼルエンジン不正について、長らくお待ちいただいているお客様をはじめとする全てのステークホルダーの皆様に多大なご迷惑・ご心配をおかけしておりますこと、深くお詫び申し上げます。
2月27日、国土交通省より、豊田自動織機製のディーゼルエンジンの出荷停止を解除する旨の公表がありました。
トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は豊田自動織機のディーゼルエンジンにおける認証不正により、一部の生産ラインの稼働を停止しておりました。今回の国土交通省の公表を踏まえて、豊田自動織機よりエンジンの供給を受け、いなべ第1ライン、岐阜車体第1ラインを3月4日より生産再開することを決定しました。これにより、国内はすべての工場での生産を再開し、国内仕向けの車両の出荷を再開することとなります。
トヨタとして、豊田自動織機が原点に立ち戻り、エンジン事業の再生に取り組むことを継続的にサポートしてまいります。また、グループ全体の取組みとして、安全と品質が最優先で徹底されるよう、いま一度見直しを図っていきます。
生産再開の車両一覧
生産ライン |
織機不正対象エンジン搭載車両 |
その他 |
いなべ工場第1ライン |
ハイエース、エース、グランエース |
アルファード、ヴェルファイア |
岐阜車体第1ライン |
ハイエース、エース |
救急車 |
ランドクルーザー300(吉原工場で生産)は海外向けで生産再開済。今回、国内仕向も再開。
ハイラックス(トヨタ・モーター・タイランドで生産)は3月4日から出荷再開。
トヨタの「源流」に何が起きたのか、エンジンめぐり長期の不正
トヨタグループの「源流」、すなわちトヨタ自動車を生んだ企業が起こしたことから世間を騒がせている豊田自動織機の品質不正。対象はフォークリフトなどに搭載する産業車両用エンジンおよび自動車メーカーに納入するエンジンである。排出ガス規制に対する検査内容が法規に違反しており、機種によっては規制に適合しない状態で出荷されていた。
ただ、B to B(企業間取引)を中心とした製品であることもあって、不正の中身が複雑で分かりにくいという特徴がある。同社は一体、何をしたのか。10の疑問とその回答の形で解説する。
Q1 不正の中身は?
フォークリフトおよび建設機械向けの[1]産業車両用エンジンと、[2]自動車用エンジンで不正が見つかった。このうち、[1]の産業車両用エンジンでは、エンジンの「劣化耐久試験」における法規違反と、排出ガスの規制値の超過が発覚した。道路運送車両法に基づく一酸化炭素等発散防止装置の装置型式指定(国内認証)の申請において義務付けられた試験だ。劣化耐久試験とは、エンジンを一定時間運転させて劣化させた条件でエンジンの排出ガス性能を確認する試験である。
不正が見つかった産業車両用エンジンは(1)フォークリフト向けが9機種で、(2)建設機械向けが2機種。(1)のフォークリフト向けにはディーゼルエンジンとガソリンエンジンがある。このうちディーゼルエンジンには「1KD」「1ZS」「旧(旧型の意味)1DZ」「3Z」「15Z」の5機種が、ガソリンエンジンには「4Y」「1FS」「旧4Y」「1FZ」がある(図2)。一方、(2)の建設機械向けはディーゼルエンジンだけで、「1KD」と「旧1KD」の2機種である。
これらのエンジンについて5種類の不正行為が認められた(表1)。開発段階での認証取得時(劣化耐久試験時)と、量産段階での工場における抜き取り検査時(量産抜き取り検査時)である。認証取得時においては、①実測値と異なる数値の使用、②試験中における部品などの交換、③量産品と異なる制御ソフトウエアを組み込んだECU(試験用ECU、ECUはEngine Control Unit)の使用、④複数の測定値からの値の選択──の4種類の不正が見つかった。一方、量産抜き取り検査時には、⑤国土交通省に提出した社内規定とは異なる頻度での検査および試験用ECUの使用などの不正を行っていた。
[2]の自動車用エンジンでは、自動車型式指定(および一酸化炭素等発散防止装置の装置型式指定)の申請時に必要なエンジンの出力測定で不正が見つかった。「1GD」と「2GD」、「F33A」の3機種で、これらは全てトヨタ自動車が豊田自動織機に開発を委託しているディーゼルエンジンである(図3)。
