アメリカでTikTok“全面禁止”? 既に禁止の大学も、日本で全面禁止の可能性は?

アメリカでTikTok“全面禁止”? 既に禁止の大学も、日本で全面禁止の可能性は?

動画投稿アプリ「TikTok」の利用を政府職員の間で禁止する動きが広がる中、アメリカでは民間人の利用まで禁止する可能性が出てきました。その背景を探ります。

中国企業が開発した動画共有アプリ「TikTok」。2017年にサービスを開始し、利用者は世界で10億人を超えています。日本でもおよそ1500万人が日常的に使っていると推計されます。若い人が使うイメージですが、今では利用者の3割以上が30代以上となっています。

利用しているのは個人だけではありません。沖縄県浦添市では、市長自らが動画に出演し、町をPR。自治体だけではなく、企業も情報発信などに活用しています

こうした中、アメリカ議会下院外交委員会は1日、アメリカ国内でTikTokの利用を禁じる法案を賛成多数で可決しました。アメリカやカナダ、EUは2月以降、政府職員が仕事で使う端末でのTikTokの使用の禁止を次々と発表していますが、今回の法案は民間人も含めて利用を全面的に禁止するものです。

この法案を提案したのは野党・共和党のマコール外交委員長です。 「TikTokは国家安全保障上の脅威だ。スマホなどにTikTokのアプリをダウンロードしている人は個人情報を中国共産党に知られてしまう。言うなればスマホの中の偵察気球だ」と中国から飛来した偵察気球に例え、個人情報が流出すると訴えたのです。

この法案の審議の最中には「中国は敵ではない」と、傍聴席から訴える人が審議を遮る場面もありました。法案は外交委員会では可決されたものの、成立には上下両院の本会議での可決とバイデン大統領の署名が必要で、今後成立するかは不透明ですが、成立すれば1億人を超える利用者に影響が出るため審議の行方に関心が集まっています。

一方、このアメリカ議会の動きに中国政府は反発。

「中国はアメリカが国家安全保障の概念を広げ、国家権力を乱用し、他国の企業を不当に抑圧することに断固反対する」(中国外務省の毛寧報道官)

TikTokの運営会社は、「TikTokの禁止は、世界の10億人を超える利用者にアメリカの文化や価値観を広めることを禁止するものだ。性急な法案の前進に失望している」とコメントを発表しました。また1日には18歳未満の利用者の動画視聴時間を1日60分に制限する機能を発表。アプリの健全性をアピールしました。

大学内で「TikTok禁止」も 全面禁止なら米国民は?

そもそもTikTokを使うとどんな情報が漏れる可能性があるのでしょうか。

中国情勢に詳しいジャーナリストの高口康太さんは「非常に大量の情報を収集できるサービス。名前や電話番号が分かることに加え、連絡帳を同期させる機能があり、位置情報も把握できる」と話します。

さらに「アップロードされた動画の中から、どういうところに住んでいて、どういう生活をしていて、どういう学校に通っているかなど膨大な情報になる」と利用者の投稿内容や閲覧履歴からその人の趣味や考え方もわかるといいます。

アメリカメディアは、TikTokの運営会社の社員がこうして集まる情報のうち、フォーブス誌などの記者の個人情報を不正に入手したと報じ、疑念が強まっています。

さらに専門家は、中国では法律で、企業は国の安全保障のために政府に協力する必要があると定められていることも情報漏洩リスクに繋がると指摘します。

「私が中国企業だったとして、政府から『データを出せ』と言われたときに拒むことはできるかというと難しい。初めてアメリカで大ヒットしている外国のSNSが出てきた。しかもそれが中国の企業のものだったとことが不安を招いている」(高口康太さん)

これだけ普及したアプリの全面禁止。自由を重んじるアメリカ国民はどう感じているのでしょうか?

実はアメリカでは既に州政府によるTikTokの排除が始まっています。そのうちの一つ、テキサス州。テキサス大学オースティン校では1月から学校内でTikTokの使用が禁じられました。この大学に通うアダム・グエンさんは「去年12月にテキサス州知事がTikTokを州から排除する命令を出した。その後、私たちの大学も排除を始めたと知らされた」と話します。

大学からの通知には「テキサス州の知事の命令に従い、校内のWi-Fiに繋いでいるときはTikTokにアクセスできなくなる」と書かれていました。グエンさんは自分が使えるアプリを自治体や大学が制限することに懸念を抱きます。

「TikTokにはセキュリティー上の問題がたくさんあるとは思うが、大学が何かを排除するという前例を作るのは危険だ。何かを一つ排除すれば、いずれは他のものも排除できるようになる」

国が全面的な禁止を求める可能性があることについては「全面禁止となれば人々は複雑な心境になるだろう。とても喜ぶ人もいれば喜べない人もいるだろうし、賛否両論になるだろうが一般人がどちらに傾くかはわからない」といいます

日本で全面禁止の可能性は?

TikTok全面禁止の流れは日本にも来るのでしょうか。

2日、松野官房長官は「今後も海外の動向の把握に努めるとともに、必要に応じて適切な対応を行っていくことが重要と認識している」と話しました。

自民党でデジタル分野の規制を検討するルール形成戦略議員連盟会長の甘利明前幹事長は、政府関係者の利用制限は必要としつつも全面禁止には慎重になるべきだとします。

「どこの国が制限したからと、それに引っ張られてやるなど、情緒論にならないで冷静に、科学的知見によってリスクを分析していく、解析をしていく、管理していくことが必要」

その上で「政治的に極めて緊張関係にあるような国にデータが行った場合にどう使われるかわからないというリスクがある。リスク情報を先進国間で共有すべき」と話しました。

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