今夏は「観測史上最も暑い」可能性も 偏西風蛇行で異常気象
今月中旬、関東や東海地方を中心に気温が上昇、一部地域で39度台となり、気象庁は「災害級の暑さ」として注意を呼びかけた。近年は猛暑が健康リスクをもたらしており、数十年前とは明らかに異なる暑さ。専門家は「今年は世界的に観測史上最も暑い夏になる可能性がある」と推測するが、40度に迫る猛暑の背景に何があるのか。
西日本から東日本の広い範囲で高気圧に覆われた17日、愛知県豊田市で最高気温39・1度を記録するなど、35度以上の猛暑日は今年最多の全国195地点に上った。前日の16日には群馬県桐生市で39・7度となり、観測史上最高の41・1度(令和2年8月17日、浜松市など)に近づいた。
こうした気温上昇をもたらしている最大の要因は偏西風の蛇行にあるとされる。日本気象協会の小田美穂気象予報士によると、日本や欧米など北半球の中緯度帯に位置する地域の上空には西から東に偏西風が吹いており、偏西風を境に北側に冷たい空気、南側に暖かい空気が存在。南から北に偏西風が蛇行することで、暖かい空気が北へ運ばれ、例年よりもその地域の気温が上昇する。
小田氏は「偏西風の蛇行はどの季節にも起こり得るが、夏に蛇行が起きると猛暑になる。今夏は特に蛇行が顕著だ」と説明する。
日本の場合は、偏西風が北へ蛇行することで、チベット高気圧が太平洋高気圧の上に重なるように強く張り出してくる。上空からの吹き下ろしにより空気が圧縮される力が強まり、地表面の温度が上昇。各地で猛暑となった今月15~17日も、高気圧の「2階建て」状態が続いたことが影響しているとの見方を示す。
これに加え、地球温暖化や南米ペルー沖の海水温が上がるエルニーニョ現象が7年ぶりにみられた影響も気温上昇を促している要因の一つという。
実際、数十年前と比べ、どの程度暑くなっているのか。気象庁によると、最高気温35度以上の猛暑日の年間日数(全国13地点の平均)は増加している。平成5~令和4年の最近30年間の平均年間日数は約2・7日。明治43~昭和14年は約0・8日で、約3・4倍になっていることが分かる。
また全国の各地点では、平成24年5~10月の猛暑日は、延べ2675地点だったが、その10年後の令和4年は、延べ3790地点と大幅に増加した。
では、以前と比べ平均気温はどうなっているのか。地域によって差はあるが、大阪市内の8月の月平均気温で比較すると、約30年前の平成4年8月は28・2度。これに対し、令和4年は29・5度になっている。以前と異なる暑さは、データからも明らかだ。
世界規模の複合的な要因で災害級の暑さが懸念される今夏。小田氏は「先月は世界的に観測史上最も暑い6月になっているだけに、今夏は日本も猛烈な暑さになる可能性がある」としている。
■酷暑、世界各地でも
シベリアの森林火災、欧州では連日40度超え-。命にかかわる危険な酷暑は日本だけでなく、世界各地で生じている。
降水量が少なく、6月中旬から記録的な暑さが続いている中国北部。首都北京では6月22日に最高気温41・8度を記録。中国気象局は、6月の全国平均気温が1961年以来、2番目に高かったと公表した。
寒冷地のロシア・シベリアや極東でも6月から猛暑が続く。現地メディアなどによると、同国南部のアルタイ地方の中心都市・バルナウルでは、20度台前半とされる例年6月の最高気温を大幅に上回り、6月7日に38・5度を記録した。少雨もあいまって森林火災が拡大し、同国極東のサハ共和国では160カ所以上で火災が発生したという。
欧州でもスペインやイタリア、ギリシャなどで40度を超える日が相次いだ。イタリアでは救急搬送される患者が増加しており、保健省が外出を控えるよう警告している。
世界気象機関(WMO)は、先月は観測史上最も暑い6月になったと報告しており、今後さらに健康リスクを招く暑さになるとの懸念を示している。
■小学生に日傘、保冷パッド
猛暑を踏まえた環境省の「熱中症環境保健マニュアル」は、対策のポイントとして、暑い環境を避けることに加え、1日当たり1・2リットル程度を目安にこまめな水分補給を行うことなどを呼びかけている。
近年、熱中症予防で手軽に取り入れられると注目されているのが「手のひら冷却」だ。体温調節の役割を果たす血管が集中する手のひらを流水や冷たいペットボトルで冷やすことで、体内の熱を逃がしやすくなるという。
熱中症リスクが高い子供たちの対策として、独自策を講じている自治体もある。国内有数の猛暑地点として知られる埼玉県熊谷市は令和2年夏、日差しを避けるために登下校時は傘を差すよう小学生に指導。新型コロナウイルス禍で児童間の距離を保つことにも有効だとして、多くの学校で導入された。同市では昨夏、遮光性の高い晴雨兼用の傘を独自に開発し、市内の小学生に配布している。
兵庫県たつの市では、暑さに危機感を抱いた小学生が市長に直接要望したことを機に今月上旬、ランドセルに装着する保冷パッドを市内の小学生に配布。気温36度の環境下で約1時間の冷却効果があるという。
きょう24日 東北から中国地方は猛烈な暑さで体温並みも 熱中症に警戒を
きょう24日(月)も、東北から中国地方は猛烈な暑さが続き、最高気温は京都市や福井市で36℃など体温並みの所も。熱中症に警戒。屋外だけでなく、屋内でも涼しい環境を保ち、万全な対策を。
内陸部を中心に猛暑日
