ビッグモーター不正請求 わざと車を傷つけ水増し…「どんな手を使ってでもやれ」 現役社員・元幹部など4人が語る“厳しいノルマと降格”の実態
中古車販売大手・ビッグモーターで行われていた保険金の不正請求。現役社員・元幹部など4人を取材すると、不正の背景にある過酷なノルマや降格人事の実態が見えてきました。
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■ゴルフボール振り回して“雹”が降ったような痕をつけることも…
喜入友浩キャスター
「都内のビックモーターの店舗です。こちらには工場も併設されていて、きょうも車の点検・整備が行われているようです」
修理を待つ車でしょうか、敷地内には、ドアがへこんだ車も止まっています。
「車を売るならビッグモーター!」
CMでもおなじみのビックモーター。買取台数6年連続ナンバー1、売上高7000億円を誇る大企業です。
そのビッグモーターをめぐり、明らかになったのが、“保険金の水増し請求”。
修理のために持ち込まれた車にわざと傷をつけ、損保会社3社に対し、自動車保険の保険金を、不正に水増し請求していたのです。
調査報告書によると、ビッグモーターでは、車体をドライバーでひっかいたり、サンドペーパーでこすったりして、修理が必要な傷をつけていたといいます。
時には、靴下にゴルフボールを入れ、振り回し、“雹”が降ったような痕をつけることも…
こうした手口で、顧客から修理を依頼された車に傷をつけ、修理費をつり上げ、損保会社に水増し請求していました。
ビッグモーターの元社員は、不正請求の手口は、ほかにもあると証言します。
ビッグモーター元社員
「修理する車のコーティングという作業工程があるが、そのコーティングをしていないけれど、保険会社にはそれをしたということで、費用を請求するというのは聞いたことがある」
さらに、ホームページに掲載されている動画には…
「リサイクルパーツを積極的に活用してコストを削減」
中古部品を使うことで、他社より修理費用が安くなるとうたっています。
一方で、損保会社に対しては、中古部品で修理したにもかかわらず、新しい部品を使ったとして、請求していたケースもあったといいます。
客に対しても…
ビッグモーター元社員
「『中古のパーツを使っても良いか?』と聞いて、『新品を使って』と言うお客さんにも、リサイクルパーツを使うことがあった。『リサイクルパーツは使っていないよね?』って聞かれたことは何回かあったけれど、大変申し訳ないけど『はい』と言っていった」
こうした不正は、全国30以上の工場で行われていたとみられます。
■利益を追求「どんな手を使ってでもやれ!」
19日、取材に応じた渦中のビッグモーターの社員は…
ビッグモーター現役社員
「クレーム対応が、長年勤めてきた中で今回が一番多い。『信頼ならない』という声がやっぱり一番多い」
その上で、不正の背景をこう分析します。
ビッグモーター現役社員
「社内の風習的に、とにかく利益を稼いでいく、というところに、重きを置いているので」
また、2022年までビッグモーターに勤めていた元社員は、利益を追求するためのノルマがあったと証言します。
ビッグモーター元社員
「“@(アット)”と呼ばれる、利益の部分を追求しないといけない。『どんな手を使ってでもやれ!』と言われる形になる」
“@(アット)”とは、修理1件あたりの工賃と部品から得られる、収益の合計金額。その目標値は、1件14万円前後だといいます。
調査報告書では、こうしたプレッシャーに耐えかねた社員が、不正に修理範囲を拡大させたと指摘されています。
一方で、元社員によると、ノルマを達成できない社員は、LINEやメールで叱責されたり、降格処分になったりしていたといいます。
ビッグモーター元社員
「見せしめのように、社内の通達メールで、どこどこの店長、どこどこの工場長は降格になりました、何日付けで、どこどこの店舗に異動になります、というのが。毎日のように人事異動が行われるので、なんとしてでも達成しないといけない、という強迫観念にかられる部分はあるかもしれないですね」
調査報告書によると、直近3年間で延べ47人の工場長が、降格処分を受けているといいます。
■“最高年収5000万円” 成果と引き換えのプレッシャーが…
ビッグモーターの元幹部で、今も現役社員とつながりがあるというバディカ社長の中野優作さんは、こうした“異常な人事”がさかんになった頃から、社員の給与も変化してきたのだといいます。
ビッグモーターの採用ページには、未経験から月収150万円。最高年収5000万円などと、成果を上げると高い給料が得られるとうたわれています。
Q 利益至上主義やインセンティブ(成果報酬)が拍車をかけていった?
