英内相が突然の辞任、議会では投票で騒動も トラス政権の混乱に拍車

イギリスのスエラ・ブラヴァマン内相が19日、突然の辞任を発表した。政府のデータ保護ルールを破ったためとされるが、辞表ではリズ・トラス首相が率いる政権を、「主要な公約」を破ったなどと強く批判した。

英議会ではこの日さらに、ガス採掘のフラッキング(水圧破砕法)をめぐる投票で、与党・保守党の一部議員が、政府の意向に沿った投票を強要された疑惑も浮上。減税政策をめぐる批判から始まった英政界の混乱に拍車がかかり、トラス首相の今後がさらに不透明になった。

トラス氏は先に、自らが打ち出した減税政策を含む「ミニ・バジェット」(小さな予算)が内外で批判されたのを受け、財務相をクワジ・クワーテング氏からジェレミー・ハント氏に交代させた。ハント新財務相は、混乱した市場を安定させるため、減税策のほとんどを撤回した

19日には毎週水曜日恒例の首相質疑が行われたが、トラス首相はこれを無事に乗り越えた。

しかしその後、ブラヴァマン氏が政府のデータ保護ルールを破ったという一報を受けたトラス氏は、予定をキャンセルしてブラヴァマン氏と会談。関係筋によると、ブラヴァマン氏は政府資料を本来受け取る権限のない人物に送ったという。

辞表の中でブラヴァマン氏は、「技術的なルール違反があった」ことを認め、「私は間違いを犯した。私は責任を認め、辞任する」とした。

一方で同氏は、政府が政策面での「主要な公約」を破り、移民流入数を減らせなかったなどとして怒りを表明した。

ブラヴァマン氏は、第2次世界大戦以降のイギリスで最も在任期間の短い内相となった。クワーテング氏の解任から1週間を待たず、主要閣僚が2人いなくなった格好だ。

後任にはグラント・シャップス前運輸相が任命された。シャップス氏は6週間前、トラス政権発足時に内閣から外されていた。

投票の状況は「めちゃくちゃ」

英下院ではこの日、最大野党・労働党が提出したフラッキングに関する採決が行われた。可決されれば、政府が推進するフラッキング再開計画に、議員が口をはさむことができるようになる。

多くの保守党議員は、フラッキング再開に反対しているものの、党からはこの投票が首相と政府への信任投票と目されると伝えられていた。そのため、政府の意向に反する投票を行えば、党から追放される可能性があった。

チャールズ・ウォーカー議員はBBCに対し、投票の状況は「めちゃくちゃ」だったと語った。

ウォーカー議員は怒りをあらわに、「今晩のようなことは見たことがない」と述べ、政府は「後戻りができない」と指摘。その上で、「首相にはすぐにでも辞任してもらいたい」と話した。

労働党のクリス・ブライアント議員は、一部の保守党議員が無理やり投票場に連れていかれ、政府を支持するよう説得されていたと主張した。

アナ・マクモリン議員もツイッターに、ある保守党議員が「涙を浮かべながら無理やり」投票場に連れていかれるのを見たと投稿した。

一方、保守党のアレックス・スタッフォード議員は、投票を無理強いされていたとの指摘が出ていることに対し、フラッキングに反対の自らの立場をめぐって「率直で断固とした会話」があっただけだと述べた。

ビジネス相を務めるジェイコブ・リース=モグ議員は、この件を脅迫だとは位置付けないと語った。

一連の混乱の中、一時は保守党内の党議拘束をつかさどるウェンディー・モートン院内総務とクレイグ・ウィタカー副総務が辞任するとの憶測も流れたが、これは後に否定された。

トラス氏への圧力高まる

この日には、トラス首相の上級顧問の一人が、政府全体の規範を担当する公正性・倫理チームによる正式調査の中で、停職処分を受けたことが明らかになった。

また、先週末に首相官邸筋が行った記者会見の中で、サジド・ジャビド前保健相を中傷する発言などがあったことについても、保守党議員から怒りの声が上がっている。

かつてはトラス氏を支持していた元ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)相のデイヴィッド・フロスト卿はデイリー・テレグラフ紙への寄稿で、首相に辞任を促した。

寄稿の中でフロスト卿は、首相は「自身がそもそも提唱していたプログラムも、2019年(総選挙)でのマニフェストも実行していない」と指摘。

「これには委任のかけらもない。トラス政権が誰もが想像する以上にひどく物事を台無しにしたために起こっているだけだ。(中略)このままではだめだ」

<分析> クリス・メイソン政治編集長

この混乱を瓶に詰めて埋めることは不可能に近いと思われる。崩壊は避けられないし、おそらく差し迫っているように感じられる。

機能不全は深刻で、リズ・トラス氏が首相を務める限り平穏な状況は訪れないと思われるほど、保守党員の怒りは根深い。

では、トラス首相は次にどう動けるのだろうか?

自らの政権は終わったと決断することもできる。しかし、トラス氏が近くそうする兆しはない。

保守党から引導を渡される可能性もある。党内の不満は非常に大きくなっている。

あるいは、政権を握り続けようとすることもできるだろう。

トラス氏をなお支持する人々は、次の首相を迅速に見つけるのは難しく、もし見つけたとしても、国中の人にばかげていると思われるだろうと指摘している。

こうした中で、総選挙を求める声が高まっている。

すでに危機に瀕している新政府の余命は、日ごとに短くなっている。

混乱もさらに深まるかもしれない。

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