「企業として存続できるのか」…ダイハツ不正、サプライヤー・ディーラーから漏れた声
ダイハツ工業が認証試験不正の拡大で全車種の出荷を止め、地域経済や部品サプライヤーに懸念が広がっている。国土交通省は21日、ダイハツ工業本社に法令に基づく立ち入り検査を開始した。本社や工場がある関西と九州、さらに中部では部品サプライヤーが検査の行方を見守りながら、補償や今後の取引に不安を示す。ディーラー(販売店)も顧客離れを恐れる。再生への第一歩として、地域や取引先への丁寧な説明が求められる。
国交省の係官7人が21日、大阪府池田市のダイハツ本社に立ち入り検査した。社員は8時前ごろから続々と無言で出社。不正を調査した第三者委員会が会見を開いた20日、社員も出荷停止の説明を受けた。ショックや不安を示す社員もいたが、再生へ向け総じて前向きだという。
21日午後にはサプライヤーを対象に謝罪や今後の取引を説明するオンライン会議も開催。参加した大手サプライヤー役員は「ダイハツは出荷先の中でも比率が高い。長い取引なので残念だ。誤りを正し再び供給できるようにしてほしい」と求めた。
ほかのサプライヤーからも心配する声がもれる。「全車種出荷停止とは驚いた」と語るのは樹脂系部品メーカー首脳。「売れる車がなくなったということだが、どのくらいの期間、企業として存続できるのか」と話す。金属加工メーカーの経営幹部はダイハツ向けの売上高が「数%ある」という。「この分が丸々なくなると、影響は決して小さくない」と先行きを危惧する。ダイハツの取引部品メーカーは423社に上る。このうちダイハツへの売上高が10%を超える企業は47社。仕入れ先は「補償はあるのだろうか」と不安を訴える。
ディーラーをはじめ地域経済への影響も見逃せない。業界関係者は「売る車がなければ営業マンも辞めてしまうのではないか。年始から年度末まではディーラーにとって書き入れ時。落ちた信頼を早期に戻せるのかという問題もある。『本当に大丈夫か』という一言に尽きる」と懸念する。ダイハツのディーラーの営業マンは「現場の末端には詳しい説明がなく、影響の大きさも想像がつかない。良いお付き合いをしていただいている顧客や取引先の方々に申し訳なく、うまく説明ができずに困る」。自動車ペダル製造の下請け会社に長年勤めた大阪府の男性は「ダイハツは元々地域に密着した会社。トヨタ自動車の子会社となって、無理が重なったのか」と悔しがる。
ダイハツは仕掛かり品の生産を終了後、工場では品質改善活動やマニュアル整備などに取り組む。再生へ向けて一つにまとまり、信頼を取り戻せるのか。サプライヤーも地域も注視している。
ダイハツ不祥事で正月の「初売り」CMも流れない それ以上にテレビ局には気になるトヨタの動向
ダイハツ工業の不正問題が波紋を広げている。2023年12月21日には朝日新聞デジタルが、ダイハツの24年の初売りキャンペーンが中止になると報じた。
同社の初売りキャンペーンは、近年「大初夢フェア」と題され、年初に大量のテレビCMが流れていた。中止なら、24年初頭は当然、CMは流れない。こうなると、各テレビ局がダイハツのCMの放送を当て込んでいた場合は痛手となるのではないか。
■ 三が日のCM放送秒数ランキングで今年2位
ダイハツのCMは、2023年元日から3日までの三が日のCM放送秒数ランキング(ビデオリサーチ調べ)で、第2位(4755秒)だった。一方、18年には三が日のCM放送本数ランキング1位(336本=同社調べ)に輝いていた。
J-CASTニュースBiz編集部は、放送コラムニストの高堀冬彦氏に話を聞いた。放送されるはずだったCMが突如、中止に追い込まれた場合について、
「企業や出演タレントが不祥事を起こし、CMが流せなくなってもテレビ局には経済的損害は一切ありません」
と説明した。
高堀氏の解説は続く。仮定の話だが、ダイハツが「初売りCM」を年始に放送するつもりであったとしたら、「CMは作っておかないと全然間に合いませんし、(テレビの)CM枠も後からでは抑えられません」。
実は12月21日、山形放送ラジオ(YBC)ではダイハツ提供の冠番組「ダイハツドライビングミュージック」のCMが、ACジャパンのものに差し替えられていたとスポニチアネックスが報じた。もし、テレビ用に準備していた「初売りCM」がお蔵入りになってしまうとしたら......。
「ダイハツも加盟しているACジャパンのCMに差し替えられ、ACジャパンからCM料は正規の金額が入ります。その料金はダイハツがACジャパンに払います」
高堀氏は、こう説明した。なお、
「各局はCMをコンピューターで管理しています。『CMバンク』などと呼ばれ、差し替えは簡単です。今は間違って違うCMを流してしまう心配はありません」
「CMを自粛したら大打撃」
強いてテレビ局側に痛手となるとしたら、ダイハツの問題が長引いた場合に発生するという。
「これまでは『正月三が日はダイハツでいける』と思っていたのに、それが見込めないとなると、新たなスポンサーを探さなくてはなりません」
高堀氏によると、心配なのは、今回の問題がダイハツにとどまらなかった場合だ。それは、以前はたびたび大量の広告費を計上していると報じられていたトヨタ自動車(ただし、2020年度からは広告費は非開示)に飛び火する恐れだ。
ダイハツはトヨタの完全子会社で、奥平総一郎社長はトヨタの元専務。「民放がダイハツより懸念するのは、トヨタの動向に違いありません。トヨタが監督責任を問われ、CMを自粛したら大打撃です」。
