業界1位→4位「かっぱ寿司」凋落した2回の転機、会社が抱える問題と業界襲う構造問題という“ダブルパンチ”

業界1位→4位「かっぱ寿司」凋落した2回の転機、会社が抱える問題と業界襲う構造問題という“ダブルパンチ”

 9月30日、外食業界に衝撃が走った。回転寿司チェーン「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト社長、田邊公己氏が、不正競争防止法違反疑いで警視庁に逮捕されたのだ。田邊氏にかけられた嫌疑は、ライバルチェーン「はま寿司」の食材の使用量や原価、扱った食材の取引先や価格といった営業秘密を不正に持ち出し、社内の複数の社員に共有していたことだ。

 2014年に飲食大手コロワイドの傘下になって以来、カッパ・クリエイトでは5回の社長交代があった。5回目の社長交代があったのは2021年2月。そのとき執行役員副社長から代表取締役社長に就任したのが田邊氏に他ならない。

 同氏が「かっぱ寿司」のライバルである「はま寿司」の取締役を務めた経歴を持つことは当時から業界内で話題となっており、それが今回の事件の遠因にもなっている。

■かつては業界ナンバーワンだった

 かっぱ寿司といえば「スシロー」、「くら寿司」、「はま寿司」と合わせて4大チェーンと呼ばれ、かつては業界トップに君臨するブランドだった。しかし、ここ最近は業界4番手のポジションに甘んじている。

 なぜ、かっぱ寿司は凋落したのだろうか。その原因を探っていくと、ここ最近相次いでいる、回転寿司業界の不祥事ともつながってくる。かっぱ寿司の歩みを振り返りながら、回転寿司業界が抱える構造的な問題に迫っていく。

 カッパ・クリエイトは1973年に長野県で創業した。創業当時、水流に寿司桶を流しており、それがカッパの皿のように見えるとのことで、かっぱ寿司というブランド名になったという由来を持つ。創業から今日までの間で、同社にはいくつかの転機があった。中でも、2011年と2014年の2回の転機が及ぼすインパクトはとても大きい。

 2011年まで、回転寿司業界のトップランナーはかっぱ寿司だった。しかし、同年、回転寿司売上日本一の座をスシローに奪われてしまう。当時、いわゆる100円寿司が台頭していた。

 その中でかっぱ寿司は食材への投資を惜しみ、低価格にもかかわらず高いクオリティを誇る、100円寿司のメニュー提案に苦戦。その結果、スシローだけではなく、くら寿司、はま寿司にも抜かれてしまい、業界4位に転落してしまった。

 一方で、その頃、回転寿司のファミレス化も進んでいた。その急先鋒がくら寿司だろう。例えば、くら寿司のメニューには寿司はもちろん、ラーメンやうどん、うな丼、そしてたくさんの種類のデザートが並ぶ。ドリンクのクオリティも回転寿司とは思えないほど高く、まさにファミリーで楽しめるつくりになっている。

 この流れは他社も同様で、スシローなら「スシローカフェ部」を中心にスイーツに強く、はま寿司は「肉握り研究所」を設立して肉寿司に注力するなど、各社それぞれの特徴を明確に打ち出している。しかし、残念ながらかっぱ寿司には特徴らしい特徴がない。その原因が、2014年の転機と大きな関係を持つ。

■コロワイド傘下での迷走

 前述したように、2014年にかっぱ寿司はコロワイドの傘下に入っている。コロワイドの設立は1963年と、その歴史はかなり古い。しかし、業界内での存在感を高めたのは「甘太郎」という居酒屋チェーンをつくってからだ。

 1990年代後半にはモンテローザ、ワタミ、コロワイドの、いわゆる居酒屋新御三家として台頭。その勢いを受けて、2010年代には積極的なM &Aを進め、「フレッシュネスバーガー」や「牛角」、そして「かっぱ寿司」を傘下に収めるまでに成長した。それを牽引してきたのが、現代会長を務める蔵人金男氏だ。

