中国が「ゼロコロナ政策」をやめると、200万人を超える死者が出る…大混乱を招く中国産ワクチンの実態
習近平が突如踏み切った措置
中国政府がゼロコロナ政策を解除すれば、130万から210万の死者が出る恐れがある。
英国の調査会社エアフィニティが先月末に発した警鐘を無視する形で、中国がゼロコロナ政策の緩和に踏み切った。市民からの抗議が激化していたことに対応して、3期目をスタートさせたばかりの習近平体制が突如、踏み切った措置である。同体制は落ち込んでいた経済の回復にも自信を見せており、米金融機関の中には経済見通しを修正するエコノミストも出ている。
しかし、北京ではこの緩和によって大規模なPCR検査を廃止したため、統計に表れない形で市中感染が拡大しているとの不安が広がっているほか、広東省広州市ではすでに発熱外来を受診する人の大半が陽性になったと報じられている。
加えて、中国が重用してきた国産ワクチンは効果が乏しいばかりか、そもそも接種率が低い。徹底した行動制限を3年にわたってとってきたため、他国と比べて感染した人の割合が極端に少ないという事情もある。こうしたことから、中国では他国に比べて免疫が乏しいとみられているのだ。
果たして、中国は、いきなり始めたゼロコロナ対策の緩和によって、ウイズ・コロナ政策をとってきた西側諸国のような状態にソフトランディングできるのか。それとも場当たり的な対応が災いして新たな大混乱に陥るのか、大きな岐路に立っている。そして、その影響には、我々日本人も無関心ではいられない。
端緒は、イスラム教徒への弾圧が続くとされる新疆ウイグル自治区ウルムチで11月24日に発生した高層住宅の火災だった。中国は、ここでも厳しいゼロコロナ政策をとり、感染対策で住宅を封鎖していたため、住民は逃げ場がなかったのだ。中国国営の新華社通信は10人が、SNSは40人前後が死亡したと伝えた。
「白紙」を掲げる抗議
この悲惨な火災をきっかけに、中国の市民の間でゼロコロナ政策への抗議活動に火が付いた。抗議集会は、北京、上海、成都、武漢、広州、ウルムチといった中国国内の主要都市にとどまらず、欧米や日本でも何度も開かれた。多くの参加者は、言論統制への抗議の意味も示す「白紙」を掲げて、習近平体制のコロナ政策を批判したのである。
カタールのドーハで開催されたサッカーのワールドカップで、各国サポーターがマスクを外して観戦している様子が放映され、ゼロコロナ政策の特異性への反発が増幅されたとの見方もあった。抗議の背景には、ゼロコロナ政策の不自由さにとどまらず、中国共産党や習近平・国家主席の統治への不満もあり、参加者の多くが両者に退陣を迫る声を挙げ、当局に拘束される者が後を絶たなかった。
「単に力で抑え込むだけだろう」「共産党や政権の威信を損ねるので、ゼロコロナ政策の緩和はあり得ない」といった西側メディアの虚を突くかのように、習近平体制は迅速に規制緩和に動いた。
11月29日の記者会見で、中国外務省の趙立堅副報道局長は「中国の感染症対策が科学的で効果的であることが証明された」と強調。新華社も「ゼロコロナの総方針は揺らぐことなく貫徹する」という論評記事を配信した。しかし、同じ日の記者会見で、国家衛生健康委員会の担当者は「長期間の封鎖は生産や生活への影響が大きく、改める必要がある」と発言した。流れは、「改める」方へ動いたのである。
そして、12月7日。ついに新たなゼロコロナ政策の本格的な緩和に踏み切った。3期目の体制を発足させたばかりの習近平体制が、市民らの抗議を放置すれば政権の足もとが揺らぎかねないと判断して、堪えきれずに踏み切ったものとされている。
PCR検査も大幅に緩和
