仮想空間「メタバース」でセクハラ横行…臨場感あり「とにかく気持ち悪い」

仮想空間「メタバース」でセクハラ横行…臨場感あり「とにかく気持ち悪い」

 インターネット上の仮想空間「メタバース」で、ハラスメントが横行している。有志の調査では、利用者の半数が被害に遭ったことがあると答えた。メタバース市場は2026年度に1兆円を超えるとの試算もあり、子どもたちが利用する機会も増える。対策は急務だ。

 「自分のアバターを執拗(しつよう)に触られたり、つきまとわれたり。1日に1度は迷惑行為に遭遇する」

 そう話すのは、約10か月前から日本企業が運営するメタバースを利用する40歳代の男性だ。気軽に多くの人と交流できることに面白さを感じ、女性型のアバターを使って毎日数時間利用している。VRゴーグルを使っているため現実世界に近い臨場感があり、「とにかく気持ちが悪い」と訴える。

 米企業が運営する世界最大規模のメタバースで楽しむ20歳代の男性も、「卑わいな言葉をぶつけられたり、自分のアバターの胸やおなかを触られたりしたことは何度もある」と話し、「正直、不快だ」と漏らす。

 メタバースでのハラスメントに関する総務省や経済産業省、デジタル庁の調査はない。しかし、利用者の間で実態をつかもうとする動きも出ている。

 3月の出版以来、6刷2万4000部を重ねている「メタバース進化論」(技術評論社)の著者「バーチャル美少女ねむ」さんと、スイスの人類学者は9月、ネット上でアンケート調査をした。

 その結果、全回答者(876人)の約半数が「何らかのハラスメントを受けたことがある」と報告した。

 回答の8割以上を占める日本の利用者では55・3%が「ある」と回答。内容は「性的な言葉」(60・1%)や「性的に触られる」(40・9%)などで、「悪口」(43・6%)なども目立った。「他人が何らかのハラスメントを受けたのを見たことがある」と答えた人も66・4%に上った。

 ハラスメントを受けた理由は「女性型アバターでプレーしているため」と答える人が多く、52・8%。日常生活に及ぼした影響については、27%が「軽度」、9・5%が「中程度」、3・6%が「重い」、3・9%が「極めて重い」と答えた。

 メタバース事業に参入する企業は増え、利用者は急速に広がる。

 市場調査会社「矢野経済研究所」(東京)によると、2021年度の国内のメタバース市場規模は744億円。22年度には1825億円に伸び、26年度には1兆円を超えると予測する。

 総務省も8月、利用上の課題を整理する有識者会議をスタートした。

 メンバーの一人で中央大国際情報学部の岡嶋裕史教授はハラスメントを「重要な検討課題の一つ」とする。「SNSでは中傷されて自殺したケースもある。メタバースでも同じことが起きる可能性は十分にある」と懸念する。

 一方で、メタバースの利活用を促すためには「法律で規制するのではなく、サービスを提供するプラットフォーム側が制御するのが望ましい」と指摘する。

 プラットフォーム側も、特定のアバターを近づけないようにする「個人境界線」などの機能を設ける対策を進めている。

 岡嶋教授は「環境整備を急ぐとともに、利用者が正しい知識を身につけていくことが重要だ。アバターの向こうには生身の人間がいることを考えて、使ってほしい」と話す。

◆メタバース=ネット上に作られた3次元的な空間。専用のVR(仮想現実)ゴーグルを装着するなどして参加し、自分の分身の「アバター」を動かして、ほかの利用者と言葉を交わしたり、商品を売買したりできる。アバターの外見は自由にデザインでき、顔や性別は好きに選べ、そもそも人型である必要もない。

企業・自治体が次々参入

 メタバースは、「Meta(超越した)」と「Universe(世界、宇宙)」を組み合わせた造語で、ネットに接続したコンピューターのソフトやスマホアプリで参加する空間を選ぶことができる。

 かつては、一部の愛好者の空間ととらえられがちだった。しかし、米IT企業フェイスブックが社名を「メタ」に変更するなどしたため、一気に注目が集まった。

 国内でもANAホールディングスやNTTドコモなどの企業のほか、兵庫県養父(やぶ)市といった自治体が次々に参入している。

 教育分野でも東京大が9月、「メタバース工学部」を開設し、メタバース内に再現した「安田講堂」で式典を行い、教員や受講者らがアバターで参加した。

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