 コロナ禍でも焼肉や寿司、ファストフードは、比較的堅調な企業が多かった。だが、「牛角」や「かっぱ寿司」「フレッシュネスバーガー」を傘下に持つコロワイドはむしろ苦戦。2023年3月期4~6月期の売上高は512億8200万円と前期比30.4%増加したものの、事業利益は1億5700万円と86.1%縮小と、今期予想に対する進捗は芳しくない。

 カッパ・クリエイト自体も2022年3月期決算で売上高は672億600万円だったものの、営業損益が21億1300万円と前年前期(15億7200万円)から赤字額が膨らんだ。

 つまり、コロワイドはコロナ禍で好調なジャンルの業態をうまくいかせていないのだ。特にかっぱ寿司に関しては、立て続けの社長交代が象徴するように、ブランド価値を上げるような明確な施策はなかっただろう。

 実際、ここ数年、かっぱ寿司が行った施策といえば、1皿50円や食べ放題など、価格に訴求したものが多い。あくまでも推測だが、ブランド価値の向上よりも、目先の売り上だけを重視していたのではないだろうか。もしそうだったら、今回はま寿司から持ち出したデータが、食材の使用量や原価、扱った食材の取引先や価格だったことも納得がいく。

■顧客体験向上に力を注ぐライバル

 一方で、回転ずし業界は価格ではなく、顧客体験価値の向上に力を注ぐ戦略が目立つ。分かりやすい例が、くら寿司の「ビッくらポン!」だ。「鬼滅の刃」や「ワンピース」などの人気アニメともコラボレーションし、集客装置として大きな存在感を放つ。

 また、スシローはDXの推進で他を圧倒している。セルフレジを全店に導入するとともに、自動土産ロッカーや自動案内システム、画像認識による自動会計システムなどを導入し、お客がストレスなく店舗をつかえる環境づくりを進めている。

 回転ずしのファミレス化と顧客体験価値の創造という2つの競争で、後塵を拝したかっぱ寿司。今後、上位との差は広がっていく可能性が大きい。その要因が100円寿司というビジネスモデルの限界にある。

 今年に入って円安が加速しており、歴史的な数字を記録している。それを受けて、さまざまな業界で値上げが相次ぐ。その波が回転ずし業界にも及び、スシローとくら寿司が税別で一皿100円の値付けをやめ、より高付加価値のメニュー提案に力を入れていくと発表した。その原因を一歩踏み込んで探っていくと、近年の日本の漁獲量激減にたどり着く。

 そもそも回転寿司のファミレス化が進んだ要因の1つに漁獲量の低下がある。漁獲量が減ると価格が上がるため、原価に跳ね返ってくる。それは一皿100円が主流の回転寿司チェーンにとって致命傷になりかねない。ただ、一匹の魚をさまざまに活用できたら、その分、原価を下げることが可能だ。そうした課題感からスタートし、ファミレス化につながった背景がある。

 なお、2019年に日本は1兆7404億円の水産物を輸入し、2873億円を輸出しているので、完全に輸入超過に陥っている。実際、食用魚介類の国内自給率は56%にとどまり、その多くを輸入に頼っているため円安の影響も受けやすい。サーモンやエビ、マグロなど、回転寿司で人気なメニューも実は輸入に頼っているケースが目立つ。

■日本の食用魚介類自給率は6割

 かつては日本の食用魚介類の自給率は100%を超えていた。しかし、東京オリンピックが開催された1964年の113%をピークに減少を続け、近年は60%を下回る状況が続く。

 漁獲量が減った原因は、漁師の高齢化や収入、地球温暖化などさまざまあるが、一番は獲り過ぎだ。大量に漁獲すると、1匹当たりの魚の値段は下がる。すると、それを補填するために、また大量に漁獲しなければならない悪循環に陥ってしまう。その結果、稚魚まで獲ってしまい、その魚種自体が少なくなってしまう事態となる。

