麻布台に「1部屋100億円超?」のマンション…海外富裕層なしでは「国際競争力落ちる」
東京タワーの北西に11月下旬、新たなランドマークが誕生する。
森ビルが手がける複合施設「麻布台ヒルズ」は、中核に東京タワーとほぼ同じ高さの森JPタワーがある。最上部の54~64階に入る91戸の高級住宅は金額が明らかになっていない。不動産関係者は「最も高い部屋で100億円を超える」と口をそろえる。
この住宅は、世界20か国で高級ホテルを展開するアマングループが手がける。ベッドルームが六つある部屋を用意し、専属シェフが料理を出し、パーティーに使えるような居住者専用の施設や、都心が見渡せるスパも併設した。売れ行きは好調で、3分の2が成約済みとなった。
なぜ極めるのか。森ビルの辻慎吾社長は「本当にハイクラスのマンションを求める人がいる。なければ、国際競争力が落ちる」と言い切る。赤坂、六本木、虎ノ門。ヒルズを手がける都心の港区は、東京の顔になる。世界の大都市と見劣りしないために、海外の超富裕層を引きつけねばならない。
麻布台ヒルズには、オフィスや住居のほか、4000平方メートルに及ぶ食品専門店や慶大の予防医療センター、都心最大規模となるインターナショナルスクールが入る。人気のデジタルアートの常設展示場もあり、外国人が喜ぶ環境を整えた。
森ビルは「東京をさらに魅力的な都市にしていく挑戦」(辻氏)だと位置づける。
スイート400万円「欧米では珍しくない」
外国人富裕層を意識した高価格帯はホテル業界にも広がっている。
4月に八重洲で開業したブルガリホテル東京は、1泊25万円から、一部のスイートルームの料金は400万円を超える。宝飾品で知られるグループが運営を手がけ、日本初進出となる。関係者は「欧米でこの価格帯は珍しくない」と強気の姿勢を崩さない。
ホテル評論家の滝沢信秋氏は強調する。「いわゆる五つ星ホテルが東京には少なく、お抱えの料理人を連れてくるような海外VIPの需要に応えられない。都市の成熟に高級ホテルは不可欠だ」
円安で海外投資家から熱視線
長い間デフレに苦しんだ日本にとって、高価格路線はバブルのように映る。だが、海外に比べればなお割安だ。日本不動産研究所が4月実施した調査によると、高級住宅の価格は香港が港区元麻布の2・4倍、ロンドンは1・8倍、ニューヨークは1・3倍だった。
円安も相まって、海外投資家の熱い視線が注がれている。野村不動産ソリューションズ海外営業部の篠喜大次長は「5棟や10棟のマンションを100億円規模でまとめ買いした海外投資家もいた」と明かす。
不動産投資向けの待機資金は「ドライパウダー」と呼ばれ、世界に数十兆円あるとされる。「海外投資家は、日本の不動産が長期的に必ず上がるとみて、思い切って投資している」(篠氏)といい、膨大なマネーが流れ込んでいる。
日本の富裕層も動いている。三井不動産と三菱地所が手を組んで3月に売り出した港区のマンション「三田ガーデンヒルズ」は、1期約400戸がほぼ完売した。最高価格は45億円。平均価格4億円でも、購入者の8割が日本人だった。
住友不動産の高級賃貸マンションブランド「ラ・トゥール」は、家賃が月100万円前後となる。20年前の入居者は半数が外国人だったが、近年は日本人が9割近くを占めるようになった。40歳未満が増えており、IT起業家や成功したユーチューバーが入居している。
担当者は「複数のマンションを保有する富裕層が、あえてサービスの良い賃貸に住む例も多い」と説明する。高価格化の波が生まれる背景には、上質な空間や対応を求める富裕層の存在がある。
格差の広がりと取るか、国際競争力を持った都市への成長過程と取るか、判断は分かれる。東京はどこに向かうのだろうか。
