中国は崩壊しつつある…それでも習近平が「台湾侵攻」には踏み切らないと言える「驚愕のワケ」

中国は崩壊しつつある…それでも習近平が「台湾侵攻」には踏み切らないと言える「驚愕のワケ」

台湾侵攻の話は誇張されている

 経済が崩壊しつつある中国は、国民の不満を逸らすために、台湾侵攻に踏み切るのではないか。多くの人々が、そんな心配をしている。習近平総書記(国家主席)の心の中は誰にも分からないが、あえて「その可能性は低い」という専門家の意見を紹介しよう。

 「国内の困難を乗り切るために、対外的な冒険に打って出る」というのは古今東西、珍しい話ではない。たとえば、戦前の日本についても、そんな見方がある。娘を売らなければならないほど、苦しい生活を強いられるなか、当時の指導者は戦争によって危機を乗り切ろうとした、というのだ。

 それは、いまの中国にも当てはまるのではないか、という声がある。だが「それは間違い」という論文が、3月21日付の米外交誌「フォーリン・アフェアーズ」に掲載された。筆者はコーネル大学教授で中国問題専門家のジェシカ・チェン・ワイス氏だ。

 「台湾でパニックになるな」というタイトルが示すように、論文は「中国がまもなく台湾を侵攻するという話は、誇張されている」と指摘する。次のようだ。

〈中国の指導者が「行動するチャンスの窓は閉じられつつある」と考えている証拠は、ほとんどない。こういう恐怖感は、北京の「リスクと報酬」計算よりも、ワシントンの軍事的脆弱さに対する評価が生み出している〉

〈歴史的に、中国の指導者たちは国内の問題から目を逸らすために、戦争を始めることはしなかった。彼らは目的を達成するために、紛争ではない手段を好んできた。むしろ、国内の困難は対外政策を穏便にして、国内世論も紛争にしない政府の決意と空威張りを評価してきた〉

〈米国の政策担当者の任務は、抑止と挑発のバランスをとることだ。「無条件で台湾を防衛する」という約束や決意表明、米国の軍事力増大は挑発に傾きすぎて、本来、抑止すべき紛争を招きかねない〉

〈マシュー・バウム(注・ハーバード大学)とフィリップ・ポッター(注・バージニア大学)の研究は、世界の指導者が国内の支持を高めるために、軍事的な対決姿勢を強めた証拠は、ほとんどないことを明らかにした。クリス・ゲルピ(注・オハイオ州立大学)によれば、独裁者たちは人々を弾圧する手段がたくさんあるので、国内で動乱が起きた後に、危機を生じさせる可能性は、民主的指導者よりもむしろ小さい〉

独裁者は弾圧する術をたくさん持っている

 中国の例として、ワイス教授は新型コロナウイルスに対する中国の対応を指摘している。中国では、ゼロコロナ政策に反対して昨年11月、人々が街頭で白紙を掲げる運動が起きた。習近平政権で初めての反政府デモだったが、政権は12月、突然、ゼロコロナ政策の終了を宣言した。

〈中国の指導者は、国内の社会不安が台湾侵攻を加速させるようなサインを、ほとんど示さなかった。逆に、習近平と中国共産党は高まる国際的なリスクと挑戦を前に、信頼と忍耐を訴えた。中国から離れていく台湾の世論動向に悲観的になったにもかかわらず、習氏は党大会で「歴史の歯車は中国の若返りに向かって進んでいる」と語ったのだ〉

 そのうえで、中国に関するいくつかの研究を紹介している。

 たとえば、マサチューセッツ工科大学のテイラー・フラベル教授によれば、1949年以来、17回あった領土紛争のうち、15回は中国が妥協して解決した。そのなかには、チベットや新疆ウイグル地区で深刻な社会不安が起きた50年代と60年代初頭も含まれている。

 1949年から92年までの紛争を分析したハーバード大学のアラステア・イアン・ジョンストン教授は「国内の社会不安と海外での武力行使には、何も関係がない」と結論づけた。むしろ「国内不安が高まると、軍事的紛争に関与する度合いが下がる」という。

 ランカスター大学の上級講師であるアンドリュー・チャブ氏は、1970年から2015年までの事例を基に「中国の指導者は国内情勢が荒れると、海上の行動はむしろ穏便になる傾向がある」ことを示した。攻撃的になるのは「国内不安から目を逸らすためではなく、別の問題を阻止するためだった」という。

