プロの塾講師が教える、「子どもの計算力を伸ばす」ために言ってはいけない「NGワード」

プロの塾講師が教える、「子どもの計算力を伸ばす」ために言ってはいけない「NGワード」

 子どもにとって計算力を身につけることができれば、その後どんな学習をする際にも、基本的なスキルとして役立つでしょう。一方で、親が無理にプレッシャーをかけてしまうと、幼いうちに計算嫌いになってしまう危険性もあります。学習塾代表、大学講師として精力的に活動し、『計算力を強くする』シリーズなど、計算に関するさまざまな書籍も執筆している鍵本聡さんによると、「計算ができる子の多くは一喜一憂しない」のだそうです。今回は、計算力が高い子の特徴についてお聞きします。

点数が悪くても気にしすぎないことが重要

 私は学習塾をしているので、さまざまな生徒の様子をみています。その中で、やはり「やらされている感」のある子は、どんどん点数も落ちてしまうんですよね。まず、算数とか数学が楽しくないって思ってしまっていて、そうなった原因は親とか周りにあるのかもしれないと感じます。

 最近特に感じているのは、点数が悪いことについても気にしてはいけないということです。どうしても点数は数字で出るので、比較しやすいという特徴があります。でも、それにばかり固執してしまうと、かえって点数がついてこない可能性があるんです。

 例えば野球の試合でも、相手が強いからと言って「どうしよう」とばかり考えていたら、なかなか点を取ることができないでしょう。ただ、楽しもうと思って行って、初めて点が取れることも、往々にしてあることなんです。

最大の壁は「なんで点数が取れないの」の一言

 特に子どもが計算力を伸ばしにくいワードは、「なんで点数が取れないの」というものです。それを言われた子どもは、どうしても計算嫌いになってしまいがちなんですよね。だからこそ、まずは、点数で一喜一憂してはいけないんです。もちろん、点数を取るために努力しなくてはいけないんですけどね。

 ただ、努力をしたからと言って、必ず結果がついてくる訳ではありません。点が取れなかったことについても、もちろん反省はしなければいけないけれど、イヤイヤ反省させられていたら意味がないんですよね。間違えた問題を全部赤ペンで埋めて持ってきなさいとか言っている先生もいるけれど、私はあまり意味がないと考えています。

 本当にやるべきことは、「もう一回後から試験をするから、できなかった問題については、ちゃんと再度勉強してきましょう」と声をかけることだと思います。「わからなかったら自分のところに持ってきてください、優しく教えてあげますよ」とお知らせする。楽しくワイワイ教えることもあるでしょうし、「先生でもここの計算できひんねん」とか交流しながら、でも、きちんと着実に優しく教えてあげる。難しいんですけれども、それをやっぱりしてあげないとだめですね。

「幸せ感」がないと計算には打ち込めない

 私は、算数ってすごく人間の感情と直結しているところがあると考えているんです。好きだなと思わないと、なかなか入ってこないと思っています。そして、好きだという感情には、さらにその手前があって、「幸せ感」がないと、好きにはなりにくいと思うんです。つまり、「自分は幸せだ」という感情です。

 もしもお金がなくて食べるものさえなかったら、「算数を楽しくやりましょう」と言っても、難しいですよね。算数をしている余裕はないでしょう。なんといっても、学習するためには心の平穏が重要なんですよ、実は。

「勉強しろ」とあえて言わない

 優秀な人ほど、「昔から1回も勉強しろと言われたことはないです」っていう人が多い印象があります。特に、数学ができる人っていうのは大概あまり無理強いされていないと思います。無理に算数の点数を伸ばそうとするのが一番良くなくて、楽しく勉強することと、自分のペースでゆっくり勉強するということがすごく重要なんです。

 塾生の中には、「算数や数学が嫌いです。どうすれば点数が上がりますか?」っていう人も多くいます。数学塾とは思えない発言ですが、勉強が嫌いな人には、あえて「勉強しよう」と僕はあんまり言わないんです。

 うちの塾にくると決めた段階で、すでにやる気にはなっている子も多いので、そこからは早い。ただ、中には宿題を見せたがらない子や自分が書いた答案を見せたがらない子もいるんですよね。おそらく、「点数が悪い=よくないこと」だと、もう身に染み付いて思ってしまっているんだと思います。だからこそ、「なんでできないの?」「勉強しなさい!」ということが、悪く作用してしまうこともあると感じるんですよね。

 だからこそ、「勉強しろ」ではなく、「楽しんでやろう」と声がけすることが、算数や数学が上達する一番の近道だと私は考えています。

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