具体的には、試験用ECUを使用して制御パラメーター値を操作し、最高出力点を含む一部の回転数領域において、燃料噴射量を調整していた(表2)。これにより、測定値が安定するようにばらつきを抑え、出力・トルクカーブを「見栄えの良いデータ」(特別調査委員会)にしていた。
ただし、出力試験以外の自動車の型式認証業務はトヨタ自動車が行っており、同社は工場で生産された量産エンジンの性能も確認。その結果、「出力の基準を満たしている」(トヨタ自動車)ことが分かっている。
トラブルの再発を防ぐには
「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
日本企業で相次いでいる不正や事故。その再発を防ぐには、まず「なぜなぜ分析」を実施し、真因(問題を引き起こした本当の原因)にたどり着くまで繰り返す必要があるとうかがいました。続いて、管理者が自ら「現地・現物」を実践し、「問題の本質」に迫ることが重要だと学びました。この後、どのようにしたら不正や事故をなくせるのか、そのポイントを教えてください。
編集部:前回までになぜなぜ分析で押さえるべき点と、管理者が現地・現物を実践する重要性を学びました。ここまでできたとして、次はどうしたら不正や事故といったトラブルの再発を防止できるのでしょうか。
肌附氏—なぜなぜ分析で深掘りして真因にたどり着き、さらに管理者が自ら現地・現物を実践して「問題の本質」に迫ったら、ようやく問題解決に向けて進みます。トヨタ自動車の場合、問題が発生した場合の解決手順は決まっています。
まず、問題の現状を把握します。背景に何があり、問題点は何かを探ります。こうして問題の分析を行い、その原因を追究します。原因が分かったら、対応策を立案します。こうして対応策に関する実施計画を立てた後、人員を整えて対応策を実行に移します。そして、結果の検証を行い、問題のないレベルまで達していることを確認したら、それを再発防止策として評価するのです。最後に、似たような問題が他のところでも起きないように「横展開」し、全社的な再発防止に努めます。
不正や事故の再発防止に対しても、この問題解決の手順は変わりません。
編集部:その問題解決の手順だけを見ると、必ずしも特別なものというわけではなさそうです。何らかの問題を解決する際に、多くの企業が取り組んでいそうな手順にも思えます。徹底ぶりの差でしょうか。
肌附氏—それは言えると思います。これまでに私も何度か言及してきましたが、いわゆるトヨタ流の施策とはいっても、他のどの企業にも見られない画期的な考え方で生み出されたものは、実はほとんどありません。
その典型例はトヨタ生産方式です。多くの人は「あれはトヨタにしかできない」「うちでは難しい」などと言いますが、元をたどると、かつてトヨタ自動車に財務的な余裕がなく、ムダをできる限り省いてクルマを造らないと生き残れなかった時代がありました。そこで、売れ行き(注文)に応じて造るためにどうしたらよいかと考えた結果、「ジャスト・イン・タイム(必要なものを、必要なときに、必要なだけ造ること)」と「自働化(不良品の発生を防ぐこと)」という発想に行き着いたのです。
独特な言葉を使っているかもしれませんが、製造業の企業であれば、考え方自体は非常に納得がいくものだと思います。実際、ジャスト・イン・タイムや自働化という言葉は使っていなくても、似たような考え方で生産ラインを運営している企業は多いはずです。そうした企業とトヨタ自動車との違いはどこにあるかといえば、「いかに徹底するか」くらいでしょう。これと同じことが問題解決の手順にも言えると思います。
豊田自動織機、不正の真相
不正問題に揺れる豊田自動織機。トヨタグループの「源流」、すなわちトヨタ自動車を生んだ企業が起こしたことから世間を騒がせている。フォークリフトなどに搭載する産業車両用エンジン、および自動車メーカーに納入するエンジンにおいて認証不正が見つかった。影響は大きい。産業車両用エンジンでは、豊田自動織機が生産している現行の6機種のうち主力の5機種が型式指定を取り消された。一方、自動車用エンジンでは、トヨタ自動車と日野自動車、マツダに供給する計10車種が一時、出荷停止に陥った。産業車両用エンジンでは2007年から、自動車用エンジンでは2017年から不正が行われていることが判明している。まさに、量産メーカーとして失格の烙印(らくいん)を押された状況だ。なぜ豊田自動織機は不正に手を染めたのか。その真相に迫る。
法規制を順守する姿勢が欠けており、法規施行当初から不正に手を染めていた。
認証試験専用のECU(試験用ECU)で立ち会い試験に臨んだ点には、排出ガス性能を操作する意図が疑われる。
