なぜ風邪は冬に流行? いまも謎、「体が冷える」ほか複合要因か
急に寒くなってきました。風邪がはやる季節です。風邪(common cold)は、鼻水、せき、のどの痛みといった上気道に限局した炎症症状を呈する疾患の総称で、さまざまなウイルスが原因になります。風邪が冬に流行するのは日本だけではなく、世界中の温帯地域で同様のパターンが知られています。それにしても、いったいなぜ、冬に風邪が流行しやすいのでしょうか?
「体が冷えると風邪を引きやすい」と広く信じられていますが、医学的には証明されていません。確かに動物実験では体温を下げるとウイルスに対する抵抗力が下がることが示されていますが、日常生活において多くの人が風邪を引いている状況は、動物実験ほどの極端な寒冷環境ではありません。みなさん、寒ければ服を着こんだりして対処しますよね。
ヒトでの実験も少ないながら行われています。1968年に報告された実験では、44人の健康な成人男性に対し、一般的な風邪ウイルスであるライノウイルスを感染させた上で、4℃の室内および32℃の水浴の影響を調べました。その結果、寒冷環境は風邪症状の頻度や重症度を増加させないことが示されました。他の実験でも似たような結果が得られており、寒冷環境は風邪の発症の重要な要因ではないとされています。
「気温が下がって体が冷えるから」といった単純な理由ではないとして、冬に風邪が流行する理由は何でしょう。一つはウイルスの安定性です。温度だけではなく湿度も関係してきます。低温で適度に乾燥した冬では、風邪に関連したウイルスが不活化されにくに環境中で長く生き残り、その分、感染が広がりやすくなります。湿度が低い方がウイルスを含んだ粒子が空気中に留まりやすいことも影響しているかもしれません。
人と人との接触の機会の増加も風邪が流行する要因です。寒い冬は、暖房が効いた室内に人が集まることが多くなります。風邪ウイルスは容易に流行するでしょう。体全体が冷えるのではなく、ウイルスの侵入経路である鼻粘膜が冷えることが重要だという説もあります。だとすると、服を着こんで体が冷えないようにしても鼻周辺が冷えていれば風邪を引きやすくなります。
いずれにせよ、冬に風邪が流行するのは複合的な要因が関与していると思われます。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザだけでなく、普通の風邪も生活の質を落とします。手洗いやマスク着用、適切な湿度の維持、定期的な換気といった感染予防対策を行って、快適な冬をお過ごしください。
