ビル・ゲイツが予測する「AIと社会」の未来。私たちが今のうちにできる5つのこと

ビル・ゲイツが予測する「AIと社会」の未来。私たちが今のうちにできる5つのこと

AIの時代がはじまりました。

これは、ビル・ゲイツ氏が2023年3月21日、自身のブログ「Gates Notes」とメーリングリストで公開した投稿のタイトルです。

言うまでもないことですが、ここ最近はAI全般、特にChatGPTやBard、AI搭載版Bingなど、一般ユーザーも利用できるAIアプリが、さまざまなメディアの見出しを飾る機会が増えています。けれどもゲイツ氏に言わせれば、もっともっと大きな変化が、今まさに起こっているそうです。

目次

ビル・ゲイツが目撃した「2つの革命」

1. AIをどうビジネスに役立てるか、今のうちに考える

2. 自分の仕事に対する考え方を変える

3. 「パーソナルエージェント」を利用する未来を想定する

4. AIの暴走を心配しすぎるのはやめよう

5. むしろ心配すべきは、人間によるAIの使い方

ビル・ゲイツが目撃した「2つの革命」

現在67歳のゲイツ氏は、同氏がこれまでに目撃したなかで、「これは革命だと思ったテクノロジーの進歩は2つしかなかった」と述べています。

1つは、グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)で、初めて目にしたのは1980年だったそうです。今では考えられませんが、当時、コンピューターを使おうと思ったら(そんな人はほとんどいませんでした)、Cプロンプト(「C:>」など)に応じて必要なコマンドを正確に入力しなければなりませんでした。

クリックしたいものを何でもクリックできる、Windowsのような(Macのような)インターフェイス。そのデモを初めて見たとき「これで世界は一変する」と、ゲイツ氏は確信したそうです。

そのデモをゲイツ氏に見せたのは、ある優秀なプログラマーでした。「すぐにブレインストーミングをはじめて、ユーザーが手軽にコンピューターを使えるこのアプローチで何ができるのか、アイデアをいろいろ出し合いました」と、ゲイツ氏は振り返っています。

マッチングアプリの画面を左スワイプしたり、ゲームで悪者を撃ったり、アイコンをタップしてピザのトッピングを追加注文したり──。こうした行動はみな、さかのぼれば、このイノベーションに行き着くのです。

2つ目の革命がまさに起ころうとしている

それから42年後の今、ゲイツ氏はそのときと同じように、世界全体がまさに変わろうとしているという感覚を味わっています。

きっかけは、OpenAIのボットが、同氏が出した課題を見事にクリアしたことでした。

その課題とは、生物学のアドバンスト・プレイスメント(AP)テストです(注:AP=高校にいながら大学レベルの授業が受けられるアメリカのプログラム)。

私がこれを課題に選んだのは、生物学のAPテストは、科学的事実の単なる受け売りではとても太刀打ちできないからです。生物学を批判的に考える力が要求されますから。

そうゲイツ氏は語っています。OpenAIのボットは、そのための特別な訓練を受けてこなかった問題に解答しなければなりませんでした。さらに、小論文も書かなければなりませんでした。

「この課題なら、2~3年はかかりっきりになるだろうと思っていましたが、たったの数カ月で終えてしまいました」と、ゲイツ氏は言います。テストの結果は、60問中59問が正解でした。これを見たゲイツ氏は、このAIに畏怖の念さえ抱いたそうです。テストを採点した外部の専門家は、このAIに「5」の評価を与えました。大学の生物学のコースなら「A」に相当する最高の評価です。

次にゲイツ氏は、このAIに、一般常識を試す別の質問をぶつけてみました。「病気の子どもを抱えた父親に、あなたなら何と言いますか?」。これに対するAIの答えは明らかにされていませんが、同じテストに参加したほかの誰よりも良い答えだったそうです。

