24時間「無人販売店」が「窃盗犯」に“逆襲”、SNS上で画像公開相次ぐ 専門家は「慎重に」

24時間無人店が「窃盗犯」に“逆襲”、SNS上で画像公開相次ぐ 専門家は「慎重に」

新型コロナウイルス禍以降、全国で24時間無人の店舗が広がっている。店側にとっては人件費がかからない半面、客が支払いを済ませず商品を持ち去る窃盗事件も多い。最近は店側が防犯カメラに写った「犯人」の画像を交流サイト(SNS)で公開するケースが相次ぎ、専門家からはプライバシー面を懸念する声も。ただ、店側に対する批判の声はほとんどなく、SNSを使った〝逆襲〟が定着しつつある。

■試着室で商品詰め込み

昨年10月にオープンした大阪府東大阪市の古着の無人販売店「RE-MUJIN(リムジン)」。多彩な古着をとりそろえ、購入する場合はハンガーに書かれた値段を券売機で支払う仕組みだ。店内には6つの防犯カメラが設置され、オーナーの男性(52)は「これまで窃盗被害はほぼなかった」と語る。

ところが今年10月24日、試着室に商品のないハンガーが複数かけられていた。不審に思ったオーナーが防犯カメラを確認すると、犯行の一部始終が写っていた。

前日の午後、黒っぽいキャップにマスク姿の若い男性らしき人物が入店。しばらく商品を見て退店した直後、大きなバッグを持って再び店にやって来た。商品を数点手に取ると、店の奥にある試着室に入っていった。

数分後、出てきた人物の手に商品はなく、膨らんだバッグを抱えて足早に退店した。少なくとも古着8点が盗まれていたという。

■「良心」への訴え届かず…

被害を受け、店側はインスタグラムで防犯カメラの画像を公開。こんなメッセージを投稿して〝自首〟を呼び掛けた。

《お支払い忘れていませんか?1週間お待ちしています》

《このままですと大阪府警の方に被害届を提出させて頂きます》

結局、3週間以上待っても連絡はなく、店側は府警に被害届を提出した。オーナーは「警察沙汰にしたくないという気持ちもあり、犯人の良心に訴えたが、残念」と肩を落とす。一方、画像の公開でプライバシーへの配慮といった批判も覚悟したが、「そうした声は全くなかった」とも振り返った。

■「9割は摘発」

無人販売店を狙った事件は全国で相次いでいる。特に冷凍ギョーザや精肉などを扱った店がコロナ禍以降急増し、商品を持ち去られる被害が目立つ。昨年8月、大阪市の店舗で冷凍ギョーザなどを盗んだとして50代の男が窃盗容疑で逮捕。今年7月には、愛知県春日井市の店舗で牛肉などを盗んだとして20~50代の男3人が逮捕された。

SNS上では「犯人」が写った防犯カメラ画像を拡散する店も多い。全国に展開する食肉販売の無人店「おウチdeお肉」では、各店の窃盗被害を「犯人」の鮮明画像を含めてSNSで積極的に公開してきた。運営会社代表の林眞右(しんすけ)さん(35)は画像の公開について「9割は摘発されるし、今後の抑止力にもなる。犯人側から公開が問題だと言われたら裁判も受けて立つが苦情は1件もない」と言い切る。

「一般社団法人全国防犯住宅推進機構」のトータルセキュリティアドバイザー、山口由衣さんは「窃盗犯は『人の目』を一番嫌う。被害を防ぐ対策の一つとして、防犯カメラ映像の公開は有効だ。ただ、映像を積極的に公開すれば、純粋に買い物をしたい客は、プライバシーをさらされるのではと不安を抱く可能性がある。来店を敬遠するリスクもあり、公開は慎重に判断しなければならない」と指摘している。

■「常時カメラ確認」の店も

無人販売店の中には、防犯カメラ画像の公開はプライバシー面の懸念もあり、公開に頼らない対策を講じるところもある。専門家は「犯罪がしづらい環境をつくることが重要」と指摘する。

