YouTuberはもう食えないのか 「子どもの憧れ」のはずが迷惑系、暴露系、私人逮捕系、そして逮捕者も

YouTuberはもう食えないのか 「子どもの憧れ」のはずが迷惑系、暴露系、私人逮捕系、そして逮捕者も

「私人逮捕系ユーチューバー(YouTuber)」が、相次いで逮捕されている。2023年11月に中島蓮こと今野蓮容疑者(30)が覚醒剤所持の教唆容疑で、また煉獄コロアキこと杉田一明容疑者(40)が名誉毀損の疑いで逮捕された。

 数年前、子どもにとってあこがれの職として挙げられるようになったYouTuber。だが最近は過激な行動を撮影してインターネット上に公開する人も登場し、逮捕者まで出てしまった。今、何が起きているのか。

■「小学生の将来就きたい職業ランキング」1位も

 YouTuberという職業が世に認知されて久しい。有名どころでは、2012年、はじめしゃちょーさんがデビューし、14年にはヒカキンさんが「HikakinTV」のチャンネル登録者数100万人を達成。19年には学研の「小学生の将来就きたい職業ランキング」で、YouTuber初めて1位に輝いた。

 しかし2020年ごろからは、へずまりゅうさんらに代表される「迷惑系」YouTuberが出現。22年にはガーシーこと東谷義和さん(現在は刑事被告人)をはじめとする、「暴露系」と呼ばれるジャンルが確立された。そして、今年相次いだ私人逮捕系YouTuber。それぞれ過激な行動や言動が一定の注目を集めた一方、必ずしも品位があるとは言えない状況が生まれ始めた。

再生回数が稼ぎにくくなり過激な方向へ

 YouTuberという職業は、「劣化」してしまったのか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏は、YouTubeの収益化の条件(最新は10月3日にグーグルが発表)などを挙げつつ、以前よりもYouTuberが「食えなくなってきている」と指摘する。

「収益化の条件に満たなくなったYouTuberは、そもそも動画を公開しても報酬が支払われません。また、YouTubeの広告単価が以前に比べて低い傾向にあるため、収入が減ったYouTuberが増えていると言えるでしょう」

 さらに、井上氏はYouTuberの「多ジャンル化」もまた、1人当たりの収入を減らす要因であると語る。

「この2年ほど、YouTuberには新たに『教育系』『学び系』といった新ジャンルが誕生するなど、ジャンルの新設には勢いがある一方、(閲覧)ユーザー数の伸びはそれほどでもありません。その結果ユーザーが分散し、動画を公開して再生数が跳ねるということは、5年前に比べると相当起きづらくなってしまっています」

「そのため、ユーザーを集め、かつ、まとまった再生回数を稼ぐには、以前にも増して過激なことをしなければならなくなっています。それまで別のジャンルで活動していたYouTuberが『世直し系』などと称して鞍替えし、さらにその中で過激化したYouTuberが私人逮捕系に移行していきました。世間の人々の『留飲を下げさせる動画』の過激化が、私人逮捕系を生み出したと言えると思います」

 最後に、井上氏は以下のようにも指摘した。

「『私人逮捕』は確かに法律上の権利ですが、非常に限定的なものです。にもかかわらず、あたかも『いついかなる時でも行使できる』かのように錯覚してしまった人物が出てきた結果、今回のような相次ぐ逮捕という事態を招いているのではないでしょうか」

【私人逮捕系YouTuber】「警察官は訓練をしている」元刑事が私人逮捕の難しさを解説「第三者が巻き込まれてけがをしたらどうするのか」【小川泰平氏事件スジ読み】

『私人逮捕系YouTuber』の逮捕が相次いでいます。30歳の男ら2人は男性に覚醒剤を持ってくるようそそのかしたとして逮捕され、40歳の男は女性の名誉を傷つける動画を投稿した疑いがもたれています。事件に遭遇したときや、周囲から「犯人」と呼ばれる人物が逃走したとき、現行犯・準現行犯で一般人(私人)も逮捕が可能とされていますが、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は「現行犯なのかどうか自体わかりづらい」と判別の難しさを指摘。また、駅など公共の場での撮影中に第三者が巻き込まれてけがをしてしまうような状況を懸念し、「駅の中での撮影は一切禁止にするとか、さらに取り締まりを厳しくしていく必要がある」と見解を述べました。