緩和の中身としては、強制的に施設で隔離されていたコロナ感染者について、今後は無症状や軽症ならば自宅での隔離を認めた。濃厚接触者の隔離期間は8日間から5日間に短縮。感染者が発生した際に、地域全体や団地ごと「高リスク地域」と指定することを禁じ、封鎖する対象を建物や住戸に限定。あわせて、人の移動の制限や、工場、企業の操業停止といった対応も禁止した。
PCR検査についても、流行地域で全住民を実施対象とする措置を廃止した。今後は、検査対象を絞り込み、回数も減らす、とした。
公共施設や商業施設に入る際にも、PCR検査の陰性証明などの提示を求めていたが、不要とした。中国国内で地域をまたいで移動する際に求めてきた陰性証明の提示義務を無くし、目的地に到着した際に課していたPCR検査も取りやめた。
これらの新施策は、もともと中央政府の方針に沿っておらず、地方政府が独断で過剰な対応をしていたものだという公式説明がなされた点は、責任を地方政府に押し付けるものであり、いかにも中国らしいと言えば中国らしいのかもしれない。
緩和の翌々日(12月9日)。中国の李克強首相は、世界銀行や国際通貨基金(IMF)など6つの国際機関トップとの座談会後の記者会見で「ゼロコロナ政策の緩和策で、中国の経済成長率は高まり続けるだろう」と胸を張った。
今後について、「さらに物流を改善し、サプライチェーン(供給網)の安全を保障する」「海外との行き来を便利にして人材の往来を増やす」などと述べ、一段と緩和を推し進めていく考えも明らかにした。
金融市場関係者の間では、個人消費の回復や西側企業の現地工場の操業停止などがなくなり、景気全体の回復に繋がると期待する向きもある。
しかし、こうした楽観論に基づく期待は、あまりにも気の早い見方と言わざるを得ないだろう。実際には、雇用が回復して、実需として消費が持ち直し、物価の押し上げに達するには一定の時間が必要だ。
むしろ、この段階で気掛かりなのは、感染拡大の兆しがあった中で、ゼロコロナ政策の緩和を急いだことである。
国家衛生健康委員会の8日の発表によると、中国本土の新規感染者は約1万6600人と、11月下旬のピーク(約4万人)から急減した。ところが、この原因について、同国内では、PCR検査の対象縮小で感染者が減ったのでないかと懸念する声が多いのだ。
その一方で、北京や上海といった都市では、個人が自身で検査するのに使う抗原検査キットや風邪薬の販売が急増しており、品切れも珍しくないと伝えられている。中国国民に不安に陥る人が多いだけでなく、自身で感染を疑う人が増えているのではないかというのである。
何より懸念せざるを得ないのは、中国製ワクチンの性能の低さなどに起因する中国人の免疫の問題だ。この点を懸念した米国のイエレン財務長官は先月14日、G20(20か国・地域)サミットでバイデン大統領に随行した際、報道陣向けに発言し、中国に対して、より効果的なワクチンプログラムを採用するよう呼び掛けた。米国が中国に「協力する用意がある」としたうえで、「中国自身のためにも、全世界のためにも、パンデミックに効果的に対処できるようになってほしい」と、訴えたのである。
イエレン長官の趣旨は、米国製のmRNAワクチンを使えば、中国はコロナの感染拡大と景気後退を回避でき、世界に悪影響を及ぼす恐れがなくなるというもので、中国が効果の乏しい国産ワクチンに拘泥して外国製ワクチンの輸入を拒んでいることの是正を迫ったというワケである。
繰り返すが、冒頭で紹介したエアフィニティのリポートは、香港におけるオミクロン株の感染状況を参考に、免疫が乏しいことを勘案せずに、中国がゼロコロナ政策を廃止すると、130万人から210万人の人が死亡するリスクがあると指摘している。
万が一にでも、そんな事態が現実に起きれば、中国社会は大混乱に陥り、中国経済は回復どころか大幅な減速に見舞われることになりかねない。当然、世界経済も大きな痛手を蒙ることになる。