豊田自動織機にはエンジンの量産メーカーが備えるべきコンプライアンスだけではなく、技術力とノウハウも不足している。
「量産メーカー失格」─。豊田自動織機の不正について、自動車技術に詳しい専門家は異口同音にこう評価する。その不正の中身を見ると、エンジンを生産するメーカーとしての体を成していないことが分かる。同社はフォークリフト用エンジンに対して排出ガスの法規制が施行された当初から不正に手を染めていた。これにより、少なくとも16年間、不正を継続・隠蔽していたことが特別調査委員会の調査で判明した。
専門家が豊田自動織機に量産メーカー失格の烙印(らくいん)を押す理由は2つある。第1の理由は、法規制を順守する姿勢が欠落しているからである。
法規制の当初から不正
産業車両用エンジンの排出ガス規制は2000年以降に本格化した。国交省は2001年8月に道路運送車両の保安基準の一部を改正。公道を走行するフォークリフト(などの特殊車両)に搭載するディーゼルエンジンに対して、2003年10月1日から排出ガス規制を開始した*1。これは「第一次規制」と呼ばれるものである。
*1 2005年12月にはガソリンエンジンにも同規制を拡大した。
続いて、同省は2005年5月に特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律(オフロード法)を制定。2006年10月1日以降、公道を走行しないフォークリフト(などの特殊車両)に搭載するディーゼルエンジンとガソリンエンジンにも排出ガス規制を課した。定格出力に応じて順次、排出ガス規制を広げるもので、これを「第二次規制」と呼ぶ。ここで義務付けられたのが、劣化耐久試験の実施である*2。
*2 道路運送車両法(車両法)に基づく一酸化炭素等発散防止装置の装置型式指定を申請する際に必要となった。一酸化炭素等発散防止装置は、排出ガス中の規制物質を規制値内に収めるための装置のこと。法規では、ディーゼルエンジンについては一酸化炭素(CO)と非メタン炭化水素(NMHC)、NOx、PMを、ガソリンエンジンについてはCOと炭化水素(HC)、NOxを規制値内に収める必要がある。
すなわち、2006年10月1日から産業車両用エンジンを造るメーカーには、劣化耐久試験を実施することが法律で義務付けられたのである。
ところが、豊田自動織機はこの法律の施行を軽視し、対応に向けた技術開発やノウハウの蓄積を怠った。役職者に向けてしかるべき教育や訓練を施すこともなかったと報告書は記載している。
こうした状態だったため、豊田自動織機の産業車両用エンジンでは2007年に認証申請したディーゼルエンジンおよびガソリンエンジンから不正行為が見つかっている。すなわち、法規制がスタートした当初から同社は不正に手を染めていたのだ。だからこそ、16年間という長期にわたって不正が続いたのである。
本来は、排出ガスの規制強化を予測して技術開発を行い、ノウハウを積み上げて施行日までに法規制を満たせる技術力を身に付けるべきだった。同社の行動は量産メーカーとして「あるべき姿」から乖離(かいり)していた。
一方の自動車用エンジンについては、トヨタ自動車のディーゼルエンジンの開発機能を順次、豊田自動織機に集約するとの決定が2014年にあった。以降、本格的にトヨタ自動車からディーゼルエンジンの開発を委託されるようになった。トヨタ自動車の佐藤恒治社長によれば、開発を委託するに当たってトヨタ自動車は豊田自動織機に手順書を渡し、ディーゼルエンジンを開発する技術とノウハウを提供している。にもかかわらず、出力試験における不正は2017年に認証申請したディーゼルエンジンから行われていた。
すなわち、自動車用エンジンについては、トヨタ自動車から委託された開発を本格的に展開するようになった当初から豊田自動織機は不正に手を染めていたというわけだ。こうして、同社における自動車用エンジンの不正は6年間に及んだ。
産業用エンジンはほぼ全滅、許可の再取得は「いばらの道」
国土交通省は「特に悪質な不正行為」(同省)があった3機種の産業車両用エンジンに対して型式指定を取り消した。
現行の産業車両用エンジン6機種のうち、2023年4月に取り消しとなっている2機種と合わせて計5機種が型式指定取り消し処分となった。このうち3機種は排出ガスの規制値の未達、残る2機種は「試験用ECU」の不正使用が処分理由。
