マイクロソフト幹部が説く「生成AIとアプリケーションの関係」

マイクロソフト幹部が説く「生成AIとアプリケーションの関係」

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、Microsoft エグゼクティブ バイスプレジデント 兼 コマーシャル チーフ マーケティング オフィサーの沼本健氏と、IIJ プロフェッショナルサービス第一本部 コンサルティング部 副部長 プリンシパルコンサルタントの中津智史氏の発言を紹介する。

「生成AIへのユーザーの関心事はアプリケーションの中でどう活用できるかだ」

(Microsoft エグゼクティブ バイスプレジデント 兼 コマーシャル チーフ マーケティング オフィサーの沼本健氏)

 日本マイクロソフトは先頃、米Microsoftでエグゼクティブ バイスプレジデント(EVP) 兼 コマーシャル チーフ マーケティング オフィサーを務める沼本氏が来日したのを機に、同氏がグローバルでの事業責任を担う企業向けAIの戦略について、東京・品川オフィスで記者説明会を開いた。冒頭の発言はその会見で、同氏がジェネレーティブAI(生成AI)に対するユーザーニーズについての見方を述べたものである。

 会見の内容は関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言に注目したい。

 「今はAIが新しいプラットフォームになっていく時代の始まりにある」

 沼本氏はこう話を切り出した。これまでのプラットフォームとは、「1980年代のPC、1990年代のウェブ、2000年代のモバイル、2010年代のクラウド」を指すと言う。1980年代から始まるのが同社らしいところだ。

 さて、冒頭の発言だが、その前後も合わせて、沼本氏は生成AIについて次のように語った。

 「生成AIの話になると、とかく大規模言語モデル(LLM)などのAIモデルの話題になりがちだが、実はユーザーからすると、一番の関心事はどのようなケイパビリティーを提供してくれるのかという意味で、ユーザーが保持するデータと生成AIのLLMを掛け合わせて、ユーザーが既に使用しているアプリケーションの中でいかに使いやすく活用できるかにある。従って、私たちベンダーはその点にもっと注力し、ユーザーにその効用をアピールしていかないといけない」

 Microsoftは米国時間9月21日、生成AI機能を備えた「Microsoft Copilot」を発表した。沼本氏によると、「Copilotは当社が幅広い分野に提供しているあらゆるアプリケーションに組み込んでいく形になる」とのことだ(図1)。

 アプリケーションに組み込んでいく形として分かりやすいのが、「Microsoft 365 Copilot」だ。図2がそのイメージである。

 Microsoftのこうした生成AI活用の取り組みは、今のところ競合他社に比べて大きく先行しており、沼本氏は「この勢いを今後も維持し拡大していくのが、私の仕事だ」と、さらにスピーディーな事業展開を図っていく構えだ。

 そこで、会見の質疑応答において、「勢いを今後も維持し拡大していく上で一番のポイントは何か」と聞いてみた。すると、同氏は次のように答えた。

 「AIを活用した効果がユーザーの目に分かりやすく見えるのは、さまざまなアプリケーションに組み込まれた機能を使うところから始まる。当社はその点、アプリケーションのアセットが非常に多いので、それらにスピーディーに組み込んで多くのユーザーに効果を実感してもらうことが非常に大事だと考えている」

 まさしく冒頭の発言に帰結した形だ。沼本氏の一貫した姿勢が印象的な会見だった。

「全国の企業がDXをうまく進められるようにお役に立ちたい」

(IIJ プロフェッショナルサービス第一本部 コンサルティング部 副部長 プリンシパルコンサルタントの中津智史氏)

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は先頃、デジタルトランスフォーメーション(DX)人材の育成を支援するサービス「IIJ DX人材アセスメントソリューション」を提供開始すると発表した。中津氏の上記の発言はその発表会見で、新サービスをつくった立場としての思いを述べたものである。

 新サービスは、DXを推進するプロジェクトにおいて、その各フェーズに適合した特性を持つ人材を見定め、組織における適正配置と人材の育成を支援するものである。

 DXプロジェクトを進める人材には、デジタル技術に限らず変革の能力や意識が求められる。新サービスでは、デジタル技術の基礎知識を測る「ITテスト」と、組織の変革に関わるマインドや特性を見る「DXテスト」の2つのウェブテストにより、個人の能力や特性を、IIJのDXコンサルティングの経験と知見を基に開発した「Digitalection(デジタレクション)」のAIエンジンで分析し、アセスメントレポートとして顧客に提出する(図3)。

 会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは上記の発言に注目したい。

 筆者が新サービスで興味を抱いたのは、ユニークな視点によるアセスメントの内容もさることながら、導入企業において新サービスの採用を決めて社内での活用を推進する担当部署はどこなのかだ。DX推進組織なのか、IT部門なのか、もしくは人事部門なのか。このことは、IIJからすると、新サービスを誰に売るのか、という話でもある。この点について、会見の質疑応答で聞いてみたところ、中津氏は次のように答えた。

 「まずは、新サービスによって全国の企業がDXをうまく進められるようにお役に立ちたいというのが、私たちが新サービスに込めた思いだ。新サービスの採用を決めていただくのは、企業においてDX推進組織が設置されていれば、その組織になるケースが多い。DXをIT部門が中心になって進めている企業もあるので、その場合はIT部門になる。さらに、DX推進組織には経営企画部門や人事部門が深く関わっているので、両部門ともお話をさせていただくこともある。IIJとしてはこれまでインフラサービスを中心に展開してきたことから、IT部門とお話しするケースが多かったが、新サービスではその枠組みが広がる形になる」

 冒頭の発言は、このコメントの最初のところを抜粋したものである。また、最後のくだりは、IIJとしての新サービスの提案先が広がることにもなる。さらにユーザー企業だけでなく、システムインテグレーター(SIer)などのパートナー企業にもニーズがあるようだ。IIJとしてはこれまであまり扱ったことのないサービスだろうが、DX支援事業のフロント商材として注目される可能性は大いにありそうだ。

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