「お前は試合で“使えない”」「罰として草むしり1週間」部活で普通も“じつは法律的に危ない”監督のパワハラ言動…元野球部の弁護士に聞く

「お前は試合で“使えない”」「罰として草むしり1週間」部活で普通も“じつは法律的に危ない”監督のパワハラ言動…元野球部の弁護士に聞く

 一般社会から見ればパワハラ的に映る言動……高校部活における「普通」は、法律的にはどう解釈されるのだろうか。野球部を例に、木蓮経営法律事務所の弁護士・社会保険労務士で、高校野球の経験者でもある松坂典洋氏に話を聞いた。

丸刈りルールでも“無理やり”は違法?

――先ほど、丸刈りの合理性のうちの一つとして「清潔感を保つため」という理由が考えられるという話でしたよね。メジャーリーグのヤンキースのドレスコードに「長髪禁止」「顎ひげ禁止」というのがあって、それが「清潔感」につながるというのはよくわかるんです。ただ、「丸刈り=清潔感」というのも、現代では無理がないですか。

松坂典洋弁護士(以下、松坂) 裁判になったら、ギリギリのところではあるでしょうね。スポーツ刈りくらいで十分なわけですから。だから、同じ丸刈りでも長さも重要になってくると思います。たとえば、夏の大会の前に全員五厘にしなきゃならないとなったら、そこに合理性があるとは言い切れなくなってくるかもしれません。いわゆる清潔感からは遠ざかるし、転んだときにケガをしやすくなる。それこそ、宗教的な理由でも持ち出さない限り、合理性は見いだせなくなるような気はしますよね。

――頭の上に手を置いて、指の間から髪の毛がはみ出たら「長い」と見なされるという話はよく聞きますよね。でも、だからといって監督が無理矢理、バリカンで刈るみたいな行為は、身体を傷つける行為に近いと思うんですけど。

松坂 それは違法と見なされる可能性は非常に高い。学校の先生が女の子の髪の毛を切って、損害賠償が認められたケースもあるので。刑事的に見ても暴行罪の暴行にあたるくらいの行為です。たとえ丸刈りが野球部のルールだったとしても、本人が嫌だと言っていたら、そこまでする権利はない。丸刈り強制の問題は2つに分けないと、ややこしくなると思うんですよ。1つは全員の髪型を丸刈りにするというルールの有効性。もう1つはそのルールに違反したときにどう対応するのかという問題です。前者は先ほど話しましたけど、おそらく現状では裁判所が違法と判断する可能性は低いです。ただ、後者は違法にあたるケースが多いような気がしますね。

「罰として草むしり」は違法の可能性大

――1人だけ髪の毛を伸ばしている選手がいたとして、「おまえのようにチームの輪を乱すやつはグラウンドに入る資格はない」と練習参加を認めなかったら? 

松坂 参加を認めない期間によっては、違法となる場合もあるでしょう。府立高校の黒髪の問題のときも校則は問題なしとの判断でしたが、髪の色を理由にクラスに席を置かず、修学旅行への参加も認めなかったことに対しては違法との判断でした。数日間、練習させないぐらいなら許容されるかもしれませんが、何週間もグラウンドから追い出して事実上、退部を迫るような態度を取るのはやり過ぎでしょうね。そもそも丸刈りの強制も校則ではないわけですよね。野球部の監督という、校内のいち指導者の独断と言えば独断なわけです。その独断に違反したからといって、そこまでやる必要性や相当性があるんですか、と。

――これは髪の毛ではなく眉毛の話なんですけど、ある高校で、眉毛を剃っているのがバレて、一週間くらい草むしりをさせられたという話があったんです。それもほんの少し、整える程度だったんですけど。

松坂 それは違法でしょうね。そもそも眉毛を整えた程度で何か制裁を加えるということが許されるのかという問題もありますし、1週間も草むしりをさせるというのは典型的なパワハラですよ。グラウンドの草むしりであれば、いちおうグラウンドをきれいにするという名目は立ちますけど、普通の会社だったら完全にアウトでしょうね。意味のない労役を科しているだけですから。

――眉毛をいじってはならないというのも、高校野球部ルールの「あるある」なのですが、それも合理性はあると判断されるのでしょうか。昔のヤンキーのように爪楊枝みたいに細くするのはどうかなと思うのですが、適度に眉の形を整えるというのは、もはや身だしなみとかエチケットの範疇のような気もします。ひげを剃るのと同じ感覚だと思うんですよ。

松坂 監督の言い分としては、丸刈りと同じで、野球に集中するために見た目を気にし過ぎないということなんでしょうね。

「グラウンドから出てけ!」はダメだった…

――先ほど、パワハラという言葉が出ましたが、高校野球におけるパワハラも最近、問題になることが多いですよね。「死ね」という言葉はさすがにアウトだとわかってきたと思うのですが、よく言いがちな「(グラウンドから)出てけ!」はどうなのでしょう。

松坂 アウトでしょうね。会社なら間違いなくアウトですし、未成年に対する教育を目的とするスポーツの現場でも、もうダメだと思います。正当な理由があれば、一時的にグラウンドに入れさせないというのは権限としてありだと思いますけど、感情的になって「出てけ!」と言い放ったのであればパワハラと言われても仕方ないと思います。

――「下手くそ!」は? 

松坂 それも会社だったらダメですね。言い方にもよりますけど。会社は今、本当に厳しいんですよ。「バカ」「アホ」も、もちろんダメです。

「スタメンで使えないぞ」発言の怖さ

――この前、グラウンドである監督が選手に対して「おまえ、もう使えんぞ」と言っていたんです。これはどうですか? 

松坂 今までの高校スポーツの現場ではOKだったんでしょうけど、これからは気を付けた方がいいでしょうね。というのも監督は絶対的な権力者なわけですよ。その人が言う「使えんぞ」という言葉は選手からしたら相当、重い。実際に試合に出させないという選択ができるわけですから。下の者の生殺与奪権を握っていると言ってもいい。だからこそ、そういう権力者の言動を法律で制限し、選手たちの人権を守る必要があるわけです。

――ただ、スポーツの現場って肉体や精神が追い込まれるので、冷静になっている余裕がないというか、普通の会社なんかと比べると、当然、言葉は荒っぽくなると思うんですよ。だから、言った方も、言われた方もわかっているけど、その関係性を知らない第三者から本意ではない解釈をされてしまうこともあるじゃないですか。

松坂 それは本当にそうなんです。なので、そこを汲まずに一般の会社のパワハラ認定の事例に従ったら、おそらくアウトだらけになっちゃうと思います。

アカハラに共通する問題

――体育会系の人の常套句として、厳しい言い方をしたのは「発奮を促すため」というのがありますよね。あの論法は通用するのですか。

松坂 少なくとも、今の若い人たちには通用しないでしょうね。パワハラの裁判でも暴力や暴言が許容される言い分にはなりません。パワハラ加害者は「がんばって欲しいから厳しく言ったんです」ってよく言うんですけど、本当にそう思っていたのなら、もっと建設的な言葉で指導すればいいだけのことですから。今、アカハラがすごく注目されているんです。アカデミック・ハラスメントです。これまで比較的、寛大な処置がとられてきた大学等の教育機関に対する目も、権利意識の高まりによって相当厳しくなってきました。この波は順番的に高校野球の世界にもくると思うんです。今まで許されてきたことでも、許されなくなってくる。

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