 一方で、世界では逆に増加傾向が続く。FAO(国連食糧農業機関)によると、1人当たりの食用魚介類の消費量は過去半世紀で約2倍になった。顕著なのが中国だ。近年、魚の需要が増えており、回転寿司チェーンに対する需要も高い。

 スシローも中国市場に上陸をし、高い人気を獲得しているが、なんと現地では一皿170円で売っている。それでも需要は高いのだから驚きだ。高く販売できると、その分、仕入れにもお金を掛けることができる。そうなると相対的に日本の購買力が下がり、今まで買えていた魚種もなかなか入手が難しくなると察しがつく。

 その環境下で100円寿司を続けていくには、仕入れ力の強化や、一匹の魚を有効活用したメニュー提案が欠かせない。かっぱ寿司が超えなければいけない山は非常に高い。

■人手不足が及ぼす弊害

 また、外食業界の人材不足も無視できない。現在、回転寿司チェーンは新規出店を増やしており、さらに人材獲得競争が熾烈だ。その中でスシローの店長の平均年収は「あきんどスシロー新卒採用サイト」によると688万円もあり、業界水準と比較してかなり高い。

 また、はま寿司を展開するゼンショーホールディングスの平均年収も600万円を超える水準にあるといわれている。さらに、くら寿司は1000万円で新卒を募集する取り組みを始めるなど、各社が優秀な人材の獲得に力を注ぐ。しかし、かっぱ寿司からはポジティブな数字が見えてこない。

 一方で、コロナ禍になって以降、イートイン以外にも、テイクアウトやデリバリーへの対応など、店長をはじめとした店舗スタッフの業務が増えている。特に厄介なのがアニサキスへの対応だ。アニサキスが原因の食中毒は、年々増えており、2018年に468件起きた後、高止まりが続く。

 現在、食中毒の原因のうちアニキサスが40%以上を占めている。厚生労働省の統計では、21年の食中毒病因物質別発生件数は1位がアニサキス、2位がカンピロバクター、3位がノロウイルスとなっており、ここ数年順位が入れ替わっていない。

 アニサキスが増えた原因は諸説ある。2012年に法律が改正され、アニサキスによる食中毒の報告が義務付けられたからとか、低温流通技術が発達したからだといわれている。また、アニサキスの最終宿主はクジラなどの海洋ほ乳類だ。近年、クジラの数が増えていることも、アニサキスによる食中毒が増えた原因なのではと指摘する専門家もいる。

 アニサキスが発生すると営業停止処分となり、その後の集客に与える影響も大きい。だからこそ細心の注意が必要だ。回転寿司各社は専用の機器を導入したり、最後に職人が包丁を入れたりして、対策を講じている。

■DX化が人材不足解消のカギを握る? 

 ただ、スタッフの業務負担が増えると、そうした対応を取るのが難しくなってしまう。スシローがDXを進めている背景には、そうした負担を軽減させ、価値を生み出す業務に集中してもらう狙いもある。くら寿司も人工知能(AI)を用いた仕入れ体制を構築するなど、DX推進には積極的だ。

 テクノロジーの活用が進むと人は人しかできない業務に集中できるので、結果として人件費を抑えることができる。すると店舗に必要な人材が減った分、出店のペースを上げやすくなり、売り上げの最大化にも結びつく。

 かっぱ寿司もDXの推進を行っているものの、先行する企業と比べると、まだまだ物足りないのが現状だ。ここから競争力を高めるためDXを推進し、より優秀な人材を獲得するために給与も上げるなど、ここでも高い壁が立ちはだかっている。

 かっぱ寿司の凋落は、ここ1、2年で起きた問題ではない。数年かけてさまざまな課題が大きく膨らみ、今回の社長の逮捕という事態につながっている。その分、復活までの道のりは遠いかもしれない。

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