【解説を見る】ポイ捨てに注意や、盗撮犯発見、この一、二年は、『世直し系動画』が流行している

――「私人逮捕」とは何か、逮捕ができる=逮捕権があるのは、警察官や検察官だけではなく、一般人いわゆる私人も逮捕が可能です、どういう場合かというと、いわゆる事件に遭遇した現行犯。そして準現行犯(周囲から犯人と呼ばれる人物が逃走したとき)は、一般人でも逮捕ができるということなんです。ただ、素人が逮捕することって、大変難しい行為なんじゃないかと思うんですが。

小川泰平氏 そうですね、例えば自分の目の前で現に犯行が行われている、もしくは犯行が終わったところで現行犯逮捕するならいいんですが、今回の(動画の)ような場合は現行犯逮捕にはならない。

現行犯逮捕が一番多いのは「痴漢」

 現行犯逮捕で一番多いのは痴漢です。被害女性が「痴漢です!」と言って、周りがサポートして捕まえる、そういった場合、あくまでも私人逮捕の逮捕者はその被害女性になるんですね。ですから今回のようにカメラを持って、現行犯の犯人を探す、なんていうのはなかなか難しい。あとは現行犯なのかどうなのか、っていうこと自体も、知識としてわからないものがいる。

 例えば、『自分が盗まれた自転車を発見して、それに乗っている者がいた』、それを現行犯だと捕まえた人がいたとしても、それは現行犯ではないわけです。

実は難しい「私人逮捕」の知識

自分の盗まれた自転車に乗っているから現行犯だというんですが、それは厳密に言うと現行犯ではない。逮捕するなら、『緊急逮捕』しかできない、といったような事例もあって、なかなか現行犯が簡単というわけではないです。実際に私人逮捕は間違えれば、逮捕監禁罪(人を不法に逮捕監禁すること)が問われる行為でもあります。ですからユーチューバーの方が逮捕される可能性もある。

――煉獄コロアキと名乗る40歳の男は、女性の顔がわかる形で、チケット転売をしたなどと言いがかりをつける動画をYouTubeに投稿し、名誉を傷つけた疑いで逮捕されました。そして「ガッツch」の容疑者は、おとり捜査のような手口で、男性に覚醒剤を持ってくるようそそのかした覚醒剤取締法違反の疑いです。

小川泰平氏 そうですね。ガッツchの1人の容疑者は、おとり捜査のような、というより完全なおとり捜査です。「覚醒剤を持ってくるように」と話をしているところから、覚醒剤取締法の中の教唆容疑で逮捕されています。また、煉獄コロアキを名乗る容疑者は、警察が後で調べたらチケットを転売した事実もなければ、パパ活がどうのこうのっていう事実がないにもかかわらず、容疑を勝手につけて、女性の顔をYouTube的に言えば晒している。

 この女性はもう多大なる迷惑というか、いろんな方から「あんなことをあなたはやってたの」ってことを言われているわけです。動画は上がっていませんけれど拡散されて、この先のことを考えると、ただ単に名誉毀損だけではなくて、今後非常に大変な思いをしていくんだろうなというふうには感じています。

――立て続けに逮捕があったわけですけれども、これに関して小川さんはどう思われますか。

小川泰平氏 現在ある法律に当てはめていくしかないんです。ですから、私人逮捕系ユーチューバーだからといって必ず取り締まるとかじゃなくて、警察が何とか取り締まる法律はないかと考えて、今回駆使してやっとの法律なんです。

駅の中での撮影は一切禁止とか、取り締まりが必要

 ただ、これに近いような形で、モザイクをかけて動画を上げている人だと、取り締まるのが可能なのだろうか。また階段を転げる、この動画では階段に誰もいなかったけれど、駅の階段というのは、高齢者も子供さんもいてもし巻き込まれれば怪我をしてしまう。

 警察官は逮捕する際にも、いろいろ訓練をしたり想定してやっていますが、そういったところがないので、今回は容疑者側の者が階段を転げただけで終わりましたけど、第三者が巻き込まれてしまったらどうするのかとか考えると、駅の中での撮影は一切禁止するとかね、本来は禁止なんです、テレビ局がロケに行っても、駅の中とか空港の敷地はちゃんと許可を取ってます。そういったように、取り締まりを厳しくしていく必要があるのかなと思いました。(2023年11月21日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

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