「なぜ細工したのか」…ダイハツ「側面衝突試験」不正がトヨタグループに与えた痛手
ダイハツ工業による側面衝突試験の不正発覚は、親会社のトヨタ自動車を含むトヨタグループへ新たな痛手となった。日野自動車と豊田自動織機の排出ガス・燃費不正に続き、今回は安全の信頼性に及ぶ。トヨタは小型車に強いダイハツと、不正試験車が生産された東南アジアなどで協業を深めてきた。成長性の高い重要な新興国市場だけに、早期の信頼回復へ向けたトヨタの覚悟とリーダーシップが問われる。
「正規の設計で試験を受ければ合格していたのに、なぜわざわざぜ細工したのか。意図、真因を調査したい」。ダイハツの奥平総一郎社長は28日の会見で苦渋の表情を浮かべた。技術者が前席ドア内張り部品へ設計にない切り込みを加え、側面衝突試験を通過していた。経営責任については「真因を調査して全貌を明らかにしたい」と明言を避けた。
切り込みなどであえて弱い部分を設け、人体に危害が及びにくくする設計は珍しくない。しかしそれを正式の設計で隠し、法規に違反した。複数回設計も変更したことで安全性が不安になり、期限やコストに追い詰められ必要な報告や手続きを怠った可能性がある。不正した部門は実験と認証が一体で監視が働きにくかった。組織として見抜けず内部通報で発覚した。第三者委員会が組織的行為の有無も含め解明していく。
不正試験車は、国内で開発し2022年8月以降に生産したトヨタ車を含む9万台弱。東南アジアで生産し同地域や北南米に出荷していた。社内試験では安全基準を満たしているためリコール(回収・無償修理)せず、認可の必要な国では出荷を止めた。正規の設計で認可を得しだい再開する。国内車の不正はなかったが、ダイハツが海外主戦場とする東南ア事業は打撃となる。
トヨタは17年、ダイハツと新興国小型車カンパニーを設置。ダイハツの小型で廉価な技術力を取り込み、新興国で競争力を強めてきた。ダイハツの不正試験車種の一つ「ヤリスエイティブ」は、ダイハツのプラットフォーム(車台)にトヨタの知見も取り入れた。新興国戦略への影響が不安視される。
「トヨタ自動車を含めた問題として大変重く受け止めている」。相次ぐグループの不正にトヨタの豊田章男会長と佐藤恒治社長は危機感をあらわにする。佐藤社長は「法規に適合する実力がありながら不正が行われている点で根が深い」と、グループの認証業務を総点検する考え。豊田会長は「ガバナンス(企業統治)やコンプライアンス(法令順守)については(09年の)リコール問題を経験した私が責任を持って取り組む」と、陣頭指揮する。「ダイハツの得意分野を考えれば(協業の)大きな方向は変わらない」(豊田会長)。危機を乗り越えるため、トヨタのグループ指導力を強める。
トヨタ 豊田章男会長にダイハツの認証不正問題について聞く 「174項目をしっかり説明していく。間違えた認証についてはやり直していく」
■ 全90万件を精査して、25の試験項目における174個の認証不正を洗い出し
トヨタ自動車は12月20日、ダイハツ工業が発表した認証申請における追加不正行為に関する発表を受け「ピクシス エポック」「コペン」「ピクシス バン」「ピクシス トラック」「ライズ」「ルーミー」「タウンエース」「プロボックス」などにおいて、新たに不正行為が確認されたと発表した。
同日、ダイハツ工業 代表取締役社長 奥平総一郎氏、同代表取締役副社長 星加宏昌氏、トヨタ自動車 代表取締役副社長 中嶋裕樹氏が記者会見。会見ではダイハツ経営陣の責任や、認証不正が起きた背景、今後の対応が語られ、トヨタ 中嶋氏からはトヨタ自動車も全面的に認証不正問題に対応していくことが語られた。
今回の認証不正問題の背景には、認証現場でのリソース不足があり、2014年以降に海外車種展開が広がっていく中での負荷増大があったとされている。トヨタ 中嶋副社長は「2014年以降、小型車を中心に海外展開車種を含むOEM供給車が増えたことが、開発、認証現場の負担を大きくした可能性があること、認識できておりませんでした。トヨタとして深く反省しております」と述べ、174個についてダイハツとともに車両の安全性の環境性能の確認作業に取り組み、「乗員救出性に関する安全性能(ドアロック解除)」が法規に適合していない可能性を見い出した。
これらは、全90万件を精査して、25の試験項目における174個の認証不正を洗い出し、174個に関しては再度検証を行ない、検証データについては第三者認証機関である「テュフ・ラインランド・ジャパン株式会社」での確認も行なっている。
もちろん、日本の道を走るためには国土交通省の認可が必要で、現在はこれらの膨大なデータを国交省とともに再度精査して、間違った過程で行なった作業を正しいルールに乗せていく段階にある。その中で、リコールが必要となる部分についてはリコールが行なわれることが会見でも示唆されていた。
一連の発表や会見で印象的だったのは、トヨタ 中嶋副社長が語った「トヨタグループも残念ながら完璧な会社ではございません。間違ったことがあれば立ち止まり、ごまかさず、うそをつかず、誠実にその事実に向き合い、必要なときにはすぐ公表し、みなさんと共有させていただきながら進めていく」ということ。これは、普段から豊田章男会長も語っていることで、「間違ったことがあれば立ち止まる」ことが、トヨタとしてはできている部分だったが、ダイハツとしてはできていなかったことになる。
