政府支援に「即効性なし」 漁業者ら苦悩と不満 処理水放出1カ月
東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を受け、中国が日本産水産物の全面禁輸に踏み切った影響が広がっている。
特に中国への輸出割合が高いホタテ貝は、過剰在庫や価格下落が顕在化。漁業者らの苦悩は深まっており、政府の支援策にも「対策に即効性がない」「スピード感が見えてこない」などと不満を募らせている。
「ホタテの出荷が止まって業者の在庫が満杯。みんなに食べてもらわねばどうにもならない」。青森県漁業協同組合連合会の二木春美会長(69)は頭を悩ませている。
水産庁の聞き取り調査によると、北海道や青森県、岩手県などではホタテの取引価格が放出前より1割超下落。政府は、中国を経由せずに米国などに輸出できるよう加工設備の国内導入補助などを打ち出したが、二木氏は、設備を導入しても禁輸が撤廃されれば「ただ維持費がかかるだけになってしまう」と指摘する。
全国のホタテ生産量の7割を占める北海道のオホーツク海沿岸自治体で構成する団体は21日、宮下一郎農林水産相と農水省で面会し、支援策の拡充などを求める要望書を手渡した。猿払村の伊藤浩一村長は記者団に「(禁輸が)長期化すると(税収不足で)単年度の予算確保が厳しくなってくる」と危機感をあらわにした。
二木氏が組合長を務める青森県横浜町漁協はこのほど、10月開始予定のナマコ漁を当面見合わせることも決めた。干しナマコは中華料理の高級食材となるが、中国への輸出が断たれ、業者に買い取ってもらう見通しが立たないためだ。
北海道のある漁協の組合長は「ナマコはホタテと異なり、国内での消費喚起も難しい」と打ち明ける。別の組合長は「本音は(海洋放出に)反対だけど、どうしようもない」と諦め気味に語った。
嫌がらせ電話の警察への相談ほぼなくなる 15日まで累計約790件
東京電力福島第一原発の処理水放出が始まってから24日で1カ月となる。処理水放出をめぐり、中国からとみられる嫌がらせの電話に関する警察への相談は9月中旬以降、ほぼなくなった。放出が始まった8月24日から9月15日正午までの累計では、41都道府県警で約790件の相談を受理し、そのうち福島県警が最多の約190件だった。警察庁への取材でわかった。
各地の警察への相談は放出開始のあと、1日あたり数十件から百数十件にあったが、8月末をピークに減少傾向となり、9月9日以降は0~2件とごく少数で推移したという。
