「ワンセグスマホが減った」「Twitterは使いづらい」 災害時の情報取得が難しいワケ

「ワンセグスマホが減った」「Twitterは使いづらい」 災害時の情報取得が難しいワケ

 最近、「NHKのせいでワンセグスマホが減った」との投稿をTwitterで見かける機会が多くなった。

 地上波テレビ放送のデジタル化に伴い、2006年に始まった携帯電話・カーナビ向けのワンセグ。1チャンネル6Mhzの帯域幅を13個のセグメントに分割するデジタル放送に対し、そのうちの1セグメントを用いて放送するのがワンセグだ。しかし、昨今のスマートフォンの多くがこのワンセグに対応しない。

 考えられる理由の1つにNHK受信料が挙がる。

 最高裁は2019年に、ワンセグ機能付き携帯電話の所有で、NHKと受信料契約を結ばなければならないか否か、という訴訟の上告審で「契約義務はないと訴えた原告側の上告をいずれも退ける」との判決を下した。ワンセグチューナー付きの携帯電話を持っているだけで、NHK受信料の支払い義務が生じるということだ。

 この年を境にワンセグチューナーを搭載したスマホは激減した。

 2021年12月に掲載した記事「スマホから消えた「ワンセグ」、2021年は搭載機種ゼロに その背景を探る」では、ワンセグ搭載スマートフォンが減った要因に「通信の性能向上」「動画配信の普及」「テレビ離れ」を挙げたが、読者から「NHK受信料の件が大きいのでは」という反応が特に多かった。

 ワンセグは携帯電話でもニュース番組などを視聴できることから、2011年の東日本大震災などをきっかけに災害時の情報取得手段として注目された。

 その時期はスマホのディスプレイの解像度が徐々に向上し、ワンセグより高解像度のフルセグ対応スマホ(フルセグチューナーを搭載したスマホ)も登場。ソニー、シャープ、富士通(後のFCNT)、Samsung Electronics、LG、HTCなど、多くのメーカーが搭載した時期もあった。

 その後、4G LTEのエリアが拡大し、スマホの「YouTube」でも高画質な動画を視聴できるようになった。「Netflix」「ABEMA」「Hulu」をはじめとする動画配信サービスが増えた。特にABEMAやHuluではニュース番組のリアルタイム(ほぼ同時)配信もあり、ワンセグ/フルセグを使わずとも情報取得が可能になった。

 ITmedia Mobileが大手3キャリア広報に「ワンセグを搭載した携帯が減っている理由」を聞いたところ、「多様な動画サービスが存在しており、需要が減りつつある。チューナー搭載による端末価格への影響などを総合的に判断している」などと答えていた。

災害時の情報取得はさらに難しく

 では、今後、大規模災害の被害に遭った場合、どのようにして情報を取得すべきなのか。

 検討候補の1つ目にラジオを挙げたい。ラジオや音声多重放送(複数音声を重ねる放送、ステレオ/サラウンド放送を含む)のみを受信できるチューナーは受信料契約義務の対象外だからだ。映像出力不可のチューナーなら契約義務は生じない。

 そのため、ラジオが聴ける(FMラジオとIPサイマルラジオ「radiko.jp(ラジコ)」双方の聴取に対応する)スマホ、通称「ラジスマ」という選択肢はあるが、最近ではチューナー搭載によるコスト増加がメーカーの負担となり、ラジオチューナーすら搭載しない機種が増えている。

(※)一部機種は市販のイヤフォンやUSB Type-Cから3.5mmオーディオジャックに変換するアダプタが必要

 2023年に発売される機種でラジスマ対応の表記があるのは「AQUOS R8 SH-52D」「AQUOS R8 pro SH-51D」「AQUOS wish3 SH-53D」。FMラジオ対応の表記があるのは「arrows N F-51C」「Galaxy A54 5G SC-53D」「Galaxy S23 SC-51D」「Galaxy S23 Ultra SC-52D」「OPPO Reno9 A」だ。

 ところが、ラジスマの公式サイトに記載されている以下の機種を見ると、ほとんどが数年前の型落ち機種ばかりで最新の情報に更新されていない。最新情報への更新を徹底して、最新機種の一部でもFMラジオが聴ける点を周知すべきだ。

シャープ

・AQUOS R6

・AQUOS zero6

・AQUOS zero5G basicシリーズ

・AQUOS sense6

・AQUOS sense5G

・AQUOS sense4 plus

・AQUOS sense4シリーズ

・シンプルスマホ6

FCNT

・arrows NX9

・arrows Be4 Plus

・arrows Be4 F-41A

・arrows We

・らくらくスマートフォン F-42A

・らくらくスマートフォンme F-01L

京セラ

・BASIO4

・かんたんスマホ2

・URBANO V04

サムスン電子ジャパン

・Galaxy A41

・Galaxy A20

ASUS

・ROG Phone II ZS660KL

・ZenFone 6 ZS630KL

 この内、京セラが5月16日に汎用的な個人向け携帯電話事業から撤退すると表明。高耐久スマートフォン「TORQUE」シリーズは継続予定だが、ラジスマが発売される可能性は低い。5月30日にはFCNTが民事再生手続きの申し立てをすると発表し、事実上経営破綻したことが明らかになった。

【更新:7月16日13時20分】FMラジオ対応機種とラジスマ対応機種の情報が更新されていない旨を追記しました

 ラジスマに頼れないなら、他に情報取得手段はあるのか? TwitterなどのSNSを挙げたいところだが、Twitterは予告なしに閲覧制限を実施した他、ここ数日の不具合で「使いづらい」との声があがっている。米Metaの新たなSNS「Threads(スレッズ)」もアリかもしれないが、ハッシュタグが使えない点やキーワード検索ができない点などはTwitterに劣る。これらの機能は将来的に実装される予定だが、現時点(2023年7月現在)でThreadsの1本化は厳しい。

 LINEアプリのニュースや他のニュースサイトを使う手もあるが、SNSもWebのニュースサイトも通信手段(モバイルデータ通信やWi-Fi)を確保できなければ意味がない。

 スマホを取り巻く環境を整理してみると、災害時の情報取得がさらに難しくなっていることが分かる。メーカーにもユーザーにも負担にならない新たな情報取得手段が求められているのが現状だ。

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