この「間違ったことがあれば立ち止まる」というのは、TPS(トヨタ生産方式)ではアンドンという仕組みに反映されており、生産ラインの誰もがアンドンのひもを引く権利を持っている。生産ラインで間違ったことがあればアンドンが引かれ、上司などが集まり、みんなで問題を解決して生産ラインを再開させる。この一人一人がラインを止める権利を持っているというのがTPSの特徴でもあり、TPSをソフトウェア開発に応用したアジャイル開発でも一連のプロセスがスクラムとして提言されている。
今回のダイハツの認証不正問題では、現場の部署が追い込まれたときに「間違ったことがあれば立ち止まる」ことができず、間違ったものを後工程に流した結果、さらなる大問題に発展した。つまり、TPSがDNAとなっているはずのトヨタグループにおいて、アンドンが引かれなかった(引けなかった?)ことになる。
これはなぜなのか? ここが今回の問題の原因の一つではないのか?と思い、トヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏に聞く機会が会見後あったので、直接質問してみた。
記者の質問は、「ダイハツの認証不正問題では、なぜアンドンは引かれなかったのか?」であったのだが、その短い質問に豊田会長はTPSの考え方、生産現場でのTPS、事務・技術系現場でのTPSという形で答えてくれた。
■ 豊田章男会長が語る、TPSの考え方、生産現場でのTPS、事務・技術系現場でのTPS
生産現場ではそれ(アンドンを)は機能します。引っ張っても「だれが止めたんだ! お前の責任だ!」と言われないからです。引っ張らず、不良品を流すことの方が怒られる。引っ張って(ラインを)止めることは、ほめられるのです。
アメリカに最初に出て行ったときには、「引っ張って止めるの、大丈夫?」っていうが、NUMMI(トヨタとGMの合弁会社)の最初に苦労したところです。
ところが、この手の仕事(認証関連の仕事)は止めるということで怒られると思うのです。それは、普段の従業員の接し方、「Bad News Fast」という言葉があります。「Bad Newsを持ってこい」とか言われますよね。僕も昔言われました。本当に持って行ったら、叱られました。
そうすると二度と持って行きませんからね。「Bad News」を持って行ったときに、「よく持ってきてくれた」と言われたら、安心して持って行きますよ。でも、最初にそれを言われなかったらちゅうちょするのです、人間は。
生産現場はそれ(Bad News)がほめられるという実績がものすごくできている。でも、ここの場合はそれがない。生産現場、技能職職場ではそれ(Bad News)が成り立ちます。でも、事技系(事務、技術)が入ってきたときにはだめになる。
工程がしっかり、はっきり分かっていない職場。工程が分かり、原単位がしっかりし、タクトタイムと言われる必要処理に合わせてどのくらいのスピードですればよいのか分かっているところではできます。遅れも挽回できるし。
ところが普通の開発現場は工程すらはっきりしないところもある。そういうところでは、いくらトヨタグループとはいえ、それはなかなか。ほかに比べればできているところがあるかもしれません。
でも、どういう上司がそこにいるか、というところです。さらに上の人が、「こういうこと(Bad News)は言いなさいよ」ということをやっているかどうかというところが30年間、そういうことをやっていなかったことになります。今回は。
(それができていなかったので)今からそういうことをやるしかないのです。
トヨタでも事技系のTPS活動をやりはじめたのは、ここ3、4年です。組合との話し合いのときに、「今回ほど、ものすごく距離感を感じたことはない」と語って以降になります。
事技系職場に対しても、「まず工程でものを見よう」「異常管理と普通の管理」を伝えています。管理者は「管理しろ」と言われるのですが、TPSの世界でやっているのは「異常管理」になります。
異常管理=正常ではないと分かるから、異常だけ管理すればいいのです。そうすると現場で、「あ、間違えた」というのが分かるから、管理者に相談しやすい。それができているのは、技能系職場なのです。
事技系職場は、何が正常かよく分からない。納期がときどき代わるし、上司の気分によって代わる場合もある。そういう職場においては、異常管理ができないのです。
でも、「工程でものを見ようね」「なにが正常かをしっかりやろうね」とやってから、ものすごく事技系職場でも、ちょっと進みつつあると思います。
私がTPSと言うと、「効率化」とほとんどTPSを理解していない人が言うのです。「TPSの目的は効率化でしょ」と。僕は長年生産調査部でやってきた立場から言うと、「TPSの本当の目的は仕事を楽にすること」です。「楽(らく)」と書いて、「楽(たの)しい」となります。「やっている仕事は楽しいのか?」「まず自分が楽しくしよう」と言ってから、事技系職場もやってみようかなとなりつつあります。
工程でものを見て、なにが正常かをはっきりし、異常管理をできるようにする、これが第一歩です。その次は、仕事のプロセスがはっきりしたら、どこかで仕事が分岐合流して、情報が滞留している(箇所がある)。情報の優先順位が分からないでしょ、というところをはっきりさせることで、情報が整流化し、仕事がスムーズに進むようになる。結果、仕事のリードタイムが短くなります。短くなればPDCAのサイクルが早くなる、異常が分かっているからカイゼンが進んでいく職場になる、というのが少しずつ理解されている。
もともと(事技系)では、ないのです。