きょう24日(月)も、各地で真夏の暑さが続くため、熱中症に警戒が必要です。
東北から中国地方は晴れて強い日差しが照りつけるため、内陸部を中心に猛暑日(最高気温が35℃以上)の所が多いでしょう。予想最高気温は、京都市や福井市で36℃と体温並み、福島市や鳥取市、富山市、大阪市で35℃など、猛烈な暑さとなりそうです。北海道や四国、九州は雨が降るため、湿度が高く、体にこたえる暑さでしょう。
熱中症警戒アラートが、石川県、三重県、鳥取県、島根県、長崎県、熊本県、宮崎県、沖縄県(八重山地方)に発表されています。暑い時間帯の外出はなるべく避け、屋内を冷房などで涼しい環境にしてお過ごしください。
熱中症「危険」レベルも
熱中症情報をみますと、広く「厳重警戒」でレベルで、北陸から九州、沖縄で、最も上のランクである「危険」レベルの所が多くなっています。
屋外でのレジャーなど予定されている場合は、いつも以上にこまめな休憩と水分補給を行い、大量に汗をかいたら適度に塩分も補給するなど、万全な熱中症対策をなさってください。屋内でも、キッチンなど火を使う所では、高温多湿な環境になりやすいため、熱中症のリスクが高まります。冷房を適切に使用し、保冷グッズなども活用して、熱中症に十分ご注意ください。
熱中症 応急処置のポイント
頭痛やめまいなど、熱中症かなと思う症状がみられたら、すぐに応急処置をすることが大切です。応急処置のポイントは、主に次の3つです。
① まずは、涼しい場所へ移動しましょう。冷房の効いた部屋や、屋外では風通しのよい日陰で、できるだけ早く、体を冷やしてください。
② 衣服を緩めて、体から熱を逃がしましょう。体温を下げるためには、冷やした水のペットボトル、氷枕などを使って、両側の首筋や、わきの下、足の付け根を冷やすと効果的に体温を下げることができます。
③ 水分と塩分を補給しましょう。冷たい水を、自分で持って飲んでもらうと、体にこもった熱を奪うだけでなく、水分補給もできます。また、経口補水液やスポーツドリンクを飲めば、汗で失われた塩分も適切に補えます。ただ、吐き気を訴えたり、意識がなかったりするなど、自分で水分を摂ることができない場合は、口から水分を補給するのは禁物です。すぐに病院へ運んでください。
世界で熱波、豪雨が猛威 地球温暖化が影響 異常気象「新たな日常」に
北米、欧州、アジアなど世界が熱波や豪雨の猛威にさらされている。
命に危険が及ぶ高温が続き、山火事や記録的な水害も発生。世界気象機関(WMO)のターラス事務局長は「地球温暖化の影響で異常気象の頻度は増しており、残念ながら『新たな日常』になりつつある」と警鐘を鳴らす。
◇米西部で連日43度超
米メディアによると、西部アリゾナ州フェニックスで18日、43.3度(華氏110度)を超えた日が19日連続となり、1974年の「18日連続」の最長記録を破った。
米国では6月下旬以降、西部から南部にかけての広い地域で、熱が同じ場所にこもり続ける「ヒートドーム」と呼ばれる現象が発生。フェニックスなど各地で熱中症とみられる症状での死亡例が報じられている。
山火事の被害も甚大だ。カナダ政府の関連団体によると、全国で現在、約900件の森林火災が起きており、うち6割は「制御不能」。煙は国境を越えてたびたび米シカゴやニューヨークに流れ込み、大気汚染を引き起こしている。
一方、米東部では、バーモント州で今月9、10両日だけで2カ月分に相当する降雨を記録。ニューヨーク、ペンシルベニア両州などでも今月、洪水による死者が相次いだ。
◇欧州、過去最高更新か
欧州では、スペインやイタリア、ギリシャなどが猛暑に見舞われている。2021年8月にイタリアのシチリア島で観測された欧州の最高気温48.8度が、近く更新される可能性もある。
英BBC放送によると、シチリア島では18日、60代の男女が家の中で死亡しているのが見つかった。イタリアの他都市やスペイン各地でも、熱中症関連とみられる死亡例が相次いでいる。
欧州は昨年も熱波が襲来し、医学誌に最近発表された研究によると、5月末から9月初旬にかけて6万人以上が高温の影響で亡くなった。比較的冷涼だった欧州でエアコンが普及していないことも、被害に拍車を掛けたとみられる。
ギリシャではアテネ近郊などで山火事が収まらず、火の手は住宅地にも。スイス南部でも森林火災が続き、住民が避難を余儀なくされた。
◇中国「巨大サウナ」に
アジアも猛烈な暑さに見舞われている。中国では北西部の新疆ウイグル自治区トルファン市で16日に52.2度を観測。気象当局によると、7月中旬としては国内最高記録となった。地表温度は80度に達し、ネット上では「巨大なサウナのようだ」といった書き込みが見られた。
首都北京でも猛暑が続く。6月下旬には3日連続で40度を超え、屋外活動の自粛や熱中症への注意が呼び掛けられた。中国メディアによれば、北京で1951~2022年の72年間に40度を超えたのは計6日だけだが、今年だけで既に4日に達した。
韓国では、今月の豪雨で死者が40人を超えた。日本も今月、九州北部で記録的な大雨となり、9人が亡くなった。
温暖化の影響を研究している英インペリアル・カレッジ・ロンドンのフリーデリケ・オットー上級講師は「温暖化により熱波の発生確率は高まり、より深刻化する。豪雨の確率も上昇する」と説明している。
