メルセデスAMG SL43 × ジャガー Fタイプでプレミアム2シータースポーツの粋を味わう。「 古くて新しきスピリット。憧れのままに我を忘れる」

メルセデスAMG SL43 × ジャガー Fタイプでプレミアム2シータースポーツの粋を味わう。「 古くて新しきスピリット。憧れのままに我を忘れる」

カッコ良さへの認識は、不変か憧れを生むことのできる存在

時代が変われば、カッコ良さの基準も変わるものだと考える人は多いだろうが、しかし果たして本当にそうなのだろうか。たぶん、違うはずだ。2ドアのスポーツカー、クーペモデルやオープンモデルなどを時代錯誤の存在だろうと思ってしまうことこそが、ただ時代に流されているという証なのではないか。愛でる気持ちさえ忘れなければ、2ドア車の備える魅力を実感できるはずだ。(Motor Magazine 2023年4月号より)

【写真はこちら】上質なGTとしての個性は不変。少しだけノスタルジックな操る楽しさも捨てがたい(全18枚)

世の中、カッコ良いクルマの基準がかなり変わってきた。最近では厳(いか)つい顔をしたミニバンやSUVに乗ることがカッコ良い。比べて背の低いスポーツタイプのなんと肩身の狭いことか。しかも、ドアが2枚しかないなんてもはや・・・。だが、そうボヤくのはどうやら我々オジサンたちの勝手な思い込みなのかもしれない。

そんなふうに感じたのは、新型SLを駆って、東京から自宅のある京都までドライブした時のことだった。とある高速道路のサービスエリアに停めてひとしきりスタイリングを観察していると、真っ黒な国産ミニバンから降りてきた若い子たちがおもむろに近づいてきた。彼らは相好を崩しながら興味津々に「これ新しいSLですよね!カッコ良いなぁ。憧れなんっすよ、メルセデスのSLって」と、話しかけてきたのだった。

しばらく立ち話。結論から言うと、ミニバンやSUVといった背の高いクルマにはあくまでもその機能、つまりマルチパーパス&マルチパッセンジャー車として必要だから乗っていて、その中で気に入ったスタイルやブランドのモデルがあるというだけなのだそう。自分たちだって経済的・住環境的に余裕があり、家族や知人を乗せたりする必要がなければ、ひとりで楽しめるクルマが欲しい。そうなればやっぱりオープンカーが最高だ、とも宣(のたま)った。

てっきり、今の若い人たちは背の低いクルマになど興味がないものだと思っていたから、少なからず驚く。ひょっとして彼らが特殊な例だったかもしれない。けれどもその場にはスポーツカー話にうなずく4、5人の若人がいたわけだから、氷山の一角?とも思える。

実を言うと最近、そういうことが他のスポーツカーやスーパーカーでも何度かあった。実践的なクルマ好きは全体的に減っているかもしれないが、観念的なカッコ良い2ドア好きはまだまだいるのではないだろうか。近年の新旧国産スポーツカーブームは、確かにオジサンが流行の中心にいたけど若い人もけっこう反応していた。

誰もが知る有名ブランドのカッコ良いクルマをカッコ良い人がドライブする姿こそ、潜在的な欲望を刺激し、その中から実践派を生み出すために大切だと思う。そこにたとえばメルセデスの歴史的スポーツモデルであり、オープンカーでもあるSLのレゾンデートル(存在意義)があった。

またスリーポインテッドスターに比べれば多少地味でマニアックな存在かもしれないが、知名度は高いジャガーもまたFタイプという典型的なスポーツカー(もしくはオープンカー)の姿で人々の好奇心をくすぐるに違いない。普段はまったくクルマに興味のないお好み焼き屋のオバサマに「カッコ良いクルマやねぇ」と、思わず声をかけさせる類のモデルなのだ。

いずれも、ある意味で古典的なオープンモデルである。SLにはモデルとして連綿と続く歴史(メルセデスの乗用車として最長だ)があるし、Fタイプにはブランドとしてスポーツカースタイルの元祖、タイプを世に送り出した矜恃がある(FとはEの次、つまりは現代解釈という意味だろう)。

それゆえ、クルマ好きならずとも「カッコ良い」「乗ってみたい」と思わせるダブルマッチングを有しているのだと思う。

乗る前の先入観を覆した楽しき運転感覚と上等さ

2台の成立と運命は、微妙に異なっている。SLはつい最近フルモデルチェンジ、それもかなり思い切ったキャラクター変更を伴う代替わりをしたばかり。Fタイプは、すでにモデルライフ年を迎えるロングセラーで、しかもエンジン付きスポーツカーとしては、ジャガー最後のモデルになるだろうという曰(いわ)く付き。

立場に明暗あり。それぞれの事実が、各々に独特の価値観を与えずにはいられないという点もまたスポーツモデルならではだろう。はたして、新型SLは何をどう思い切ってデビューしたのか。まず、メルセデスベンツではなくなった。メルセデスAMG専用モデルとなり、よりスポーツ志向の強さを前面に押し出すことに。