納期が決まれば、仕事のある程度の順番ができる。では、次はこうやってみよう、あ、これちょっと間違えたね。では、次はこうしよう。これが開発がアジャイルに進むのと同様、仕事のやり方も変わってきた。
一番が(スーパー耐久で取り組んだ)水素の充填の仕方。前段取り、本段取り、後段取りを考えれば、絶対短くなりますから。
結局仕事は一個一個するしかない、それが同時に来る。いろいろな仕事が納期も分からず滞留する、「どれを先にやるのだ?」と。「全部やれ」と言われる。
安全、品質、量というのは、私が社長をやる前は全部やれと言われていた。私は順番を付けました。安全、どれもがんばっているけども安全が一番優先です。次に品質です。それで、量を追い、最後は原価です。
ところが社長になる前は、収益、量が優先だったのです。今でも、収益、量を出す人はほめられます、だから上のスタッフには安全と品質をほめろと言っています。
■ 「174項目をしっかり説明していく。間違えた認証についてはやり直していく」
ダイハツとトヨタの共同会見では、業績に関する影響について何度か質問があったが、クルマユーザーとして一番気になるのは、今ダイハツに乗っている人はどうすればよいのか、ダイハツ車を注文している人はどうすればよいのかということ。
ダイハツの親会社であるトヨタの豊田会長にその点を聞くと、「認証において不正があったことについてはお詫びします」と語り、ユーザーに迷惑をかけてしまっていることは申し訳ないという。その上で、「まずは、174項目をしっかり説明していく。間違えた認証については、やり直していきます」と語り、認証不正項目を精査することで正しいレールに乗せ直す作業についてトヨタとしても取り組んでいく。
全90万件を精査した結果、174項目の認証不正が洗い出され、1件のリコール可能性も見つかっている。そのため、「(リコールが発生した場合)リコールについては速やかに(ディーラーなどで)入れていただきたい。リコールの内容はしっかりと聞いてくださいという段階です」と言い、「どうしても不安になってしまう部分はあります」と、不安を解決するためにまずは正しい情報をしっかり受け取ってほしいとのことだった。
ダイハツ工業は、Webサイトのトップページにおいて「認証申請における不正行為に関するお問合せ(専用ダイヤル)」を告知。ダイハツ車ユーザーであれば、ディーラーや専用ダイヤルから正しい情報を手に入れ、ダイハツ車に乗る上での不安の原因を確認することが可能だ。
また、ダイハツは第三者委員会による調査報告書をWebサイトで公表しており、「調査報告書(概要版)」と「調査報告書」の2つを誰でも見られるようにしている。とくに正式な調査報告書では、クルマの開発過程を知ることができ、膨大な仕事の積み重ねでクルマが作られていることが理解できる。
今回は、その過程の中で「間違ったことがあれば立ち止まる」ことができなかったがゆえに、間違った後工程が行なわれ、ユーザーを不安にさせ、取引先に迷惑をかけ、90万件の精査や国交省への再審査など膨大な仕事が発生し続けている。
この「間違ったことがあれば立ち止まる」という部分についても、豊田会長はダイハツとトヨタが一体になって変えていくことを現在行なっていると語ってくれた。
豊田会長も常々語っているが、中嶋副社長が会見で語った「間違ったことがあれば立ち止まり、ごまかさず、うそをつかず、誠実にその事実に向き合い、必要なときにはすぐ公表し、みなさんと共有させていただきながら進めていく」という言葉は、それをしなかったときに何が起きるのかということを改めて教えてくれている。自分自身、本当にそれができているのか? 仕事をする上で強く心がけたい部分であると思った。
トヨタ 豊田章男会長、タイ10時間レース記者会見でダイハツの認証不正問題や新型プリウスのタイ市販化について語る
タイ10時間耐久レースの国際記者会見に出席した豊田章男会長
12月22日、タイ10時間耐久レースの予選終了後、国際記者会見が行なわれた。この記者会見では、トヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏、264号車 新型プリウス 片岡龍也監督兼選手、228号車 GR86 大嶋和也監督兼選手、232号車 水素カローラ 石浦宏明監督兼選手が出席。今回の、タイ10時間レースにカーボンニュートラル燃料を使っての新型プリウス参戦などさまざまな質問に答えた。
豊田会長は、12月19日午前にタイのCP(Charoen Pokphand Group)、TLS(True Leasing)、SCG(Siam Cement Group)とカーボンニュートラル社会の実現について協業を調印。その午後には、バンコク市内で開催したTOYOTA GAZOO Racing FestivalでGRヤリス ラリー1をデモランするなどタイでのモータースポーツ普及のためイベントを盛り上げていた。
記者はその会見後、豊田会長にダイハツの認証不正問題について話を聞く機会があったが、公式の国際会見に豊田会長が初めて出席する機会でもあり、日本の記者からはダイハツ問題に関しての質問が出た。
タイの国内メディアからは新型プリウスやレースに関する質問が多く、フィリピンのメディアからはカーボンニュートラル燃料に関する質問が出ていた。
本記事では、その国際会見の模様を記す。
豊田会長はモリゾウ選手として、水素カローラと新型プリウスにダブルエントリー
──今回、CPグループのカチョーンさんが参加する、ルーキーチームのメンバーとして参加するのか?
