ニコン、一眼レフカメラの開発を停止 成長するミラーレスに注力
ニコンがデジタル一眼レフカメラの開発を止めていることが12日、わかった。1959年から60年以上にわたり、プロや愛好者向けに幅広い機種を販売してきた。今後は成長が見込めるミラーレスカメラの開発、生産に注力していく方針だ。
ニコンは59年にフィルム一眼レフ「ニコンF」を初めて売り出した。90年代にはデジタル一眼レフに主軸が移った。最新機種は2020年6月発売の「D6」だ。D6のボディーは宮城県の工場でつくっていたが、21年にタイにある子会社の工場に移管した。
一眼レフの市場は縮小傾向で、ニコンはいったん新規の開発を止める。既存製品の生産や販売は続け、将来は開発を再開する可能性もあるという。ニコンは「デジタル一眼レフカメラの生産、販売、サポートは継続しており、引き続き安心してご利用いただきたい」としている。
ニコン 一眼レフカメラ 開発を停止 スマホの普及で販売減少
大手精密機器メーカーのニコンは、60年余りにわたって続けてきた一眼レフカメラの開発を停止しました。
スマートフォンやミラーレスカメラの普及で、販売が減少したためで、開発再開の見通しは、たっていないということです。
ニコンは、1959年から一眼レフカメラの販売を開始し、高画質の写真を撮ることができる品質などが評価されて、キヤノンとともに、一眼レフカメラの世界市場で大きなシェアを占めています。
しかし、高画質の写真を手軽に撮れるスマートフォンが登場してカメラ全体の販売が減少しているうえ、小型で軽いミラーレスカメラの需要の高まりで一眼レフカメラの販売台数は、落ち込んでいるということです。
こうしたことから会社では、60年余りにわたって続けてきた一眼レフカメラの開発を停止しました。
会社によりますと、開発再開の見通しはたっていないということですが、これまでに開発した一眼レフカメラの生産や販売は、続けるとしています。
ニコンは、需要が拡大し、今後も成長が見込めるレンズ交換式のミラーレスカメラに、経営資源を振り向ける方針です。
年々 ミラーレスカメラが占める割合が大きく
カメラ映像機器工業会によりますと、日本メーカーのデジタルカメラの出荷台数は、ピークだった2010年に世界で1億2146万台を記録しましたが、スマートフォンに押されるなどして年々減少し、去年はピーク時の10分の1以下となる836万台まで落ち込みました。
このうち、カメラ愛好家やプロの写真家が使うレンズ交換式のデジタルカメラでは、かつては一眼レフが主流でしたが、年々、ミラーレスカメラが占める割合が大きくなっています。
内訳をみますと、10年前の2012年は一眼レフはおよそ1620万台、ミラーレスはおよそ395万台で、一眼レフが80%を占めていました。
しかし、おととしには、ミラーレスがおよそ293万台、一眼レフがおよそ237万台と、初めて一眼レフをミラーレスが上回り、一眼レフカメラの売り上げの落ち込みが大きくなっています。
ミラーレスカメラの出荷台数は、去年、デジタルカメラ市場全体で37%と最も多くなっていて、カメラ需要の縮小が続く中メーカー各社が開発に力を入れています。
ニコン一眼レフ、国内生産終了へ 「こだわり苦境招く」
カメラ大手のニコンは、一眼レフカメラ本体の国内での生産を年内で終了します。「F5」「D1」など高く評価される製品を生み出し、長年にわたって一眼レフ市場をリードしてきた会社だけに、カメラ業界が直面する苦境の象徴と言える出来事です。調査会社BCNの道越一郎・チーフエグゼクティブアナリストに、その背景を聞きました。
Q ニコンによる国内生産の終了をどうみていますか。
A ニコンでは、すでにタイの工場が主力になっていました。BCNの調査では、2020年のデジタルカメラ国内販売台数のシェアはキヤノンが1位(36・8%)、2位はソニー(19・5%)。ニコンは3位(12・6%)です。国内市場でもシェアを落としており、コストを軽くするためにも完全な生産移管が必要だったのだと思います。
Q 「メイド・イン・ジャパン」のデジタル一眼レフカメラは国際的にも評価が高かったはずですが。
A 最大の要因は、間違いなくスマートフォンの性能向上です。スマホに組み込まれたカメラの性能が劇的に良くなり、あえてカメラを持ち歩く理由が無くなってしまいました。最初に影響を受けたのはコンパクトデジカメで、スマホに市場を奪われ売れなくなりました。
Q 残ったのが高性能機ですね。
A ニコンとキヤノンが世界の二大巨頭として長年君臨していた分野で、プロの写真家のほとんどがこの2社の機器を使っていました。しかし、ここではソニーが台頭します。従来の一眼レフと比べコンパクトなミラーレス機で「フルサイズ」と呼ばれる大型の画像センサーを搭載した「α7」シリーズを13年に売り出し、一気に存在感を高めました。
Q ニコンやキヤノンはどう対抗したのでしょう。
A 両社ともミラーレスの商品を売り出しましたが、当初はデジタル一眼レフと比べて機能面で劣る入門機が中心でした。結局のところ、2社はミラーレス市場を甘く見ていたのではないでしょうか。既存の一眼レフ商品といかに需要を食い合わずにすませるか、相当悩んだのだろうと思います。キヤノンはかろうじて追いつけましたが、ニコンは完全に出遅れたという印象です。