「すべてが驚きの体験でした」とゲイツ氏は語っています。

グラフィカルユーザーインターフェイス以来、もっとも重要なテクノロジーの進歩を目の当たりにしたと思いました。

そして、ゲイツ氏はいつものように、「AIが書き換える未来」の予想図を、すぐさま描きはじめました。

では、ゲイツ氏が予見する世界の変化と、それに備えて私たちがなすべきことについて、お話ししましょう。

1. AIをどうビジネスに役立てるか、今のうちに考える

もしゲイツ氏の予測が正しいなら(その根拠は十分にあります)、ビジネスの運営にAIが本当に必要かどうかを考えることは、20年前にウェブサイトが本当に必要かどうかを考えるようなものかもしれません。

ズバリ、必要です。AIの必要性をいち早く理解したビジネスリーダーは、あとからようやく気づくビジネスリーダーよりも、おのずと優位に立てます。

「AIの発達は、インターネットや携帯電話の導入と同じぐらい基本的なことだ」と、ゲイツ氏は述べています。

すべての業界が、AIを中心に再構築されるでしょう。

これからのビジネスは、AIをどれだけ使いこなせるかで差別化されていくと思います。

2. 自分の仕事に対する考え方を変える

AIはすでにさまざまなことを変えつつありますが、特に顕著なのは、私たちの仕事の効率を高めてくれる力です。

私もそのひとりです。仕事のためにおこなうすべてのミーティングやインタビューについては、数年前からアプリ「Otter.ai」を使って、発言内容を書き起こしています(もちろん、相手の許可は取っています)。

自分でやるよりも、このアプリのほうがよっぽどうまくメモを取ることができ、ほぼすべての言葉を書き取ってくれます。おかげで仕事のスタイルが変わり、生産性が上がりました。

それを示すデータは見つかりませんが、Otter.aiは、文字起こしの専門家であるトランスクリプショニストたちの労働市場にも影響を及ぼしているに違いありません。

私はこれまで、さまざまな理由があって、トランスクリプショニストを使っていませんでしたが、これまでトランスクリプショニストを使っていた人たちが、現在はOtter.aiなどの文字起こしアプリを使うようになったのは必然でしょう。

AIによる文字起こしを利用して、そこからもっとも必要な情報を効率よく引き出せるトランスクリプショニストがいたら、活躍できるチャンスはまだ残っていると思います。そんな人がいるなら、私も使ってみたいです。

また、優れたトランスクリプショニストに必要なスキルの持ち主なら、うまくこなせるであろうほかの仕事も、労働市場にはたくさん残っています。

書類の処理や会計といった、今は人間が行なっているけれども、AIにもできる仕事はたくさんあると、ゲイツ氏は述べています。

けれども、もし歴史が何かを教えてくれるとしたら、AIの影響で人間の仕事が大きく減ることはないでしょう。仕事の退屈な部分がいくらか減り、新たな仕事の機会が生まれるはずです(なかには、今の私たちが思いもよらないものもあるでしょう)。

事務処理の多い医療業界などでは、「AIが救世主になるのではないか」とゲイツ氏は述べています。診療所などに導入されれば、保険金請求書の記入にかかる時間が減り、患者のケアに割ける時間が増えるのではないでしょうか。

3. 「パーソナルエージェント」を利用する未来を想定する

ゲイツ氏は、興味深い予言をひとつしています。いずれは私たち一人ひとりが、「パーソナルエージェント」(同氏はそう命名しています)を持つようになるという予言です。

デジタルのパーソナルアシスタントだと考えてください。

持ち主の新着メールを確認したり、出席する会議について把握したり、読むべきものを読んでくれたり、面倒で読みたくはないものを、代わりに読んでくれたりするようになるでしょう。

AlexaやSiri、Googleアシスタント、あるいはこれら3つを使っている人なら、言わんとすることはだいたいわかりますよね。ただ、ゲイツ氏の想像を読めば、そうした音声アシスタントも原始的に思えてしまいます。

ゲイツ氏は、企業も、会社全体用のエージェントを持つようになるだろうと言っています。

特定の会社について理解しているエージェントも登場するでしょう。

何かあれば、社員はそのエージェントに直接相談できます。

どんな質問にも答えられるよう、会議には必ず出席することになるでしょう。

4. AIの暴走を心配しすぎるのはやめよう

AIはいつか、人間と敵対するようになるかもしれない──。そんな悲惨な予測についてはどうでしょうか? 