豊田会長:ルーキーレーシングのプリウスハイブリッドのドライバーとして参加します。CPとトヨタはタイのカーボンニュートラル実現のために、お互いの得意分野を活用した、活動始めてます。CP会長のスパキットさん、カチョーンさんは大のクルマ好きであります。将来のタイのカーボンニュートラルの実現のために協業の相談をする中で、何度もクルマ好きの会話になってしまい、それなら一緒にレースに出ようかとお誘いしたところ、快く引き受けていただいて実現した。
片岡監督:プリウスの監督兼ドライバーの片岡です、初めまして。今回カチョーンさんも一緒にドライブします。カチョーンさんも過去にサーキット走行経験があったが、長い間サーキットでドライブしていませんでした。事前にトレーニングされて、プリウスにも富士スピードウェイまで来てもらい、クルマ作りのところから一緒に入っていただき、ドライブの勘を取り戻して、プロに迫るタイムになっています。参加するだけではなく、コンペティションを意識できるレベルで走っており、頼もしく、ありがたいです。
豊田会長:カチョーンさんが乗られるプリウスハイブリッドは、世界で初めてのレース参戦となります。モリゾウも(水素カローラと)ダブルエントリーして、カチョーンさんとともに走りますので、ぜひ注目いただきたい。
──(12月19日にモリゾウ選手と同乗走行)12月19日に同乗させていただきました。どうしてプリウスハイブリッドで参戦するのか。
豊田会長:この間、同乗して私の運転怖くなかったですか? カーボンニュートラルというと、Fun to Driveとは違う方向に行っちゃいそうだねと世の中には思われています。
モータースポーツに参加してる人は、カーボンニュートラルに対しては気が引けるところがあったはずなんですよね。カーボンニュートラルにも選択肢があり、モータースポーツでもエキサイティングなクルマがあるよと、ルーキーレーシングで出場する3台は何かしらのカーボンニュートラル車両です。モータースポーツでもカーボンニュートラルがこんなに選択肢あるねと五感で感じていただきたいなと思います。
228号車と232号車の監督も来ておりますので、カーボンニュートラルでどんな使命を持って走るのか、監督のほうからも説明させていただきます。228号車の大嶋監督です。
大嶋監督:僕たちは228号車、GR86で出ています。エンジンは1.4リッターターボ。小さいエンジンですが、カーボンニュートラル燃料を使用してパワフル。予選は2番手でトップには届きませんでしたが、カーボンニュートラル燃料でしっかりガソリン車と同等に速く走れるということを、日本で2年間戦いながら証明できているところまできたかなと思っています。
石浦監督:232号車のGRカローラの監督・選手を務めます石浦です。GRカローラについては、水素のエンジンを搭載しているんですけど、カーボンニュートラルのなかでも燃料となる水素、この水素もどのような水素を使うのか選択肢がある中で、燃料電池のように水素から電気を作ることも可能ですが、水素カローラに関しては、水素を従来のエンジンの中で燃焼させて走る技術で、カーボンニュートラルを実現しながら(内燃機関特融の)いい音をクルマ好きのみなさんが楽しみながら走る一方、排気は水蒸気のみでクリーンに走れる。よい音を響かせながら速く走るGRカローラをぜひ見ていただきないなと思っております。
──日本とタイの耐久レースの違い。また、来年のタイ耐久レースは参戦するのか?
豊田会長:まず、2番目の質問ですが参戦は分かりません。スポンサーの出光さんに聞いてみていただきたい。
片岡監督:タイの耐久は年に1回で10時間というフォーマットになります。日本のスーパー耐久は、年間6~7戦で国内を転戦し、レースのフォーマットも3時間から最大のものでは富士の24時間と多様です。
多様なフォーマットの中で、ST1~ST5、STX、STZと多くのカテゴリに分けられた車両が60台近くが同時に走るレースになっています。1年を通して戦うシリーズ戦になっているのが大きく違います。
豊田会長:今回、3台のクルマをルーキーレーシングは参戦しています。ハイブリッドプリウスの264号車、水素カローラの232号車、この2台の目標を申し上げます。
ハイブリッドと水素エンジンというカーボンニュートラルの2つの選択肢を出すことによって、1周でも多く走るというのが目標です。未来を見渡すことは誰もできないと思います。今の行動によって、未来の景色は変わってくると私は信じています。264号車と232号車が1周でも多くブリラムサーキットで走る姿を見せることによって、モータースポーツの未来、クルマ社会の未来というものがきっと変わってくると思いますので、ぜひともそのような思いをみなさん応援いただきたいと思います。
そうは言ってもレースはレース、勝ったら笑顔、負けたら悔しさが残るのもレースです。
228号車はルーキーレーシングとしては何とか総合優勝を狙いたいと思っています。予選でも分かるようにライバルは相当強敵です。ライバルが強敵であればあるほどレースを見ているみなさんは楽しいのではないでしょうか、一緒に楽しみましょう。
ちなみにモリゾウは、264号車(新型プリウス)と232号車(水素カローラ)のダブルエントリーで出る予定なので、こちらもぜひ応援よいただきたいと思います。
(会場から拍手)
──参戦車両と市販車の間でハードウェアではどのような違いがあるか。特にバッテリの冷却について、充電と放電をどのくらい急速にできるのか関心があります。
豊田会長:TOYOTA GAZOO Racing Companyの高橋プレジデントが来ていますので、その件は高橋プレジデントからお答えします。
高橋プレジデント:今回走らせるプリウスのハードは、基本的に市販車と同じハードを使っています。市販車からの変化点はバッテリ容量を増やし、制御変更で出力を25%増やしている。その分、冷却が厳しいため冷却関連のハードをアドオンで追加しています。
豊田会長:GAZOO Racing Companyとしては今の回答になります。現場を預かる監督としての意見も聞いてみたいと思います。
片岡監督:市販のものをベースに短期間でクルマを開発していただいて、25%出力がアップしています。まず、ハンドリングはかなり気持ちよく走れます。ただ、乗り手としては、欲を言えば50%や75%とパワーを上げてもらえるともっと楽しくどらいぶできるかなと思います。今回、短い時間で開発してここまできたなかで、今日の予選では2分切るところまでこれているので、初めての挑戦としてはかなりいいと思うし、今後に期待したいと思います。
──カーボンニュートラル燃料はどこから持ってきているのか。どういった 技術で生産しているのか。
高橋プレジデント:今回使っている燃料は、ヨーロッパの燃料メーカーから購入しています。今の燃料は、バイオ系と水素由来の燃料をミックスして使っています。
──カーボンニュートラル燃料について、トヨタが燃料製造を手掛けることは考えているか?
豊田会長:トヨタ自動車はクルマ屋です。クルマ屋を成り立たせるために、日本だと550万人、タイだと560万人の方が自動車産業に関わっています。
クルマ屋がすべてやるのではなく、クルマ屋はもっといいクルマをつくり、クルマ屋と一緒になってもっといい燃料を作るという企業と協力することによって、もっといい未来をつくり、さらなる雇用を生み出し、各国で頼られる産業になろうというのが私たちの目標になると思っています。
──モリゾウさんの身体的なタフさは、67歳に見えない。今朝も走っている姿見て、モリゾウ選手がレース参戦するのは最後ではなく、まだまだ見られると感じた。最高齢ドライバーとして、ギネスレコードを達成しようとしているのか? ニュルブルクリンクで走る姿をいつ見せてくれるのか?