型式指定の再取得は「いばらの道」。技術力の不足が懸念されるため、再取得に数年かかる可能性がある。実際、日野自動車は不正発覚から2年あまりが経過したが、いまだに再取得できていないエンジンがある。
「量産メーカー失格」の烙印(らくいん)を国土交通省が押した─。同省は2024年2月22日、豊田自動織機に対して是正命令を発出した。道路運送車両法第76条の規定に基づく国土交通省令の規定違反が判明したためだ。
具体的には、フォークリフトや建設機械に搭載する産業車両用エンジンの型式指定申請における不正および排出ガスの規制値の超過が理由だ。
国土交通省が行政処分
是正命令は、法令違反に対する行政処分。道路運送車両法に基づく型式指定は、クルマやエンジンに対して安全および環境の基準を満たし、なおかつ均一性を持って生産できると認められるものを指定して、それを大量生産しても構わないと認める制度である。つまり、型式指定は安全と環境の基準を満たす製品を大量生産できる体制にある企業に認められる。
国土交通省は豊田自動織機に対し、「その体制ができていないと判断した。従って、それを直せということ」(同省)だ。すなわち、同社が今回、是正命令を受けたというのは、エンジンを量産するメーカーの体を成していないと法律的に判定されたということを意味する。
豊田自動織機には、国土交通省が定めた「講じるべき措置」を含む再発防止策を策定し、1カ月以内に報告する義務が課せられた。講じなければならない措置は以下の3つ。[1]会社全体の業務運営体制の再構築、[2]エンジン・車両開発全体の業務管理手法の改善、[3]不正行為を起こし得ない法規・認証関連業務の実施体制の構築─である(表)。同社は、1カ月後の3月22日に再発防止策を発表した。
トヨタグループで是正命令を受けたのは、日野自動車とダイハツ工業に続いて3社目である。こうした事態に対し、「トヨタグループに対する信頼性を著しく損なう事件だ。同グループのものづくりの基盤に亀裂が入っていないかとても心配している」という声がトヨタ自動車OBからは上がっている。
注目すべきは、今回の是正命令に併せて、国土交通省が新たに型式指定の取り消し処分を決めたことだ(図1)。これにより、豊田自動織機が生産している現行の産業車両用エンジンは、全6機種のうち主力の5機種が型式指定を取り消される事態となった*。
トヨタの佐藤CEO、波乱に満ちた就任1年目-EV失速や不正対応
トヨタ自動車の佐藤恒治社長(54)が就任から1年を迎えた。その間、多くの企業トップが生涯で経験するよりも多くの浮き沈みを乗り越えてきた。
昨年4月1日の就任直後、佐藤社長は電気自動車(EV)の導入に消極的だと長年批判されてきたトヨタが今後数年内にEVを本格的に導入していくと公言して脚光を浴びた。それから数カ月後には需要の低迷でEVブームの失速が指摘されるようになり、トヨタは逆にハイブリッド車(HV)にこだわってきたことで称賛されるようになった。
2023年にトヨタが販売・生産台数と株価で過去最高を更新する一方、ダイハツ工業や豊田自動織機などグループ会社の検査不正が発覚。その謝罪や対応にも追われた。
ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは、就任一年目としては「すごく難しい年」だったと思うと述べた。
佐藤社長は就任直後の会見で、トヨタが26年までにEVを年間150万台販売すると述べた。これは、30年までに350万台のEVを販売し、35年までに排出量を半減させ、50年までにカーボンニュートラルを実現するという従来のトヨタの公約の延長線上にあるものだった。
こうした考え方は創業家出身で佐藤社長の前任者を務めた豊田章男会長が広めたものだ。世界的なEVシフトは一朝一夕には実現せず、その間、顧客にHVや水素、内燃機関を含む幅広いパワートレインの選択肢を利用できるようにすべきだとしている。トヨタは高級車ブランドであるレクサスを、中国のBYDや米テスラといったEVの世界的なトップランナーに追いつくための広範な計画における先鋒(せんぽう)として位置付けている。
また、次世代の有力な技術とみられている全固体電池を開発し、車体などの大型部品を鋳造プレスで一体成型する「ギガキャスト」を含めた画期的な製造方法の開発を追求する戦略についての佐藤社長による詳細な説明も示唆に富んでいた。
BIの吉田氏は「これを言ったから競争優位が失われる、損なわれる、弱くなるとは思ってないのだろう」とし、トヨタの自信のあらわれではないかとの印象を持ったという。