ゲイツ氏も、そうした予測を耳にしています。以前の投稿では、現代の身近なAIと、「強いAI」こと汎用人工知能(AGI:Artificial general intelligence)の間に線引きをしていました。

前者は、学習して上達できる能力はあっても、まったく新しいタスクを引き受ける能力はありません。それに対して後者は、「ありとあらゆるタスクや題材を学習する能力」があります。

強いAIはまだ存在していませんが、ゲイツ氏は「強いAIをどうすれば開発できるのか、そもそもそんなものを開発することはできるのかについて、コンピューター業界ではいま活発な議論が行なわれています」と語っていました。

強いAIが実際に実現したら「自分の目標を自ら選べる能力を備えている可能性は十分にある」とゲイツ氏は述べています。

それはどんな目標なのか? その目標が人間の利害と衝突したらどうなるのか? 強いAIの開発は阻止すべきことなのか? 

今後は、こうした疑問が日増しに切迫感を帯びてくることでしょう。

ゲイツ氏によれば、強いAIが人間を脅威とみなすようになる、あるいは「私たち人間のことを、まったく気にかけなくなる」未来は十分に考えられるそうです。

その一方で、そんな未来はまだ先のことであり、到来しない可能性もあるとも述べています。

ここ数カ月に起きたブレークスルーのなかで、私たちを強いAIに大きく近づけたものは、1つもありません。

5. むしろ心配すべきは、人間によるAIの使い方

急を要するのはむしろ「人間はAIをどのように使って、世界をより良い場所に、あるいはより悪い場所にしようとしているのか」という問題かもしれません。

ゲイツ氏は触れていませんが、AIを使えば、ドローンで個人を標的にした攻撃もできます。また、誰がなぜ個人情報のターゲティングを行なうのかによって、その結果は良くも悪くもなります。

もっと身近な例を挙げましょう。あなたに届いたメールを読んでくれたり、あなたの代わりに買い物をしてくれたりする、未来のパーソナルエージェントを思い浮かべてください。

保険会社はこうしたエージェントに、あなたの許可なく、あなたに関する質問をできるようになるのでしょうか?

そうゲイツ氏は問いを投げかけています。こうした問題については、おそらくは議会による解決が必要になるでしょう。

慈善家であるゲイツ氏は、子どもの死亡率低下、教育の改善、気候変動の減速などに力を注いでおり、AIにはこうした問題の解決に役立つ大きな可能性があると考えています。

たとえば、貧しいコミュニティーでは医師や教師が不足しがちですが、同氏によると、AIがその不足を埋め合わせられる可能性があります。

気候変動についても、このようにゲイツ氏は語っています。

AIを役立てれば、その土地の状態に、より適した種を育てることができます。

その地域の土壌や天候にいちばん適した種について、農家の人々にアドバイスしたりできますし、家畜用の薬やワクチンを開発するのにも利用可能です。

これらはまだ、仮のアイデアにすぎません。

グラフィカルユーザーインターフェイスをゲイツ氏に初めて見せた開発者は、Google EarthやInstagramを予見できなかったでしょう。

それと同じように、今生きている私たちの大半には、AIが今後の数年、数十年で、世界をどう変えていくのか見当もつきません。わかっているのは、AIが世界を変えるのは間違いないということです。

HOW TO THINK LIKE Bill Gates ビル・ゲイツの思考哲学

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