豊田会長:私の年齢を知ってくれていて感謝申し上げます。決してギネスの記録を求めているのではなく、私はクルマが大好き、運転が大好きなんです。好きなことをやり続けることこそが、若さを保ち、元気でいられる私の秘策だと思います。
とくにこのタイをはじめ、アジアでのモータースポーツに参加できること、そのためには元気でいないといけない、いいクルマを作らなければならない、いい仲間がいなければいけない。
そんなことが私を元気にしてくれております。
何よりもタイのレースでは多くの笑顔に支えられていると思います。1日でも長く、大好きな運転を続けられるよう応援いただきたいと思います。
──ちなみに最高年齢はスウェーデンで87歳です。
豊田会長:ということは記録を作るのにあと20年乗らなければ……。がんばります。
(会場から拍手)
──(新型)プリウスは現在販売していないが、将来的にタイで販売する予定ありますか?
豊田会長:レースの結果によりますね(笑)。応援してください。
──タイ人の笑顔が元気の源だと言われたが、ぜひプリウスを販売してください。タイ人はもっと笑顔になります。
──別件の質問をさせてください。ダイハツの新たな不正が発覚後、豊田会長が初めての公の場に出ました。何が問題で、どこに原因があるのか、直接お聞きしたい。
豊田会長:ダイハツのクルマに乗ってる方に多くのご心配をおかけし、日本の自動車会社を代表して、ご心配をおかけして申し訳ないと、まず申し上げたい。
自動車というものが、世の中を安全かつ快適に走り続けるためには、みなさまから信頼される仕事をしてこそ乗っていただけるものだと思っています。
不安になったお客さまも多々いると思います。やってしまったことは取り返せませんが、今後ダイハツは1日も早く信頼を回復できるよう、親会社のトヨタとしても全面協力で立ち直らせる努力してまいりますので、一度動向を見守っていただきたいと思います。
──5月のタイの会見でも、創業の精神として真因を究明し再発防止に取り組むことがトヨタの創業の精神だと話されていた。その考えは変わりないということでいいか。
豊田会長:変わっていないが、この6カ月間は第三者委員会の調査もあり、いろいろ動きづらい点もあったと思います。第三者委員会の結果も出ましたので、ダイハツがその結果を精査する手助けをしながら、なんとか前を向いて自立できるように応援をしていきたいと思うので、一度お時間をいただけないでしょうか。トップが何かを発言しただけで、何十年も続いた会社のカルチャーを変えることはなかなか難しいと思います。それでも、もっと多くの人がその商品を信じ、安心快適に移動をしたいという信頼取り戻すためには時間がかかると思いますけど、滞りなくやること、支援することをこの場でお誓い申し上げたい。
──モータースポーツに話を戻したい。マスタードライバーのモリゾウさんから、ドライバー目指す人にアドバイスください。
豊田会長:ドライバーを目指す人にはクルマを好きになってください、運転を好きになってくださいと申し上げたい。運転する以上はルールがある。安全な交通流を作る一員であるという認識は忘れないでほしい。安全な環境の中に初めて楽しさが産まれると信じています。この2つを運転目指す人には申し上げたい。
ダイハツの認証不正、奥平総一郎社長「不正を生み出す環境を作った責任は経営陣」
2014年以降、OEM供給車が増加、認証現場の負担を大きくした可能性も
ダイハツ工業とトヨタ自動車は12月20日、共同記者会見を開催。ダイハツ工業の代表取締役社長 奥平総一郎氏と同代表取締役副社長 星加宏昌氏、トヨタ自動車の代表取締役副社長 中嶋裕樹氏が登壇、ダイハツの認証申請における不正行為に関する調査結果について記者会見した。
同日、ダイハツの不正関連を調査した第三者委員会の調査結果により、4月のドアトリム不正・5月のポール側面衝突試験不正に加えて、新たに25の試験項目において、174個の不正行為があったことが判明。不正行為が確認された車種は、すでに生産を終了したものも含め、64車種・3エンジン(生産・開発中および生産終了車種の合計)となった。この中には、トヨタが販売している22車種・1エンジンが含まれる。今回の調査結果を受けて、ダイハツで現在国内外で生産中の全てのダイハツ開発車種の出荷を一旦停止することを決定、トヨタも同様に、該当する車種の出荷の一旦停止を決定した。
会見に登壇したダイハツ工業の代表取締役社長 奥平総一郎氏は「本日、その報告書を受領いたしました。今後の対応と合わせまして、国土交通省、経済産業省にご報告いたしました。調査の結果、認証申請において合計174個の不正が判明いたしました。これらは国内、海外合わせて64車種、3つのエンジンで行なわれており、25の試験項目に及ぶことが分かりました。この結果を受けて、本日、国内外で生産中のすべての車種の出荷を一旦停止することを決定いたしました。お客さまをはじめ、ステークホルダーの皆さまには大変なご迷惑、ご心配をおかけし、心よりお詫び申し上げます」と述べた。
続けて、奥平氏は「ダイハツは軽自動車をはじめといたしまして、日本の国土、道にあった国民の足となるクルマとして育てていただき、お客さまにご愛好いただいてまいりました。こうしたお客さまの信頼を裏切ることとなり。重ねてお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。認証とは、お客さまに安心してクルマにお乗りいただくための様々な基準を満たしているかをあらかじめ国に審査、確認いただくものでございます。認証の適切な取得は、自動車メーカーとして事業を行なう大前提であると考えております。今回、その認証を軽視していると指摘されても仕方がない不正が行なわれております。その行為を生み出す環境を作った責任は経営陣にあります。自動車メーカーとして根幹を揺るがす事態であると大変重く受け止めております」と述べた。
