急な発表「トヨタEV優先」の作戦、世界はどう見るか?

急な発表「トヨタEV優先」の作戦、世界はどう見るか?

2月13日、トヨタが日本、いや世界にとって重大な発表をした。東京の某名門ホテルでトヨタ次期社長・佐藤恒治(53)は「“従来とは異なるアプローチ”で電気自動車(EV)の開発を加速していく」と表明した。つまり、EV優先の作戦にシフトする。「EVファースト」だという佐藤氏に対して、全世界は大きな拍手を送った。

それは、4月1日に会長に代わる豊田章男現社長がずっと言ってきたポリシーから一変したからだ。

例えば、2020年の自工会の会議でも章男社長は「電気自動車化ばかりを急ぐべきではない」、「電気自動車開発よりもハイブリッド車のさらなる普及を優先する」と主張していた。5年以上前から「電気自動車ではなく、電動化(ハイブリッド、PHEV、燃料電池車、EVを含む)の開発を加速させるべき」とか、「EVを増やすだけではカーボンニュートラルは実現不可能」だと言ってきたのだ。

だから、佐藤氏の発言は180度の方向転換になる。1997年に初ハイブリッドのプリウス以来、26年間ずっとハイブリッド車優先戦略を守ってきたトヨタがついに本格的な変身を始める。佐藤次期社長の「EVファースト」のコメントは世界の自動車業界に大きな波紋を起こした。

多くの海外のメディアは気合を入れてこのビッグニューズを伝えたが、「しかし───」と佐藤氏は言い直した。「これは現在の戦略を大きく変えるものではなく、トヨタはカーボンニュートラルを目指すポリシーを掲げて、さまざまな技術開発に引き続き注力していく」ことを強調した。

では、海外では、このニュースはどう受け止められたか? 米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は「トヨタはEV作戦へのシフトを加速させる」と書いた。英国の有力誌「オートカー」は、「新社長のもとでEV優先の作戦を採用する」と伝えている。米誌「カー&ドライバー」は、「レクサスの社長がトヨタのEV優先改革プランのリーダーに抜擢される」と言っている。また電気自動車界の有力サイト「insideEVs」は、「トヨタ新CEOの最重要課題はEV戦略の再構築」と伝えている。

トヨタがやってきた選択肢のある戦略

一見、トヨタがついに世界の動き、というか傾向を認め、方向を変えたように見える。でも、この話はそう単純ではない。

ロイター通信によると、2022年6月に、トヨタの社長は日本政府に対して、ハイブリッド車を電気自動車と同等に支持することを明確にするよう働きかけ、さもなければ自動車業界の支持を失うことになる、と、ある幹部議員が与党会議で発言した。

前年年7月には、ニューヨーク・タイムズ紙が、「トヨタの役員は、ここ数週間、密室でアメリカ議会指導者と会談しEVへの移行を奨励するために数十億ドルを支出するバイデン政権の計画に反対を唱えている」と伝え、同じ時期に、アメリカの「ザ・ヴァージ」という有力サイトが、「世界最大の自動車メーカー、トヨタはワシントンDCの政策立案者たちに対して、EVへの移行を促す声に抵抗するようロビー活動を展開している」と伝えた。

トヨタ幹部は同年8月ラスベガスで、「EVだけではなく、プリウスのようなハイブリッド車といった多様な選択肢を提供すべきだ」と表明し、一貫した姿勢を見せていた。

■トヨタがEVを「遅らせようとした」意味

こういう世界的なEVへのシフトを「遅らせようとした」として、トヨタは欧米ではかなりひんしゅくを買った。だから今回の佐藤氏の「EVファースト」発表は、確かに正当な新しい作戦であり、今までのトヨタの「EVに反発する」ポリシーに対するダメージ・コントロールともいえる。

米サイト「モンローメ・ライブ」では、このタイミングで「EVファースト」を主張する佐藤次期社長への移行を発表することは、ハイブリッドを優先しEVへのシフトを加速しなかった豊田社長の顔を潰さないための作戦だと言っている。確かにそうも見える。

佐藤新社長の「真意」

だが、トヨタが単に自分が出遅れたことだけを理由に、世界の大きなシフトにブレーキをかけるだろうか? 確かに、トヨタの収益のベースはハイブリッドとPHEVなので、自社がEVで追いつくまで、業界の波を抑えたいとは言えるだろう。

いっぽうで、トヨタは、「世界のマーケットですべてのユーザーがEV車を欲しがっているわけではない」と読んでいる。例えれば、シェフがテーブルに料理を一品出しただけで、みんなが満足するわけではない。

また、日本国内で自動車生産に携わる550万人余の仕事を保持したいのも、大きな理由だ。日本では自動車産業が15兆円納税し、他の産業に関連して経済を引っ張っている。国内で10人に1人は、自動車関連の仕事についている。自動車は2万個以上のパーツを要するが、EV化によって必要なパーツを作る職を失う人が確実にいることは無視することはできない問題だ。

EV化には、インフラや電力、電池の開発も伴う。その中で、EV化を急ぐことだけが「カーボン・ニュートラルな世界の実現」への道だとは言い難い。佐藤次期社長の「今回のEVファーストの話は、これまでの戦略を大きく変えるものではない」との発言は、「メイン料理はもちろんだが、副菜にもさらに力を注ぐ」という意味だろうと解釈している。

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