専門家「不均衡になり落下の可能性」 工法『横取り仮設』とは…橋げた落下で2人死亡
静岡市の国道工事現場で6日午前3時ごろ、重さ140トンの橋げたが落下し、8人の作業員が巻き込まれ、室田久生さん(53)と前田要さん(51)の2人が死亡しました。
工事の概要です。
事故が起きたのは、静岡市清水区にある国道1号・静清バイパスの工事現場。この場所は1日に約7万台の車が通行していて、日ごろから渋滞が発生しているため、渋滞緩和の目的で2.4キロに渡って道路を高架にする工事が行われています。
T字部分が、高架にするための橋脚です。橋脚と橋脚の間に、鋼鉄製の橋げたをかける作業をしていました。落下した橋げたは、長さ約63メートル、幅約2.5メートル、重さ140トンです。『横取り・降下』という工法で作業が行われていました。
◆どういう作業工程なのでしょうか。横浜国立大学の勝地弘教授に聞きました。
橋脚と橋脚の間に『ベント』と呼ばれる仮設の足場を設置。いくつかの橋げたのパーツを『ベント』の上にクレーンで持ち上げ、『ベント』の上で連結させて63メートルの長さにします。この段階では仮設の状態です。
レールと油圧ジャッキを使って、橋げたを本来設置する位置まで横にスライドさせていきます。これが『横取り』。国道1号のように交通量が多いなどの事情で道路の上に『ベント』を設置できない場合、『横取り』工法が行われます。
最終的に『支承』と呼ばれる部分に橋げたを降下させます。『支承』は、いわゆるクッションのような役割。『支承』の真上まで橋げたを移動させたら『降下』の作業に移ります。
どうやって『支承』の上に橋げたを降下させるかといいますと、スライドさせた橋げたを油圧ジャッキと『積み木』で支えます。その後、ジャッキと『積み木』の高さを交互に変えながら、橋げたを『支承』に降ろしていきます。これが『降下』です。
国土交通省によりますと、今回の事故は、橋げたを降ろす際に起こったといいます。
詳しい事故原因はまだわかりませんが、勝地教授によりますと、「橋げたを支承に下ろすのは、ミリ単位で、水平を保ちながら行う繊細な作業。ジャッキの操作ミスや故障など、何かしらの理由で橋げたが不均等になり、落下した可能性がある」としています。
事故現場の様子を見てみると、道路に対して橋げたが水平に落ちたのではなく、片方が大きく橋脚から離れているのがわかります。今回、作業員がどこにいたかはわかっていませんが、「作業している橋げたの下に作業員がいないのは鉄則だ」と勝地教授は話しています。
国土交通省は、事故調査委員会を設置し、事故原因の究明などを行うとしています。
専門家「想定外なことが起きたのでは」 工事中“橋げた落下”…2人死亡 近所の人「地震より…」
静岡市清水区で、工事中の現場から橋げたが落下する事故が起きました。6日夜、news zeroは構造物に詳しい大学教授とともに現場へ。教授は現場を見て「変なことはしていない」「何か想定外なことが起きたのでは」と見解を述べました。
◇
中島芽生アナウンサー
「こちら事故現場なんですけれども、6日午後7時半現在も橋げたが落下した状態となっています。周辺では今も交通規制が行われています」
6日夜、news zeroは構造物に詳しい大学教授とともに橋げたが落下した現場へ向かいました。
中島芽生アナウンサー
「そのままドンッと(橋げたが)落ちた形」
静岡理工科大学 冨永知徳教授
「ドンッと落ちた形になっています。転がってはいないと思います」
事故が起きたのは、6日午前3時ごろです。9メートルほどの高さから長さ約63メートル、重さ140トンもの橋げたが落下しました。
近所の人
「ドドドドって音がしてね。地震よりもすごい。ガタガタガタガタ。家が壊れるかと思うくらいガタガタガタガタ」
近所の人
「呼ぶ人は悲鳴みたいな感じ。『助けて』とか『救急車すぐに呼んでください』とか」
この事故で作業員の室田久生さん(53)と前田要さん(51)の死亡が確認され、別の作業員ら6人もケガをしました。
周囲は通行止めだったため、一般の車や歩行者への被害はありませんでした。
◇
事故があったのは、静岡市清水区。静岡の大動脈、国道1号にある「静清バイパス」の工事現場です。上空から確認すると、目と鼻の先には民家が立ち並び、歩道の柵はつぶされてしまっています。
近所の人
「昼間だったらあの歩道、学生さんたちが通っていて、もし朝通っていたら大変なことですよね」
近所の人
「『渋滞を解消するために高架にしてください』って申請して、ようやくできた。(工事を)やり始めたって感じ」
多くの住民が利用し、交通渋滞解消のために、去年から工事が行われていたという場所で事故は起きました。一体、何があったのでしょうか。
◇
一般的に橋は「橋脚(きょうきゃく)」の上に「支承(ししょう)」と呼ばれるクッションを置き、その上に今回落下した「橋げた」、その上に「道路」という構造になっています。今回は、橋脚の上で橋げたをスライドする「横取り」という作業の際に、落下が起きたということです。
冨永氏によると、「横取り」は一般的な作業だと言いますが――
中島芽生アナウンサー
「(横取りは)事故が起きやすいですか?」
静岡理工科大学 冨永知徳教授
「こういう大きなものを移動させるので、他の作業に比べて危険度があるかないかという話だと、危険度がある作業。だからこそ、下を通行止めにしていたと思う」
◇
橋げたを巡る事故は、過去にもありました。1991年、広島市の新交通システム「アストラムライン」の建設現場で橋げたが落下。信号待ちの車も巻き込まれ、作業員ら15人が死亡しています。
2016年にも兵庫県神戸市で橋げたが落下。作業員2人が死亡し、8人がケガをしました。
今回の事故について冨永氏は――
静岡理工科大学 冨永知徳教授
「今回、現場を見てみると、あまり変なことはしていないだろうなと。予定されていた作業をたんたんとしている間に何か想定外なことが起きたのではないか」
繰り返されてしまった事故。警察は業務上過失致死傷の疑いで、安全管理などに問題がなかったか調べています。
橋げた落下の高架道路は「緩やかなカーブで“難しい工事”」 専門家は落下想定した対策の不備指摘
6日未明 静岡市清水区の工事現場で設置中の高架道路の一部が落下し、8人が巻き込まれました。この事故で作業員2人の死亡が確認されています。
静岡国道事務所は今回の事故について、橋脚に乗せた橋桁を油圧ジャッキを使って所定の位置へとずらす「横取り」と呼ばれる作業中に起きたとしています。
このことについて土木工学を専門とする稲積真哉教授は、現場が緩やかにカーブしている点に着目しています。
芝浦工業大学 工学部・稲積 真哉 教授:
「横取り」の作業中に落下したのであれば、この工事・工程自体に問題はないが、「横取り」の微修正をする作業自体には問題があった。(事故現場は)カーブしているので水平で平行に移動させるのではなく、左右の移動量が違ってきます。この調整は非常に難しい。カーブの橋を作っていたというところで、それが一つの原因になったのかと
そのうえで難しい工事だった一方、最も重要な安全管理が徹底されていなかった可能性があると指摘してします。
芝浦工業大学 工学部・稲積 真哉 教授:
安全第一という中で、今回の工事で想定される危険・リスクは、このように橋が落ちるということ。万が一 橋が落ちた場合に作業員や周辺の人々に損害が生じないよう措置を講じることが、果たして十分になされていたのか
