食べログに勝訴でも飲食店が抱く「後味の悪さ」 訴訟資料が「黒塗り」だらけで勝因わからず

食べログに勝訴でも飲食店が抱く「後味の悪さ」訴訟資料が「黒塗り」だらけで勝因わからず

「いちばん危惧しているのは、同様の訴訟が相次ぐだろうということ」。後味の悪さが際立つ裁判だった。

東京地方裁判所は6月16日、グルメサイト「食べログ」で飲食店の評点を計算するアルゴリズムについて、運営会社のカカクコムが行った2019年の変更は独占禁止法違反であるとして、同社に3840万円の損害賠償の支払いを命じた。

この裁判、グルメサイト業界に衝撃を与えたのはもちろんだが、勝訴した飲食店側にとっても素直に喜べない事情があった。

全面対決の末、飲食店の勝訴に

裁判の主な争点は、食べログが2019年5月21日に行った「チェーン店の評点を下方修正するような(アルゴリズムの)変更」が、独禁法違反の優越的地位の濫用にあたるか否か、だった。

原告の飲食店側は、食べログ経由の予約客が自社の売り上げ全体の35%を占めること、食べログの月間総ページビュー(PV)数が18億PVを超えることなどから、食べログは優越的地位にあり、それを不当に利用して一方的にチェーン店の評点を引き下げたと訴えた。対して食べログ側は、代わりとなる競合サービスが多数存在するため優越的地位になく、独禁法違反に当たらないと主張し、全面対決の様相を呈していた。

結果、東京地裁は食べログが行った変更について「取引上優越的な地位にいることを利用して、原告に対して正常な商習慣に照らし不当とされる行為をおこなったもの」と判断し、飲食店勝訴の判決を下す。外食業界最大のプラットフォーマーであり、これまで数々の裁判に勝ち続けてきた食べログが、一敗地に塗れた瞬間だった。

今回の判決について、都内で数店舗の飲食店を経営するオーナーは「痛快だった」と語る。今まで評点に関して疑問点があっても、食べログの担当者は「こればかりはわからない」の一点張り。そんな彼らの姿勢に不信感を抱いていたこともあり、原告の飲食店に「(食べログを)訴えてくれてありがとう」と謝意を示す。

だが、喜んでいる飲食店ばかりではない。

その代表格が、原告であり、焼き肉チェーンを運営する「韓流村」代表のイム・ファビン氏だ。2年間にわたる法廷闘争の末、悲願の勝訴判決を得たにもかかわらず、イム氏は判決後、「結局、何も変わっていない」と怒りをあらわにした。というのも、食べログが実際に何を行ったのかが明らかになっていないためだ。

食べログ側は、争点となったアルゴリズムの変更内容に関して、裁判の過程では開示していた。しかし「営業機密の漏洩や不正防止のため」として、訴訟当事者以外の閲覧を制限するよう申し立てたのだ。

これに対し東京地裁は、原告側の主張を認め一部開示を命じたものの、すぐさま食べログ側が不服を申し立て、アルゴリズム変更に関する部分は今も「黒塗り」のままだ。裁判所が発令した秘密保持命令により、閲覧制限がかかった内容について原告側が外部に話すことも許されない状況にある。

「黒塗り」対応が招く不信感

執拗に隠そうとする食べログの姿勢から、黒塗り部分に営業機密以上の何かを隠しているのではないかと見る関係者も少なくない。運営会社のカカクコムは取材に対し、「『判決は不当であり、控訴する』以外のコメントは控える」と述べるにとどまっている。

原告の代理人を務めた皆川克正弁護士は、「営業機密等の理由で閲覧制限をかけるというのはわかる」と理解を示す一方、「ある程度開示する姿勢を見せないと、飲食店や消費者に『やましいことがあるのではないか』と不信に思われても仕方ない」と指摘する。

「こうした態度を貫いていると、“食べログ離れ”につながりかねない」。皆川弁護士はそう警鐘を鳴らすが、事実、飲食店や消費者のグルメサイト離れは以前から始まっていた。

グルメサイト離れを加速させたのはコロナ禍だった。それまでは韓流村のように、グルメサイトに集客を依存し、そこから抜け出せないという飲食店が多かった。しかしコロナ禍で売り上げが激減。生き残るために、極限までコストを削減せざるを得なくなり、その矛先は月数万~10万円以上もかかるグルメサイトへの広告費に向かった。

飲食店が代わりに力を入れたのが、グーグルマップやインスタグラムをはじめとするSNSだった。グーグルマップ上での評価は、掲載に費用がかからず、なおかつ単純平均で算出されるため、食べログなどの評価システムより透明性が高い。またSNSも無料で、利用者の好みにパーソナライズされた情報が表示され、不透明な評価や掲載順への疑念は少ないからだ。

飲食店のみならずユーザーも、こうしたサービスへ移行している。飲食店に予約や顧客管理サービスを提供するテーブルチェックの調査によれば、全国の飲食店におけるユーザーの予約は、グルメサイト経由が4割強。依然として大きな影響力を持つものの、2019年1月時点の約6割からは減少しており、「ユーザー先行でグルメサイト離れが進んできた」(テーブルチェックの担当者)。

食べログ側は控訴し、今後も争う姿勢を示すが、その間にも飲食店、そしてユーザー離れは加速しかねない。口コミサービスを柱にするグルメサイトは今後、苦しい立場に追い込まれそうだ。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