全国で冷凍ギョーザの無人販売店を展開する「餃子の雪松」では、スタッフが各店の防犯カメラ映像を遠隔で常時確認。トラブルがあれば駆けつける仕組みをとっている。店内の様子が外から見えるよう、ガラス張りの店舗も多いという。

運営会社「YES」(東京)の担当者は「性善説で営業しているが、『ちゃんと見ている』ということを意識してもらえるようにしている」と話している。

コロナ禍で激増の「無人販売店」が“コンセプト崩壊” 有人化、脱専門店化…何が起きているのか

 コロナ禍に一気に店舗数を増やした無人販売店が岐路に立っている。扱う商品の種類を増やす“脱専門店化”するお店が増え、さらに有人化に踏み切った店舗もあるという。

ラーメン、Tシャツを売り始めた

 無人販売店の1つの特徴として、肉や餃子などの商品に特化した点がある。

 2018年9月に1号店を開店し、北海道から九州まで、全国430店舗を展開する無人販売店のパイオニア的存在である「餃子の雪松」は、1パック36個入りの餃子(税込1000円)の1種類のみの単品販売で支持を集めてきた。

 そんな雪松だが、昨年11月から「日本ラーメン科学研究所」なるシリーズの冷凍ラーメンの販売を開始した。「醤油の黄金比」「魚介だし醤油の黄金比」「豚骨の黄金比」「味噌の黄金比」の4種を展開しており、価格は3食入りで各1000円(税込)。全国の雪松の店舗内に併設されたラーメンコーナーで販売している。

 餃子専門店からラーメンも扱う店へ……こうした“脱専門店化”の流れは他にもある。

 東京の高田馬場や飯田橋などで展開する「餃子図書館」は、その名の通り全国の人気冷凍餃子を集めた専門店だったが、今年9月に明大前駅店を「KAKUDAI BASE」にリニューアルした。様々な自販機が並ぶ店舗では、もつ煮など冷凍グルメにとどまらず、化粧品、日用品などを扱うようになった。

 肉の無人販売店として、2022年9月の創業からわずか1年ほどで全国180店舗を達成した「おウチdeお肉」も脱専門店化が進む。亀有店、北赤羽店、西日暮里店など複数の店舗が「達人の一品」という、Tシャツやシャンプーなど肉以外の製品も扱う店舗にリニューアルした。ちなみに、「おウチdeお肉」は、店舗の設備そのままにフランチャイズオーナーを引き継ぐ後継者を募集する「売却リスト」が出回っている。

 やはり1つの商品に特化するのは難しく、変化が求められているのだろう。

今年9月から有人化

「おウチdeお肉」の創業からさかのぼること1年半の2021年3月に、日本で初めて「黒毛和牛の無人販売」を始めたのが、東京都恵比寿にある「naizoo(ナイゾー)」である。店主の蒲池章一郎さんは店のコンセプトを次のように話す。

「スーパーなどで出回らないような新鮮なホルモンを冷凍し、販売しています。商品を選ぶところから会計まで、お客さん自身で行う無人販売のスタイルです。コロナ禍で外食が減り、家で焼肉をする人に良いお肉を食べて欲しかったんです。特に、ホルモンって美容や健康にも良いので、若い人に気軽に食べる機会を提供したかった。最初から無人販売にこだわっていたわけではありません。当時、餃子の雪松が無人販売で店舗を増やしていたので、肉でも出来るんではないかと思いつきました。お店は5坪程度しかないので、売上を上げるためには稼働時間を延ばすしかないとなった。結果的には、日本で初めての24時間無人の肉販売店になったわけです」

 その上で、肉専門店の経営の難しさをこう語る。

「そもそも昔から商店街にあったようなお肉屋さんは、何でも揃うスーパーに取って代わられてしまったわけです。それだけ、肉だけを売るお店というのは続けていくのが難しい。最近は自由に外食できるようになったので、家で良いお肉を食べたいという需要も減っています」

