能登半島地震、通信障害が長期化している理由 取れる対策は?ドコモとKDDIが「船上基地局」

能登半島地震、通信障害が長期化している理由 取れる対策は?

 能登地方を震源とする地震を受け、石川県内で携帯電話などの通信障害が続いている。2011年の東日本大震災では停電で基地局から電波を送れなくなるトラブルが長期化した。NTTドコモなど通信各社はそれを教訓に予備電源などの災害対策を講じてきたが、なぜ復旧のめどが立たないのか。

 ◇東日本大震災を教訓に

 ドコモとKDDI(au)の携帯電話は6日午後2時の時点で、石川県の七尾市、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町の5市町の一部地域で、音声通話やデータ通信が利用できないか、つながりにくい状態が続いている。ソフトバンクは輪島市、珠洲市、穴水町、能登町の4市町、楽天モバイルは七尾市、輪島市、珠洲市、宝達志水町、穴水町、能登町の6市町の一部地域で同様の通信障害が出ている。総務省によると、6日午後2時半時点で4社の計603の基地局が停波している。

 各社の障害は地震が発生した1日午後4時10分ごろから続く。地震の揺れによって地中などに敷かれた配線設備が故障したことや、基地局の停電が原因だ。

 こうした事態に備え、各社はいろいろな対策を取ってきた。11年3月の東日本大震災では最大約2万9000の基地局が停止し、約8割は停電が原因だった。このため一部の基地局には予備電源のバッテリーが配備され、県庁や市町村の役場などがあるエリアでは発電用のエンジンなども導入して停電しても通信が途切れない対策が取られた。

 ◇予備電源、大ゾーン基地局を配備

 また、ドコモは大規模な災害に備え、半径7キロほどの広範囲をカバーできる「大ゾーン基地局」を全国に設置してきた。通常の基地局のカバー範囲は数百メートル~数キロにとどまる。北海道のほぼ全域が大規模停電に陥った18年9月の北海道胆振東部地震では、釧路市の大ゾーン基地局を全国で初めて稼働し、丸一日ほどの通信環境を確保した。

 それにもかかわらず、今回の地震で障害が続いている。その理由の一つは、大ゾーン基地局の設置場所が各都道府県の人口が密集した2カ所程度に限られることだ。今回の被災地は石川県内に設置された基地局から遠く、カバー範囲外になっているとみられる。二つ目の理由は予備電源の多くは稼働時間が24時間程度で、今回は停電が長引き、「燃料切れ」となったためだ。

 ◇道路渋滞で電源補給できず

 このため、通信各社は移動式の基地局に加え、移動電源車や発電機を被災地に向かわせ燃料切れを回避しようとしている。しかし、道路は各地で寸断され渋滞が起きており、これが障害の三つ目の要因となっている。KDDIの担当者は「人やモノはあるのに、渋滞がネックで運ぶのに苦労している」とこぼす。

 固定電話の通信設備でも燃料切れが起きている。NTT西日本によると、6日午前9時の時点で輪島市や珠洲市の一部では非常用電力の枯渇によって、固定電話や光回線のインターネット接続サービスが使えない状態が続いている。

 ◇船や衛星に期待

 こうした中、活躍が期待されるのが船や衛星を使った通信だ。ドコモとKDDIは6日から共同で輪島市沖の船上で基地局の運用を始めた。衛星アンテナで受信した電波を輪島市の沿岸地域に届け、障害の復旧を図っている。KDDIが船上基地局を運用するのは、千葉県などに大きな被害をもたらした19年9月の台風15号以来となる。ドコモは初めてで数キロの範囲をカバーできるという。

 KDDIは24年内にも米スペースXが開発した衛星通信サービス「スターリンク」と個人のスマートフォンを直接つなぎ、空が見える状況であれば山間地などの圏外エリアでも通信が可能になるサービスを始める予定で、災害時にも役立ちそうだ。

 ◇Wi-Fiを無料開放

 一方、公衆無線LAN(Wi―Fi)などネットの接続環境があれば、安否確認や情報収集は可能だ。16年4月の熊本地震以降、携帯4社は自社のWi―Fiスポットを災害時に誰でも無料で使えるようにする「00000JAPAN」(ファイブゼロジャパン)を開始。今回の地震でも石川、福井、新潟、富山の各県で無料開放している。

 無料通信アプリ「LINE(ライン)」は、震度6以上の災害時にホーム画面からワンタッチで登録した「友だち」に安否を知らせるサービスを提供している。

被災地の通信障害、全面復旧見通せず 安否不明者の増加の要因に

 最大震度7を観測した能登半島地震で安否不明者が多くなっている要因の一つに、通信障害で連絡がつかないことがあるとみられる。石川県内の一部では、電話やインターネットなどがつながりにくい状況が今も続く。全面復旧の時期が見通せないなか、通信各社は応急的な手当てを急いでいる。

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯大手4社では、1日午後4時ごろから音声通話やデータ通信が利用できないか、利用しづらい状況が続いている。

 通信障害の原因は、光ケーブルなどの設備の損傷や電波を届ける基地局の停電だ。総務省によると、電波を出せない基地局は5日午後3時45分時点で、4社合計で約660局に上る。

 KDDIの高橋誠社長は5日、取材に「(交通渋滞などで)被災地にアプローチするのが大変。光回線が切れていて、基地局がなかなか回復できない」と話し、復旧が困難な状況を説明した。

 復旧を進める一方、新たな通信障害も起きている。NTT西日本は、停電している被災地の通信設備で蓄電池や発電機などの非常用電源を使って通信機能を維持してきた。だが、輪島市や珠洲市の一部では蓄電していた電気が枯渇し、固定電話やインターネットなどの通信サービスが途絶えるエリアも出てきている。

 通信障害が長引いていることから、松本剛明総務相は5日の省内の会議で「通信インフラは災害対応にとって大変重要。総務省が主導して必要な機材、燃料、人員の搬送を積極的に支援するなど速やかな復旧を進めてください」と指示した。

 通信障害の解消に向け、通信各社は移動電源車や移動基地局車などを全国から集めているほか、KDDIは人工衛星による通信サービス「Starlink(スターリンク)」も活用して応急的な対応にあたっている。

ドコモとKDDIが「船上基地局」、能登半島地震

 NTTドコモとKDDIは、6日午後、船上基地局の運用を開始する。令和6年能登半島地震を受けた共同での取り組みで、石川県輪島市町野町沿岸付近において、ドコモ回線(MVNO含む)、au回線(UQ/povo、MVNO含む)が利用できるようになる。

 今回の船上基地局は、NTTドコモグループのNTTワールドエンジニアリングマリンの海底ケーブル敷設船「きずな」にドコモとKDDIの携帯電話基地局を設置したもの。

 NTT(持株)とKDDIは2020年9月、それぞれが保有するケーブル敷設船に互いの基地局設備を搭載することで連携協定を締結していた。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