ソニーが売却する電池事業、大赤字でも中核だった理由
ソニーが昨春まで、「経営資源を集中させて強化する」(鈴木智之副社長)と宣言していた電池事業を、来年3月をメドに電子部品の村田製作所に売却する方針を決めた。
数ある事業領域の中で、中核と位置付けていたはずだった電池事業を一体なぜ今、売却するのか。理由は簡単で、赤字体質から抜け出せていないからだ。
2010~15年度までの6年間で、営業黒字だったのは14年度の1回だけ。13年度と15年度には、それぞれ300億円超の減損損失を計上している。
サムスン電子をはじめ、韓国、中国勢が多額の設備投資を武器に、リチウムイオン電池で価格攻勢を仕掛ける中で、最近では主戦場のスマートフォン分野で失注が続き、セットメーカーからほぼ相手にしてもらえないような状態に陥っていた。
そもそも、そんな苦境にあった事業を中核とわざわざうたっていたこと自体に首をかしげたくなるが、実はそこには複雑な経緯がある。
村田製作所、ソニー電池事業買収を完了
村田製作所は2017年9月1日、ソニーグループの電池事業の買収が完了したと発表した。
村田製作所とソニーは、2016年10月31日にソニーの電池事業を175億円で村田製作所が取得することで最終合意していた。当初、2017年春の譲渡完了を目指していたが、関係当局の審査状況から日程を変更し、9月1日の譲渡完了となった。
譲渡は、2016年12月9日にソニーが設立し、2017年9月1日付で譲渡対象事業を承継した東北村田製作所(福島県郡山市)を村田製作所が取得する形で実施された。2016年10月31日の最終合意時点では、ソニーから村田製作所に転籍する従業員数は8500人としていた。
村田製作所は買収完了に伴い「ソニーグループの培ってきた電池事業の技術力と事業経験を承継し、注力市場であるエネルギー分野の中核事業にすえ、(中期的な)経営目標の実現に向けた取り組みを実行していく」としている。
村田製社長、赤字覚悟で電池事業の投資加速へ-部品にブランドを
村田製作所の中島規巨社長は、足元で需要好調のリチウムイオン電池事業について、積極的な投資を加速する考えを明らかにした。新型コロナウイルスの感染拡大による物流コストの高騰もあり、同事業の今期(2022年3月期)黒字化は難しい状況とみる。
中島社長は7日のインタビューで、「この状況で投資しないとマイノリティーで終わってしまう。当面のPL(損益計算書)は度外視して投資している」と話した。新中期計画では25年3月期までの3年間で6400億円の設備投資を計画し、電池事業は主力の積層セラミックコンデンサー(MLCC)に次ぐ規模になるとした。
同社の電池事業は、17年9月にソニーグループから買収して以降、投資を抑えたPL重視の運営を行っていた。だが、得意とする電動工具や掃除機などパワーツール向けの需要が想定以上に拡大し、リチウムイオン電池は供給が追い付かない。
中島社長は、こうした状況を踏まえ、今期の電池事業は「黒字化の約束をしているが、多分謝ることになる」と話した。平常時なら輸送にコンテナ船を使うが、いまは空輸に頼らざるを得ず、予想外のコスト増になっている。物流が正常化すれば、来期には「健全な状況に持っていけると思う」という。
一方、中島社長はブランド価値を高めることも今後の課題だと話す。エレクトロニクス業界の黒子という意識が社内に根強く、外部の認知度もまだ低いと分析。米インテルを引き合いに「部品にブランドがあってもいい」と持論を展開した。
10日の東京株式市場で村田製作所の株価は4日続伸し、一時前日比1.4%高の8852円と、11月24日以来の高値で取引された。
村田製、24年度までの3年間で戦略投資枠2300億円を設定-新中計
新中計では、2300億円の戦略投資枠が新たに加わった。環境投資のほか、高周波デバイスやセンサー製品で差異化を図れる技術の獲得、今後強化していくソリューションビジネスで強みを持った企業との合併・買収(M&A)などが念頭に置かれているという。
村田製は11月、25年までの中期と30年までの長期ビジョンを公表。事業の構成を、コンポーネント、デバイス・モジュール、ソリューションを含む新しいビジネスモデルの3層のポートフォリオに分けて説明した。
