食後30分間は歯磨きNG? ジュースは歯を溶かす? 歯科医が教えるホントとウソ

食後30分間は歯磨きNG? ジュースは歯を溶かす? 歯科医が教えるホントとウソ

「ジュースを飲むと歯が溶ける」「食後30分は歯磨きを控えるべき」など、たびたび耳にする「歯の情報」。真偽がわからず、悩む人も多いのではないでしょうか。歯にまつわるうわさについて、日本歯科医師会常務理事で歯科医師の小山茂幸さんに聞きました。

【話を聞いた人】公益社団法人日本歯科医師会常務理事、歯科医師 小山茂幸さん

(こやま・しげゆき) 1985年広島大学歯学部を卒業。1991年山口県周南市に「こやま歯科医院」を開業。2015年から山口県歯科医師会会長、山口県高等歯科衛生士学院学院長。2016年から日本歯科医師会常務理事も務める。

ジュースを飲むと歯が溶ける?

――「ジュース類を飲むと、歯が溶ける」という説を耳にしたことがあります。これは本当でしょうか。

ジュース類を飲むと歯が溶けるわけではなく、口内のpHが酸性に傾く時間が長いと、歯が溶けるというのが正確です。

pHというのは、液体が酸性かアルカリ性かを示す数値です。pHの値が大きいとアルカリ性、値が小さいと酸性が強くなります。例えばpH1は塩酸や硫酸で、ものを溶かす性質を持っています。

ジュース類のほとんどが酸性であり、コーラはpH2.2、スポーツ飲料はpH3.8くらいとされています。数値で見ると、ものを溶かす性質を持っています。

口内は平常時、pH7の中性に保たれています。しかし、飲食を始めると、pHの低い食べ物を口にするため口内のpHが低くなります。そうすると、むし歯菌が飲食物に含まれる糖を分解して酸を作り出し、その酸によって歯の表面のエナメル質からリンやカルシウムが溶け出します。この一連の現象を「脱灰」と呼びます。

その後、唾液が食後30分~1時間かけて口内のpHの値を中性に戻していきます。そうすると、溶けだしたリンやカルシウムが歯に戻ります。これを「再石灰化」と呼びます。

この2つのバランスが口内では保たれています。ですから、ジュース類を飲んで、口内のpHが酸性に傾く「脱灰」の時間が長いと、むし歯になるのです。

――ジュース類のpHではなく、口内のpHが重要なのですね。

はい。一番よくないのは、だらだら飲んだり、食べたりすることです。チョコレートや飴をだらだらと食べ続けていると、口内のpHが酸性優位な環境となり、むし歯になりやすくなります。

食後30分以上たってから歯を磨くべき?

――勉強の合間にチョコレートを一口食べたりすると、むし歯になるリスクは高くなるのでしょうか。

そうですね。小学生は比較的に生活習慣が一定ということもあり、12歳の「永久歯の一人当たりの平均むし歯等数」は0.63本と少ないです(令和3年度文部科学省 学校保健統計調査より)。しかし、中学生、高校生、大学生、社会人と、生活スタイルの変化に伴って、食習慣が不規則になることなどにより、むし歯が増える傾向にあります。

――だらだら飲食をしないためには意志の強さも必要ですね。歯科医の方々はどうしていますか?

食べる回数を増やさずに甘いものを楽しむのが良いのではないでしょうか。私は、昼食の時に一緒に食べるようにしています。

食後30分から1時間たってチョコレートを食べるのは、せっかく中性に戻った口内のpHを、また低くする行為。つまり、むし歯になりやすい環境を2度作ってしまうわけです。でも、昼食後すぐにチョコレートを食べれば、口内のpHを低くするのは1度で済みます。

ーー食後30分経つと口内のpHが中性に近づくということは、歯磨きは時間をおいてからした方がいいのでしょうか?

それは誤りですね。食べたらすぐに磨くのが一番いいです。

食べた後は食べかすが口内に残っています。そうすると、それを栄養源にむし歯菌が活動してしまいます。だから、まずは歯磨きをしてむし歯菌の栄養源を除去する。それから唾液でpHが戻っていくのが一番だと思います。

欧米はきれいな歯並びと白い歯がステータス?