トヨタは昨年、グループ全体で世界で1100万台以上を販売し、独フォルクスワーゲンを抑えて4年連続でトップの座を守った。
しかし、昨年末に発覚したダイハツの新たな不祥事で複数車種の生産ラインが一時、停止を余儀なくされたことでその勢いは揺らいだ。この問題を受け、佐藤社長は、グループ全体の再編を視野に入れながら、上層部の再教育などを行うと述べた。
24年は多くの点で好調だった昨年から一転、トヨタにとってやや精彩を欠く年になると投資家は予想している。新型コロナウイルス禍以降の好況は一段落して新しい常態に落ち着き、サプライチェーンも安定すると見込まれている。
需要が低迷する中、市場が注目しているのは世界最大のEV市場である中国での普及を促進するための中国政府の政策対応と、米国の政治サイクルだ。今年の米大統領選でトランプ氏が当選すれば、EVか否かにかかわらず、トヨタなど外国メーカーの自動車を買おうとする米国の消費者の意欲に深刻な打撃を与える可能性がある。米国はトヨタにとって大きな市場であり、売り上げの約35%を占めている。
トヨタを巡る経営環境が変化する中、これまで以上に佐藤社長の真価が問われることになりそうだ。
トヨタ、世界生産1千万台届かず 過去最高も認証不正響く
トヨタ自動車が25日発表した2023年度の世界生産台数は、前年度比9・2%増の997万1739台と過去最高を更新した。グループの豊田自動織機の認証不正を受けた完成車工場の停止などが響き、計画していた1010万台には届かなかった。
世界販売台数は7・3%増の1030万9457台と、年度ベースで初めて1千万台の大台を超えた。一方で、完全子会社ダイハツ工業の認証不正でトヨタへの車両供給が滞り、1040万台の計画は未達となった。
これまで世界生産、販売の最高は22年度の913万1596台、961万5台だった。
年度を通じて北米や欧州、日本での需要が堅調だったことが、生産、販売の過去最高更新に寄与した。ただ中国での販売競争激化やアジアの経済低迷の影響も受けた。
ハイブリッド車の世界販売は355万7609台で過去最高だった。新たに車を購入する客の需要がハイブリッド車に移行し、北米・欧州を中心に伸びているという。電気自動車(EV)は3・1倍の11万6654台だった。
グループで不正問題相次ぐトヨタ この春、労使で話し合われたこと
トヨタ自動車の今春闘は3月13日、労働組合側の過去最高水準の賃上げ要求に対して満額を回答し、妥結した。しかしトヨタ労使が今春闘で時間を費やしたのは、賃金ではなく、働き方。ダイハツ工業や豊田自動織機などトヨタグループで認証不正問題が相次ぐ中、トヨタの現場でも「このままでは品質の維持が危うくなる」という状況が起きており、経営側も危機感を持っていたためだ。トヨタ労使は今春闘で何を話し合ったのか。
現場に負荷「もう放置できない」
トヨタの2024年3月期連結決算の業績予想は、最終(当期)利益が4兆5000億円と日本の製造業として過去最高に達する見通し。その存在感から、トヨタは長年「春闘のリード役」とされてきた。
過去2年の春闘では、豊田章男社長(現会長)が初回の労使協議会で「満額回答」の意向を表明。新型コロナウイルス禍と半導体不足で閉塞(へいそく)する自動車業界に、賃上げムードを広げる狙いがあった。
ダイハツの小型車、親会社のトヨタが開発・認証に責任…衝突試験の不正で体制変更
ダイハツ工業は8日、衝突試験の不正問題に関連し、再発防止策として、親会社のトヨタ自動車が小型車の開発や認証について責任を持つ体制に変更すると発表した。
トヨタからダイハツが委託を受ける形で、小型車の開発を担う形態にするという。
小型車の開発・認証責任はトヨタに ダイハツ、不正で体制にメス
ダイハツ工業は8日、認証不正問題を受けて、小型車の開発や認証の責任は親会社のトヨタ自動車が持つ体制に改めると発表した。ダイハツはできるだけ軽自動車の事業に集中する。同社の負担を減らし、不正の再発防止を図る。
「ダイハツ存続、社会から認められないのでは」トヨタが悩んだ再建策
同日発表した新たな事業方針に盛り込んだ。
国内外向けの小型車の生産では、これまではダイハツが開発、製造から認証までをトヨタから任され、OEM(相手先ブランドによる生産)供給してきた。
5月1日以降は、開発は引き続きダイハツが担うが、その日程や人員の管理などは、認証試験の手続きとあわせてトヨタが担う。国内の軽自動車は開発から認証までをダイハツが行う。