ダイハツの代表取締役副社長 星加宏昌氏からの技術的な説明に続いて、トヨタ 代表取締役副社長の中嶋裕樹氏からは「ダイハツから供給を受けておりますトヨタ車をご利用いただいているお客さまをはじめ、関係する皆さまにご心配、ご迷惑をおかけし、トヨタ自動車として心よりお詫び申し上げます。今回のダイハツによる調査につきましては、車両の安全性能を含め、実車による試験、データ検証をトヨタとしてもサポートしてまいりました。2014年以降、小型車を中心に海外展開車種を含むOEM供給車が増えたことが、開発、認証現場の負担を大きくした可能性があること、認識できておりませんでした。トヨタとして深く反省しております」と反省の言葉を述べるとともに、「トヨタといたしましても、不正の疑いがあるとして指摘されました174個の事象につきましては、ダイハツとともに車両の安全性の環境性能の確認作業に取り組んでまいりました。新たに判明いたしました案件につきましても、 技術検証の確認を全面的にサポートしてまいります」と話した。
不正の真因は短期開発を推進した経営の問題
同日、第三者委員会からの調査報告書の中で、不正の真因として不正対応の措置を講ずることなく短期開発を推進した経営の問題であることを指摘されたことについて、ダイハツの奥平氏は「第三者委員会からは、不正の真因として不正対応の措置を講ずることなく短期開発を推進した経営の問題であるとご指摘いただいております。不正の背景には、増加する開発プロジェクトを短期日程で進める中で、経営陣、管理職が現場の負担や辛さを十分に把握せず、困った時に声を上げられない職場環境、風土を放置してきたことにあると考えています。その結果、プロジェクト推進を優先し、法令、ルールを守れない企業文化が形成されたと考えており、そのすべての責任は経営陣にあります」と述べた。
また、奥平氏は「再発防止に向けては、第三者委員会から、経営幹部から従業員に対する反省と出直しの決意の表明が必要、硬直的な短期開発の開発認証プロセスの見直しなど、多くの提言をいただいております。まずは、経営者自らが意識を変えて現場に足を運び、現地、現物で状況を把握し、心理的安全性を確保した健全なコミュニケーションが取れる組織を、従業員とともに作っていただきます。また、今後、法令遵守の正しい認証業務の遂行を大前提として、開発日程を延長し、適切なプロセス、止まることのできる仕組みを作ってまいります。組織や仕組みの見直し、業務規定、作業標準の整備など、今までにも取り組んでまいりました内容に加え、徹底した再発防止を図ってまいります。具体的な再発防止の取り組み、推進に向けた執行体制などにつきましては、関係当局からのご指摘、ご指導を踏まえて取りまとめ、別途ご報告させていただきます」とした。
ダイハツの原点に立ち戻るべく、トヨタも全面的にサポート
今後について、奥平氏は「今回、第三者委員会に幅広く丁寧な調査を行なっていただきました。会社としても、認証手続きの書類の確認などで、できる限りの協力をしてまいりました。しかしながら、お客さまの安全に万全を期すために、引き続き類似の問題がないか継続して確認して、もし、他に問題が判明した場合には速やかに当局に報告し、適切に対応してまいります。当社は、この度の不正により国内外の道、暮らしに必要な軽自動車や小型車をご使用いただき、支えていただいてきた多くのお客さまの信頼を裏切ってしまったことを大変重く受け止めております。お客さまに寄り添い、暮らしを豊かにする、ダイハツの原点に立ち戻るといったトヨタの支援を得ながらも、強い覚悟を持って会社再生に向け全社を挙げて取り組んでまいります」と話した。
トヨタ副社長の中嶋氏からは「今回判明いたしました25の試験項目で174個の不正というのは、認証メーカーとしての信頼を失いかねない実態だと考えております。ダイハツからの説明にもありましたように、まずはトヨタも全面的に協力をし、その他に問題はないのか、丁寧に確認していきたいと考えております。会社の再生は経営、事業のみならず、組織、体制から従業員1人ひとりの人材育成、意識改革など、一朝一夕にできることではございません。ともに事業を進めているトヨタにとりましても非常に大きな課題と捉えております。ダイハツの再生に向けましては、コンパクト系モビリティカンパニーというトヨタ、ダイハツが目指す姿、原点に立ち戻るべく、全面的にサポートしてまいります。具体的な対応、取り組みにつきましては、当局による指導をいただくタイミングなどで公表したいと考えております」と述べた。
トヨタ 豊田章男会長と佐藤恒治社長、ダイハツの認証申請不正行為に関し会見 「お客さまの信頼を取り戻せるよう全力で取り組んでまいります」
トヨタ自動車は4月28日、同時発表されたダイハツ工業の側面衝突試験の認証申請における不正行為に関する会見を行なった。この不正行為では、タイで2022年8月生産開始のトヨタ「ヤリスエイティブ」7万6289台、マレーシアで2023年2月生産開始のプロドゥア「アジア」1万1834台、インドネシアで2023年6月生産開始予定のトヨタ「アギヤ」、開発中の車種1車種が含まれており、ダイハツが製造するトヨタブランドとしてのヤリスエイティブが最も多い台数となっている。
緊急生配信の冒頭、豊田章男会長は、「このたびのダイハツ工業の不正はクルマにとって最も大切な安全にかかわる問題であり、お客さまの信頼を裏切る絶対にあってはならない行為だと思っております。ご迷惑、ご心配をおかけしている世界中のお客さま、すべての関係のみなさまに心よりお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした」と頭を下げた。「本件は、トヨタブランドの乗用車で発生した問題でもありますので、ダイハツ工業だけでなくトヨタ自動車も含めた問題であると考えております。これから詳細な調査を進めていくことになりますが、現場で何が起こっているのか徹底的に事実を把握し、真因を究明し、再発防止に真摯に取り組んでいくことをお約束いたします。そして、調査で分かった事実については包み隠さずタイムリーに世の中のみなさまにお知らせしたいと思っております。私自身2009年に発生した大規模リコール問題の際に、世界中のお客さまに対し、『トヨタは逃げない、隠さない、うそをつかない』ということをお約束しました。それにもかかわらずグループ会社でこうした問題が発生したことを大変重く受け止めております。今後トヨタおよびグループ各社のクルマ作りのオペレーション上の問題については執行トップである社長の佐藤が責任を持って改善に取り組み、ガバナンスやコンプライアンスに関する部分は会長であり、リコール問題を経験した私自身が責任を持って取り組んでまいりたいと思っております。トヨタグループ一丸となり、一日も早くお客さまの信頼を取り戻せるよう全力で取り組んでまいります」と、社長執行役である佐藤氏と、会長である自身が一緒になって問題に取り組んでいくと説明した。