元ビッグモーター幹部 バディカ 中野優作 社長
「とんでもないじゃないですか、(年収)4000万円って。専務や常務でもとれない給料だったのが、店長でとれるようになっていたんで。インセンティブ(成果報酬)と引き換えに、プレッシャーも強まり、“お客様(第一)”という話が抜けていったというふうに聞いていますね」
さらに、近年、不正がしやすい環境になっていたことも、一因になったと指摘します。
元ビッグモーター幹部 バディカ 中野優作 社長
「(修理)金額って、見積もりして、保険会社に『これ50万円ですよ』と請求する。本来なら、保険会社が、50万円が正しいのかどうか見に来るんですよ、現地に。実際(金額を)下げたいっていう気持ちが働くので。ここ数年、(保険会社が現地で)確認せずに、OKで通していたみたいなんですよ。これまでの信頼関係の中で」
ビッグモーターは、兼重宏行 社長が、1年間の報酬の返上を発表。
国土交通省は、今後、聞き取り調査をおこなう方針です。
■今回の不正で、今後、保険料が上がる?
山本恵里伽キャスター:
改めて、ビッグモーターの不正請求の構図を見ていきます。
まず、顧客から、事故などで修理が必要になった車が持ち込まれた際に、ビッグモーターは、わざとこの車に傷をつけるなどして、修理費用を水増ししていました。
そして、顧客が加入している損害保険会社に対して、水増しした不正請求をしていたわけです。
ビッグモーターは19日、少なくとも1275件、4995万円の水増し請求があったと発表。
調査報告書は、「かような行為が繰り返されれば、いずれ保険料の上昇を招きかねず、保険ユーザー全体の不利益にもつながるという意味で、一層罪深い」と結論付けています。
つまり、不正請求によって損害保険会社が支払う額が多くなればなるほど、これに加入している、他の自動車ユーザーにも影響が出てくる。保険料が上がってくる恐れがあるということなんですね。
小川彩佳キャスター:
車の運転がお好きな竹山さんですけれども、竹山さんの保険料にも影響が出てきてしまうような問題が起きていた。
カンニング竹山さん:
車検に出すときでも、「見積もりいくらぐらいですか?」って、こっちも慎重にやるじゃないですか。それにも関わらず、こういうことが大きな会社で起こったってことは、信用を取り戻すのって、なかなか難しい。個人的な意見としては不可能じゃないかと思う。疑問なのは、水増し請求って、損害保険会社も絡んでいるんですけど、そのシステムってそんなにまかり通るんだろうか。
山本キャスター:
元幹部の、バディカ社長の中野優作さんによると、「高額収入の一方で、ノルマのプレッシャーがとにかく強い。真面目にやっても、成績が上がらないと“更迭”されるので、不正をやる人が残っていく感じになったのではないか」ということでした。
カンニング竹山さん:
会社としての構造の問題みたいものがあったんでしょうけど、ここから立て直すのってなかなか難しいと思います。信用を失っている、あり得ないことをやってるわけだから。
小川キャスター:
不正が行われてきたにもかかわらず、なぜこれまで表に出てこなかったのか。
カンニング竹山さん:
日本の中古車販売業者って、すごく優秀じゃないですか。もっと保険の問題とか、販売の問題とか、そういうものの根本的な問題もあるのかもしれないですよね。
■“1年間の報酬を全額返上” 社長の対応で立て直しは?
小川キャスター:
業界の構造的な問題があるのかどうか、そこも見ていく必要がありますけれど、この問題を受けて、ビッグモーターの兼重社長は、報酬の全額を1年間返上するなどの方針を示しました。ただ、ことの大きさに比べて、この対応はどう?
カンニング竹山さん:
何か、こういうことじゃないような気がするんですけど。もちろんこれも当たり前のことだけれど、これで収まるのかなっていうと、相当なダメージだと思うんですよね。個人的にも、この会社に車を出そうかな、修理出そうかな、とはもう思わないじゃないですか。これを立て直すのは相当難しいと思うんだけれど、根本的にどこまで膿を出せるのか、どうやって生まれ変わるのか、ということが大きな大きな課題になってくると思いますけどね。
「不適切な内容」ビッグモーター、社長のメディア批判LINEを謝罪
中古車販売大手ビッグモーター(東京)の兼重宏行社長が、保険金不正請求問題の報道を巡り、全店の店長に宛ててメディア批判を含む文書をLINEで送信していたことについて、同社の広報担当者は20日夜、産経新聞の取材に回答する形で、「文章については、当社兼重社長が従業員向けに送ったものになります」と事実関係を認めた。
文書は、今回の不正請求問題の報道を「世間の関心を集めるため」などと、強い不満を訴える内容で書き出されていた。広報担当者は産経新聞に「前半部分に不適切な内容が含まれていることについて猛省しております」と、兼重氏のメディア批判について謝罪する内容の回答を寄せた。
兼重氏が19日に全店長にLINEで送信したメディア批判を含む文書について、産経新聞はビッグモーターに電話やメールで問い合わせていた。