 すべての研究を網羅した訳では、もちろんないが、こうしてみると、中国が経済的に苦境に陥ったからといって、それが引き金になって、台湾侵攻に踏み切る可能性は小さい、という見方は、少なくとも異端ではない。先のゲルピ氏が指摘した「独裁者は人々を弾圧する手段がたくさんある」という論点は、最近も実証された。

テキサスに不法入国する中国人が激増

 ロイター通信は8月1日、中国の国家安全省が国民にスパイ活動を奨励し、そのための制度を整備すべきだと表明した、と報じた。それによれば、陳一新国家安全相は「国家安全保障の最優先事項は政治の安全保障で、核心は政治体制の安全保障」と指摘した、という。

 6月2日公開コラムで紹介したように、中国は7月1日から改正反スパイ法を施行したばかりだが、同法に加えて、いよいよ「全国民を動員してスパイ狩りに乗り出す」というのだ。実に恐ろしい話である。

 それが「国内の治安維持こそが、国家安全保障の核心」という考え方に基づいているとすれば「台湾侵攻に乗り出す前に、まずは国内体制をがっちり締め直す」という姿勢なのだろう。ここからも、国内優先の考えがうかがえる。

 中国の国内が動揺しているのは、米国に逃亡する中国人が激増している点からも読み取れる。先のコラムで紹介したが、中国を脱出して南米に渡り、メキシコ国境からテキサスに不法入国する中国人は昨年10月現在で6500人と、前年の15倍以上になった。

 彼らの多くは習近平体制に絶望して、命の危険も顧みず、中国を捨てて、米国に将来の希望を託したのだ。逆に、米国を捨てて中国に逃げた米国人はいったい、何人いるだろうか。この1点を見ても、習近平体制の中国が「絶望の国」であるのは明らか、と私は思う。

 台湾侵攻が簡単ではないのは、守勢を強いられているロシアのウクライナ侵攻も証明している。陸続きのウクライナと海に囲まれた島の台湾では、戦争の条件は異なる。島に近い中国が有利とはいえ、いざ侵攻となれば、中国は西側の制裁が避けられない。困難に直面している経済は、一層の苦境に立たされるだろう。

 中国は最近、中国に進出した外国企業や外国人への締め付けを強めている。3月には、米資産調査会社、ミンツ・グループが公安当局に摘発され、5人の現地社員が逮捕された。4月には米投資会社のベイン、5月には多国籍調査会社、キャプビジョンも摘発された。

 一方、中国はいまだに外国企業に投資を呼びかけている。外資から見れば「国家が国を挙げて、オレたちの仕事を邪魔しているのに、そんな話に応じられるわけがない」とあきれる話だが、彼らは大真面目だ。

 たとえば、7月13日付のウォール・ストリート・ジャーナルは、四川省成都市が最近、欧州に派遣した外資誘致ミッションのエピソードを紹介している。それによれば、中国の誘致担当者は「過去20年間、外資の誘致に関わってきたが、1件も話がまとまらなかったのは、今回が初めてだ」と語っている。

 6月11日付の英エコノミスト誌は「中国で外国人がビジネスをするのは不可能なのか」と題した記事を掲載した。記事は「厳格な法律と、国境を超えて流通する情報を制御したい習近平の願望の下では、中国か西側のどちらかが相手に目をつぶらなければならない。かつては中国が目をつぶってきたが、もはやそうではない」と書いている。

 外国企業が中国でビジネスをするのは「もはや、ほとんど不可能」なのだ。それでも、外国企業に投資を呼びかけるとは、いかに「中国という国が常識外れであるか」を物語っている。投資案件が1件もまとまらなかったのは、当然だ。

 台湾侵攻については、かねて「中国は国力がピークを迎える前に、断行するだろう」と言われてきた。だが、実際には、すでにピークを超えつつある可能性がある。「ゼロコロナ政策を終了すれば、経済はV字型回復する」とも言われたが、実際にはV字型どころか、相変わらず低空飛行を続け、出口は見えないままだ。

 もちろん警戒は怠れないが、過去の中国の行動パターンと現状を見れば「台湾侵攻の環境が十分整った」とは、まだ言えそうにない。

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