全国で遭難相次ぐ「バックカントリー」とは…「スキー場のコース外滑走とは別物」 ツアーガイドに聞いた

全国で遭難相次ぐ「バックカントリー」とは…「スキー場のコース外滑走とは別物」 ツアーガイドに聞いた

■白馬乗鞍岳で雪崩 外国人のプロスキーヤ―ら2人死亡

全国でバックカントリーでの遭難が相次ぎ、連日、ニュース記事となっている。そもそも、「バックカントリー」とは何なのか。ツアーガイドに聞いた。

長野県小谷村では1月下旬、北アルプスの白馬乗鞍岳でバックカントリー中の外国人4人が雪崩に巻き込まれ、米国のプロスキーヤーら2人が死亡、また野沢温泉村でも新潟県の男性が雪崩により死亡した。

今季は国内の愛好者はもちろん、新型コロナの入国規制緩和に伴い外国人のスキーヤーやボーダーも戻り、多くの人がバックカントリーを楽しむ一方で、全国各地で遭難が相次いでいる。

■バックカントリーとは

いわゆるバックカントリースキー(スノーボード含む)は、整備された場所を滑るゲレンデスキーとは異なり、手つかずの斜面を自由に滑れるのが魅力だ。

ただ、「ふかふかの新雪」や「自然の山」を滑るバックカントリーの魅力は、一方で雪崩の発生や滑落、立木への衝突、転倒時などに深い雪に身体が埋まりかねないといった危険と背中合わせでもある。

ツアーのガイドなどを行うEpic Japanの代表で日本バックカントリースキーガイド協会員の中江明子さん(安曇野市在住)にお話を伺った。

中江さんによると、「冬山に限らず、夏山や砂漠も『バックカントリー』ということになります」とし、『バックカントリースキー』の定義は「管理されていない場所をスキーやスノーボードで滑る行為」だという。

【参考】スキー場の管理区域外を滑ることは共通だが、リフトなどを使ってほとんど歩かずにバックカントリーを滑る場合を「サイドカントリースキー」と呼んで区別する考え方も一部にある。

ただ、中江さんは「あくまでもバックカントリースキーの一形態であり間違った気軽なイメージを発信しがちなので関係者は使わないようにしている」そうである。

■中江さん「決してゲレンデの延長では無いことを肝に銘じて」

遭難があった際など、バックカントリースキーは「禁止されている場所に勝手に入った」といった誤解や非難を受けることも多いが、中江さんによると「バックカントリースキーはそもそもスキー場の管理区域外の話であり、「私有地でもない限り禁止されていません」とし、「『バックカントリースキー』とスキー場の管理区域内の立ち入り禁止の場所を故意に滑る『コース外滑走』は別物です。後者は管理者であるスキー場のルールを破る行為です」と強調する。

【参考】直近では野沢温泉スキー場で1月28日に2件の遭難が発生し2人が死亡。このうち奈良県の男性は管理区域内の立ち入り禁止区域で体が雪に埋まった状態で発見された。新潟県の男性は管理区域外で雪崩に巻き込まれた。

スキー場では、管理区域内で雪崩を誘発したり衝突の危険などがある場所を立ち入り禁止区域に設定してロープを張ったり看板を立てたりしている。進入した場合はリフト券の没収やスキー場からの退去を求める場合もあるという。

また管理区域外については冬山登山と同等の扱い。毛無山の山頂近くに設置した2か所のアクセスポイントからのみ入ることが出来、あくまで自己責任での判断を求めている。

自然を相手にしている以上、アウトドアスポーツにおいて全てのリスクを排除することは出来ない。

その点を認識した上で、より安全にバックカントリーを楽しむためにはどんなことが必要なのか。

中江さんは「バックカントリーには滑走技術とは別に登山技術はもちろんのこと、天候や地形の判断、セルフレスキューの方法など様々な知識や用具も必要で、決してゲレンデの延長では無いことを肝に銘じて欲しい」と強調する。

「各種団体が主催する講習会やきちんと資格を持ったガイドが開催するツアーに参加して少しづつステップアップして欲しい」ということだ。

■県警山岳救助隊「リスクに対する認識が甘い」

こうした中、2月1日、野沢温泉村で警察と消防、地元の遭難対策協議会による初めての冬山合同訓練が行われた。

斜面で雪崩に巻き込まれた人を探す訓練では、電波を送受信して遭難者の位置を特定するビーコンの使い方を県警の山岳遭難救助隊が遭対協のメンバーに説明。

おおよその位置が判明すると、雪にゾンデ棒を差して埋まった場所を特定し掘り出す訓練を行い、参加者は「スピードが何より大事なことがわかった」などと話していた。

訓練に参加した長野県警山岳救助隊の岸本俊朗隊長は、北ア白馬乗鞍岳の遭難でも現場で救助にあたっていた。

岸本隊長は「当時、遭難現場を確認しているときに全く装備を持たずに滑り出すグループもいた。興味を持ってチャレンジする方は多いが、リスクに対する認識が甘い」「雪崩に巻き込まれた際に位置を特定するビーコンや、掘り出すためのシャベルといった道具は最低限そろえて欲しい」と話す。

そして「バックカントリーを楽しむ人は事前の下調べ、登山計画書の提出、しっかりとした準備をして入山してもらいたい」と呼び掛けていた。

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