足全体が紫色のポツポツに覆われてゾンビのように…大人でも感染する「溶連菌」合併症の恐ろしさ

足全体が紫色のポツポツに覆われてゾンビのように…大人でも感染する「溶連菌」合併症の恐ろしさ

 のどの炎症や発熱などを引き起こす、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)が全国的に広がっている。東京都は21日、感染症法が施行された1999年以降初の「警報」を発表した。溶連菌感染症といえば、おたふくかぜや水ぼうそうのような「子どもの病気」のイメージがあるが、実は大人もかかることがある。重篤な合併症に苦しんだ男性のケースから見えた、溶連菌の意外な“恐ろしさ”とは。(記事には「閲覧注意」の画像が含まれています)

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 メディア業界で働く40代男性のAさんは、6年前のある日の会社帰り、突然足に強烈な違和感をおぼえた。「なんだろう、足、動かねえ……」

 仕事で疲れているのかなと思ったが、痛みが強くなったためタクシーで帰宅。家に着いて靴下を脱ぐと、ポツポツと膨らんだ無数の赤い発疹が、両ひざ下に広がっていた。

 翌日になると、足首周辺の発疹同士がつながり、皮膚はゾンビのように紫に変色していた。しかも足全体がパンパンに腫れあがり、立っているだけでもしんどい。何が起きているのかさっぱり分からなかったが、間違いなく異常事態だった。

 すぐに自宅近くの病院を受診。その際、「関係があるかは分からないんですけど」と前置きしつつ、数日前に4歳の娘が溶連菌に感染したことと、自分も風邪気味でのどが痛いことを伝えると、溶連菌の迅速抗原検査が施された。結果は陽性だった。

■車いすに乗せられて腎臓内科へ

 医師には「溶連菌感染と、今の足の状態は関係があるかもしれない」と言われたが、町のクリニックでは手に負えないということで、総合病院の皮膚科を紹介された。

 そこで疑われた病名は、「IgA血管炎」。車いすに乗せられたAさんは、なぜか腎臓内科へと運ばれた。

 IgA血管炎とは、IgAと呼ばれる抗体が関連した、免疫異常疾患だ。毛細血管に炎症が生じることで、皮膚の紫斑(皮内や皮下の出血をともなう紫色の斑点)、関節痛、腹痛などが引き起こされる。特に、毛細血管が数多く集まる腎臓はダメージを受けやすいため、腎障害も代表的な症状の一つなのだという。

 腎障害が重症化して腎不全におちいる最悪のケースを防ぐため、免疫システム自体を抑制するステロイド薬での治療が始まった。両足に広がった発疹は2週間ほどで消えたが、何カ月もの投薬治療による副作用は深刻だったという。

「食欲が止まらないから腹は出るし、顔もまんまるにむくんで、いわゆる“ムーンフェイス”状態。ぶくぶくに太りましたね」(Aさん)

 そしていざ薬の服用をやめると、前回の発症から4か月後に再発。例の発疹が、今度は太ももまで広がり、またステロイド薬に頼ることに。幸いその後は再発せず、薬の服用もやめられたが、現在も3カ月に1回は血液検査に行き、経過観察を続けているそうだ。

■溶連菌は「人食いバクテリア」という別名も

 全国的に溶連菌の感染者が急増している今、Aさんは不安を感じているという。

「もし自分が感染したら、またIgA血管炎のスイッチが入ってしまうのではないかと。怖いなと思いながら、ニュースを見ています」

 Aさんの体内で厄介な病の引き金を引いた可能性のある溶連菌だが、一体どのような菌なのか。

 大阪公立大学大学院医学研究科の金子幸弘教授(細菌学)によると、溶連菌に感染するのは、「小学校低学年くらいまでの子どもが多い」という。

「理由としては、小さな子どもは免疫がまだ十分に備わっておらず、何でもなめたり口に入れたりと菌と接触する機会も多いからだと思います。大人がかかる場合は、子どもから菌をもらってしまった親や学校の先生が多い印象です」

 主な症状は、のどの痛みや赤み・腫れ、発熱、舌全体が赤くなって表面の舌乳頭(ぜつにゅうとう)がブツブツと腫れる“イチゴ舌”など。のどの炎症という点では風邪の初期症状と似ているが、せきや鼻水が出ることは少なく、病院に行けば迅速抗原検査によって判別できる。

 私たちの周囲に当たり前に存在している溶連菌だが、実は「人食いバクテリア」という恐ろしい通り名を持つ菌でもある。

 2017年6月、当時埼玉西武ライオンズの投手コーチだった森慎二さんが、体調不良を訴えた3日後に亡くなった。親族によると、死因は溶連菌感染による敗血症。手足の激しい痛みや壊死(えし)、多臓器不全などを招く「劇症型溶連菌感染症」だったとみられている。

■感染後の合併症には警戒を

「劇症型」は、致死率約30%と言われ、発症後数十時間で死亡するケースも珍しくない。ただ、金子教授によると、「劇症型」を発症するのは、溶連菌が傷口などから筋肉や血液中に侵入した場合の話。今日本で起きている大流行の主な感染ルートである、飛沫(ひまつ)感染や接触感染によって発症するケースとは「別のものと考えたほうがよい」という。

 それよりも警戒すべきは、合併症の存在だ。溶連菌感染後の免疫異常により、関節や心臓に炎症が起きる「リウマチ熱」や、血尿やむくみなどが現れる「急性糸球体腎炎」におちいる場合がある。AさんがIgA血管炎を発症したのも同じケースだと考えられる。

 溶連菌感染症は風邪と同じように自然に治ることもあるが、抗菌薬(抗生物質)が有効で、合併症のリスクを下げる効果もあるという。

 今、日本で溶連菌感染者が爆発的に増えている背景について、金子教授はこう推測する。

「例年、冬から春先にかけては感染者が増える時期ですが、21年と22年はコロナ禍で感染対策が徹底された結果、溶連菌感染はほとんど広がらなかった。溶連菌への集団免疫が低下しているなか、今年は多くの人がマスクを外してコロナ前の日常に戻ったため、一気に流行したのではないか。集団の中で流行しやすいと考えられるため、冬休みに入って子どもたちが学校に集まらなくなれば、感染者数は多少落ち着くと思います」

 溶連菌に感染しないためには、うがい・手洗いやマスク着用を徹底したり、免疫力を高めるために食事や睡眠をしっかりとったりする基本的な対策しかない。「子どもの病気」と侮らず、特にこの冬は、大人でも体調管理に気をつけたいものだ。

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