次に2+2シーターとなった。これはR129(1989年)の欧州仕様以来のことだ。利便性が求められる時代であり、保険や税金面でのメリットもあるだろう。さらにR230(2001年)以来、2世代続いたrht(リトラクタブルハードトップ)をやめてソフトトップ(と言っても堅牢だ)となった。個人的にはデザインのまとまりがオープン/クローズドを通じて格段に良く感じる。

そして、今回の取材車両SL43がそうであったように、190SL以来およそ60年ぶりとなる4気筒エンジンの搭載だ。ちなみにSLといえば8気筒だ!と声を荒げた人は、もう少し待っていて欲しい。SL70年の歴史で初となる4WDとなったV8のSL63 4マティック+がもうすぐ上陸する。

それはさておき、オジサン連中のみならず若い人たちからも注目を浴びたSL43だったが、4気筒であることを気にしたのはやはりオジサンたちの方だった。かく言う私もそうで、乗る前には「SLKじゃあるまいし」などと見くびっていたのだ。さらにいえば4気筒を積んでいると思うからか、見た目にも少し威厳に欠けているように思えたし︑インテリアの見栄え質感も褒められたもんじゃない、と感じていた。ところが、だ。

乗ってみれば、これが結構なスポーツカーで驚く。鼻先は軽く、ワインディングロードで積極的に操っていると我を忘れてしまう。その昔、6気筒エンジンを積んだSLがあり、それがファントゥドライブだとアピールする方が「通」らしかったことを思い出した。

4気筒でもエンジンの力は十二分だ。パワースペック的には少し物足りなく感じるものの、例のF1テクノロジーによる電動排気ターボのおかげかエンジンの反応は実に機敏で、どこからでも力が湧き出す。なるほどこれなら8気筒はともかく、6気筒は要るまい。

高速クルーザーとしては以前のマルチシリンダーモデルに比べると重厚感に欠けるのは当然だが、それでも長距離ドライブを淡々とこなすGT性の高さには感服する。これはこれで、上等なSLクラスには違いない。憧れのままに。

気になったのは、9速スピードシフトMCTの低速域におけるマナーぐらいのものだ。トルクコンバーターの代わりにスリップロスの少ないクラッチシステムを採用するがゆえに、エンジン回転数の高い領域で積極的に変速させるような時にはその小気味良さが爽快だけど、家のガレージ前でいつもギクシャクされては運転が下手に思われる。要改善のポイントだ。

英国本流のオープン2シーターこの時代性こそがFタイプ

Fタイプは、Rダイナミックブラックコンバーチブル450という現在はラインナップされていないグレード(最新では「コンバーチブル」の仕様が近い)。さほど熟考を重ねたとは思えないそのネーミングに、モデル末期でしかも未来への継承が閉ざされたモデルの悲哀が感じられてしまう。

とは言え、クルマそのものに罪はない。久しぶりに駆った5L V8スーパーチャージドエンジン搭載のFタイプは、これぞ英国の本流オープン2シーターであると改めて感動した。10年前に登場した時からそうだったが、Fタイプはどのエンジン(かつては8気筒、6気筒、4気筒と揃っていた)に乗っても、昔から良いFRスポーツカーの典型だった。

ただし、純粋なガソリンエンジンならではのクラシックなフィールと雄叫びを別にしても、SL43に比べると、ひと世代前の時代性を感じずにはいられない。逆に言うと、それがFタイプの個性だ。

SL43がほとんど仕組みの理解が不能なまでに完璧なスポーツドライブを演出するのに対して、Fタイプにはハッキリと人間が介入する余地があった。それを、V8エンジンが大いにけしかけてくれる。これぞ、今のうちに乗っておきたいスポーツカーの11台であることは間違いない。自分がカッコ良いかどうかは、別にして。(文:西川 淳/写真:永元秀和、井上雅行)

■メルセデスAMG SL43(BSG搭載モデル)主要諸元

●全長×全幅×全高:4700×1915×1370mm

●ホイールベース:2700mm

●車両重量:1780kg

●エンジン:直4DOHC電動排気ターボ+モーター

●総排気量:1991cc

●最高出力:280kW(381ps)/6750rpm

●最大トルク:480Nm/3250-5000rpm

●モーター最高出力:10kW(140ps)

●モーター最大トルク:58Nm

●トランスミッション:9速AT

●駆動方式:FR

●燃料・タンク容量:プレミアム・70L

●WLTCモード燃費:10.8km/L

●タイヤサイズ:前265/40R20、後295/35R20

●車両価格(税込):1648万円

■ジャガーFタイプ Rダイナミック ブラックコンバーチブル P450主要諸元

●全長×全幅×全高:4470×1925×1310mm

●ホイールベース:2620mm

●車両重量:1870kg

●エンジン:V8DOHCスーパーチャージャー

●総排気量:4999cc

●最高出力:331kW(450ps)/6000-6600rpm

●最大トルク:580Nm/2500-5000rpm

●トランスミッション:8速AT

●駆動方式:4WD

●燃料・タンク容量:プレミアム・70L

●WLTCモード燃費:9.2km/L

●タイヤサイズ:前255/35R20、後295/30R20

●車両価格(税込):1696万円

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