――「欧米では、きれいな歯並びと白い歯がステータス」と聞いたことがありますが、これは事実なのでしょうか。

バイデン大統領などのアメリカの著名人を見ていると、白い歯で、歯並びが整っていますから、そういう文化があるのでしょうね。

日本では八重歯が可愛いと言われますが、欧米ではドラキュラと揶揄(やゆ)されます。日本人は笑う時に口を覆いますが、欧米人はそういうことはしないでしょう。そうした文化の違いが大きいと思います。

――海外留学や海外大学への進学を希望するのであれば、矯正も視野に入れるべきなのでしょうか。

視野に入れるかどうかはご家庭の考えによると思います。もし矯正を考えているなら、早めに専門医に相談するのがいいでしょう。歯の抜ける時期が人によって異なるように、状況に合わせて必要な矯正治療の内容が変わるからです。

子どもの頃に矯正しても、大人になると歯並びが変わってしまう方もいます。生活習慣の影響もあるでしょうが、矯正後に保定する時間を十分にとれていないケースもあります。もし転居などで矯正が続けられるか心配な場合は、主治医によく相談してみるといいでしょう。転居先で、矯正の専門医を紹介してもらえるかもしれません。

歯科医師としては、矯正には審美的な面だけでなく、よく咀嚼(そしゃく)できるようになるという機能的に良い面があることも知っておいてほしいと思います。

――矯正には機能面での利点があるのですね。

最近は矯正が必要な子どもが増えている実感があります。これは柔らかいものを食べる食生活に変わり、食べ物をかむ回数が少なくなって、あごが十分に成長しなくなったことが要因の一つとして考えられます。あごが成長しないと、永久歯が並ぶスペースが足りなくなるのです。

それに、口周りの筋力が弱い「ぽかん口」の子も増えました。口の筋肉の虚弱を「オーラルフレイル」と呼びますが、これは本来、高齢者に見られる問題です。口の筋肉が幼いころに鍛えられて、お年寄りになったら徐々に落ちていく。自然現象ですよね。でも、これが今、幼いころに口の筋肉が鍛えられない「口腔機能発達不全症」という問題に発展しています。

かむ習慣をきちんとつけることは、あごや口周りの筋肉を成長させ、機能的な歯並びへと育つ大きなポイントとなっているのです。

――かむ力を鍛えるには、どうすればいいのでしょうか。

柔らかい食べものを何度もかむことからスタートするといいですね。また、駄菓子屋さんにあるような、吹き戻しや風車、風船を膨らませる口遊びながら鍛えるのもいいと思います。

山口県では、年長の幼稚園児に、キシリトール入りの風船ガムを与えて、毎日風船ガムを膨らませる実証実験を行いました。ガムは柔らかくなるまでかまないと風船にできないし、風船にするためには舌をはじめとする口腔の筋肉も使わないといけません。

最初は60人中5人しか風船にできなかったのに、2カ月後には35人ができるようになりました。保護者からは、子どもの「ぽかん口」がなくなった、いびきをかかなくなった、食事をゆっくりとよくかんで食べるようになった、という報告がありました。

――よくかんで、ゆっくり食べることによる、健康面での効果も大きそうですね。

そうですね。人はものをかむことで、唾液を出します。唾液にはさまざまな効果があって、胃の消化を助けるだけでなく、口の中のpHを中性に戻したり、細菌の繁殖を抑えたりしています。

一方、食事の時に水をよく飲む人は、唾液が分泌されるまでかまず、食べ物を水で流し込んでいることがあります。ぜひ一度、ご自身や子どもの食事風景を振り返ってみてください。

歯の黄ばみは、お茶やコーヒーなど色のついた飲み物が原因?

――歯が黄ばむ原因は、お茶やコーヒーなど色のついた飲み物が原因なのでしょうか?

歯の黄ばみは、色のついた飲み物だけが原因ではありません。歯垢(しこう)など、さまざまな要因があります。これらは歯磨きである程度防げます。ですから歯磨きの習慣を大切にしましょう。

歯磨きは、歯の黄ばみやむし歯を予防するだけでなく、風邪やインフルエンザ、歯周病などの原因となる細菌を体から追い出すことにも有効です。

例えば、寝る前に歯磨きをして、口内の細菌を減らすことができても、8時間寝たら増殖しますよね。菌だらけの口で朝食を食べると、細菌が腸に届き、腸内細菌のバランスの乱れにつながります。悪玉菌が増殖すると、さまざまな病気の発症につながる恐れがあります。

ですから、歯磨きは毎食後だけでなく、寝起きと就寝前にもするのが一番いい方法です。もし歯磨きが難しい場合はうがいをするだけでも効果があると思います。ぜひ生活習慣も、一度見直してみてください。

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