中年期からはじまる「筋肉の減少」…老後も自分の脚で歩くために専門家が薦めること

中年期からはじまる「筋肉の減少」…老後も自分の脚で歩くために専門家が薦めること

 中年期からはじまる筋肉の減少「サルコペニア」。放っておくと老後の歩行困難などの原因にもなります。筋力増強のためにおすすめの運動を、「応用生理学」という立場から研究している名古屋市立大学の高石鉄雄先生が、このたび刊行された『自転車に乗る前に読む本』の中から紹介します。

中年期から急激な筋肉の減少が始まる!

 中年期から起きる身体の変化には、筋力の低下もあります。加齢とともに筋肉の量が減少していく老化現象を「サルコペニア」と呼びます。加齢による筋肉の重さ(筋量)の減少がどのように起こるのかを示したものが図1「身体各部の筋群に見られる加齢による筋量の減少」です。

 筋量の減少は30代からすでに始まり、急激に減少していくことがわかります。とに、自転車でもっともよく使われる大腿四頭筋の筋量は、加齢による低下がもっとも大きく、20歳時に比べて、男性では50歳で85%、70歳で65%まで低下します。

 女性では減少率がさらに大きく、50歳で75%、70歳では55%に半減します。このように、歳を重ねるほど意識的に筋肉を鍛えなければサルコペニアが進行し、下肢を中心に運動機能が衰えていきます。

 筋量の減少は運動機能を低下させるだけでなく、基礎代謝量も減少させ、肥満の原因にもなります。基礎代謝量とは、内臓の活動や呼吸、体温の維持など、生命活動を維持するために消費する必要最小限のエネルギー量のことです。

なに何もしなければ老年期に歩くことが困難に!?

 さらに、運動不足のまま年齢を重ねサルコペニアが進むと移動するための機能が低下した状態となり、老年期には介護が必要となります。このような状態を「ロコモティブ・シンドローム(運動器症候群)」と呼びます。

 運動器とは、人間が立つ、歩く、姿勢を保つなどの、広義での運動のために必要な身体の仕組み全体です。運動器は筋肉・骨・関節・神経などから成り立ちますが、これらの組織の障害によって、立ったり歩いたりする能力(移動機能)が低下した状態がロコモティブ・シンドロームです。

 生涯にわたり健康を保つには、中年期から筋量の減少を抑制する必要があります。

 それでは筋力を向上させるにはどのような運動が必要でしょうか? 

筋力増強のために必要なこととは?

筋力増強の基本原則は、「きつい」と感じる運動をしなければ筋力は向上しない、というものです。

 たとえば、ある人が床に仰向けになり50キログラムのバーベルを腕の筋肉を使って1回だけ持ち上げることができたとします。2回目は持ち上げられませんでした。

 この場合、50キログラムのバーベルを持ち上げることが、その人の腕の最大筋力に対する「100%の負荷」となります。この負荷は、図2「筋力トレーニングにおける負荷の目安」の上のように、4回持ち上げられる場合には「90%」、25回ならば「60%」の負荷となります。

 トレーニング理論によると、筋肉が大きくなる「筋肥大」のためには60~85%の負荷、筋力アップのためには86~100%の負荷をかける必要があるといわれています(図2・右表)。

 筋肉には、瞬間的に大きな力を出せる「速筋線維」と、持続力がある「遅筋線維」の2種類があります。トレーニングで太くなりやすいのは速筋線維です。

 速筋線維が必要になるような大きな負荷の運動を行うことで、筋力が向上するのです。

ランニングよりも効果のあった運動法とは?

 ここで、常葉大学の星川秀利教授が大学生の男女8名に行った実験を紹介しましょう。この8名に、60%の運動強度で30分間、週3回、7週間、自転車運動をしてもらい太ももの筋力や断面積を計測しました。

 すると、太もも前側の大腿四頭筋の筋力は9~17%増加し、太もも裏側のハムストリングスは約8%増加したそうです。加齢とともに筋量が減少しやすい大腿四頭筋などの下肢の筋肉が鍛えられ、ロコモティブ・シンドロームを予防する効果が自転車運動にはあるのです。

 なぜ、自転車運動には筋力トレーニングの効果があるのでしょうか? 

 順天堂大学の谷本道哉先任准教授たちのグループは、5分間のランニングと自転車運動における「筋酸素化レベル」を測定しました。筋酸素化レベルとは、筋肉中の血液に溶けている酸素の量を示すものです。

 その結果、ランニングよりも自転車運動のほうが、筋酸素化レベルが低下したそうです。筋酸素化レベルが低下すると、筋肉中に酸素不足の領域ができ、乳酸が蓄積して、成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンには筋肉を大きくする作用があります。自転車運動による乳酸の蓄積が刺激となって、筋肥大をもたらすのです。

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