「電卓はライバルでしかない」あるある?電卓に夢中になる赤ちゃんたち 玩具メーカーも嫉妬する電卓の魅力
大人からすると「なぜ?」と思うものに、赤ちゃんは興味を示す。不思議と赤ちゃんが“ハマってしまう”ものの代表格が、電卓だ。意外にも感じるが、「電卓さえあれば1時間くらいもつ神アイテム」と評する人もいるらしい。実は電卓には、玩具メーカーも真似できない、赤ちゃんを虜にする“ツボ”が凝縮されていた。
生後10ヶ月、かわいい盛りの友人の赤ちゃんと対面したときのこと。ぐずりだした娘に、友人がおもむろに手渡したのは電卓だった。おむつや哺乳瓶が入った大きなバッグから、ごそごそと電卓を取り出すのだから笑ってしまう。
その子は小さな手で意味もなくボタンを押したり、はむっと噛みついたり・・・どうやら電卓が大のお気に入りのようだ。
子どものいない私は「こんな赤ちゃんもいるんだな・・・」と、その子が電卓好きの“ユニークな子”なのだと思った。
ところが、SNSを見てみると「いつも電卓持ち歩いていた」「子どもって電卓大好きだよね」「電卓好きな時期があった」との投稿をいくつも発見。どうやら赤ちゃんが電卓にハマるのは、変わったことではないらしい。
となれば、理由が気になる。「ぽぽちゃん」など数々のおもちゃを生み出してきた玩具メーカー「ピープル」に話を聞くと、電卓には納得の魅力が詰まっていた。
■「色んな興味に刺さりやすい要素が詰まっている」約5割の赤ちゃんが興味示す
ーー赤ちゃんが電卓が好きっていうのは、よくあることなんでしょうか?
ピープル 赤ちゃん研究所リーダー 小板史美さん
「超あるあるです。指先を使うことは一定の発達が進むと好みますが、押すことに興味がある子もいれば、持ち運ぶことに興味がある子もいれば、押すことでインタラクティブなアクションがあることに興味をもつ子もいれば…“この1ポイントがめちゃくちゃ全員に刺さる!”というよりは色んな発達段階にいる色んな興味に刺さりやすい要素が電卓には詰まっているのかなと思います」
ピープルでは商品開発をする際に、1歳までの約150人のモニターを観察。赤ちゃんの興味関心を探っているというが、約5割の赤ちゃんが電卓に興味を示したという。
ーー刺さりやすい要素が詰まっているんですね。それは一体どんなところが?
「まずは感触です。握った時に必ずボタンがあたって、簡単にくぼむ。気がついたら隣のボタンを触っている。さらに触って、触って…無意識の連続性が引き出されますよね。
表面と裏面の違いを楽しんでいる子もいます。裏のネジを触ったり、表のボタンを触ったり。そういう意味では、テレビや照明のリモコンも赤ちゃんは好きですね」
■赤ちゃんに響くポイントはほかにも…“赤ちゃんも仮説と研究を繰り返している”
ーーなるほど…無意識のうちに触れ続け、惹かれてしまうんですね。
「それだけではありません。月齢の低い子にとっては光ることも重要です。視力が発達していない中で、電卓のモニター部分が反射でキラキラすることで、興味を持つ子もいます。
赤ちゃんでも持ちやすい薄さ・重さというのもポイントです。
また、生後10ヶ月くらいからは“これをやったらこうなる”と理解できるようになるので、ボタンを押すとモニターに表示される数字が変わるという、やったことに対するアクションの違いを確認して楽しむ子もいます」
赤ちゃんも、仮説と研究を繰り返し、世の中のことを知ろうとしているそうだ。
ちなみに、電卓に“ハマり”やすい赤ちゃんは、両親が電卓を使っているのをよく目にしているらしい。
「お母さん・お父さんの真似をしたい」という欲求が、“触ってみたい”という興味を刺激するようだ。
コロナ禍でパソコンを使った在宅ワークが増えたことで、赤ちゃんがキーボードに興味を示すようになったのも、そういうわけだ。
ーー電卓、万能ですね。おもちゃを作る立場としては、どうですか?
「ライバルでしかないですよね。すばらしい。要素が詰まっていて、真似できません(笑)」
電卓には玩具メーカーもライバル視する意外な魅力がつまっていた。とはいえ、そもそも電卓はおもちゃではないので、赤ちゃんに手渡す際には、決して目を離すことがないよう注意は必要だ。