「必死に血を吸う」秋の“暴れ蚊”警戒 海外ではデング熱が大流行
ここ最近は朝晩が涼しくなり、秋の訪れを感じている人も多いのではないでしょうか。ただ、この気温は、実は蚊にとっても過ごしやすく、活発になると言われています。今年は海外でも異常発生しているほか、蚊を媒介した感染症も流行しています。
蚊は…暑さ和らいだ秋に活性化 大量発生
神奈川在住 50代:「数えられる範囲で42カ所、刺されていた」
こう話すのは、今月2日に夜の河原でバーベキュー中に蚊に刺された男性です。
蚊に刺された足の部分。長ズボンを履いていたのに、その上から39カ所も刺されました。他にもわき腹や手など、ありとあらゆる場所を刺された男性。体中のかゆみに耐え切れず、病院で治療を受けました。
神奈川在住 50代:「今年は蚊が多いということは、つくづく思いました。生まれて初めてこんなに刺されたので、怖かったです」
蚊は「かゆい」だけではありません。
熊本県は、70代の男性が日本脳炎に感染したことを発表。男性は意識障害や痙攣(けいれん)などの症状があり、現在入院中です。
夏のイメージがある蚊ですが、実は暑さが和らいだ秋に活動が活発化し、大量発生します。
「おしりをドリアンみたいになるぐらい…」
東京・目黒区にあるお寺では、蚊が大量発生しているということで、消毒作業が行われていました。作業を見てみると、藪や木の葉などを中心にまいています。
蚊の駆除作業を行っていたのは、都内で2番目に歴史のある木造建築の「圓融寺」。平安時代に創建された名建築を際立たせるように、周囲には鮮やかな緑が生い茂っています。
みどりの産業 小坂正照代表:「もっぱら暗くて涼しい所、中ですね。間違っても表面にはいないです」
こう話すのは、害虫駆除の専門業者・小坂さんです。蚊が一番多く出るという竹やぶで散布すると、隠れていた蚊が続々と飛び出します。
小坂代表:「暗くて水がある所が大好きなんです。こけむしている所は、暗くて湿気の多い所。その一つが竹やぶであったり、樹木の幹肌に付いているコケなんかは大好きなので。夏なんですけど、涼しくて湿度の高い所は好みます」
5歳児母:「去年とかは、そんな気にしてなくて。今年は多いような気がします。ここで刺されることって、あんまりないんですけど」
近所の人:「今年、草むしりしていると刺される。もうめちゃくちゃに、これ(蚊取り線香)をここにセットしておかない限り、私はいつもおしりをドリアンみたいになるぐらい刺される」
涼しくなった反動で一気に…暴れ出したか
今年は蚊が多いことを気にしていた住職。秋の彼岸を前に駆除を依頼しました。
小坂代表:「分かります?ミミズのようなのが、いっぱい泳いでるんですけど」
寺の中で蚊の発生に最も注意しなければならないのが、お墓。墓石の前にある、花立てや水鉢は、蚊の幼虫「ボウフラ」が発生しやすい場所だといいます。
小坂代表:「水がある所は、ペットボトルのキャップ1杯でもあれば、ボウフラがわいてきます」
蚊の発生を防ぐには、こうした水たまりを減らすことが重要ですが、お墓ではそうはいきません。そのため、寺では蚊の駆除作業が欠かせないのです。
小坂代表:「今年は異常。急激に暑さが来た時は、仮死状態というか、じっとした状態でいて。ここ1週間、2週間で空気が入れ替わったのもあり、急に活発に動き出してきた」
蚊は暑さに弱く、30℃以下になると活動が活発になります。今年は夏の暑さが続き、蚊が活発になる隙がありませんでした。
小坂さんは、夏の暑さの反動で朝晩涼しくなってきた今、一気に蚊が暴れ出したのではないかとみています。
専門家「必死に血を吸う」…狂暴化した蚊
専門家はこの時期の蚊は、特に注意が必要だと指摘します。
害虫防除技術研究所 白井良和代表:「最後の越冬する卵を産むために、必死になって血を吸うということが考えられます。春にたくさん蚊になってもらうためには、より多くの卵を産まなければいけないということで、血を吸って十分に栄養をとって、より多くの卵を産もうとしているという可能性は考えられます」
生存本能むき出し、本気を出して狂暴化した蚊が暴れ回るというのです。そんななか、蚊の対策が「待ったなし」という状況に追い込まれているのが、台湾です。
台湾でデング熱が大流行 取材中にも…
先月31日、台湾で撮影された蚊の駆除作業の映像です。台湾在住の日本人を取材しました。
台湾在住 ドラマー 戸田泰宏さん:「シャッターを強制的に開けられて、お巡りさんが来て、開けないとシャッター切っちゃうぞぐらいの勢いで来る」「(Q.それは何を目的に?)消毒です」
戸田さんが暮らす、台湾南部の高雄市では、当局が毎週、強制的に蚊の駆除に訪れ、家の中に消毒剤をまき散らしていくといいます。と、その時…。
戸田さん:「うちの前にも来たな」
取材中にも、隣の家の植木に消毒剤をまく作業員。今、台湾では、「デング熱」が大流行しています。
デング熱とは蚊に刺されることで急な発熱、頭痛、全身の筋肉・関節痛などを発症する感染症です。
活動期間が長くなる可能性「11月下旬も…」
台湾当局の発表によりますと、今月は、先週までに3400人の感染を確認。さらに、この1週間で2200人の新規感染者が出ています。そのため、強制的に消毒されるといいます。
戸田さん:「前日とかに(消毒に来る)通知が来るんで、用意ができない。仕事ができない。消毒が終わると、家の中ベトベトになっちゃう」
台湾だけでなく、タイでもデング熱の感染者が去年の3倍。バングラデシュでは、2000年以降で最多の感染者が出ていて、WHOが注意を促す事態となっています。
今年は特に蚊の活動期間が長くなる可能性があると、警戒を呼び掛けています。
白井代表:「温度はすごく昔に比べると高くなって、10月上旬ぐらいまで注意が必要で。長生きしてる蚊については、11月の下旬ぐらいまで刺されたことがあるので。長生きする蚊には、これからも注意が必要です」
