熱中症予防に効く意外な「モノ」 暑熱対策のプロが提言 甲子園
阪神甲子園球場で開催中の第105回全国高校野球選手権記念大会で、選手の健康管理、熱中症対策のために今大会から初めて導入されたのが、五回終了時に10分間休憩する「クーリングタイム」だ。だが、その直後に足をつるなどする選手が相次いでいる。
クーリングタイムに効果はあるのか。この時間を適切に活用するためにはどうすればいいのか。東京オリンピックで日本代表の暑熱対策に関わった日体大の杉田正明教授(スポーツ科学)に聞くと、意外なものを勧められた。
――クーリングタイムは効果があるのでしょうか。
◆手足を冷やしたり、扇風機で風を当てて体熱を飛ばしたりすることは熱中症予防に効果的ですね。一番いいのは水風呂に入ることなんです。暑さの中で体に負担がかかっているので、そこからいかにリカバリーできるか。体を適切に冷やすことで、その後のパフォーマンスも上がります。
――クーリングタイム後に足をつるなどの選手が続出した。
◆体を冷やしすぎて、そうなったとは考えにくい。汗によって水分とともにミネラルが体内から出ることで、筋肉のけいれんを起こすなどの熱中症の症状が出やすくなります。
(クーリングタイム直後に症状が出たのは)疲労がたまった後半だからというのはもちろんあるが、適切な濃度のミネラルを含んだスポーツドリンクを取っていないことも原因としてあるのではないか。
――手軽に飲めて効果的なものはあるでしょうか。
◆熱中症予防には塩分だけでなく、カルシウム、マグネシウムなどを適切に含んだ水分を取ることが効果的です。経口補水液は倒れた人が飲むものであって、熱中症予防のためではない。経口補水液は飲み過ぎると血圧が上がるなどの健康被害が生じるリスクがあり、心配です。
私が東京オリンピックの時にスポーツ庁の委託事業で開発した粉末飲料の「トップランナー」には予防に重要な栄養素がしっかり入っています。他の市販されているスポーツドリンクも一定の効果はあります。
また、だしを取ったみそ汁を飲むのもいい。塩分、カルシウム、マグネシウム、ビタミンなどが豊富な赤みそで作ったもの。暑いと飲みにくいので、冷やした「アイスみそ汁」を飲むのもいいかもしれない。試合中だけでなく、朝、夜にしっかり飲むことも大切です。
――クーリングタイムをより効果的にするために他にアドバイスはあるでしょうか。
◆熱中症の危険がどれくらいあるかを示す、国際的な基準である暑さ指数(WBGT)が31以上であれば、本当はナイター開催がいいです。昼間に開催するなら、WBGT31ではクーリングタイムの時間を複数回設けて各10分、32では各15分というように、指数によって回数や時間を柔軟に変更するのはどうでしょうか。
また、体重が2%以上減っていれば脱水症状に陥っていることも分かるので、試合前とクーリングタイム中に体重を量ることもいいでしょうね。