「ナイゾー」は専門店の形態こそ維持しているものの、やはり大きな変化を迫られた。万引きや会計ごまかしの対策のために、今年9月に有人化に踏み切ったのだ。

「そもそも、肉の無人販売という業態に転換が必要だったと思います。開店した当初は、コロナ禍のニーズに合っていただけで、長く続くものではないと感じていました。有人化に合わせて角打ち営業を始めたのも、肉の販売だけでは売上がほとんど横ばいか微減だったからです。その上、万引き対策は心理的負担が大きすぎます」

故意かどうか判断するのは難しい

 先の「おウチdeお肉」は、万引き犯をテレビのワイドショーやSNSで徹底的に“晒す”ことでも話題になったが、当然、無人販売には万引きのリスクが伴う。「ナイゾー」の店内には3台の防犯カメラが設置されているが、万引きや会計ごまかしを判断するのは難しいという。

「商品にバーコードがついておらず、お客さんは冷凍庫から欲しい商品を取って、タッチパネルでその商品を選び決済するシステムです。商品を選ぶときに押し間違えたり、複数買うのに1つ分しかお金を払わなかったり、いくらでもごまかしようがあるし、機械に不慣れで起きたミスなのか故意なのか判断がしづらいんです。商品1つ1つにバーコードを付けていないのは、業務簡略化のためなので、会計をごまかすお客さんだけを責めきれない部分があります。ただ、何度も来店されるのに、その度未払い商品がある方もいて、確認する度に残念な気持ちが募りました」

 過去には、明らかに万引きと分かる事例もあった。

「一度、監視カメラを見ていたら、6000円くらいするしゃぶしゃぶ用の神戸牛の肉を手に取ってそのまま店の外に出て行かれたことがありました。翌日、警察に届け出て、防犯カメラのデータを提出しましたが、万引き犯は捕まっていません。もし捕まったとしても、大抵は不起訴になるし、労力に見合わないと思って、その後は警察に届けるのもやめました」

 最近では、高額の商品の販売数を絞り、1パック税抜き650円のホルモンなど低価格の商品を中心にする対策を取ったという。

「万引きや会計ごまかしの被害は、月に5、6件、金額にして2、3万円ほどです。売上から考えると、被害額は微々たるもの。むしろわざわざ防犯カメラを確認して『また盗まれたのか』と思う方が精神的に辛い。その上、SNSなどで、『無人販売店が犯罪を誘発している』『警察に通報して捜査してもらうのは税金の無駄遣い』といった意見が届くこともあって、それもしんどかったです。一度、お店がテレビに取り上げられたときは『どんな万引き対策をしているんだ』とわざわざ店に電話を掛けてくる方もいました」

岐路に立つ無人販売所ビジネス

 消費経済アナリストの渡辺広明氏は、無人販売所をめぐる変化を次のように見ている。

「例えばコンビニエンスストアの場合、光熱費、人件費、廃棄費用の3つが最も大きいコストになります。無人販売所ならば人件費がかかりませんし、冷凍品ですので廃棄ロスもない。そうした利点で、空きテナントに進出し、店舗数を伸ばしてきました。さらに問屋とのやりとりなど仕入れや発注の手間を省くため、単一商品でのビジネスを行っていたと推察できますが、消費者はその商品に飽きて来ているように思います。そもそも市販の冷凍食品のクオリティが上がってきた今、他と差別化できるほどの美味しさを冷凍で提供することは難しいのでしょう」

 最初は物珍しさで足を運んだとしても、無人販売所で「リピート買い」をする人は、そう多くないはず……と渡辺氏は指摘。だからといって、日用品など他のジャンルへ手を広げるのは“悪手”だという。

「3000点の品を扱い毎週100点が入れ替わるコンビニの品揃えには、さすがに無人販売所の規模では敵わない。飽きられたモノに変わるインパクトのある商品を打ち出す、または継続的に毎日買いたくなるようなモノを売らないと、ビジネスとして成立しないと思います。後者の方向では、すでに“自動販売機”という無人販売が確立されているわけですが……。いずれにせよ、一過性のブームに終わるのか、無人販売所ビジネスはいま岐路に立たされているといえるでしょう」

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