小型次世代原子炉の燃料、米で10月から製造…ロシア依存からの脱却を図る
米国で10月から、小型次世代原子炉で使う核燃料「HALEU(高純度低濃縮ウラン)」の製造が始まることが、米原子力企業セントラスエナジーへの取材でわかった。HALEU製造は核燃料分野の大国ロシアが独占しており、ロシアのウクライナ侵略の影響で米国の小型次世代炉開発に遅れが出ていた。米国は燃料の独自製造でロシア依存からの脱却を図る。
米国で原発の新規建設が長期間途絶えていたのを横目に、中露が世界の原発建設を席巻しており、米国は日本も参加する小型次世代炉の開発で巻き返しを図りたい考えだ。
HALEUは通常の原子力発電所で使う燃料よりもウラン濃縮度が高い特殊な燃料で、露国営原子力企業「ロスアトム」の系列企業だけが販売している。ロシアは核燃料を製造する要の工程となる「濃縮」で高い技術力があり米国が自前で燃料を製造する必要性は乏しかった。
セントラス社はオハイオ州の工場でHALEUの製造を開始する。年0・9トンの製造を当面の目標とするが、設備増強で年6トンまで製造が可能になるという。
米エネルギー省は昨年11月、「敵対国への依存を減らす」(ジェニファー・グランホルム長官)ため、セントラス社に製造実証事業を委託し、約1億5000万ドル(約220億円)の補助を決めていた。同省の予測では、2030年までに米国内で40トン超のHALEUが必要になる。
バイデン政権は米企業による小型次世代炉の開発を支援し、海外輸出も目指す。米国内では20年代後半にも稼働が始まる見通しだ。
日本国内で小型次世代炉の建設計画は具体化していないが、米テラパワー社は日本原子力研究開発機構などとの技術協力で小型次世代炉の開発を進めている。
テラパワー社はロシアのウクライナ侵略で燃料の安定調達が難しくなったと判断し28年の運転開始目標を遅らせた経緯がある。米国内での燃料製造の取り組みは燃料に関する不安を解消し、計画を後押しすることにつながりそうだ。
セントラス社のダン・レイスティコー副社長は本紙に「製造開始は米国の原子力産業にとって歴史的な一歩だ。エネルギー供給はより安定し、自立したものとなる」と意義を強調した。
◆小型次世代原子炉=革新的な技術で性能を向上させた原子炉のうち、一般に出力30万キロ・ワット以下のものを指す。製造コストが安く、建設期間も短い利点がある。複数の種類があるが、少量で大きなエネルギーを出せる「HALEU」を燃料に使うものが多く、米政府が開発を支援する10基のうち9基はHALEUを使う設計になっている。