佐藤社長は現段階で分かっていることを報告。「トヨタブランドで販売する車両におきまして、現時点で確認されました不正の内容についてご説明を申し上げたいと思います。認証の不正に関しまして該当する法規は、UNR95という国連法規。並びにGSO法規という中近東の法規でございます。この内容は側面衝突時における乗員への危害性に関する法規でございます」と語り、法規を図説。
この法規は、クルマの側面に側面衝突用の台車が50km/hで衝突した際に乗員への危害性を確認するもので、今回は内装のドアトリムに切り込み加工を行なった部分が問題となった。
これは乗員への危害性に問題ない箇所にあえて弱い部分を作ることで、危害性に問題ない場所から壊れるようにするもの。壊れる場所をコントロールすることで、乗員の安全性を確保することになる。
問題はこの変更が認証時に行なわれており、通常生産されているクルマに対しては反映されていないことにある。正式な設計変更を行なわず、認証をパスするためだけに変更が行なわれた。
トヨタ・ダイハツとしては追試験を行なっており、この切り欠きがなくとも認証には問題ないことを確認している。現在、認定機関に対して再認証を申請しており、無事に再認証されれば、クルマ自体についての問題は解決する。
ただし、クルマにとって何よりも大切な安全に関する認証を不正な行為によって乗り越えたことになり、今回の問題は、なぜこのようなことが行なわれてしまったのかになるだろう。
豊田章男会長が語っているように、トヨタでは2009年に品質保障問題が発生して以後、「トヨタは逃げない、隠さない、うそをつかない」ということを行なってきた。「もっといいクルマづくり」を掲げ、開発現場では試験車が壊れることを是としている。現場で取材していると、ある開発者は「壊してくれてありがとうという考えが浸透している」と語るなど、隠さないという思想が浸透しているのを感じている。
しかしながら、日野自動車の問題、豊田自動織機の問題、そして今回のダイハツの問題など、グループではさまざまな問題が発生してしまっている。
なぜ、「トヨタは逃げない、隠さない、うそをつかない」という品質問題で行なった約束がグループ全体に伝わらないのか豊田章男会長に質問した。豊田章男会長は、「グループに浸透するためには何が必要か。『行動じゃないすかね』。行動だと思います。ルールを文章化したところで実現はなかなか難しいと思います。そして次は権力を何に使うかということだと思います。現場は毎日毎日、滑った転んだではないですが、本当にいろいろな変化点を抱えてやっております。そのなか、会社として商品の品質、安全性、納期、お客さまが期待するターゲットコストみたいなものを、日々いろいろな形でプレッシャーを感じているというのも現場だと思います。その現場が感じ、みんなでより以上のことをやってくれているから、今こういう(もっといいクルマづくりの)商品が出てきていると思います。決してやっていることを否定するのではなく、よりみんなで協力していこうよ、足りないところがあったら助け合おうよ、何かやってくれたら『ありがとう』と言い合おうよと。それこそが私がトヨタの中で示してきたやり方だったと思います」と、語る。
その上で、「ただ、それはデイリーにいることができる会社だからできることであって、デイリーにいることのできない会社は、そう簡単にそういう所作は伝わっていかないと思います。ですから先ほど申しましたように、もう一度グループとして我々が大切にしていた思想、そして技、所作。これもありように言いますと、こうしたら理想の世界だよねというのを創造される方が多いと思うのですが、私の3つの約束のように、『逃げない、うそをつかない、ごまかさない』のように、やっちゃいけないことを明記していく。やっちゃいけないことを、まず行動で示す。そうすると、そこはみんなが考えていくのではないかと思います」と、グループ会社の統治の難しさを語る。
豊田章男会長は最後に、「トヨタのバトンを引き継いだとき、よくいろいろな人から言われました。『トヨタはいったい何屋さんなのですか?』と。今、佐藤社長にバトンを渡し、自信を持って『トヨタはクルマ屋です』ということを申し上げることができます。そして、『もっといいクルマづくりをしようよ』と、私自身声を大にして言っていた時代、いろいろな方から言われました。『数値目標も言えないのか?』『中期目標もないのか?』『もっといいクルマって何だ?』というようなことをたくさん言われましたが、私がソリューションを言わなかったが故に、トヨタの商品はコモディティではなくなったんじゃないのかなという風にも思っております。みんなが、多様化しているみんなが、それぞれ自分にとってのもっといいクルマづくりということを考え動くとき、失敗してもいいからやってみようよというチャンスを与えられたこと、これが私は大きいと思っております。ですから『失敗したっていいんだよ』という行動や、『やってみようよ』とか、『ありがとう』と言い合える、こんな所作を伝えていくことこそが、今後必要なことになるのではないかという風に思っております。長くなりましたが、そういうことを今は考えています」と語り、13年の社長経験で得たものは自信を持って「トヨタはクルマ屋です」と言えるようになったことだという。
その自信を得ることができた所作を、みんなに伝えていきたいと結んだ。